東方 過去と未来のシンフォニア   作:ももんがぴょん

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18話 私の全てを知ってほしい

 ここは何処なのか?重い瞼を開くと、私は目に映る天井を見て自分の部屋だと気がつく。何時もと比べて柔らかく、軽い布団を払い除けて小さい自分の身体を起こす。薄っすらと顎に痛みがあるので自分の頭に右手を当てて何をしていたのか思い出してみる。

 

「確かお煎餅を食べながらゴロゴロしていて……あれ?確か沙奈枝が部屋に慌てて入って……ん?」

 

 少しずつ思い出していく度に膨らんでいく違和感。私は先ほどまで自分の身体の上に乗っていた掛け布団を触る。そもそもこの掛け布団とフカフカな敷き布団の様な物は何なのだろうか?このような物は私の住む神社にはなかった筈だ。私は本当に自分の部屋にいるのか不安になり周りをキョロキョロ見渡す。

 

「きゃっ!」

 

 ある物を見つけた私は悲鳴を上げる。いや、物というよりは生き物だ。それは私が寝ていた物のすぐ側に四本足が円にくっついたような木でできた何かに座って寝息を立てている。黒色の服に身を包み、銀色の髪の毛で狐耳が付いた青年。その姿を見て私は意識が途切れるまでの事を全て思い出した。

 また襲われる前に逃げなければ。私は寝ている彼を起こさないようにゆっくりと身体を動かそうと思ったが、私は身体が凍り付く。寝ていると思っていた彼の瞳はしっかりと私を捉えていてにっこりと笑っていたのだ。

 

「さっきはごめんね。痛かったよね?」

 

「な、なんで妖怪がここにいるの……?」

 

 赤い瞳を前に動けずにいる私の心は恐怖に支配されていく。先ほどから頭の中では目の前の人物が左手に大きな剣を持ち、私に迫り来る光景が繰り返される。その影響か私の身体は小刻みに震え、彼の口から放たれる言葉すら理解することができなかった。

 

「えーっと……落ち着いて?」

 

「いや……来ないで……」

 

 次第に涙で視界が霞んでいき、頭の中が真っ白になる。私はその場から逃げようとするが腰が抜けてしまい動く事ができない。

 

「落ち着いて!」

 

 今のこの状況が嫌になり悲鳴をあげようと口を開くと、彼は突然私を抱きしめた。

 

「落ち着いて。僕は絶対に危害を加えないから落ち着いて……ね?」

 

 彼は私の頭を優しく撫でてくれる。すると、先ほどまで真っ白であった頭の中は少しずつ冷静になっていく。

 一体私はどうなってしまっているのだろう?頭を撫でてくれる彼に対しての敵意、恐怖はすでに無くなり、むしろ胸の奥がドキドキしている。

 

「……落ち着いたから離して欲しいな」

 

 頬が熱くなるのを感じながらもそう頼むと、彼は私の髪の毛を左手でくしゃくしゃとしてから身体を離し先ほどまで座っていた物に座った。名残惜しいと思いながらも、私は彼の身体から人間の匂いがすることに気がついた。

 

「私の名前は諏訪子。洩矢諏訪子だよ。貴方の名前は?」

 

「僕は文夜。よろしくね」

 

 私達は簡単に自己紹介をして握手をした。私はこの後、幾つか質問するつもりであったが文夜と言う名前には聞き覚えがあった。それを何処で誰に聞いたかは思い出せないが、とても大切な事であったのは覚えている。

 

「そういえば最初に会った時と比べて全く口調が違うよね。どうしたの?」

 

 文夜は必死に大切であろう事を思い出そうとしている私をお構いなしに質問してきた。私はその理由を会って間も無い彼に教えてあげるか少し悩むが、もう既に警戒心も無いので教える事にした。

 

「それは私が神様である事が理由なんだけど」

 

「神様?」

 

「そう!私はこの辺り一帯を納めている祟り神なんだよ」

 

「その容姿で?」

 

 文夜は私の身体と顔を交互に見る。私が妖怪などと対峙する時に口調を変えるのはまさにこれだ。私の容姿は少し多めに見ても成人する前の女の子にしか見えないのだ。

 

「……そうだよ私はこんな容姿だよ。しかも見た目の通り少女の様に怖がりさ。でも私は神様である以上、人々を護らなきゃいけない。だから私は偉そうで強そうな洩矢諏訪子を作って相手に舐められない様にしているの」

 

 一緒に住む沙奈枝ですら教えた事の無い私の想いまで何故、文夜に話しているのか自分でも分からない。けれども彼になら私の全てを教えても良いと思う。いや、私の全てを知ってほしい。これが一目惚れと言うやつなのだろうか?私は突然自分が変わってしまった様で少し恐怖を覚えていた。

 

「僕も無理に周囲に自分が人間だって認めてもらおうとしてた事があるから何と無く分かるよ」

 

「そう言えば文夜は一体どんな存在なの?話を聞く限りだと普通の妖怪じゃないよね?」

 

 昔を懐かしむ風に明後日の方向を見る文夜を見て疑問に思う。彼からは人間の匂いがする。けれども容姿は九尾の狐だ。私は今までに色々な妖怪を見てきたが、彼ほど抜きん出て異常なものは見たことがなかった。

 

「僕は人間と妖怪のハーフなんだよ」

 

「はーふ?」

 

「つまり半妖って事だよ」

 

 半妖と言う単語に私は内心驚いていた。人間と妖怪の間に産まれた生き物の事を指すと以前に聞いたことがあるが、まさか本当に存在するとは思ってもいなかった。

 

「なんとなく文夜の事は分かったよ。あっちょっと立ってくれない?」

 

 気を失う前の事をはっきりと思い出した私は文夜に頼む。不思議そうに立ち上がる彼を見てから私は布団のような物の上に立ち上がって右手を文夜に向ける。私は掛け声と共にミシャグジの呪いを放つ。手のひらから放たれた黒色の波動は文夜の身体に触れた瞬間に消え去った。波動が消えるのを確認してから文夜の身体を見るとやはり薄っすらと白色の光に包まれていた。当の本人は一体私が何をしたのか分かっていないようであった。

 

「ねえ文夜。何か自分の身体に白い光が纏ってあるのが分かる?」

 

 私が文夜に質問すると、彼は自分の身体を見下ろして目を丸くする。そして何を思ったのか両手を横に広げ、手のひらを上に向けてから目を閉じる。すると両方の手のひらに突然青紫色の球体が現れる。

 

「違う……これじゃない」

 

 彼はボソッと呟くと球体は消える。その後しばらく沈黙が続くが、文夜はいきなり目を見開く。すると左の手のひらには白色の球体が、右の手のひらには赤色の球体ができていた。

 

「妖力でもない……なんだろうこれ?」

 

 自分の作り出した物をジロジロ見ている文夜から私は白色の球体を奪う。それはとても温かく、強い神力を感じられた。それは私の呪いの力を秘めた神力とは正反対の護りの力を秘めている様に感じられた。

 

「これって多分文夜の力で作っているのでしょ?」

 

「そうだよ。僕の中にある力を制御して物を作っているんだ。それで身体の中にある見知らぬ力をこうして物に……」

 

「どうして半妖である文夜が神力を持っているの?」

 

 私は文夜の説明を遮って質問する。私は信仰が集まって生まれた存在に対して彼はただの生き物だ。いや、信仰が集まればそれは神力を得る。しかし一体何をすれば半妖が信仰を得ることができるのだろうか?

 

「……わからない。本当にわからないんだ」

 

 文夜は左手を頭に当てながら苦笑いをしているところを見ると嘘はついていないらしい。私は文夜が作り出したもう一つの球体を手に取る。私は一体どんなすごい力が秘めてあるのか気になりワクワクしていたが、それからは人間だけが持つ力、霊力しか感じられなかった

 

「その赤い力は何なの?」

 

「多分……霊力」

 

「霊力?」

 

「そう。人間なら誰もが生まれた時から持っている力の事を霊力って言うんだよ」

 

 私が霊力の事を簡単に説明すると彼は項垂れて拳を強く握る。よく見ると彼の九本の尻尾の毛はまるで怒っているかのように逆立っていた。

 

「生まれた時からある?なのに僕は気がつかなかった……?自分の力も理解していないのに力を操るプロフェッショナルだと言ってた?ふざけるなよ!!」

 

 文夜はブツブツ何かを言っていると思うと突然怒鳴ったので私の身体はビクッとする。文夜はそのまま右腕を振り上げると、右手の近くに赤色の小刀のような形をした物体が現れる。文夜はそれを逆手に持つので、私は彼がそれを使って自害をするのかと思い飛びかかる態勢になる。

 

「嘘……でしょ?」

 

 しかし彼は振りかぶった状態で硬直しており、突然身体から力が抜けたかのように横に倒れる。私は慌てて布団のような物から降りて文夜の名前を呼びながら身体を揺する。しかし、返事は返ってこないので彼の口元に手をかざしてみる。息はしているのでどうやら気を失ってしまっただけのようだ。

 

「沙奈枝!ちょっと来て!」

 

 襖に向かって少し大きめの声を出すと、外からドタドタと廊下を走る音が聞こえてくる。この神社の巫女である沙奈枝は普通の人間と比べて耳が良いのか私が呼ぶとすぐに駆けつけてくれる。

 

「おはようございます諏訪子様!」

 

 沙奈枝は肩で息をしながら襖を開ける。境内を掃除をする時に何時も使っている箒を片手に持っているところを見ると、さっきまで気を失っていた私の事を心配してくれていたのだと思うと気分が舞い上がる。

 

「そこの男の人を空いてる部屋に運んでくれないかな?」

 

「諏訪子様の次は文夜さんが倒れちゃったのですか?」

 

 沙奈枝は私の横でしゃがむと文夜の頬を人差し指でフニフニと触り始める。この反応を見ると二人は私が気を失っている間に相当仲が良くなった風に見える。文夜の事を引きずる感じで運ぶ沙奈枝の姿を羨ましいと思う。

 

「いや、これから私が少しずつ文夜の支えになっていけば良いじゃない」

 

 一人になった自分の部屋で畳の上に落ちていた目玉がついた帽子をかぶってちょっとした私の決意を呟いた。ふと壁を見ると、私の身長よりも大きい白銀の剣が立て掛けてあった。私は文夜がそれを片手で軽々と振り回しているのを見ているので私でも何とか運ぶぐらいはできるだろうと思い剣の柄を握る。しかし、それを持ち上げようとするがあまりの重さに持つ事ができない。剣が私の部屋に置いてあっても邪魔なので、私は顔を真っ赤にしながら沙奈枝が文夜を連れていったであろう部屋まで剣を引きずりながら運んだ。

 

 

 

 

 霊力と言う物を使い切る事で倒れてしまった僕は、布団の中で目を覚ましてからその部屋を出て境内と呼ばれる土地のあまり人目に着かないところに来ていた。僕の身体に妖力以外の力が宿っているのならばそれを使いこなしてみせようと考え、沙奈枝ちゃんにうってつけの場所に案内してもらったのだ。

 なぜ人目に着かない場所かと言うと、倒れる前に諏訪子と話していてあることを思い出したからだ。それは僕が妖怪であり人々から受け入れられない存在であると言うこと。僕が特訓をしている時にきゃあきゃあと騒がれるのは嫌なのだ。

 

「じゃあまずは……」

 

 神力を操作する特訓を始めようと左手を前に出すが、そこで僕は動きを止める。なぜなら今の僕にどれくらいの神力があり、それを使い切ってしまうとやはり倒れてしまうのかと言う内容が頭の中を横切ったからだ。もしも自分の力を数値化して見ることができたらどれだけ楽なのだろうかと想像してため息をつくと、突然視界に数字が現れる。Gと書かれた横には8000と、Mと書かれた横には9000と、Hと書かれた横には0.02と表示されている。一体僕の瞳は何を教えてくれているのは分からないが、とりあえず1回は確実に使える霊力で物を作ってみる事にした。

 まずは何か簡単な物をと果物ナイフの形を強くイメージすると、左手に歪な形をした赤色のナイフの様な物が出現する。まるで初心に帰ったみたいでジロジロと出来上がった物を見ていると、視界に映るHの数字が0.01と少なくなっている事に気がついた。ナイフを作った瞬間に減ったと言うことは、もしやこれは自分の力がどれだけあるのかを表示してくれているのだろうか?

 

「だんだんゲームの世界に迷い込んでしまったみたいになってるね」

 

 双銃を撃つ度に数値が減っていく光景を想像して少し頬が緩む。まるで妖怪退治がシューティングゲームに早変わりしそうでワクワクしているのだ。しかし、霊力も神力も妖力程器用に使える訳では無い。さらに言ってしまえば霊力は2回使っただけで倒れてしまう。なので守る人も生きる目的も無い僕は霊力を増やす方法を見出し、完璧に使いこなす為にただ訓練をするだけだ。

 気が付くと境内からは賑やかだった人の声は無くなり、日は既に沈んでいた。どうやら電灯などが無い様で見上げれば綺麗な星空を見ることができた。僕は特訓を一回やめて神社の屋根によじ登って寝転がる。夜空に浮かぶ星座の名前は分からない。けれどもはっきり言えるのは何度も何度も同じ星座をこの目に収めているということだ。変わっていく僕と周りの環境に対して何も変わらない宇宙。いや、僕が掲げた目標だけは宇宙と同じで変わっていない。同じ星座を見ればあの時掲げた目標も一緒に思い出すことができる。

 

「どうせならもう一個くらい目標を立ててみようかな。例えば……月に行って家族だけを護る……なんてね」

 

 空に浮かぶ月に向かって左手を伸ばして微笑むと突然、頭の中に痛みが走る。今まで感じたことのない痛みの為、顔を歪ませ右手を頭に押し付ける。数分程すると徐々に痛みは引いていったが、その数分が何時間にも感じられた。

 

「……僕は月に行って人間を護るんだ」

 

 仕切り直す様また月に向かって左手を伸ばして呟く。気分を入れ替えて特訓を再開する為に立ち上がると、自分のお腹が鳴る。よくよく考えてみるとトウモロコシを食べてから何も食べていないのだ。

 

「沙奈枝ちゃーん!」

 

 屋根から降りて大きな声で呼ぶと目を手で擦りながら沙奈枝ちゃんは襖を開けて出てきた。その様子を見るとどうやらもう既に寝ていたようだ。

 

「どうしました文夜さん……」

 

「起こしちゃってごめんね。何か僕が食べれる様な物は無いかな?」

 

「そうですね……今は無いですよ」

 

「じゃあシャワーある?汗を流して今日は寝るからさ」

 

「しゃわー?」

 

 欠伸をしている沙奈枝ちゃんは横に傾げている。どうやらシャワーはこの世界では存在しない様だ。

 

「じゃあ沙奈枝ちゃんは何時も身体が汚れたりしたらどうするの?」

 

「私は毎日、日が出てからすぐに目を覚まして近くにある池で身体を洗っています!」

 

「うーん……明日の朝一緒に連れて行って欲しいんだけど良いかな?場所も覚えておきたいし」

 

「大丈夫ですよ!あっ今日は一緒に寝ませんか?文夜さんのお話を聞いてみたいです!」

 

 沙奈枝ちゃんは鼻息を荒くして自分の部屋に入ると、手招きをするので僕も後に続いて部屋に入る。部屋の中には一人分の布団しかなかったので妖力を使ってベッドを空いているスペースに作る。すると沙奈枝ちゃんは興味津々とベッドを眺めていた。

 

「これは何ですか?」

 

「ベッドって言うんだよ。寝てみる?」

 

「はい!」

 

 沙奈枝ちゃんは楽しそうにベッドに寝転がったので布団を身体の上にかけてあげる。そうすると彼女は猫の様にゴロゴロとし始めた。僕はそんな彼女の頭を撫でてから床に敷いてある布団の中に入る。

 

「こうやって誰かとお話しながら寝るなんて初めてです!」

 

「諏訪子とは一緒に寝ないの?」

 

「諏訪子様は昔から何故か一緒に寝てくれないんですよね。何故でしょうか?」

 

「実は沙奈枝ちゃんの方が身長が大きくてそれを根に持ってたりして」

 

「諏訪子様に限ってそんなこれはありませんよ!」

 

 こうして僕達は会話に花を咲かせ、気がつけば二人とも眠りについていた。眠りにつく前に思った事は、流れでここに僕も住み着く事になったが大丈夫なのだろうか?と言う内容であった。変に分からない世界を旅するよりは仲が良くなった人と生活して生きる目的を探すのも良いのでは無いかっと沙奈枝ちゃんと会話をしていて思ったのであった。

 

 

〜メリーの部屋〜

 

蓮「もう11月も後半ね」

 

メ「あと一ヶ月で今年も終わりって考えると長かったような短かったような……」

 

蓮「私達は何ともないけど世の中の学生さんはみんな受験だーとかで忙しいんだろうね」

 

メ「私はコツコツやっていたから受験勉強はあまり困らなかったわね」

 

蓮「私はトラウマになりかけているから無理矢理話題を変えさせてもらうわ。なんか文夜って変わってるよね」

 

メ「蓮子がどんな意味で変わっていると言っているのか分からないけど確かに変わっているわね」

 

蓮「え?もしかして何か大事なところに触れてたの」

 

メ「それは秘密よ。触れていたかいないかずーっと考えて悶え苦しみなさい」

 

蓮「本当に意地悪ねメリーって」

 

メ「どーしても分からないなら少しだけ教えてあげるから」

 

蓮「そう言われると意地でも自分で答えを導くわよ!」

 

メ「応援しているから頑張ってね」




こんばんは!
最近忙しくなってきたのと自分の作品の内容が薄いのでは無いか?と考えるとなかなかストーリーが思い浮かばなくなりますね……
今回の話はこれからの展開のヒントが多いのでそれが何か考えて頂けると嬉しいです!

それでは……次回も見てください!!
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