とあるオタク女の受難(終末のワルキューレ編)。 作:SUN'S
「死ねぇ!!」
「死なないよ、俺だから!」
その言葉と共に零福の斧爻が釈迦の頭へと振り下ろされる。だが、釈迦の防御を押し退ける強さはないのか。ガギィンッと嫌な音を響かせながら斧爻が跳ね上がる。
今の状況は釈迦の優勢、そこに風鳴叶が加われば圧勝だ。しかし、風鳴叶は動かない。どちらかと言えば見守っていると言い換えるべきだろうか。ちらほらと戦えという声も聞こえるが、一対一のルールに反するため乱入は出来ない。
「なんでお前ばっかり!お前ばっかりお前ばっかりお前ばっかりッ!!僕を見ろよ、僕だって、僕だってッ、福の神…なんだぞ…」
カランと斧爻が零福の手から零れ落ちる。その姿は迷子になって親を探す幼子のようで、誰もが零福へ憐れみや悲しみの目を向ける。
「零福、こっちにおいで」
さっきまで静観していた風鳴叶が壁際から離れ、彼らの間に立っている。まさか戦うつもり?と考えたが、彼女は毘沙門天に渡された槍を持っておらず、慈愛に満ちた笑みを浮かべている。
完全なる母性"伊弉冉"
私も興味本意で尋ねた時に受けた。
あれはマジでヤバい。
二度と帰ってこれなくなるんじゃないかと思うほど凄まじいバブみに包まれるのだ。ふと零福から角のようなものが落ちるのが見えた。単なる髪飾りだと判断し、風鳴叶のママみに癒やされる零福を見て、私達は自然と笑顔になっていた。
「…かあちゃん…かあちゃん!……」
「良い子、良い子、よく頑張ったわね」
よしよしと撫でられる零福から邪気が抜け、真っ白な無垢な子供のような姿へと変わっていく。いや、あれこそ零福本来の姿なのだろう。
『えーっと戦意喪失により不戦勝!』
まあ、こういうこともあるだろう。
そう一人で納得しながら楽しそうに笑っている零福と釈迦を見る。さっきまで死ねと言っていた相手へ満面の笑み。ある意味では恐怖かもしれない。
ゆっくりと戻っていく釈迦と零福、風鳴叶は困ったように私達を見上げている。しかし、あなたは神々へ聖母のような慈しみの愛をぶつけたのだ。
そりゃそうなる。
満場一致で「ママー!」と呼ばれるのは仕方ない。むしろゲルまで「お母様、お母様!」と呼び、あたふたとしながら駆け寄っている始末だ。
ここが個室だったり二人っきりだったら私も抱きつけるのにゲルったら本当に羨ましい。私もあとでナデナデしてもらおう。
そんなことを考えながら次の試合へ出場する戦士を選ぶ。どの人物も心身共に優れているが、風鳴叶ほど母性溢れている人は中々いない。
「ブリュンヒルデさんもおいで」
「…えっ…はい…」
ああ、ああああああ、マジで愛に溺れる。