とあるオタク女の受難(終末のワルキューレ編)。   作:SUN'S

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第4話(ゼウス)

トールが人間に敗けた。

 

神々の誰もが自営と勝利を疑っておらず、早々に決着がつくと思っていたのじゃが、ありゃあ儂でも初っぱなから本気にならんといかんな。

 

《人間にして神級の強さ!人間にして神級の速さ!全世界の誰もが認めた最強の戦乙女ッ!!!ナハティガル・クラウザー・フォン・シュトロハイム!!!!》

 

《宇宙の父にして全神話最強の主神!その誇り高き強さはGOD OF GOD!!絶対不変の最強伝説、ゼウスッッッッ!!!!》

 

儂の自己紹介をレフェリーが行う。しかし、人間の身でありながら「最強の戦乙女」という異名は驚きじゃな。灰色の髪を一つに束ね、儂を見上げる少女が最強と持て囃されている。

 

「「神器錬成」」

 

そうレギンレイヴと唱える人間の両手にグローブが現れる。先程の人間もブーツという武器なのか分かりにくいものを使っていたが、こやつもその類いと見るべきか…。

 

「先ずは小手調べじゃが、見えるかのぉ?」

 

「まあ、見えるよ」

 

亜音速のジャブを受け止めるでも避けるのでもなく、ただ普通に手のひらを叩きつけてきた。いや、これは掌打を使う格闘技じゃな。ホッホッホッ、中々楽しめそうじゃわい。

 

「オホーッ、儂の黄昏流星群も見切るか!?それならこうじゃ!!」

 

人間が足払いを跳んで避けたかと思えば顔面に膝蹴りがめり込む。及第点どころか百点満点の相手、こりゃあ本腰入れるとキツいかもしれん。

 

「フゥーーーッ、光輝唸掌ッ!!」

 

儂は諸手の突きを受けて、闘技場の壁まで吹き飛ばされる。まさか人間がビームを撃つとは予想外、まさに吃驚仰天の光景じゃが、神器錬成の恩恵とは思えんのう……。

 

「お前さん、何か隠しとるな?」

 

「いきなりだな。確かに隠していることはあるが、今は関係ないことだ。あと極力話し掛けてこないでくれ、私は妊娠したくない」

 

「ん?ん?すまん、ちょっと聞こえんかった」

 

「私は妊娠したくない。だってあのゼウスだろ?節操なしに女性を追いかけて、沢山の子供を人間との間に作った全神話最低最悪の変態神として有名な」

 

そう少女が言い終えた瞬間、観客席のあちらこちらで爆笑する声が聞こえる。参ったのう、儂ってそんなやつだと思われてるのか。いや、まあ、全部事実じゃから否定することは出来ないけど。

 

あまりの恥ずかしさに体を悶えさせ、ゆっくりと閉じ込めるように筋肉を圧縮する。この人間を倒すには、この筋肉は重すぎる。

 

「うわあ…」

 

「今度は見切れんぞ?」

 

亜音速を越える速度、たとえ見切れたとて人の身では辿り着けぬりょうい────。なぜ、儂は空を見ている。なぜ、儂が地に倒れている。

 

「生憎と音を置き去りにするのは私も可能だ。なぜなら私こそ最強であり、私こそ人類の到達点だ。神如きが勝とうなど傲り過ぎだ」

 

「成る程、成る程、儂は何かしら受けたわけじゃな。差し詰めそれがお前さんの切り札をのぉ?」

 

「いいや、私のとっておきはこれだ」

 

ゆっくりと腰を落として、儂を見据える。

 

「私のこの手が真っ赤に燃えるゥ!お前を倒せと轟き叫ぶ!!ばぁぁぁく熱!!!」

 

人間の右手が燃焼する。より熱く、更に熱く、儂を倒すために燃え上がる。レギンレイヴさえ焼き尽くす程の熱量に魂が震える。

 

「これは応えねば無作法……」

 

ゆっくりと右手を後ろへ引き絞る。渾身の一撃、この人間を倒すためだけに全身全霊の力を込める。たとえ我が力に拳が砕けようが、そんなものはどうでもいい。ただ、こやつを打ち砕く事だけ考える。

 

真・神の右拳VSゴッドフィンガー

 

「「オオォオォォォオッ!!!」」

 

儂の最大最強の一撃を止めるでもなく避けるでもなく奥義で押し返すつもりか。あまり神を嘗めるでないぞ、この小娘がっ!!

 

「神を嘗めるでないわ、人間ッ!!」

 

「そっちこそ人間嘗めんな!!」

 

どちらも一歩たりとも後退せず、お互いの奥義をぶつける。ブリュンヒルデ、これか。これがお主の存命させよと言った人類の底力か!?

 

「私の未来を、友の生きる道を、神様なんぞに好き勝手されてたまるかあぁぁぁぁ!!!」

 

ああ、これで仕舞いじゃのう。ナハティガルの放った奥義を受け、儂の身体は骨の髄まで焼かれてしまった。もはや立つことも出来んが、中々どうして人間の面白さを知れた。

 

「ブリュンヒルデ、これで二連勝だ!」

 

そう倒れ伏す儂に背中を向けて拳を突き上げる姿はヘラのように美しく見えた。ホッホッホッ、いかんのう。まだまだ現役で行けそうじゃ……。

 

 

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