東方 過去と未来のシンフォニア   作:ももんがぴょん

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20話 「何も文句も言わずにこの国を明け渡すよ」

「あのさ文夜!」

 

「どうしたの?」

 

 お昼ご飯を食べるくらいの時間のちょっと前に小腹が空いたので居間にあるちゃぶ台の前に座ってお箸を使ってお皿に乗っている豆腐を食べていると、諏訪子が居間に入ってきて僕の隣に座る。

 

「実は今日で文夜がここに住んでから季節が一回りした事になるんだよね」

 

「ふーん。まだそれだけしか経ってなかったんだ」

 

 感覚的には5年くらい経ったと思っていたのでふと思った事を豆腐を頬張りながら呟くと、諏訪子は顔を引きつらせていた。何かおかしな事を言ったか?と思ったがここである事を思い出す。それは僕は数百年以上生きている事は普通であるが、今僕が生きる世界では異常であると言うことを。どうやら今の人は50歳を迎える前に寿命で死んでしまうらしい。だからこそ少ない寿命の中の一年を大切に生きているようだ。それに対して時間は腐る程あるから特に気にする必要は無いと考えて生きている僕とはやはりズレが生じてしまうのだ。

 

「そ、それでね!文夜に伝えたいことがあるの!」

 

 諏訪子は一度顔を横に振ると、何故か頬を赤くして僕に顔を近づけてきた。

 

「じ、実は……初めて会った時からす、す、す……」

 

「ちょっと静かにして」

 

 何かを一生懸命伝えようとしている諏訪子の口に箸を持っていない右手のひらで抑えて耳を澄ますと、外で何かがこの神社に向かって飛来してくる様な音がする。次第にその音は大きくなっていき、数秒後には何かが墜落する音と共に地面が激しく揺れた。

 

「早く直してください!」

 

 慌てふためく諏訪子とは違い、地面が揺れたせいで畳の上に落ちてしまった豆腐を手で集めていると、外から沙奈枝ちゃんの怒鳴り声の様なものが聞こえてきた。

 

「沙奈枝の声だ!」

 

 沙奈枝の身に何かあったと思ったのか諏訪子は急いで立ち上がり、僕が一箇所に集めていた豆腐を踏んだことにも気が付かずに居間から走って出て行く。僕はため息をつきながら豆腐を放ったらかしにして諏訪子の後を追う。

走っている諏訪子を追いかけていると何時もとは様子が違う神社の鳥居がある所まで来ていた。なんとそこには巨大な石柱が辺りに砂埃を舞わせながら鳥居を壊して地面と垂直に刺さっていた。

 

「お前じゃ話しにならないから早くここの神、洩矢諏訪子を呼べ!」

 

「諏訪子様を呼んで欲しいのでしたら貴女様が壊したこの鳥居を直してください!」

 

 先ほどの何かが墜落した音の正体はこれかと石柱を眺めていると、沙奈枝ちゃんが柱が刺さっている根元辺りで誰かと言い争っている事に気がついた。すると沙奈枝ちゃんと言い争っている女性は僕達の存在に気がついたのか、沙奈枝ちゃんを手で押しのけて僕の目の前にくる。

 

「その膨大な量の神力……貴様がここ一帯を収める神、洩矢諏訪子だな!」

 

 赤色の半袖の上着と臙脂色のロングスカートを着合わせ、背中に注連縄を輪の形にして背負っているサイドが左右に広がった紫がかかった青髪の女性は赤い瞳を鋭く光らせ、僕を指差す。

 

「名前からして絶対女だよね?私が諏訪子だよ」

 

 諏訪子は不機嫌な顔をしながら僕と謎の女性の間に割って入る。そうするとその女性は一歩下がって僕に頭を下げた。

 

「名前を間違えてしまうとは……どうか許してはもらえないだろうか?」

 

「いいって。初対面なんだから仕方が無いよ。それで君の名前は?」

 

「私の名前は「八坂神奈子」。大和国の戦神だ」

 

「そんな事より早く直してください!」

 

 神奈子は顔を上げると少し豊富な胸に右手を当てて自己紹介を始める。僕も自己紹介をしようとすると沙奈枝ちゃんが手に持った箒をブンブン振り回しながら文句を言っていると、神奈子は目を細めて嫌そうな顔をしながら手で埃を払う動作をしている。

 

「私が鳥居を壊してしまったせいかこの小娘がさっきからうるさいんだ……どうにかしてくれないか?」

 

「後で直させるから今はちょっと静かにしててくれないかな?それで戦神様とやらは私の神社に何の用が有って来たの?」

 

 諏訪子は沙奈枝の肩を撫でると沙奈枝は不満そうな顔のまま神社の中へと入って言った。神奈子はホッと安堵の息をつくとすぐに咳払いをしてこう言った。

 

「簡単な話だ。この国を明け渡せ」

 

 あまりにもいきなりだったのか諏訪子は目を丸くしていた。神奈子はそんな諏訪子を気にもせずにそのままペラペラと喋り続ける。

 

「目的はこの私達が住むこの世界の国を統一する事だ。なに、タダとは言わん。この国の民の安全だけは保証しよう」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!何いきなり来てもう私が国を明け渡すみたいになっているのさ!」

 

 諏訪子の主張はもっともだ。この世の中にいきなりお前の物を寄越せと言われてはいどうぞ、何て言う人など恐らくいない。

 

「そうか……ならば仕方が無い!」

 

 神奈子は一度目を閉じ、一息ついて腰を深く落とすと、諏訪子のお腹を殴り付けた。全く警戒していなかった諏訪子の鳩尾に入ったのか彼女はお腹を抑えてうずくまっていた。

 

「弱い……弱すぎる!そんな程度で国を守れるとでも思っているのか!!」

 

 うずくまる諏訪子の前で神奈子は自分の顔の前で握り拳を作って怒鳴る。それを聞いても動くことも反論することもできない諏訪子は悔しそうに歯を食いしばって涙を流していた。

 

「何をしに来たかは分かったからさ、とりあえずその鳥居を直してくれないかな?沙奈枝ちゃんがうるさいし」

 

「随分自分勝手な奴だな。諏訪子が苦しそうだと言うのにお前は平然とした態度で私に接してくる」

 

「お前じゃなくて僕の名前は文夜。それにマイペースって言ってほしいね」

 

 呆れたと言いたそうな神奈子に笑顔で軽く自己紹介をするが、やはりマイペースの意味が分かっていない様だ。実際僕はこの国が神奈子の物になったとしても興味が沸くことは無いだろう。そんな自分とは関係が無いことよりも一緒に住む沙奈枝ちゃんのお願いの方が僕の中では優先度が高い。

 

「直すのは嫌だと言ったら?」

 

「力ずくでも」

 

 神奈子は地面に刺さっている石柱を引き抜いて脇で抱える様に持つ。左手を前に突き出すと、何処からかアヴァランチが僕の手元に飛んでくる。僕はそれを掴み、後転をする様にジャンプし、地面に着地してから剣を構える。例え神だとしても人の姿を成している神奈子の身体を引き裂く事は避けたいので、僕は神奈子に向かって飛びかかり、両手で持つアヴァランチを振りかぶりながら神力で出来た白色の刃を纏わせる。神奈子は剣を振り下ろそうとしている僕を凪払おうと石柱を野球のバットの様にそれを振る。剣と石柱が触れ合った瞬間、石柱はバラバラに砕け散った。

 

「降参だ降参。文夜と私の相性は最悪の様だ」

 

 石柱を無くした神奈子は両手を上げて首を横に振る。何故、石柱が砕け散ったかと言うと、それは僕の能力の所為だ。振動を操作する事で相手の武器に伝わる振動を最大にまで引き上げて手を痺れさせるという事をやろうとしたのだが、肝心の石柱が振動に耐えきれなくなってしまいその身体を滅ぼしてしまったようだ。

 

「じゃあ早く直しておいてね。国を乗っ取るとかそんな話は後にしてさ」

 

 僕はそう言い残してから、気がつけば気絶していた諏訪子を右脇に抱えて神社へと向かう。途中で振り返って鳥居の方を見ると、神奈子は自分が壊した鳥居の残骸の前で頭を抱えていた。恐らくどうやって直せば良いのか分からないが降参をしてしまった以上はやらなければいけないと考えているのだろう。神奈子は先ほど相性は最悪だと言っていたが、僕は彼女となら仲良くやっていけそうだと思いながら諏訪子を寝室へ連れて行き、ベッドに寝かせたのであった。

 

 

 

 

 べっどの上で目を覚ました私には神奈子にお腹を殴られて気絶してしまったと言う事に対する悔しさしか残っていなかった。このまま何もする事もできずに私は消えてしまうのだろうか?

 

「そうだ……」

 

 私は気を失う前に文夜が神奈子の持つ石柱を粉々にするのを見たのを思い出した。もうこの際自分が神様であり彼が妖怪等、最早関係無い。私は勝たなければならない。意を決した私はべっどから降りて鳥居へ向かう。肌寒い外の風を受けながら目的地へ向かうと、そこには地面の上で胡座をかきながら頭をかいている神奈子が居た。

 

「一体何をしているのさ?」

 

「見て分からないか?鳥居を直しているんだ」

 

「全く直ってないじゃん」

 

「お前の目は節穴か?」

 

 私が神奈子の横に座ると、彼女は少し離れたところに指を指す。指を指す方向を見ると、そこには細い三本の木の枝がまるで鳥居のような形で組み上がっていた。

 

「あれが新しい鳥居だ」

 

「私の事を舐めてるでしょ?」

 

「すまんすまん」

 

 目を細めて神奈子を見ていると彼女は苦笑いをしながら自分の顔の前で両手を合わせている。私はそんな姿を見てため息しか出なかった。

 

「勝負だと強そうなのに他の事になるとぶきっちょなんだね」

 

「う、うるさい!諏訪子には関係無かろう!」

 

 顔を赤くして本当はもっと凄いんだぞと言い続ける神奈子を見ているとこんな奴に負けた自分に呆れるのと同時に笑いが込み上げてくる。必死に吹き出すのを堪えていると少しニヤついてしまっていたのか神奈子は私の脇腹を右手で軽く突つく。

 

「それで、私に何の用だ?」

 

 二人共落ち着いた頃に神奈子は話を切り出す。

 

「それは簡単な話。私はこの国を神奈子に明け渡すよ」

 

 先ほどとは打って変わって真剣な表情の神奈子に私はへらへらしながら答える。すると神奈子はその態度に腹を立てたのか立ち上がって私の胸倉を左手で掴み持ち上げる。

 

「貴様!力だけではなく神としての誇りも無いのか!」

 

「ただし条件がある」

 

 私は真剣な表情で言うと、顔を殴ろうと右手を振りかぶっていた神奈子はその腕を下ろした。

 

「30回朝日が上がる……つまり一ヶ月だけ待って欲しい。そして一ヶ月後、私との一体一の真剣勝負を受けて欲しい。それで私を打ち破る事ができたら何も文句を言わずにこの国を明け渡すよ」

 

「先程一撃で負けたお前が私と一体一で勝負すると言うのか?」

 

「だから一ヶ月の猶予を頂戴って言ったのさ。その期間で私は今の何倍も、何十倍も強くなって神奈子の前に立つ」

 

 神奈子は私から手を離しその場に座り込み目を閉じる。神奈子が私にどう返事をするかで私の運命は決まる。しばらくすると神奈子はゆっくりと口を開ける。その瞬間に私の胸の鼓動は早くなる。

 

「良いだろう、諏訪子の申し出は全て受けよう。私は鳥居を直すのに時間が掛かるだろうから丁度良い。けれども次は失望させないでおくれよ?」

 

 好敵手が現れワクワクしている様な表情の神奈子はそう言い残すと、立ち上がって鳥居だった物の前に立ち、頭に手を当て始めた。私はホッと息をついてペタンとその場に座り込む。しかし私は急いで立ち上がって神社へ行く。修行をする時間は得たのにも関わらず、私を指南してくれる相手が決まっていないのだ。少しの時間も惜しみたくない私は走って居間へ向かった。居間に入ってみると、そこには座ってトウモロコシを頬張る文夜の姿だけがあった。

 

「おはよう諏訪子。息を切らしているみたいだけど何かあったの?」

 

「文夜。お願いがあるんだけど良いかな?」

 

「神奈子を追い出して以外ならできる限り聞くよ」

 

 顔だけ私の方を向けていた文夜は手に持っているトウモロコシをすごい速さで食べ終えて芯をちゃぶ台の上に置くと、身体を私に向けて座り直した。

 

「どうか……私を鍛えてください」

 

 私のお願いが予想外だったのか文夜は目を大きくするが、すぐに首を横に振った。

 

「名声や地位を守る為に神奈子を倒そうなんて考えているのなら僕は」

 

「私は沙奈枝を守る為に力が欲しいんだ!」

 

 頓珍漢な自分の想像を語る文夜に対してつい大きな声が出てしまう。それを聞いた文夜は何故かとても柔らかく微笑んだ。

 

「理由は言わなくて良い。諏訪子のその想いだけはちゃんと僕に届いたから」

 

 文夜は私の頭をまるでお父さんの様に撫でる。私はそれがとても気持ち良くて自然と笑みがこぼれる。

 

「とても辛いかもしれないけど、投げ出さずに最後まで僕についてくるって約束できる?」

 

「もちろんだよ。絶対に強くなって神奈子を泣かせてやるんだ!」

 

「ほう?私を泣かせるのか」

 

 不意に後ろから声がしたのでゆっくり振り向くとそこには腕を組んで偉そうに立っている神奈子がいた。

 

「あれ?なんでこんなところにいるの?」

 

「実は少し前にあの沙奈枝とか言う巫女が鳥居を直してくれるならご飯を用意しますよーなんて言うからお言葉に甘えてご飯を食べにきたと言う訳だ」

 

 愛する娘の奇行に私は苦笑いをする事しかできない。ちょっと前まですごく怒っていた癖にもうその相手と仲良くなってしまっている。神奈子も沙奈枝の独特な雰囲気に呑まれてしまったのかもしれない。しかしそれが沙奈枝の魅力でもあり、私が他の人に自慢する事ができる事であった。だからこそ私はこんなところで消える訳には行かない。この国を乗っ取られる……つまり人々の私に対する信仰だけは失ってはいけないのだ。

 

「ご飯の準備ができましたよ!」

 

 沙奈枝の元気が良い声が居間に響き渡る。沙奈枝は調理場から次々とご飯が乗ったお皿を運び、ちゃぶ台の上に置いて行く。

 

「文夜さん!トウモロコシの芯はちゃんと捨ててください!」

 

「ちょっと諏訪子と話してて置きっ放しにしちゃってたんだ。ごめんね」

 

「そういえば先ほど諏訪子が大きな声を出していませんでしたか?」

 

 芯を左手で持ち、右手の人差し指を顎につけて首を傾げている沙奈枝になんでもないと言うと、彼女は「そうですか」と言ってまたお皿を運び始める。

 

「それじゃあいただきます」

 

 文夜はお箸を左手に持ち、先にお米を食べ始めたので私もいただきますと言ってお皿の上にある焼き鯖を自分の取り皿に取ろうとすると先に神奈子に取られてしまった。私はムスッとした顔をしながら無言で箸を使ってその鯖を取ろうとすると神奈子は箸でそれを阻む。ムキになった私は意地でもその鯖を奪おうとする。私達がカチカチ音を立てながら謎の攻防戦を繰り広げていると、文夜はため息をついて私の取り皿に別の鯖を置いた。

 

「ご飯を取り合ったりとか子供みたいな事はしないの」

 

「だって神奈子が!」

 

「だってじゃないの」

 

 敵である神奈子と共に何時も通り楽しく食事をする。本当は私達は分かり合えるのかもしれない。けれども二人の立場がそれを許さない。いずれ私達は戦い、最悪私は消える。正直な話、こんなに楽しく話す事ができる人と殺し合いなんてしたくは無いが、などと頭の中では同じ自問自答を繰り返していた。だけど私は笑続ける。食事をしながら楽しく笑えばそんな辛い気持ちも少しは紛らわせると信じているから。

 

 

 

〜蓮子の部屋〜

 

蓮「お留守番ありがとね」

 

メ「私が遊びに来てからすぐに出て行っちゃったけど何を買いに行ってたのよ?」

 

蓮「いやーちょっと目薬を買いにね」

 

メ「ドライアイかしら?」

 

蓮「違う違う。アレルギーっぽい痒みを感じるのよ」

 

メ「どうせ部屋が汚いから埃アレルギーで目が痒いーなんて言うんでしょ」

 

蓮「私は花粉以外アレルギー無いわよ」

 

メ「今の時期に花粉ってあり得るの?」

 

蓮「知らなくて?冬でも花粉は普通にあるのよ?」

 

メ「なんかうざいからその喋り方やめてくれない?」

 

蓮「本当メリーって私に対して冷たいわね」

 

メ「好きだからこそ私は冬の風の様に冷たくしているだけよ」

 

蓮「なかなか嬉しい事を言ってくれるわね。これからも殺し合いとかしない程度で仲良くしましょう」

 

メ「殺し合いをするなら何か特殊能力が欲しいわね」

 

蓮「じゃあ私は月を操る能力!」

 

メ「なら私は結界……境界を操る能力ね」

 

蓮「なかなか二人とも良いチート具合ね……腕が鳴るわ!」

 

メ「そんなアニメみたいな能力を手に入れてこの身体で使ってみたいわね」




こんばんは!
もう12月ですね……私は受験勉強のためにさらに更新ペースが遅くなる事に……
浪人しない程度に更新できたらなーなんて思っています!
では……次回も見てください!!
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