現行ライダーが面白かったら、それは二次創作への片道切符。
もう書かずにはいられない。
ギーツが久しぶりに刺さる面白さでいてもたってもいられなくなったので短編的に書いてみました。
みんなもギーツを見よう!
1 鳴動F/ はじまりの日
――微かに光が差し込む。
かび臭い空気が隙間から逃げていき、新鮮な空気が入り込んでくる。
「……ぁ」
隙間から手を伸ばす。苔むした岩と岩の間からわずかに手が出る。
入口に蓋をしていた大岩を無理やり動かし、出口をこじ開ける。そしてやせ細ってしまった体を無理やり押し込んで外へ滑り出る。
うっそうと茂る木々の間から優しく光が漏れている。
狐のような耳は出る時に付いた苔で汚れ、小麦色の髪は無造作に伸びて目元を隠している。着物にはカビが生え、所々擦り切れている。足元にはこれまた狐のような尾の先端が見えている。
その姿は男と言われれば男に見えるし、女と言われれば女に見える。
どちらともいえない、中性的な姿だった。
そんな狐人間は、穴から這い出たもののそこで力尽き、うずくまる様にして動かなくなった。
「――大丈夫?」
どれほど立ったことだろうか、子供の声で意識が戻る。
ゆっくりと顔を上げる。
逆光のせいか、どのような人相なのかは定かではなかった。しかし、声色から心底心配しているように見えた。
「……」
狐人間はゆっくりと首を振った。
「えっ……と、どうしよう……っそうだ、水飲む?」
と、子供は背負っていた鞄を下ろし、中をまさぐりだす。
「はい」
差し出された筒を振るえる手でつかみ、飲み口をゆっくりと口につける。
一体いつぶりだろうか、久しぶりの水はとても甘く感じ、喉を伝わり体中に染み入っていった。
「……」
飲み終わると、それを子供へと返す。
――誰かを呼ぶ声が聞こえる。
「っごめん、今行くよ! ――じゃ、僕行くね! そうだ、お母さんに“ヒーロー”を呼んでもらうよっ!」
――化け狐だっ!
――村からでていけっ!
「……」
狐人間はゆっくりと首を横に振った。人を呼べばきっと、自分を化け物だと追い立てることだろう。
そして自分を助けた彼も母親から責められるに違いない。
「えっ……そっか。山の入り口はあっちだから、迷わないように気を付けてね」
子供は手を振りながら母親の下へと帰っていく。
これでいい、と狐人間は自分に言い聞かせる。
自分は呪われた存在だ。まるでと狐が交わって生まれたかのような容姿に、人々は恐怖し追い立てた。その結果、化け狐として封印されてしまった。
ゆっくりと回り始めた頭は、そんなネガティブな記憶を思い出し始める。
「……!」
ふと、足元を見ると一枚の紙が落ちている。
子供が飲み物を出すときに落としてしまったのだろう。
拾い上げると、それはきらきらと輝いていて――
――――
――
打ち捨てられた神社。
誰も参拝することもなく、気に掛ける者もいなくなったそこは自然に飲み込まれ、その形を既に保ってはいない。唯一、鳥居のようなものが残っていることで、そこが神社であったことを示していた。
朽ち果てた鳥居の前で、狐人間は一人佇んでいる。
その手にはかつての恩人が忘れていった紙――No.1ヒーローの描かれているカード。
何度も取り出して眺めたせいか角は取れて丸まり、煌めくような加工は剥げかかっている。
「――おめでとうございます!」
そんな狐人間の下に、一人の人間が姿を現す。
白と黒を基調とした衣装に身を包み、黒い髪をポニーテールにしている女性。彼女は黒と黄色を基調とした箱を手に微笑んでいる。
「今日からあなたは“仮面ライダー”です!」
女性は狐人間へ歩み寄り、箱を手渡す。
狐人間はそれを受け取ると、蓋を外す。中にはベルトのバックルのようなものと、狐のアイコンが描かれた“IDコア”が収められていた。
「ああ……知ってるよ」
狐人間はそれを見ると、不敵に微笑んだ。
――――
――
この世は生まれながらにして平等ではない。
それはこの世界の子供が齢4歳にして知るこの世の現実。
「……ジャー」
「……っ!」
緑谷 出久は和服を着た骸骨のような怪物から死に物狂いで逃げていた。
――――
事の発端は数分ほど前。
HRでの“些細な”出来事で彼は幼馴染の爆豪に絡まれていた。
爆豪は緑谷のノートを奪い取り爆破、それを窓へと投げ捨てようとしていた。爆豪の取り巻きはケラケラ笑いながらそれを見ていた。
『――っ!? んだこの壁』
一陣の風が吹き、窓へと向かっていた爆豪の眼前に見えない壁が出現する。
爆豪が眉間にしわを寄せながらそれを叩くと、うっすらと赤い有刺鉄線のようなものが浮かび上がる。
『ジャー……』
教室の入り口から現れたそれは、不気味な声を上げながら刀を構えていた。
『ぇ……』
『ヴぃ、ヴィラン……?』
個性と呼ばれる異能が生まれて久しい現在、何らかの力を持った人間に襲われる可能性とは常に隣合わせだった。
そんな環境で育った彼らでさえ、目の前の異形には面食らってしまっていた。
纏う雰囲気は明らかに人間とは異なり、口から漏れる声はどの言語とも一致しない不可解な“鳴き声”だった。
『ジャ』
『うぐっ!』
『あっ!』
爆豪の取り巻き二人は謎の異形によって命を奪われる。
その様子を呆けてみていた緑谷と爆豪は、ようやく自分たちが命を狙われていることに気づく。
『ッ逃げろデク!』
異形は次から次へと教室へなだれ込んでいた。爆豪は手のひらを爆ぜさせながら異形たちへと飛び込んでいく。
『で、でもっ!』
『無個性の雑魚なんざいたって邪魔なんだよッ! はよヒーロー呼んで来いッ!』
目の前で戦う幼馴染を助けようと思った緑谷だったが、異形に振るわれた刀によって頬を斬らしりもちをつく。
たらりと垂れた血に触れ、傷口がジワリと痛み始め現実を思い知る。
『わ、わかった!』
緑谷は腰を抜かしながら教室を飛び出し、誰もいない廊下を駆け抜けていく。
――背後から幼馴染の断末魔が聞こえたように感じたが、気のせいだと思うことで正気を保つ。
『嘘……だろ?』
校舎の外へと出た緑谷は、変わり果てた街の様子を見て愕然とする。
空には城のような浮遊する生命体が飛び、街では和服を着た骸骨の異形が人々を殺しつくしていた。
守ってくれるはずのヒーローもまた、命を奪われており、ヒーローオタクの緑谷は亡骸の纏うコスチュームを見て血の気が引いた。
頼みの綱のヒーローはもういない。
『助けて……オール、マイト』
口をついてあこがれのヒーローの名が出るも、遠い存在である彼が都合よくあらわれることもない。
『ジャー』
代わりに現れるのは、骸骨の異形。
『ひぃっ!』
反射的に緑谷は走り出した。
もう助からないかもしれない。
そんなネガティブな考えを頭から振り払いながら異形から逃げ出した。
――――
「はぁっ……はぁっ……」
「――ジャー」
緑谷は物陰へ隠れると、異形が自分を見失ったことを確認。
息を整えながらへたり込む。
「なんっ……なんだよっ……」
緑谷は気配を感じ、隣を向く。
そこには宙に浮かぶ洋服――どこかの学校の制服だ――があった。
「わっ!」
「ひっ!」
緑谷が後ずさると、浮かんでいた服もまた同じように後ずさる。
「な、なんだ人間かぁ……」
可愛らしい声が響く。
どうやら“透明になる”個性のようだ。
「ごっっごごごめんなさいっ!」
緑谷も動揺しながら謝る。
「ううん、気にしないで……よかったぁ……まだ無事な人がいて」
透明人間はほっと溜息をついている。
「私、葉隠 透。あなたは?」
「みっみみ緑谷 出久、です」
女子との接点があまりない緑谷は、ややテンパりながら答える。
透明人間――葉隠は、表情こそ見えないものの、クスりと笑っているように見えた。
「……あーあ、折角の修学旅行だったのに、散々だよっ」
葉隠はしょんぼりと肩を落としてるように見える。
「っだ、っ大丈夫だよッ! きっと、ヒーローが……」
と、緑谷はさっき見たヒーローの亡骸を思い出し語勢が落ちる。
「そうだよねっ……!」
葉隠もまた、何かを思い出したのか落ち込んでしまっている。
「――ジャー」
再び異形の声がする。
見つかってしまったのだ。
「っこっち!」
緑谷は葉隠の手を引いて物陰から飛び出す。
「っ!」
だがしかし、二人は既に囲まれてしまっていた。
「っ緑谷くん……個性は?」
「……ない、です」
「嘘ッ! 無個性っ!?」
戦って切り抜けようとしたのか、葉隠は緑谷の個性を尋ねるも、彼は個性がなかった。
世界人口の2割が個性を持たない現在、彼ら世代の割合でいえば非常に少なく、ない方が珍しかった。
「っなら――!」
意を決した葉隠は制服の上着を脱ぎ始める。
「わっ! な、なな」
「私が囮になるからっ! その隙に逃げてっ!」
上着を脱ぎ捨て異形へと投げつける。全身が透明な葉隠が服を脱ぐと、完全に視認することが不可能となる。
「でっでも――」
緑谷が躊躇っていると、どこからか光の矢が飛んでくる。
「ジャッ!」
それは次々と異形を撃ち抜いていく。
「……シロクマ?」
緑谷は矢の飛んできた方向を見ると、そこにはシロクマのような被り物をし、ボウガンを構えるシルエットが見える。
「――うらぁッ!」
続けて近くの建物の壁が破壊され、そこから牡牛のようなシルエットが飛び出す。それはチェーンソーのような武器を振り回し、異形をなぎ倒していく。
「う、ウシ……?」
下着を手にした葉隠は呆然とそれを見つめる。上半身は完全に裸で視認することができず、スカートだけが浮かんでいる状態だった。
「ん、スコアゲット……」
異形たちをなぎ倒した牛は、手元の端末を確認している。
「――君たち、けがはない?」
シロクマは周囲を警戒しながら緑谷たちの下へと駆け寄る。
「は、はい」
「……ここは危険だ――ついて来て」
――――
――
『――なんて硬さっ』
異形たちのを囲い込む壁――“ジャマーエリア”の外側では、ヒーローたちが中の人々を助けようと模索していた。
各々の必殺技で壁へと攻撃し、破壊を試みるも、傷一つつかなかった。
その様子をモニターで眺める狐人間。ソファに深く腰掛け、ゆっくりとコーヒーを飲んでいた。
「――くつろいでいてよろしいのですか?」
白いスーツを纏った初老の男――ギロリはコーヒーを注ぎながら問いかける。
「うん、切り札はここにあるからね」
狐人間はバイクのスロットルを思わせるバックルを掲げ、不敵に微笑む。
ギロリは一礼すると、盆を持って引き下がる。
「でも……そろそろ行かないとまずい、かも?」
『――SMAAAAASH!!!!』
映像から一際大きな声が響く。
そこには、ジャマーエリアの壁を破壊するNo.1ヒーロー、オールマイトの姿が映し出されていた。
――――
――
ビルの屋上。
「――よし、ここなら“ジャマト”も来ないだろう」
シロクマ人間は周囲に異形たち――ジャマトがいないことを確認するとベルトに装填されたバックルを外す。
サバイバルスーツを身にまとったオールバックの男性。両腕には消防車のホースを思わせる器官が付いている。
緑谷はその顔と個性から正体に気づく。
「っあ、あなたは……“消防ヒーロー”の」
「ははっ……俺みたいなマイナーヒーローを知ってくれてるのは純粋にうれしいな」
男は恥ずかしそうにはにかんでいる。
「職業柄、君たちのように“巻き込まれてしまった”人たちは放って置けなくてね」
「――ふん、どうだか」
牛人間もまた、バックルを外して変身を解除する。
暗い茶色のセミロングヘア、額には牡牛のような2本の角、中性的な顔立ちは性別が判然としなかったが、体格を見るに女性なのだろう。
「“救助ポイント”目当てなんじゃないの? そんな“雑魚バックル”じゃ逆転されるのは目に見えているし」
「……君と一緒にしないでくれるかな」
反論を受けた牛人間はそれを鼻で笑うと、上着を脱いで葉隠へと差し出す。
「へ?」
「着なよ、風邪ひくよ」
「あっ……」
上裸であることを思い出した葉隠は慌ててそれを受け取ると、恥ずかしそうに羽織った。
「……あの、あれはいったい何なんですかっ!?」
緑谷は空を浮遊している城のような異形――スラグフォートレスジャマトを指差して叫ぶ。
その問いに、事情を知っている二人は目を伏せて黙り込む。
「何かの個性なんですかっ!? ほら、僕壁みたいなもの見ましたし! っもしかしてここは個性で展開されたフィールドの中であの化け物はその個性の副産物で――いやもしかしたら共犯者の可能性もあるのかな。複数犯だとしたら壁を作ったヴィランを斃せば解決するのかな」ブツブツブツ
「……この世界は、じきに終わる」
早口でまくし立てる緑谷に嫌気がさしたのか、牛人間は眉間にしわを寄せながら吐き捨てた。
「世界が、終わる……?」
絶望的な言葉に、葉隠は絶望したような表情を見せる(見えないが)。
「っ世界が終わるって」
「悪いけど説明してる時間はない」
爆発音が響き渡る。
爆風が吹き荒れ、ジャマトの体の一部が吹き飛んでいるのが見える。
『――SMAAAAASH!!!』
その声は、少年少女にとっては希望の一声だった。
名実共にNo.1のヒーロー、オールマイト。
彼がこの封鎖されたエリア内に突入してきたのだ。
「「オールマイトっ!!」」
緑谷と葉隠は嬉しそうに――特に、大ファンの緑谷は目を輝かせながらヒーローの活躍を目にしようとビルの淵へと駆け寄る。
オフだったのか、シャツにスラックスのラフな服装だ。しかしその筋骨隆々とした肉体と、勝利のVサインを示す角のような髪は見まごうことは無いだろう。
オールマイトは街にはびこるジャマト達をなぎ倒しながら突き進んでいく。
「……このままじゃ全部やられるな」
――SET
牛人間はバックルを再びベルトに装填、牛の仮面の装甲を身にまとう。
――READY FIGHT!
「せいぜい、死ななないように気を付けなよ」
そして屋上から飛び降りた。
消防ヒーローは自分本位な牛人間の行動にため息をつく。
「やれやれ、そんなにポイント稼ぎが大事か!」
その直後、スラグフォートレスジャマトが緑谷たちの方向へ頭部を向けた。
「ぅっ見つかった! ――君たち、逃げなさいっ!」
――SET
消防ヒーローは個性を使い、スラグフォートレスジャマトの触手をけん制しながらバックルを装填する。
緑谷と葉隠は弾かれたように逃げ出し、ビルを駆け降りる。
地上では和装のジャマト達が待ち受けている。
オールマイトによって殲滅されているはずのそれらは、いまだに数が衰えることを知らなかった。
「っこっち!」
ジャマトのいない方向をいち早く発見した葉隠は緑谷の手を引きながら駆けていく。
「ジャー」「ジャー」
四方八方からジャマトが飛び出してくる。ホラー映画ならばスリル満点で手に汗握る展開だが、当事者からすればたまったものではない。
(大丈夫っ……オールマイトが、オールマイトがッ!)
「あっ!」
葉隠は躓き転倒してしまう。緑谷は立ち止まって振り返るも、すぐ近くまでジャマトが迫っていた。
「私のことはいいから逃げてっ!」
緑谷は激しく頷きながら数歩駆け、再び振り向いてしまう。
その視線の先では、上着を振り回しながらジャマトに抵抗する葉隠の姿が。
彼女は透明人間の個性、その表情は緑谷には見ることはできなかった。
しかし彼は、目と目が合ったように錯覚した。
その瞳は――
――気が付けば体が動いていた。
(っ思い出せっ! シンリンカムイの必殺技! 先制必縛)
「ジャッ」
緑谷は鞄を投げ捨てジャマトをけん制、腰の入っていない拳でジャマトを殴りつけた。
生まれた隙をついて葉隠の手を取ると、今度こそ振り返らずに走り出す。
「っどうして!?」
「君が――助けを求めている
「えっ……」
逃げようとする二人だったが、前方からもジャマトが現れ、挟み撃ちされてしまう。
万事休すである。
「っ……!」
緑谷はせめて葉隠だけでも助けようと前に出る。
「ジャー!」
――エンジン音が響き渡る。
「ジャー?」
「ジャッ!」
赤いバイクが駆け抜けてくる。それは前輪をウィリーさせながら疾走し、ジャマト達を薙ぎ払う。
運転手はさらにスロットルを吹かし、後輪を軸に回転、ジャマトの集団を薙ぎ払う。
「――ふぅ……間に合った、かな?」
服装はシロクマ人間や牛人間同様、サバイバルスーツ。ヘルメットを外すと狐のような耳と小麦色の髪が露になる。その顔は中性的で、男と言われれば男に見えるし、女と言われれば女にも見える。腰からはこれまた狐のような尾が生えており、まさに“狐人間”と呼ぶのにふさわしい容姿だった。
「ジャー」「ジャー」「ジャー」「ジャー」
乱入者にジャマトはいきり立ち、各々の武器を構える。そんなジャマトの周囲に狐火が浮かび上がる。
「コン♪」
狐人間が指を鳴らすと、狐火が爆ぜてジャマトが吹き飛ぶ。
「……す、すごい」
「かっこいい……」
緑谷と葉隠は鮮やかにジャマトを斃した狐人間を畏敬のまなざしで見つめる。
「ふふ……かっこよかったよ、少年」
狐人間は不敵に微笑みながら緑谷の肩を叩く。
「え、いやあれは体が勝手に動いたというか」
「真の英雄は謙遜するものと相場が決まっている。案外、君もヒーローに向いてるかもね」
狐人間は懐からリボルバー銃のようなバックル――“マグナムバックル”を取り出す。
「期待してるよ――
「次の世界って……」
狐人間の言葉に緑谷は再び愕然とする。
彼らはきっと
「そんな、本当に世界が終わっちゃうなんて」
葉隠は泣きそうな声でつぶやく。がくりと膝をついてうなだれている。
「大丈夫さ。恐竜が絶滅したって、この世界は終わらなかったんだから」
「恐竜って……」
遥か昔のことを引き合いに慰めてきた狐人間に呆れる緑谷。
「終わらせちゃおう、こんな世界」
――SET
「“新しい世界”を作るために」
狐人間はバックルをベルトへ装填。手で狐の影絵を作り、目の前へと突き出す。
「変身」
指をスナップし、リボルバーの引き金を引いた。
――MAGNUM
狐のような仮面と装甲が形成され、装着される。
右手には“マグナムシューター40-X”が装備される。
「さ、ここからがハイライトさ」
――READY FIGHT!
――――
――
「すごい……」
狐人間は両手の銃を巧みに操り、ジャマトの集団を撃破していく。刀の道筋を正確に見切り、突き出される槍を躱し、放たれた火縄銃の弾丸を紙一重で避ける。
翻弄するように回転するジャマトの攻撃を難なくよけ、カウンターに銃撃を放つ。
華麗な戦いを見た緑谷は、散らばっていた荷物からノートを探そうとするも、幼馴染に爆破されてしまっていたことを思い出す。
ほんの小一時間前の出来事なのに、まるで数年前のような出来事に思えた。
「――SMASH!」
戦いに見とれていた緑谷と葉隠は突如として吹き荒れた暴風に顔を覆う。
「コフッ……遅くなって済まない。だがもう安心してくれ!」
画風の違うその巨体は、誰もが知る“平和の象徴”。
その背中は恐怖におびえる市民を安堵させ、徒に力を振りまく悪をひるませる。
「 私 が 来 た ! 」
No.1ヒーロー、オールマイトの登場である。
彼は眼前で戦う狐人間を一時共闘する“味方”と判断、標的を上空のスラグフォートレスジャマトへと切り替える。
「オールマイトっ……世界が、終わっちゃうって」
「安心しなさい少年少女よ! そんなこと――」
不安に震える緑谷を励ますと、オールマイトはぐっと深く膝を曲げる。
「――私がさせないッッ!」
刹那、アスファルトが波打ったかのように錯覚する。ロケットのように飛び立ったオールマイトはスラグフォートレスジャマトへ向かって飛び込む。
「DETROIT――」
オールマイトは拳を大きく引き、渾身の右ストレートを放つ。
「――SMAAAAAAASH!!!!」
その攻撃は、余波で天候を変えるほどの威力を秘めていた。
攻撃をまともに受けたスラグフォートレスジャマトは体を大きくのけぞらせ、その装甲をへこませる。
「……ひゅー……さすがはNo.1だ」
続けざまに放たれている攻撃を目にした狐人間は脱帽、思わず口笛を吹く。
「でも――力押しじゃ“城”は落とせない……チュッ」
――SET
狐人間はバイクのスロットルのようなバックル――“ブーストバックル”を取り出すと、それに口づけしマグナムバックルと交換する。
――BOOST!
バックルのスロットルを吹かすと、新たにバイクのエンジンを思わせる装甲が出現、上半身に装着される。
狐人間は停車していたバイクに乗り込むと、スラグフォートレスジャマトへと走り出す。
「ッ!」
オールマイトは触手攻撃を両腕を交差させ受け止め、大きく後ろへと跳ぶ。入れ替わるように狐人間の乗るバイクが駆け抜けていく。
バイクは瓦礫を利用して飛び上がり――
――ゴクン……ゲェェェェプ
「飲み込まれちゃった……」
意気揚々と走り出しながらもジャマトに飲み込まれ、葉隠はぽかんとしていた。
しかし緑谷は、その意図に気づく。
「あの姿……城……っまさか!」
『!?』
刹那、スラグフォートレスジャマトの体が爆ぜる。
喉、首裏、胸部、そしてその背中に乗っている城、それらが次々と崩壊していく。そして断末魔の悲鳴を上げながら墜落していく。
「――城ってのは、内側から崩れていくものさ♪」
崩れた城からバイクが飛び出し、緑谷と葉隠の近くまで走ると停車する。
バイクから降りつつ再びマグナムバックルをベルトへ装填、右側のブーストバックルと同時に起動させる。
――DUAL ON
白の装甲が足に装着される。
――GET READY FOR "BOOST & MAGNUM"!!
「よっと」
続けてベルトのロックを解除、半回転させる。
――REVOLVE ON
狐人間の体が浮かび上がり、その体の上下が入れ替わる。頭部はさっきまで股間だった場所へ、両腕は足へと入れ替わる。
「ええええええっ!?」
「ひっくり返っった!?」
およそ人体の構造上あり得ぬ挙動に二人は驚き腰を抜かす。いかに個性社会に毒されていようとも、体の構造を無視するような動きにはたまげてしまうのだ。
二人の驚きなど意に介さず、狐人間は再びバックルを起動させる。
――BOOST TIME!!
マフラーから発せられた推進力を生かし、狐人間は飛び上がる。バイクは狐のようなロボへ変形し、その後をついていく。
スラグフォートレスジャマトは最後の力を振り絞って浮かび上がり、それを迎撃しようと試みる。
――MAGNUM BOOST GRAND VICTORY
「はぁっ!」
放たれたライダーキックは、スラグフォートレスジャマトの体を貫き、爆散する。
街中を闊歩していたジャマト達もまた、それに呼応するかのように爆散していった。
――――
――
「少年少女! けがはないかい?」
目下の脅威が去ったことでオールマイトは次の警戒対象を狐人間へと切り替える。
緑谷と葉隠を庇うように立つと、狐人間へと対峙する。
「だっ大丈夫ですッ!」
「あの……あの人は悪い人じゃ」
恩人を庇おうとする葉隠を、オールマイトは手で制する。
「それはわかっているさ。でも彼は“ヴィジランテ”だ。プロヒーローとして、彼を手放しにたたえることはできない」
ヴィジランテ。
ヒーローとして活動するための資格を持たないながら、自警団のように活動する“違法な”ヒーローだ。
狐人間はもちろん、ヒーローライセンスなど持っていない。
故に、彼(?)はヴィジランテと認定されるのだ。
「それに、君はこのヴィランたちの事に詳しいようだ。話を聞かせて欲しいが」
オールマイトの体から蒸気が噴き出している。
時間がないとばかりに詰め寄るオールマイトを、狐人間は手で制する。
「ちょっと待って」
「?」
「よっと」
直後、ベルトから勢いよくブーストバックルが発射される。
それはオールマイトを軽く小突き、空の彼方へと吹き飛んでいった。
狐人間はそれを見届けるとマグナムバックルを外し、変身を解除した。
「私は“ギーツ”。“仮面ライダーギーツ”」
「ギーツ……君は一体何者だ?」
オールマイトの問いかけに、狐人間――“ギーツ”はクスりと笑う。
「……忘れちゃった方がいいよ、そんなこと」
「ッ」
ギーツが空を指差すと、突如として巨大な鐘の音が響き渡る。
「うっ……なん、だ?」
「耳が……!」
緑谷と葉隠もまた、その鐘の音に思わず耳をふさぐ。
「だって、もう――“新しい世界”が始まるんだもの」
逆再生するかのように瓦礫が元の場所へと戻っていく。
緑谷はその光景が信じられず、思わず目をこする。
そして再び目を開いた瞬間――
『――私がー起きた!』
「んがっ!」
緑谷はベッドの上で目を覚ます。鳴り響く目覚まし時計を止め、大きなあくびをする。
寝起きだというのに心臓はバクバクと脈打っている。
「なんだ……夢か」
彼はホッと胸をなでおろし、再び横になり夢を思い返す。
「……あれ、どんな夢だったっけ?」
――――
――
「わっ……!」
葉隠もまた、自分のベッドの上で跳ね起きる。寝汗のせいか、パジャマはぐっしょりと濡れてしまっていた。
「はぁ……心霊スポットなんて行かなきゃよかったなぁ……」
彼女は
そう、今見た怖い夢など――
「あれ? どんな夢だったっけ……?」
確かに怖かった。
自分がホラー映画の主人公になったように思えた夢だったが、何一つ思い出せない。
ドレッサーの方をみても、変わらず
(でも……なんだか嬉しかったことがあったような)
その答えを、彼女が思い出すことは無かった。
――――
――
「――それじゃ、進路希望調査票は今週末だから忘れるなよ~」
帰りのホームルームが終わり、緑谷は鞄にノートをしまう。
(よし、帰ったら今朝見た事件をノートに……あれ?)
彼はノートが切れかかっていることに気づく。
「あれ……この間新しいの買ったはずなのに」
不思議な感覚に首をひねっていると、クラスメイト達は早々に帰宅し、教室にいるのは彼一人だけになってしまう。
「――おめでとうございます!」
「わっ!」
突如として聞こえてきた声に緑谷は思わず体を跳ねさせる。
振り返るとそこには、黒と黄色のボックスを手にした女性が立っていた。彼女は黒と白を基調とした服を身にまとい、長く黒い髪をポニーテールにまとめていた。
「厳正なる審査の結果、あなたは選ばれました!」
女性は緑谷へボックスを手渡す。
「ひ、人違いなんじゃ……」
「いいえ、間違いではありませんよ♪」
わかりやすく動揺している緑谷の様子を見た女性は、可笑しそうに笑っている。
緑谷は恐る恐るボックスの蓋を外す。中にはベルトのバックルのようなものと、狸のアイコンが描かれた“IDコア”が収められていた。
「今日からあなたは“仮面ライダー”です!」
激しい既視感。
緑谷はIDコアへ手を伸ばし、それに触れる。
――その瞬間、彼の脳裏にあふれる“前の世界”の記憶。
教室で謎の生命体“ジャマト”に襲われ、命からがら逃げだしたこと。自分と同じような境遇の少女と共に逃げたこと。命の危機をオールマイトと“仮面ライダーギーツ”に救われたこと。
「っ夢じゃ……なかったんだ!」
全てを思い出した緑谷は、再び訪れるであろう“世界の危機”を予感しその身を恐怖で振るわせるのだった。
――――
――
どこかのビルの屋上。
狐人間――“エース”は一人佇んでいた。
服装はサバイバルスーツから高そうな三つ揃えのスーツへ。髪は丁寧に整えられ艶やかに輝いている。首元には白く長いストールを巻き付けている。
中性的なその容姿は、狐の耳と尻尾のおかげで神秘さに拍車をかけていた。
「――君は、一体どこにいるんだい?」
エースは古びたカード――オールマイトの描かれたれヒーローカードを手につぶやく。
衰弱しきった自分を、化け狐と忌み嫌われていた自分を助けてくれた“僕”。命の恩人である彼を、エースはずっと探し求めていた。
「……必ず、見つけてみせるよ」
エースは懐へカードをしまうと、眼下の街を見渡す。
「ようこそ、“私の世界”へ……」
原作キャラ生存(シロー)
続きは?
-
読みたい!
-
ギーツの展開次第
-
別に・・・
-
私に任せろ!