東方 過去と未来のシンフォニア   作:ももんがぴょん

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19話 「僕はそんな諏訪子を……」

 

 朝日が差し込む洩矢神社の調理場で巫女服を身に纏う私は村で買ってきた鮭を3匹焼いています。文夜さんが住み着いてから結構経ちますが、今まで2人分作っていたのを3人分作る事はなかなか慣れる事ができません。

 鮭がこんがり焼けたのでそれを大きなお皿に乗っけて、足で襖を開けて畳が敷き詰められた部屋に入りました。そこには私達が集まりご飯を食べたりお喋りを楽しむ時に使う少し大きなちゃぶ台があり、私はその上にお皿を乗せます。

 

「おはよー沙奈枝」

 

「おはようございます諏訪子様!」

 

「先につまんじゃダメ?」

 

 取り皿を調理場から運んでいると諏訪子様が起きてきて、ちゃぶ台の前に座ると涎を垂らしながら焼き鮭を見ていました。私はその姿を見て諏訪子様は実は私が知らないうちに産んだ子供なのではないか?などとたまに思ってしまいます。

 

「ダメです!文夜さんが起きてくるまで我慢してください!」

 

「じゃあ起こしてくる!」

 

 私がちょっと強めに言うと諏訪子様は勢い良く立ち上がって走ってこの部屋から出て行ってしまいました。余りにも予想通りの行動だったので私は苦笑いをしながらちゃぶ台の上の取り皿に目を移しました。

 

「……あれ?」

 

 ふと気になった事があるので私はお茶碗を手に持ってジロジロ見ます。

 

「これって誰が最初に作ったのでしょうか?私が小さい頃からあって、今までなんとも思いませんでしたけど……」

 

 私はなんだか触れてはいけない物に触れてしまっている。そんな感じがしますが一度気になると、とても考えるのをやめる事ができません。

 

「そういえばこのちゃぶ台は?今私が発している言葉は?そもそも私って?」

 

 キョロキョロと周りを見渡しますが、分からない物だらけ。まるで空の向こうには何があるのかを考えているようで頭がおかしくなっちゃいそうです。

 

「おはよう沙奈枝ちゃん……」

 

 私がよくわからない事を考えていると眠そうに目をこすっている黒い変な服を着た文夜さんが尻尾を揺らしながら畳の上に座りました。

 

「おはようございます文夜さん!」

 

「お皿なんか手に持ってどうしたの?」

 

 手にしていたお皿をちゃぶ台に置いてから挨拶をすると、文夜さんは私が置いたお皿を不思議そうに見ていました。

 

「え?あーえーっと……一回落っことしてしまったので割れていないか確認していたのです!」

 

 私はさっきまで考えていた事を忘れたかったのでとっさに嘘を付いてしまいました。すると、文夜さんは心配そうに私の手を取って怪我が無いか見てくれました。嘘をついた事への罪悪感と一緒にこんなお父さんがいてくれたらな、なんて考えていました。

 

「そういえば諏訪子様は?」

 

「私ならここだよ!」

 

 諏訪子様が文夜さんを起こしに行ったのに何故か一緒にいなかったので、キョロキョロと周りを見ていると、文夜さんの背中からひょっこりと諏訪子様の顔が出ました。

 

「……もしかしてずっと張り付いていたのですか?」

 

 私は諏訪子様に質問しながら文夜さんの顔色を伺ってみると、その顔は苦笑いを浮かべていたので私の推測通りであるようです。

 

「諏訪子様って本当に神様ですか?」

 

「うー!私は神様だよ!」

 

 諏訪子様は文夜さんの背中から離れると、手をバタバタしながら私に訴えました。その姿はとても神様の様には見えず、小さな子供の様でした。

 

「こんなにも子供っぽいところを見てしまうと諏訪子様って実は私と文夜さんの子供なんじゃないかって思えますよ?」

 

 私は皆が笑うのを期待して冗談でそう言うと、バタバタしていた諏訪子様は突然動きを止め私の事を睨んでいました。

 

「沙奈枝?幾ら何でも言って良いことと悪いことがあるんだよ?」

 

 一目で怒っている事が分かりますが、私は何故こんなにも諏訪子様が怒っているのかが分かりません。

 

「誰が捨てられていた沙奈枝を育ててあげたと思っているの?私でしょ?なのに何で私を馬鹿にしているわけ?」

 

「一度落ち着こう?ね?」

 

 文夜さんは諏訪子様の事を止めようとしてくれていますが、諏訪子様はそれを気にせずに私に近づきます。

 

「今から沙奈枝の事を殺してあげても良いんだよ?」

 

 私の目の前に立つと、諏訪子様は私の頬に手を添えました。私はその時に恐怖などは感じていませんでした。呆然。その一言に尽きます。こんな諏訪子様を見たことが無いからこそ、私の頭は今の状況を把握し切れていないのです。

 

「諏訪子。人に向けて放っていい殺気の量じゃないよ?」

 

 文夜さんは何処から出したのか白色の刀の様なものを右手に持ち、それを諏訪子様の背中に突きつけていました。諏訪子様は私の頬から手を離し振り返って文夜さんの方を見ました。

 

「……別に殺しはしないさ。ただのお説教だし」

 

 諏訪子様はちゃぶ台の前に座ってお箸で焼き鮭を食べ始めました。その行為に腹を立てたのか文夜さんの尻尾は少し大きくなっている風に見えました。

 

「それがお説教?僕には自分が気に入らない事で腹を立てて勝手に怒りの矛先を沙奈枝ちゃんに向けている風にしか見えなかったよ?」

 

「人を恐怖によって支配し、信仰を得るのが祟り神だよ文夜」

 

「そんな事を言うなら僕は祟り神と言う存在を認めない。家族まで恐怖で支配するって言うのなら僕はそんな諏訪子を……殺す」

 

 突然身体の周りに青紫色の光がバチバチと纏った文夜さんを見て諏訪子様は一瞬ハッとした顔をすると鮭が乗っているお皿を手に持ち、立ち上がって何処かに行ってしまいました。二人だけになってしまった私と文夜さんはとりあえずご飯が冷えてしまうので早く食べる事にしました。こんなにもつまらない朝食を経験するのは初めてでありました。

 

「はぁ……」

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫……ではないですね」

 

 私がため息をつくと文夜さんは私の頭を撫でてくれました。私は文夜さんの身体に抱きついて、彼の胸に顔を押し付けました。

 

「諏訪子様は私にとってお母さんみたいなものなのです。多分お金も無くて生活が苦しかった両親がこの神社に私を捨ててしまったのだと聞いたことがあります」

 

 文夜さんは突然始めた私の過去の話を黙って聞いてくれて、ずっと私の頭を撫でてくれていました。

 

「何時もは子供っぽい感じなのにたまに見せる優しい顔が好きで……何時も笑ってくださっていたのに何で諏訪子様はあんなに怒ってしまわれたのでしょうか?私は何をしてしまったのでしょうか?」

 

 涙が瞳から零れない様に私は強く文夜さんを抱き締めてさらに顔を押し付けます。私は諏訪子様に殺すと言われた事よりも今までの様な生活ができなくなると言うことの方が怖いのです。

 

「大丈夫。僕に任せて」

 

 文夜さんは私の事を強く抱き締めてくれた後、私を身体から話して部屋から出て行ってしまいました。私は彼の背中に向けて行ってらっしゃいと呟いてから食器の片付けを始めました。文夜さんなら何とかしてくれる。私は何故かその事に確信を持っていたのでした。

 

 

 

 

「こんなところにいたんだ」

 

私が神社の屋根の上でお参りにくる人々を見ながら鮭を食べていると後ろから声がしたので振り返り返ってみると、そこには文夜がいた。

 

「何?私を殺しにきたの?」

 

「まだ殺しはしないよ。まだね」

 

 そう言って彼は私の横に座る。彼は返答次第では私を殺すと言っているのだろうか。しかし、今の私は殺されても仕方が無いとも思える。彼の口から放たれた家族と言う単語。それを聞いた途端に私は我に返った。私は自分勝手な理由で血は繋がっていないが家族である沙奈枝に対して殺すと言ってしまったのだ。その事を屋根に登ってからずっと後悔していた。

 

「僕はただ一言諏訪子に言いたい事があったからここに来たんだ」

 

「……どんな事?」

 

「沙奈枝ちゃんは戸惑っていたよ?いきなり諏訪子様が変わってしまったんじゃ無いじゃって」

 

 それを聞いてズキズキと私の胸は痛む。もう私達は家族に戻る事ができない程の隔たりができてしまったのか?いや、私が作ってしまったのだ。

 

「別に何があったのかを僕に言わなくても良い。でも沙奈枝ちゃんにはしっかり説明して謝ってくれないかな?じゃないと僕みたいに一生後悔する羽目になるよ」

 

 最後の方を聞いて私は何故か悲しそうな文夜の顔を見る。彼は空を見ていたので、その目線を追うとそこには薄っすらと浮かぶ月があった。彼には家族に対して一生後悔してしまう様な経験があったのであろうか?だからこそ彼は私がやった事に対して怒り、こうやって説得に来たのではないかと私は思う。

 

「僕が言いたい事はこれくらいだよ。別に沙奈枝ちゃんに謝らなくても僕は諏訪子に矛先を向けたりはしないから。殺されるからとりあえず謝るなんて舐めた事をされるのだけはごめんだからね」

 

 そう言い残して文夜は屋根からジャンプして神社の裏側へ行ってしまった。私はすぐにでも沙奈枝に謝りに行こうとしたが、なかなか身体を動かす事ができなかった。それは沙奈枝に説明するべき私の怒った理由が今思えばとても恥ずかしいからだ。しかし、沙奈枝との関係を台無しにしたくは無いと意を決して立ち上がった時には太陽は既に私の頭上にあった。

 

「諏訪子だけど入って良いかな?」

 

 私は屋根から降りて沙奈枝の部屋の前に行くと襖越しに声を掛けた。中から入っても良いと返ってきたので襖を開けると、そこには土下座をしている沙奈枝の姿があった。

 

「本当に……申し訳ありませんでした」

 

「やめてよ……沙奈枝は何も悪くないんだからさ」

 

「いえ、私が気がつかないうちに諏訪子様がお怒りになるような事をしてしまったのが全て悪いのです」

 

 なかなか顔を上げてくれないので私は無理矢理沙奈枝の身体を起こすと沙奈枝は驚いた様な顔をしていた。

 

「沙奈枝。私が怒った理由を聞く前に絶対に笑わないって約束してくれないかな?」

 

「分かりました。どんな事があっても笑いませんよ」

 

 私はドキドキする胸を落ち着かせる為に一度深呼吸をする。そして私が口を少し開くと沙奈枝は生唾を飲む。

 

「私は文夜の事が好きなの。それも初めて会った時から。それで朝の沙奈枝が言った事を聞いて私は沙奈枝と文夜の子供なんだから私の想いは通じないって勝手に解釈して……それで腹を立てて私は……!!」

 

 気が付けば私は涙を流していた。立っていられなくなった私はその場で膝を着いて子供のように泣き始める。すると沙奈枝は私の事を優しく抱き締めていた。

 

「やっぱり私が悪いじゃないですか。でもそんな誰にも言えない様な事をこの私、沙奈枝に教えてくださって感激です」

 

「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」

 

 私は沙奈枝の胸に顔を押し付けていっぱい泣いた。大分落ち着いてきた頃合いに、私は沙奈枝の身体を離して深く頭を下げた。

 

「もう謝らなくても良いのですよ!」

 

「それじゃ私の気が済まないの」

 

「じゃあ一つだけ約束して欲しい事があるのです」

 

 顔を上げてみると、沙奈枝は小指だけを立たせた右手を私に差し出していた。

 

「これからも私のお母さんでいてくれないでしょうか?」

 

「家事もろくにできないよ?それでも良いの?」

 

「今までだってそうだったじゃないですか。私は構いませんよ」

 

 沙奈枝は優しく微笑んでさらに右手を私に近づける。私も右手を出して沙奈枝と指切りげんまんをする。これでは本当に私が子供みたいだと思いながら沙奈枝に笑顔を見せると彼女は嬉しそうに笑い、左手を私の右手に添えてピョンピョンと跳ねだす。私は親としてせめてこの笑顔だけでも守りたいと心の中で静かに誓っていたのであった。

 

「あっ!文夜さんに私達が仲直りした事を報告しましょう!!」

 

 そう言って沙奈枝は私の手を引っ張って走り始めた。手を引かれて転ばないように走っている私は文夜が使っている部屋に入った。しかし、その部屋にはべっどと言う布団の様な物しかなかった。続いて何時もご飯を食べる部屋に向かったがそこにもいない。

 

「文夜さんは何処に行っちゃったのでしょうか?」

 

 珍しく参拝客がいない神社の鳥居まで来て辺りを見渡すが文夜の姿は見当たらない。私は一箇所だけまだ探していない場所を思いついたので、今度は私が沙奈枝の手を引いて走る。私達は梯子を使って神社の屋根に向かうと、そこには左手に黄色い狐のお面を持った文夜が立っていた。

 

「その感じだと仲直りしたのかな?」

 

 にこにこしながら文夜は私達に近づき、頭を撫で始めた。沙奈枝はそれが気持ち良いのか猫の様に腑抜けた声を出していた。

 

「仲直りの記念に三人で村へ行ってみない?」

 

「おおー!それは楽しそうですね!」

 

 文夜の提案に沙奈枝は賛成の様だが、私は反対である。何故なら、文夜が妖怪であると九本と狐耳のせいで一目で分かってしまうのだ。その尻尾と耳を引きちぎるなどすれば暴露る事は無いが、彼が自分からそんな事をするとは思えないし、私もするつもりは無い。

 

「じゃあ行こうか」

 

 私が引き止めるよりも早く、彼は手に持つお面をかぶる。すると彼の尻尾と耳は少しずつ薄くなっていき、気がつけば無くなっていた。私はその光景が信じられず、口をパクパクさせて尻尾があったところに指を指した。

 

「ど、どうなっているの?」

 

 やっと口に出せた言葉を聞いた文夜はお面を取って思い出したかの様に両手をぽんと叩く。

 

「神力と霊力を使う特訓をしていたらどうしても妖力が出てきちゃってたんだ。だから妖怪としての僕をお面をかぶる事で隠す……一時的に封印している状態にしたんだよ」

 

「よくそんな奇想天外な事を思いつきましたね!」

 

 沙奈枝は尊敬の眼差しを文夜に向けていた。すると文夜は気味が悪い程にっこりと微笑む。

 

「一度逆をやった事があるんだよ。人間としての僕を隠して妖怪と言う殺戮を繰り返すだけの存在になった事が……ね」

 

 沙奈枝は文夜が何を言っているのか分からない様であるが私にはよく分かる。けれども何故そんな事を微笑みながら言うことができるのであろうか?

 

「歪んでいる……」

 

 私は隣にいる沙奈枝にすら聞こえない声で呟く。しかし歪んでいる彼を支えてあげたいと私は思っている。惚れた弱みとはまた違う。自分でも彼に対する恋心は良く分からない。まるで気がつかないうちに私は洗脳されていて無理矢理彼を好きになっている様な気持ち悪さ。

 

「とりあえず早く行こっか」

 

 そう言って彼は村へ向かって歩き始めてしまったので、私はさっきまで考えていた事を忘れて急いで後を追う。

 もしかしたら私のこの恋は偽物かもしれない。だけどこの初恋だけはどうしても実らせたいと決意をしながら私は身長が釣り合わない彼を歩き続けるのであった。

 

 

〜メリーの部屋〜

 

 

蓮「ヤケモーニーンメリー!」

 

メ「んんwww」

 

蓮「ぺゃっwww」

 

メ「……って何をやらせるのよ蓮子」

 

蓮「いやー久しぶりにポケモンを起動したら私のパーティがヤーティになっていたのよー」

 

メ「あんなのただの火力厨じゃない」

 

蓮「でもその火力が魅力なんじゃない!」

 

メ「後はネタが面白いって感じね」

 

蓮「何だかんだ乗ってくれたわよねメリー」

 

メ「うるさい!」

 

蓮「まあそんな事はどうでも良いのよ」

 

メ「なら何で言ったのよ……」

 

蓮「それにしてもなんか気持ち悪く感じるわね。文夜がいる時代って」

 

メ「そうかしら?」

 

蓮「むむむ……メリーがおかしく感じないのならきっと私の勘違い……いや、電波ちゃんなメリーのことだから……」

 

メ「誰が電波ちゃんよ誰が」

 

蓮「そう言えば諏訪子って身長はどれくらいあるの?」

 

メ「相変わらず露骨に話題を変えるわね……諏訪子の身長は158cm。因みに沙奈枝は161cmよ」

 

蓮「その身長で子供っぽい行動をしてたら本当にただの子供にしか見えないわね。そう言えば私の知り合いに早苗って子がいるのだけど、彼女の身長は155cmくらいだったわね」

 

メ「明らかに沙奈枝と同音だから思い出したって感じね」

 

蓮「あ、暴露た?」

 

メ「蓮子の考えなんて全てお見通しよ」

 

蓮「何か悔しいから私とポケモンで勝負しなさい」

 

メ「良いわよ?私のレート用のパーティでヤーティなんて完封してあげるわよ」

 

蓮「その自信を全て粉々にしてあげるわ!」

 




おはようございます!
普通に見えてずれている世界観は何となく通じているでしょうか……?
蓮子とメリーの会話もたまにヒントがあるので、色々考えてもらえると嬉しいです!

では……次回も見てください!
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