とあるオタク女の受難(終末のワルキューレ編)。   作:SUN'S

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第6話(ブリュンヒルデ)

いよいよ第三試合────。

 

私は磐石の連勝を築くために彼女というとっておきのエースカードを選んだ。本人は強くないと言っているが、その強さは選び抜いた十三人の上位に入る実力者だ。

 

《偉大なる大海の覇者、荒れ狂う波は我が怒りと知れ!彼こそ真なる海の王ポセイドンッ!!》

 

《首斬判決の執行者、全ては世のため人のため悪を断ち切る一刀なり!公儀介錯人拝郷月乃ッ!!》

 

「それ、もう昔の話なのよ?」

 

「…………」

 

やれやれと困ったように溜め息を吐いた拝郷月乃は首を傾かせ、ポセイドンの突きを紙一重で避ける。見えなかった、たとえ見えてもあんなもの反応出来ない。だが、やはり、やはり、やはりだ、拝郷月乃は対応している。

 

かつてポセイドンの戦った資料を見せた。たったそれだけでポセイドンの動きを読みきっている。トール、ゼウス、どちらも彼女達の活躍で半死半生の状態まで追い込んだ。

 

このままポセイドンを倒せればイケる。

 

「いきなり不意打ち。これ、フロストさんもブリュンヒルデさんも仕える神様を間違えてるんじゃないの?」

 

そんなことを言いながら拝郷月乃はフロストが神器錬成によって変わった日本刀を初めて構えた。九つの剣撃、神速の突き、間合いの掴めない斬り付け、そのすべてがポセイドンを切り刻む。

 

「拝郷月乃、やっぱり強い!」

 

「イケる、今回もイケる!」

 

「…雑魚が…」

 

そうポセイドンの声が聞こえた瞬間、拝郷月乃を取り囲むように突きの嵐が降り注いだ。死んだ、死んだの?私は拝郷月乃の安否を確認するため、身を乗り出して闘技場を見る。

 

拝郷月乃は辛うじて死んでいない。いや、彼女はフロストを庇うように突きの嵐を凌いでいる。そんな自分の命よりもフロストを優先するなんて……。

 

「月乃、後退るな!」

 

「ママに何すんだコラァ!!」

 

「私の親友に槍向けるなんて許せないわね」

 

「神でも殺す」

 

観客席の一部で暴れる男女を見る。やはり人類の最後を決める試合ということもあり、彼女の夫と娘も駆けつけ、異質な存在感を放つ女性も来ている。

 

ポセイドンの槍が止まる。

 

それと同時に彼は闘技場を囲っている海水に投げ飛ばされる。傷だらけの拝郷月乃の左手、フロストとは違う別の刀が握られている。

 

志念抜刀法&震える者

 

二刀流(これ)、卑怯とは言わないわよね?」

 

「……」

 

コツコツと靴底を鳴らして闘技場へ戻ってきたポセイドンに問う。拝郷月乃はそれを無言の肯定と受け取ったのか、ゆっくりと構え直す。

 

時雨蒼燕流 葦名無心流 飛天御剣流

八葉一刀流 無明神風流 神祇無窮流

黒神一刀流 浮羽神風流 一文字流

 

私の知り得た拝郷月乃の流派その全てが注ぎ込まれた途絶える事の無い最速の剣撃、それを真っ正面から受け止めるポセイドンの強さに焦りが生まれる。

 

無理やり繋ぎ合わせて放たれた斬撃がポセイドンに切り裂き、ゆっくりと二人同時に倒れる。立て、立て立て立て立て立て立て立て立ちなさい!

 

「はあ、かなり痛いけど。勝ったわよ」

 

ポセイドンは倒れたまま拝郷月乃が起き上がり、フロストに支えられながら帰ってくる。三連、三連勝してる!このまま四勝出来れば人類存命できる。

 

 

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