東方 過去と未来のシンフォニア   作:ももんがぴょん

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21話 「だから私は帰ってきたんだよ」

 洩矢神社の裏には大きな山がある。その山の山頂は人間が1500人敷き詰めても少し余裕がある位の広場になっていて洩矢諏訪子は一人で修行をしていた。

そう一人だけ。

文夜が諏訪子に稽古をつけてくれたのは最初の2週間だけだった。それ以降は一回様子を見にきたくらいで後は沙奈枝と神社の掃除などをしている。彼曰く、自分の教えられる事は全て教えたから後は自分で答えを見つけろとの事だ。

 

「これが私なりの答えかな……」

 

 諏訪子は何も無い地面に向けて右手を突き出してそのまま右手の親指と人差し指を擦らせてパチンと鳴らすと、目の前に火の柱が現れた。諏訪子は服を全て脱いでから一歩、また一歩柱に近づく。意を決したのか息を深く吸った諏訪子は柱に飛び込んだ。

 

 数分後、火の柱が消えると中から息が荒いけれども特に外傷が無い諏訪子が現れた。彼女は前屈みで地面に手を着き呼吸を整える。

 

「思ってた以上に……疲れるかも」

 

 ホッと息をついた瞬間に腕の力が抜ける。どうやら先ほどの行為はとても身体に堪えていたらしく、気が抜けた瞬間に力が入らない。彼女は寒い外の風を全身で受けながら、そのまま眠りについた。

次に彼女が目を覚ましたのは自分の脇に違和感があった時だった。重い瞼を開き身体を起こしてみると、諏訪子の目の前に鹿の顔が現れて鼻をぺろっと舐めた。

 

「うわっ!?」

 

 あまりにもいきなりの事だったからつい大きな声を出してしまうと、鹿は驚いて何処かへ逃げてしまった。彼女は先ほどの鹿に踏まれてぐちゃぐちゃになっている自分の服を着て、山を降り始めた。

 

 

 相変わらず参拝客で賑やかな洩矢神社に着くと、諏訪子はすぐさま鳥居があるところへ向かった。そこにはお札がいっぱい貼ってあるなど以前とは形が少し違う立派な鳥居があり、その根元の辺りで神奈子は参拝客を全く気にもせず眠っていた。

 

「気持ち良さそうに寝てるしそっとしておこ」

 

 諏訪子は参拝客に神奈子を起こさないでと伝えるとそのまま神社の本殿へ向かった。調理場から料理を作る音がするのでそこへ行くと、そこには沙奈枝がいた。

 

「あっ!お久しぶりです諏訪子様!すごい汚れていますけどお風呂に入りますか?」

 

「じゃあお風呂をお願いしようかな。それより文夜いる?」

 

「文夜さんならちょっと前に豆腐を買いに行っちゃいましたよ」

 

「豆腐を?自分で作れるのに?」

 

「うーん……なんででしょうかね?」

 

「とりあえず私は文夜を探してくるよ」

 

「はい!行ってらっしゃいませ!」

 

 諏訪子は沙奈枝に手を振って調理場から出ると鳥居をくぐって村に向かって歩き始めた。

もう少しで村に到着するところで諏訪子はお皿に乗った豆腐を片手に持った文夜と鉢合わせた。

 

「久しぶり文夜」

 

「その顔を見れば何と無く何か見つかったんだって分かるよ」

 

「当然。だから私は帰ってきたんだよ」

 

 文夜が優しく微笑むと諏訪子は自信ありげにニヤリと笑った。彼はそんな諏訪子のおでこを小突いてから再び神社に向かい始めたので、諏訪子も彼の横を歩き始めた。

 

「なんで文夜は豆腐なんて買いに行ったのさ。確か自分で作れたでしょ?」

 

「自分で作ってもお腹が膨れるだけだからだよ。でもこの豆腐は品物として売れる為に完璧を目指している……だから僕が作るより美味しいし美しい……」

 

「うーん……私はよく分からないかな」

 

「別に分からなくて良いよ。僕の事を理解してくれる人なんてもうこの地上にはいないし」

 

「……じゃあ私に貴方の事をもっと教えてよ」

 

 諏訪子はボソッとそう言うとその場に立ち止まった。文夜はさっきまで横を歩いてた諏訪子が横にいない事に気がついたので振り返った。

すると諏訪子は振り返った文夜に抱きついた。

 

「この地上にいないなら私が文夜の理解者になってあげる」

 

「諏訪子……?」

 

「私は神奈子との戦で消えちゃうかもしれない。だから後悔しないように今言うね」

 

 戸惑う文夜の身体を強く抱き締めてから諏訪子は頬が赤い顔を上げてゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「……貴方が好きです。初めて会った時からずっと」

 

「…………ごめんね諏訪子の気持ちに全く気付いてあげられなくて」

 

「今までずっと隠してきたのは私だもの気にしないで。できたら返事をくれると嬉しいかも」

 

 諏訪子はただ文夜の瞳を見続けていた。対する文夜は豆腐を持っていない手で諏訪子の頭を撫でた。

 

「僕も諏訪子の事は好きだよ」

 

「……本当?」

 

「でも友達として好きなだけ……それに宇宙に愛する人がいるんだ僕には……」

 

「空……この地上にはいないってそう言う意味だったんだ」

 

「本当に……ごめんね諏訪子」

 

「良いって!私は自分の気持ちを吐き出せて楽になれたし……それに貴方の横の席は貴方が失っちゃった人で埋まっているなら、私じゃそこは奪えないよ」

 

 諏訪子は笑顔でそう言い残してから文夜から離れて歩き始めた。

 

 

 

 

 僕は神社の自分の部屋に着くと買った豆腐を一人で食べ始めた。

 

「好き……ね。家族以外からの好意って意外と初めてかも」

 

 外から諏訪子の泣く声が密かに聞こえてくるので胸が苦しくなる。こんなにも人間みたいな事をするのもとても久しぶりに感じた。

 

「僕は……どうしたらよかったんだろう。漫画みたいにみんな愛せって……?そんなのだけは絶対にごめんだよ……」

 

「大丈夫、それで良いのよ。あなたが決めた事なんだから何も間違っちゃいないのよ」

 

 独り言を呟いていると後ろから懐かしい声が聞こえた気がした。後ろを見るとそこには大剣しかなかった。

 

「疲れているのかな……少し早めに寝よっと」

 

 少し残った豆腐を口に含んで飲み込んでから僕はお風呂にも入らずに眠りについた。

 

 

 

 

 

 目を覚ました神奈子は鳥居の下で肩を回していると本殿から諏訪子が歩いてきた。

 

「久しぶりだな。どうだこの鳥居は?」

 

「前ほどじゃないけど結構立派だと思うよ」

 

「それに比べてお前は前より良い顔をしているじゃないか」

 

「頑張って修行したし色々すっきりしたし当然だよ」

 

「なんだ?用でも足してきたのか?」

 

 諏訪子は「そんな感じ」と言うと神奈子は顔を引きつらしていた。

諏訪子はそんな神奈子を見てからふふっと笑うと、すぐに真面目な顔をした。

 

「この私、洩矢諏訪子は八坂神奈子に決闘を申し込む」

 

「……期限まではまだ時間があるぞ?」

 

「私もやることがなくなっちゃったんだよ。別に良いじゃないか」

 

「ふむ……良いだろう。しかし今日じゃなくて明日だ」

 

 すぐさま戦いが始まると思い懐からチャクラムを出していた諏訪子は目を丸くした。

 

「昨日まで修行していたのだろう?今日くらいゆっくり休むが良い」

 

「あくまで対等に勝負したいってわけね。それじゃおしゃべりでもしない?」

 

「良いだろう!全力でおしゃべりしようじゃないか!」

 

 諏訪子は神奈子を引き連れて神社の居間に行き、日が暮れるまでおしゃべりを楽しんだ……

 

 

 

 

〜とある大学の一室〜

 

蓮「だぁーもう!全然生活が安定しない!」

 

メ「新年度ってそんなものじゃない?」

 

蓮「友達もっと欲しいわー男が欲しいわー」

 

メ「私がいるから良いじゃない」

 

蓮「友達、召使い、恋人なんでもあれ!だからねメリーって」

 

メ「朝のお手伝いから夜のお手伝いまで……って何やらせるのよ」

 

蓮「乗ってくれるなんて芸人魂を分かってきているじゃない……感動したわ!」

 

メ「新年度になっても蓮子は馬鹿のままね……」

 

蓮「そう言うこと言わないで!泣くわよ!?」

 

メ「どうせ泣かないんだから静かにしてて頂戴」

 

蓮「ぐぬぬ……とりあえず新年度もよろしくってことよ」

 

メ「去年みたいに単位足りなくて教授に泣きつくとかやめてよね」

 

蓮「精進しまーす」




お久しぶりです……
とりあえずいらないところを省いて早く物語を進ませたいと思います……
それと主人公以外の一人称も辞めることにいたしました
指摘など頂けると助かります……
では、次回も見てください!

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