【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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お待たせしました。やはりオリジナル展開は時間がかかりますね。筆の速さは原作ありきですねぇ……
そういえば、今日の放送でジャマト語の対応表がチラ見せされていましたね。あの~東映さん、それ、公開してくれませんかねぇ……
一応解読サイトが立ち上がっていますが、正解を知りたいものです。

※施設名が一部間違っていたので修正しました。














13 異変Ⅳ/命がけ鬼ごっこ

――――

――

 

「――その名も“嘘の事故や災害ルーム”、通称USJ!」

 

 ヒーロー基礎学は時に学内の施設で実習訓練を行う。

 今回は災害救助訓練のために特別ルームへと赴いていた。

 ヒーロー科B組の面々は某テーマパークを思わせる略称に心の中でツッコミを入れる。

 担当教師の13号から授業の意義を説明され、担任のブラドキングが引き継ぐ。

 

「よし、まずは施設の説明をしつつ――」

 

 直後、中央の広場に黒い靄が広がる。

 そして中から現れた明らかに“堅気ではない”雰囲気を纏った者たちが姿を現す。

 

「っ13号! 生徒の避難を!」

 

 ブラドキングはそれらにいち早く反応、個性を発動し向き直る。

 

「あれは“演習の一部”じゃない――本物のヴィランだ!」

「「っ!?」」

 

 生徒たちの間に戦慄が走る。

 万全のセキュリティが敷かれているはずの雄英に侵入者が――しかも明確な悪意を持ったヴィランがやってきているのである。

 思わずパニックになりかけるもそこはヒーロー志望、即座に頭を切り替え13号の指示に従って動き始める。

 

「さあ皆さんこちら――っ!?」

 

 13号は生徒を先導しつつ出口へ向かうも、突如として生徒と分断するように不可視の壁が出現する。

 

「えっ……なに、これ?」

 

 男子の一人が見えない壁に触れると、それは赤い有刺鉄線のような模様を浮かびあがらせる。

 

「――おや、どうやら退路が断たれてしまったようですね?」

 

 戸惑う彼らの下へ黒い靄のようなヴィラン――黒霧が現れる。

 

「ですがこちらとしては好都合。私の役目はっ」

 

 黒霧の言葉は鋼鉄のような個性を持った男子とサイドテールの女子――鉄哲と拳藤によって妨げられる。

 

「俺らが黙ってやられるタマだと思ったか!?」

「危ない危ない……生徒とは言え優秀な金の卵――故に散らして――嬲る」

 

 生徒たちが靄につつまれ、その半数が分断されてしまう。

 

「皆さんッ! この――なんだこの壁はっ!?」

 

 壁の向こう側の13号は個性を発動し壁の破壊を試みるも、それは一切傷つくことは無い。

 

「――キョトズ!」

 

 そして更なる不幸が残された生徒たちを襲う。

 警官のような恰好をした異形――ジャマトが出現し、残された生徒たちを捕らえていく。

 

「なっ?」

 

 警官ジャマトはヴィランである黒霧をもひっとらえるとどこかへ連れ去っていく。

 

「っ――ボクじゃこの壁を破れない……! オールマイトさんを呼ばないと」

 

 13号は自力での解決を諦め救援を呼びに走る。

 壁の内側では、ヴィランとB組生徒がまとめて警官ジャマトへ捕らえてしまっているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

 そんな大事件が起こっているとはつゆ知らず、緑谷たちは何事もなく平穏に授業を受けていた。

 

 ――♪

 

「ヘイ! 授業中はマナーモードにしとけよっ!?」

「わっす、すみませんっ!」

 

 緑谷はスパイダーフォンからの通知に焦りを覚える。

 今の通知はデザイアグランプリ開催の知らせだった。間の悪いことに授業中に第2回戦が始まってしまうのである。

 ちら、と周囲を伺えばエースも葉隠も同様に通知を受け取っていたようで焦ったような表情を浮かべている。

 

コン♪

 

 エースの指が鳴る。

 授業中にも関わらず立ち上がり、大きく伸びをした。

 だが板書をしているプレゼントマイクはその様子に一切気づいていなかった。

 

「さ、二人とも。私の個性で認識阻害をかけた。抜け出ても大丈夫♪」

 

 彼女(?)はデザイアドライバーを掲げて微笑んでいる。

 立ち歩いても気づかれていないのは個性の効果によるものだった。

 

「っありがとう!」

「よかった! 仮病使おうか悩んだよ……」

 

 三人はこっそりと授業を抜け出すと、デザイアドライバーを装着、神殿へと赴くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「――ジャマーエリアの出現を確認しました。デザイアグランプリ第2回戦――“ケイドロ”ゲームを開始します♪」

「え、ドロケイじゃなく……?」

 

 ツムリの宣言したゲーム名に糸成は不思議そうに首をかしげる。

 

「僕の所はケイドロだったけど」

「私の所はドロケイだったよ?」

「……昔はケイドロで通してました」

「……どっちでもいいだろ」

「ワシはケイドロと言っていたなぁ」

「ドロケイがメジャーでしょ?」

「…………」

 

 ゲームをどう呼ぶかで参加者たちがざわつき始めるのをツムリが咳払いで制する。

 

「“ケイドロ”ゲームです。よろしいですね?」

 

 ツムリは微笑みながら確認しているも、その目は笑っていなかった。

 

「……ではルールの説明に入ります。エリア内には無数の“警官”ジャマトと檻を守る“看守”ジャマトが確認されています――」

 

 エリア内には巻き込まれた一般人が警官ジャマトによって捕らえられてしまっている。彼らをエリア四方に設置された“脱出ポイント”まで誘導し脱出させるのがプレーヤーの目的となる。

 ケイドロと同様、檻に捕らえられた人々は解放することができ、解放すると一時的にジャマトを無力化することができる。

 ただし、プレーヤーが逮捕されてしまった場合はその時点で脱落となってしまう。

 

「――一般人を全員救出し終えるとゲームは終了です。獲得したポイントが最多のプレーヤーには、今後のゲームを有利に進めることができる“スペシャルアイテム”が配布されます♪」

 

 ツムリがモニターに表示させたのは、スロットを思わせる煌めくバックル。

 救助や捕らえられた人々の解放は得点となる。一見すると見つからないように行動すれば労せず勝ち抜けることが可能なルールだが、1位は報酬が得られるため積極的に動く方が後のためになるだろう。

 

(エリア外に誘導する救出ポイントよりも檻からの解放ポイントの方が高い……1位になりたかったらリスクをとっても解放に動いた方がいいのか)

 

 緑谷は得点表から作戦を組み立てる。

 見つからないように一般人たちを救出すれば低リスクでポイントを稼ぐことができる。だが檻から参加者を解放すれば大量得点を獲得可能であり、かつジャマトの無力化も可能だ。しかし解放に動けば必然的にジャマトに見つかり捕らえられてしまうリスクが跳ね上がる。いわばハイリスクハイリターンな行動となる。

 ルール上、警官ジャマトも看守ジャマトも斃すことは可能だが倒しても無限に湧き続ける――基本的に戦うことはリスクと言えるだろう。

 

「それでは皆様の端末へジャマーエリアの情報を転送します♪」

「っ!」

 

 送られてきたマップを見てプレーヤーたちは戦慄する。

 

「これ……もしかして、雄英?」

 

 ジャマーエリアの外側、そこは多くの日本人の見覚えがある場所。

 雄英高校――その敷地の一角が今回のジャマーエリアとなっていた。

 

「それでは――ジャマーエリアへ転送、ゲームスタートです♪」

 

 驚く参加者たちを無視し、ツムリは強制的にゲーム開始の宣言をしてしまう。

 エリアへ転送されながら緑谷は焦りを覚える。

 

(っまずい……雄英ってことは、()()()()()()()()()()()()!)

 

 彼の焦りをよそに、ゲームは静かに開始されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

『――生徒を閉じ込め蹂躙するとは……許しがたいッ!』

 

 ゲームマスター――ギロリはモニターに映るオールマイトを静かに見つめる。

 

「そうか、雄英の敷地内であれば……君が出てくるか」

『DETROIT SMASH!』

 

 オールマイトの右ストレートによってジャマーエリアの壁が破壊される。

 

「だが、既にそれは対策済みだ。ゲームの邪魔はさせない」

 

 意気揚々と中へ乗り込むも、そこはもぬけの殻だった。

 

『っなぜだ……? なぜ誰も……』

 

 戸惑うオールマイトの映像を閉じると、異空間として切り離されたジャマーエリアを投影した映像を呼び出す。

 

「名無しの狐……君は()()()()()。悪いがここで脱落してもらうとしよう」

 

 ギロリは鋭い瞳を映像の中のエースへ向ける。

 ただの連勝ならば特に問題はなかった。面白味のない展開だがデザイアグランプリは問題なく運営できる。だが彼(?)はゲームについて探りを入れ始めた。このまま勝ち抜けられてはゲームの核心部分にまで触れられかねない。

 故に、エースに勝たせてはならない。

 公平に願いを叶えなければならないという“ルール”がある以上、今回エースを勝たせてはならないのである。

 

 

「パンクジャック……君の働きに期待しているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

 

「――きゃっ!?」

 

 土砂ゾーン。当初はヴィランたちが潜み、飛ばされてきた生徒たちを嬲ろうと待ち構えていたエリアの一つ。しかしジャマトの出現によってその状況は一変していた。

 警官ジャマトは潜んでいたヴィランたちを全て捕縛、転送されてきた生徒も連れ去ろうとしていた。

 

「テキョ!」

「はなしてっ!」

 

 キノコを思わせるコスチュームの女子――小森はジャマトに担ぎ上げられながらも必死で抵抗している。

 その様子を物陰に隠れてみているのは西洋騎士のようなコスチュームの男子――青山。

 彼は口からもれる吐息すら押さえようと手でふさぎながらも、見つからないよう必死に気配を消していた。

 

「ジャッ」

「っいた……っ!」

 

 突如として苦しみ始めるジャマト。投げ出された小森は痛そうに顔を顰めるも銃のようなサポートアイテムをジャマトに向かって突きつける。

 

「デ……デガピ……」

「……すっスエヒロダケちゃん、可愛くないし怒られるから本当はやりたくないけど」

 

 小森 希乃子の個性は“キノコ”、文字通りキノコの胞子を放出することのできる能力。一見すると平凡な個性だが、放出できる胞子は千差万別。中には猛毒を持つキノコの胞子すら放出が可能な凶悪な個性である。

 彼女がジャマトに対して使ったのは“スエヒロダケ”の胞子。犬や人の器官に寄生する毒キノコ――人ではないが呼吸器官を有していたジャマトにとっても猛毒なキノコだった。

 

「テ、テルク!」

「ぁぐ」

 

 警官ジャマトは苦しみながらも小森の腹を殴りつけ、細い首を締め上げる。

 彼女は苦悶の表情を浮かべながらもサポートアイテムで胞子を振りまく。同時に拘束を振りほどこうとジャマトの手を殴りつけている。

 

「……っ!」

 

 事態を陰から見つめる青山の額には大きな脂汗が浮かんでいる。恐怖で顔からは血の気が引き、体の震えは止まるところを知らなかった。

 

「ぁっ……く、んっ!」

 

 青山は一瞬、小森と目が合う。

 苦しみで歪み、意識が朦朧としているのか焦点の定まらない虚ろな瞳。恐怖におびえる彼のことなど一切映されていない瞳。

 

「ん~~~~っ!!」

 

 気が付けば青山の体は動いていた。

 物陰から飛び出し腰のベルトから――正確には彼のへそだが――レーザーを放つ。

 

「キョジ……ラ?」

「っは! ……ぇほっ!」

 

 ジャマトのターゲットは青山に切り替わり、窒息させられかけていた小森は解放される。

 

「ひぃっ……!」

 

 青山は思わず腰を抜かしかける。ジャマトと目(?)が合い及び腰になる。

 

「ロサイズクロカカチャ!」

 

 警官ジャマトは腰の警棒を取ると青山へ突きつける。

 

「っネ、ネビル――」

 

 ――BULLET CHARGE

 

 彼のへそが煌めいた瞬間、弾丸が警官ジャマトを撃ち抜いた。

 

「ジャッ――!」

 

 弾丸を喰らったジャマトは爆散する。

 

『――よかった、間に合った!』

 

 代わりに現れたのはタヌキのような仮面の人物――タイクーン。

 彼はマグナムシューターを構え周囲を警戒しつつ青山と小森の下へ駆け寄る。

 

「ひっヴぃ、ヴィラ――」

『ちっ違うよ! 僕は味方だ! 君たちを助けに来たんだ……!』

 

 タイクーンは首がちぎれそうなくらい横へ振っている。

 

「――ラサラチャ?

 

 身の潔白を説明しようとするタイクーンだったが、他の警官ジャマトが騒ぎを聞きつけて集まりつつあった。

 

『っここは危険だ……まずは安全な所へ!』

 

 タイクーンは小森を抱きかかえると、青山を連れて脱出ポイントの方へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

 場所は変わり水難ゾーン。

 その名の通り水場での救助訓練を行うためのエリアだ。

 

「――っ!?」

 

 そこへ転送されてきたのは拳藤と鉄哲の二人。突如として現れた湖に二人はなす術もなく沈んでいく。いくら泳ぎの心得があったとて、着衣なうえに突然の入水。そう簡単に適応はできないものだ。

 

「お~来た来たw」

 

 待ち受けるのはいかにも水場を得意としていそうな異形型のヴィラン。半魚人のような見た目の彼は水中でもがく二人を前にほくそ笑んでいる。

 

「(くそっ! せめて拳藤だけでも――)」

 

 鉄哲は咄嗟に個性を発動し抵抗しようとするも、体が鋼鉄となったことで体の浮力が変わり一気に底まで沈んでいく。

 拳藤は視界の端でそれを追いかけつつ、目の前に迫る半魚人へ向き直る。

 彼女の個性は“大拳”、手のひらを巨大化させる能力を持つ。当然巨大化した拳を扱うための膂力は兼ね備えているが、水中では強みも半減してしまう。

 

「いいなぁ♡ 俺、水中で苦しむ女見るの好きなんだ」

「っ!?」

 

 半魚人は拳藤の両腕をがっちりとホールドし、一切の抵抗を封じる。息がもたなくなってきたのか、口の端から出る気泡の量が増えつつあった。

 

「大丈夫、一回じゃ終わらせないからさ♡」

「――っ!」

 

 肺が空気を求めて暴れだす。一刻も早く酸素を取り込もうと水でも構わずに飲み込もうと喘ぐ。

 次第に視界がブラックアウトし始め、意識が朦朧とする。

 

「じゃ、そろそろ――」

 

 ――ARMED SCREW

 

 無機質な電子音が水中に響く。

 続けざまに響くのはスクリュー音。

 

「ん?」

『もうちょっと耐えなよ!』

 

 ――SCREW STRIKE!

 

「ゴハァッ!?」

 

 半魚人は乱入者によって蹴り飛ばされ、解放された拳藤はすぐさま水上へと引き上げられる。

 

「――ごほっ……んっ……はぁっ、た、助かった」

 

 飲み込んでしまった水を吐き出しつつ、彼女は満足に息が吸えることのありがたみを思い知る。手足は痺れ、頭は酸欠気味で朦朧としている。

 

「無事か!? 拳藤!?」

 

 引き上げられていたのは船の上だった。一足先に鉄哲が救出されており、苦しそうに呼吸する拳藤の背中をさする。

 

「な、なんとかね……」

 

 数瞬の後、水中からオレンジのクマの仮面の人物――パンクジャックが飛び出す。

 

「ひゅぅ……小型のバックルも、状況さえ噛み合えば使いやすい」

 

 パンクジャック――物間はスクリューバックルを外し、変身を解除する。

 シークレットミッションによる報酬は必ずしも強力なバックルであるとは限らない。だがこの状況に限って言えば、この上ない報酬であったと言えるだろう。

 

「……それにしても、入学早々デザイアグランプリ(こんなこと)に巻き込まれるなんて――君たちも運が悪いねえ!」

 

 物間は嫌味ったらしく拳藤と鉄哲へ語り掛ける。

 もしも物間が()()()()()()()()()()()世界があれば、彼らはクラスメイトとなり面識があったかもしれない。

 だが生憎とこの世界では完全な初対面、嫌味ったらしいその態度は第一印象最悪だった。

 

「味方……で、いいんだよな……? お前、何者なんだ?」

「君の人生の脇役、かな?」

 

 拳藤の問いかけに物間は気障な笑みを浮かべて答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「――せいやっ!」

 

 聖拳の拳が目にもとまらぬ速さで警官ジャマトを打ち抜く。

 

「お嬢さん、怪我はないかい?」

「……ん」

 

 傍らで呆然としているのは某光の巨人を思わせるコスチュームの女子――小大 唯。彼女はどこからともなく現れた老人を前に困惑していた。

 黒い靄のヴィラン――黒霧によって倒壊ゾーンへ転送された彼女を待ち構えていたのは、ヴィランの一味ではなく警官ジャマトの一団。しかし彼女にとっては命を狙うヴィランと大差ない。個性を駆使して抵抗しようとするも、警官ヴィランの数に押されて捕縛される寸前だった。

 そんな時に颯爽と現れたのは謎の老人――出水 聖拳。飄々とした表情のまま、彼は瞬く間に警官ジャマトを追い払ってしまったのだ。

 

「……あなた、もしかしてヴィラン?」

「はっはっはっ! あんな奴らと一緒にせんでもらえるかね?」

 

 小大の問いを笑い飛ばす聖拳。しかしその目は笑っていなかった。

 

「――ジャ!」

 

 ホッとしたのもつかの間、警官ジャマトの増援が集まってくる。

 いくら警官ジャマトを斃そうともその数が減ることは無い。むしろ戦闘は新手を集め続けてしまう悪手でしかないのだ。

 

「まったく……次から次へとっ!?」

 

 聖拳はそのことに気づかず拳を構えるも、腰に激痛を感じ膝をついてしまう。

 

「あっ……あたたた……こ、腰が」

「……大丈夫?」

 

 小大は迫りくる警官ジャマトを前に腰のポーチへ手を伸ばす。彼女の個性は“サイズ”、物体の大きさを自在に操作できる能力だ。腰のポーチには小物が収めてあり、戦闘時に巨大化させることで武器に変えるのだ。

 彼女は謎の老人を“悪人ではない”と判断、彼を守ろうと決意したのだ。

 一見するとその表情は無だったが、よく見れば顔が強張っているのが分かる。

 

「ビビテウ!」

 

 警官ジャマトの一体が警棒を振りかざすと、他のジャマト達も警棒を片手に突撃する。

 

「……ん」

 

 小大はポーチの中からネジを数本取り出して構えるも、いざ個性を使うと考えた瞬間13号の言葉がフラッシュバックする。

 

 ――『しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる“行き過ぎた個性”を個々が持っていることを忘れないでください』

 

「……っ!」

 

 彼女の個性は物を巨大化する。例えば、道端に落ちている小石を巨大な岩石へと巨大化させヴィランを()()()()()こともできる。

 サイズ調整を間違えた結果、目の前のジャマト(ヴィラン)を殺してしまったら?

 如何に相手が非道な相手だとして、その命を奪っていい道理はない。

 戦闘訓練で人に対して個性を振るう意味は理解したつもりでいた。しかし、いざ本番で個性を使うとなると怖気づいてしまう。

 もし調整を間違えてしまえば()()()()()()()()()()()()()()()()()? と。

 

(でも、やらなきゃ……!)

 

 涼しい表情の裏で彼女の心臓は痛いくらいに拍動していた。視界は歪み、自然と呼吸は荒くなってしまう。

 調整を間違えてはいけない。

 ヴィランを殺さず、しかし行動が不能となるような大きさに。

 間違えて圧殺してはいけない。

 そう考えれば考えるほど吐き気がするほど頭が痛くなってきていた。

 

「――いたた……ったく人が腰痛だというのに」

「ジャ?」

 

 緊張していた小大の後ろから聖拳がぬるりと前に出る。

 そしてポカンとしているジャマト達の目の前で柏手を一つ打った。

 

「ッ!?」

 

 ただの猫騙しに過ぎない。

 相手の隙を生み出すための一時しのぎだ。

 しかしながら――気配を読み、油断した一瞬に最大の音波を放てば、それはただの一時しのぎではなくなる。

 それはさながらすごい猫騙し(クラップスタナー)と言えるだろう。

 

「そいやっ! ……あたた」

 

 硬直しているジャマトを聖拳は蹴り飛ばすも、腰が痛むのか苦悶の表情を浮かべている。

 

「……ぇ」

「やれやれ……あまり気は乗らないが」

 

 腰痛で動けないと思っていた小大はそんな聖拳の様子に目を丸くしている。

 彼は腰をさすりつつドリルバックルを取り出し、ベルトへ装填する。

 

 ――SET

 

「変身……よいしょっと」

 

 ――ARMED DRILL

 

 フクロウを仮面にドリルのような装備――ケイロウへと変身した。

 突然の“変身”に小大は目を丸くしている。

 

「さて――続きと行こうか」

 

 ケイロウはドリルのような武器――レイズドリルを投げ捨てると再び拳を構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 山岳ゾーン。

 そこでは転送された生徒が貞操の危機に陥っていた。

 

「ぐっ……ひ、卑怯……ですぞ」

 

 獣のような個性の男子――宍田は襲い来る強烈な眠気に必死で抗う。

 共に転送されてきた大きな角が特徴的な女子――角取は殆ど意識を手放してしまっていた。

 

「あら~ワタシの催眠に抗おうなんてカ・ワ・イ・イ♡」

 

 対峙するヴィランは紐の付いた五円玉を持ち、腰を軟体動物のようにくねらせる。角刈りの頭に唇には真っ赤な口紅、そして男性らしい筋肉質の体は着ているタンクトップを引きちぎらんと躍動している。

 

「ほ~ら。だんだん眠くなーる……

「うっ……」

 

 ヴィランは五円玉を揺らしながら催眠術のように揺らす。もちろん()の個性は催眠。別に五円玉を揺らさずとも個性は発動できるが、あえてそうしているのは演出のためなのだろう。

 

「わ、私が眠れば……角取氏を守れない、ですぞ……!」

「やだん♡ やっぱりあなたの方が好みだわ♡」

 

 ヴィランの言動に宍田は寒気がした。貞操を狙われているのが自分であることに気づき戦慄した。

 

「――あの~お取込み中失礼します」

「だれっ?」

 

 ヴィランは突然の乱入者にいきり立ち、声の方を向く。

 

「名乗るほどのものではありません。どうやら、自分、皆さんを脱出させなくてはいけないらしくて」

 

 腰にはデザイアドライバー、デザイアグランプリの参加者が纏うサバイバルスーツを身に着けている。死んだ魚のような目に目の下には濃い隈、白髪交じりの髪はオールバックになっている。

 その正体はデザイアグランプリ参加者の一人、不眠(ねむらず) (すすむ)である。

 

「あら~ダウナー系のおじさん、ワタシだぁいすき♡ やっぱり貴方から食べちゃいましょ――ほ~らだんだん眠くなーる……

 

 彼の容姿はヴィランのお眼鏡にかなっていたのか、襲う対象として切り替えられる。

 五円玉を揺らし催眠をかけようとするも、不眠は不思議そうにその様子を見つめている。

 

「ちょっ! なんで催眠がかからないのよッ!」

「え、っと……もしかして自分を眠らせようとしてます?」

 

 ――SET

 

 不眠はだるそうにハンマーバックルをベルトへ装填する。

 

「実は自分――()()()()()()なんですよね」

 

 ――ARMED HAMMER

 

 不眠はヤイバへと変身、レイズハンマーでヴィランの頭を殴って気絶させる。

 彼の個性は“不眠”、文字通り眠ることのできない個性であり、彼の体は眠らずとも死なぬように適応しており、さながら人の人生の倍を生きているようなものだった。

 

「そ、そんな馬鹿な……」

 

 ヴィランは己の個性の通用しない相手に驚愕しつつ、意識を手放す。

 

「……あれ、これって人に向けて使っていいんでしたっけ? ま、いいか」

 

 ヤイバは気絶したヴィランを抱えると意識を朦朧とさせている宍田の頬を叩く。

 

「あの、自分、これから脱出ポイントへ案内するんで、そこの寝ている子を連れてついて来てください」

「……っ承知、いたした」

 

 宍田は眠そうな眼をこすると、角取をお姫様抱っこしヤイバの後を追いかけていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 セントラル広場。

 そこには看守ジャマトが守る檻が鎮座しており、ヴィランとヒーロー科B組の生徒が中に捕らえられていた。

 

「あれが檻、かぁ……」

 

 それを遠目に伺っているのは葉隠と糸成の女子二人組。

 こっそり近づこうにも、看守ジャマトは数体おり全方位を抜け目なく監視していた。

 

「レバーを引けば、解放できる……のかな?」

 

 糸成は檻の上部に据え付けられたレバーのようなパーツを指差す。

 看守ジャマトの目を盗んで動かしに行くにはいささか目立ち過ぎている場所に設置されていた。

 

「う~ん……そうだ! 私が裸になれば見えないしこっそり解放できるかも?」

「えっ……恥ずかしく、ないの?」

 

 葉隠のヒーローコスチュームは手袋にブーツだけなのだが、そのことを糸成は知らない。

 

「……ていうより、ベルトって外しちゃ……だめ、だよね?」

「あ、そっか……」

 

 デザイアドライバーはいわば参加証。神殿以外では外すことはできないのである。

 

「うん、だから……私が、囮になるよ!」

 

 言い終わるや否や、糸成は中央広場へと突撃する。

 

「あっちょ――」

「お、おーい! こっち、だぞ……っ!」

 

 葉隠は慌てて止めようとするも時すでに遅し、糸成は大きな声で看守ジャマトの気を引き付けていた。

 

「ジケジャ!」

 

 看守ジャマトは糸成の姿を見つけると首に下げていた笛を吹きならす。

 すると他の看守ジャマトや警官ジャマトが集結し始める。

 

「うふふ……来た来た。変身♡」

 

 ――ARMED PROPELLER

 

 糸成はレターに変身すると嬉々としてジャマトと戦い始める。第1回戦で怯えて戦えなかった彼女とはまるで別人のようだった。

 

「あーもう! 変身!」

 

 ――BEAT

 

 葉隠もナーゴに変身し加勢する。

 

「……あはっ! あははっ!」

 

 レターは狂ったように笑いながらジャマトと戦う。まるで戦うことを楽しんでいるかのようで、捕まった人々の開放など考えてもいないようだった。

 

「待って! そんな戦い方じゃッ!」

 

 ナーゴは無茶な戦い方のレターを助けようと必死にビートアックスを振るうもジャマトの勢いは止まらない。明らかに囮作戦は失敗と言える。

 しかしレターはそんなことお構いなしに戦い続ける。

 

「ジャッ!」

 

 看守ジャマトの警棒がレターのIDコアを傷つける。許容以上のダメージを受けたことで変身も解除されてしまう。

 

「あっ……わ、私……死んじゃ、う」

 

 糸成は呆然と両手を見つめるも、即座にその顔に狂気の笑みが浮かぶ。

 

「死ぬ……ううん、今、私は――生きてるっ!」

 

 彼女は五指から糸を放出し看守ジャマトの首へと巻き付ける。

 

「糸成さんっ!」

 

 ナーゴは必死に手を伸ばすも、その声はもはや糸成には届いていない。

 戦いの愉悦に魅入られた人間はもはや戦うことしか考えない。息絶え心臓が止まる瞬間まで、戦うこと以外に考えることはできないのだ。

 

「あは、ははっ! 私っ死っ……でも、楽しっ! あはははははははは――っ!」

 

 ――MISSION FAILED...

 

 手をどれだけ伸ばそうとも、その手はただ空を切るだけだった。

 どれだけ守りたいと願っても、その手はどこにも届いていなかった。

 

「そんな……」

 

 ナーゴはがくりと膝をつく。共に行動していたのに暴走を止められず、その命が消えてしまった。彼女の胸に無力感が広がっていく。

 

「スビビイズクロカカチャ」

 

 看守ジャマトと警官ジャマトは次の標的をナーゴに定める。彼女はビートアックスを構えるも、その切っ先は揺らいでおり、まともに戦えるような精神状態ではなかった。

 

「っ……!」

 

 ナーゴはビートアックスを振りかぶり、ジャマトに向かって特攻していく。一時撤退して体勢を立て直すのが得策であるが、彼女に正常な判断はできていなかった。

 ジャマトと交錯する刹那、人影が割って入りナーゴを無理やり戦線離脱させる。

 

「――自棄になっちゃだめだ」

 

 人影――ギーツはジャマトを振り切ると物陰でナーゴを下ろす。

 

「失ったものばかり数えるな。まだ残っている物を数えるんだ――私たちには、まだやるべきことがあるでしょう?」

「……でも、助けられなかった」

 

 ナーゴは変身を解除し、膝を抱えてうずくまる。

 

「私が止めてあげなきゃいけなかったのに……私が、ちゃんと助けてあげなきゃいけなかったのに」

「……傲慢な考えだね」

 

 べそをかいている葉隠にギーツは冷たく言い放つ。変身が解除され、露になったエースの表情はどこか悲しそうだった。

 

「私たちに助けられる人間には限りがある。全てを助けられるなんて傲慢な考えは捨てた方がいい」

「でも……!」

「理想を通していいのは、勝った人間だけさ」

「っ!」

 

 葉隠は涙を拭うとポン、と拳で腹を叩く。

 

「……私、頑張る。全部は無理でも、助けられるだけ助けるっ!」

「ふふ。さすがはヒーローの卵」

 

 足音が響く。

 二人は反射的にバックルを構えるも、相手が味方側(プレーヤー)であることに気づき安堵のため息をつく。

 

「お前、誰かとつるむようには見えなかったが……人は見かけによらないもんだ」

 

 現れたのはペストマスクのようなものを身に着けた男、治崎。

 彼は値踏みをするようにエースと葉隠れを観察している。

 

「君の方こそ、一匹オオカミにふさわしいと思ったんだけどな」

「そうでもない。こう見えてもまとめ役の仕事をしているもんでな」

 

 治崎は頬を掻きつつ答える。一見すると隙だらけに見えたが、その意識は抜け目なく周囲を伺い続けていた。

 

「……まあ、そっちの透明人間は及第点と言ったところか」

「私、葉隠 透って名前があるんだけど」

「そうか、済まなかった」

 

 不満そうに頬を膨らませる葉隠に一言だけ平謝りすると、治崎はエースに視線を向ける。

 

「このゲーム、ただ一般人を救出しているだけでは絶対に勝てない。いずれ誰かが檻に捕らえられたヤツを助け出さなきゃいけなくなる」

「……確かに、終了条件はエリアに捕らえられた全員の救出だね」

 

 ケイドロゲームは最終的に全員を脱出ポイントから外へと逃がす必要がある。

 ゲーム開始時点で半数近くの人が捕らえられてしまっており、彼らを檻から助け出さなくてはゲームは一生終わらなくなる。

 

「そうだ。だが個人で檻を解放するのは殆ど不可能だ。どう頑張ってもジャマト(奴ら)に見つかる」

 

 現実のケイドロでも泥棒サイドが仲間を救出するのは至難の業である。

 警官サイドは脱獄を許さぬよう常に油断なく檻を見張り、その監視をいかにかいくぐって仲間を助け出すか。それがケイドロの醍醐味ともいえる要素だろう。

 

「だから手を組まないか? 俺に策がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「クソッ! イライラする……俺の邪魔しやがって……!」

 

 ヴィランの一人――死柄木は苛立つように首をかきむしる。手のひらのようなマスクの奥の瞳は鋭く細められており、檻の外側を闊歩する看守ジャマトを睨み付けていた。

 

「なんなんだよこいつらは……! こんなバグがあるなんて聞いてないぞ……!」

 

 死柄木は檻に手を触れて個性を発動させる。彼の個性は“崩壊”、五指の触れた者を崩壊させることができる。

 檻はボロボロ崩れるもすぐさま再生してしまう。

 

「ツガポキョヅ!」

 

 看守ジャマトは警棒で檻を叩いて威嚇する。

 捕まっているという事実がたまらなく不愉快な死柄木は狂ったように首筋をかきむしる。

 

「おい黒霧……! お前のワープで出られないのかよ……っ!」

「申し訳ございません死柄木 弔。どうやらこの檻は空間を断絶しているようで」

「クソッ……!」

 

 まるで子供の癇癪のようだった。死柄木は歯が砕けそうになるほど強く歯ぎしりをしている。

 しかし急に冷静さを取り戻し、じっと檻の外側を見据える。

 

「仕方ない……ここからできる限り――めちゃくちゃにしてやろう」

「――おい! 何をするつもりだっ!?」

 

 共に捕らえられていたブラドキングに胸倉を掴まれながらも、死柄木は手の仮面の向こうでニヤリと笑う。

 

「……“脳無”、暴れてこい」

 

 問いに答えることは無く、彼は傍らにいた脳みそ男に指示を出す。

 

「――!!」

 

 脳みそ男――脳無は雄叫びを上げると檻を破壊し外へ飛び出していく。破壊された箇所はすぐさま修復され、そこから脱出することは不可能であった。

 

「平和の象徴を殺れないのは癪だけどよ……せめて生徒を何人かは殺して矜持を折っていかなきゃな?」

「っ!?」

 

 ブラドキングは死柄木を放すと檻に掴みかかり、檻の隙間から血液を飛ばそうとするも、何かに弾かれるように阻まれる。

 

「クソッ! クソッ! ここを開けろぉッ!!」

 

 ブラドキングの悲痛な叫びが響き渡る。

 その裏では死柄木の狂ったような笑いがこだましているのだった。

 

 

 

 

 















オリジナル、“ケイドロ”ゲームでした。ルールのまとめは次の話のあとがきにでも書きますね。
そして解読サイトとにらめっこしながらジャマト語を話させてみました。わかっていない部分もあるので自由自在に話させることはできませんね。
調べてみたら、どこかのヒーローショーで某破壊者がジャマト語を話していたとか。
……もやし、あんたジャマト語も話せるのかよ。

どう呼んでいましたか?

  • ケイドロ
  • ドロケイ
  • それ以外
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