とあるオタク女の受難(終末のワルキューレ編)。 作:SUN'S
△月∈日
次は私の番ということもあり、ブリュンヒルデが車椅子を押してくれる。私の戦う相手はどんな神様なんだろうか。
そう考えたりしながら闘技場に入る。ロンドン、それもちょうど私の生きていた時代と変わらない建物が並んでいる。少し気持ちが落ち着いてきた。
ゆっくりと戦車で現れた神様へお辞儀をする。いつ如何なる時も礼節は大切なものであり、たとえ相対する者であっても毅然と立ち振る舞う。
しかし、彼は不満げに私の車椅子を見ながらブリュンヒルデに文句を発するヘラクレスに首を傾げる。このような姿ではダメなのだろうかと観客席へと視線を移す。
どこか不安げに私を見ているけど。私の家族は安心したように笑っている。それではヘラクレス、私と戦って頂けますか?
私は逃げも隠れも致しません。
私の発言に非礼を詫びるヘラクレスの戦士としての矜持なのか。最初から一切の躊躇を捨て、力任せに棍棒を振り落としてきた。私が避けたことに驚いているヘラクレスへ本を向ける。
この地面は『泥濘』のように沈み、貴方を地中深くまで『落とす』でしょう。そう私が宣言するとヘラクレス様は地面に脛まで浸かり、泥濘から跳ねるように脱出した。
流石はヘラクレス。
私の小細工なんて力業で跳ね返せる。本当に自由に動けて羨ましく思う。それでも私の子供達の為にも偉大なる戦士である貴方を倒す。
△月¶日
単純な大振りのように落とされる棍棒を何処にでも売っている日傘で受け止め、そのまま反動を利用してヘラクレスから離れる。
私の体で受け止めきれるとは思えない破壊力。ブリュンヒルデが私を選んだ理由が、ようやく分かってきたかもしれない。
ただ、それを私は出来るだろうか。
ゆっくりと歩いてくるヘラクレスに微笑み。ゆっくりと本を構えて、私と一緒に戦うために万年筆へ神器錬成してくれたフレックを握り締める。
私の強さは『文章』その物、いくらヘラクレスとはいえ逃れることは不可能。そして、これより書き記すのはか私達が勝つ為の道筋だ。
△月#日
私の書き記す『文章』はフレックの能力によって具現化し、ヘラクレスの肉体へと染み付く。それは殴られた現実となり、それは蹴られた結果となり、ヘラクレスを確実に追い詰める。
周囲の悲痛な叫び声、子供の泣く声、神々の叫ぶ声、そのどれもが私の筆を鈍らせる。ああ、どうして私の相手がヘラクレスなのだろうか。
そう考えてしまったせいか。
ヘラクレスの振るった棍棒によって吹き飛ばされ、私は時計台へと叩き付けられた。あの人の叫ぶ声が聞こえる、親友の悲鳴が聞こえる。こんなに辛くて苦しいのに立ち上がろうとしてしまう。