【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

16 / 66
どうにか端折って体育祭を1話で終わらせようと思いましたが、しくじりました。さすがに分量がありますね。
完全にカットしてしまうことも考えましたが、それはそれで勿体無い気がしたので書いています。
確かに体育祭編、キャラ増えるし分量も多いので二次創作で挫折しがちなのも納得ですね。










16 幕間/雄英体育祭(予選):ハイライト

――――

――

 

 体育祭当日。

 全国放送されるとあって、控室で準備しているA組の面々はどこか緊張しているような面持ちだった。

 

「――狐火」

「うん?」

 

 そんな中、轟はエースに対して声をかける。

 

「……あの日、お前に言われたことをずっと考えてた」

 

 ――『半分の力で勝てるほど、世界は甘くない』

 

 戦闘訓練の日、エースが欠けた言葉。

 左から放出できる炎、それを使わずに戦っている轟に向けた挑発の言葉。

 

「正直、まだピンと来てねぇ……俺は親父の力(ひだり)使()()()全力でやってるつもりだ。お前にだって手を抜いてちゃいねぇよ」

「……で?」

 

 エースは挑発的に微笑んでいるが、その視線は轟を射殺すほどに鋭かった。

 火花散る展開にクラスメイト達は思わず息を飲む。

 

「だから――おまえには勝つ」

「……ふふ。期待せずに待ってるよ」

 

 クラスツートップ同士の宣戦布告は何とも言えぬ緊張感を生み出していた。

 誰もが気が引き締まる思いでいる中、二人の男子は全く別の想いを抱いていた。

 緑谷は重圧を感じ、歯を食いしばっている。

 爆豪はすっかりトップ争いから外れてしまい、口惜しさのあまり拳を握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 第1種目――障害物走。

 スタジアムを一周するコースに仕掛けられた様々な障害物をかいくぐりながら走る競技。

 持久力もさることながら、障害物を突破するために個性の扱いに長けている必要がある。参加資格は雄英高校1年生全員が有しているものの、普段から訓練しているヒーロー科の独壇場となることは目に見えている。

 

 ――開始の合図とともに入口が凍り付く。

 

 轟は凍結の個性でライバルたちの足元を縛りスタートダッシュを切ったのだ。

 

「っ相変わらずだね!」

 

 同時に、エースもその妨害を見切って躱している。個性を知っていることのアドバンテージを十分に生かしていた。

 A組の面々も同様に凍結を突破しており、後に続いている。

 

『――第一関門、ロボ・インフェルノ!!』

 

 そしてスタート直後、目の前に現れるのはヒーロー科入試で登場した0ptヴィランロボ。

 

「……あれが一般入試で出た仮想ヴィランってやつか」

 

 推薦入試組の轟は感心しているようにそれを見つめている。

 そんな彼の隣をエースは颯爽と駆け抜ける。

 

「お先♪」

 

 ヴィランロボになど目にもくれず、エースはその足元を縫うようにかけていく。個性を使って撃退することも可能だったろうが、そうしなかったのは温存しているということか。

 

「チッ……」

 

 轟は舌打ちしつつ個性を発動する。不安定な体勢でロボを凍結させ、後続を妨害しつつ突破する。

 

『――早ぇっ! A組狐火早くも第二関門到着ゥッ!!』

 

 プレゼントマイクの実況が後を走る者たちを大いに焦らせる。

 第2関門のザ・フォールは綱渡り。断崖絶壁に張り巡らされた綱を渡りながら向こう岸へと渡る、第一関門とは打って変わって技量を求められる障害だ。

 

「ほっ!」

 

 エースは苦も無く綱を歩く。まるで普通の道を歩くかのような気軽さに会場がどよめく。

 観戦していたヒーローたちは早くもエースに注目し、今後の職場体験やインターンで指名する候補の一人にカウントしている者達もいた。

 

「っどんなバランス感覚なんだ……っ!」

 

 続く轟も個性を駆使して綱を渡り切るも、既に差は大きくつけられていた。

 

「くそがっ!」

「――追いついたっ!」

 

 更に後続――爆豪と緑谷に追い上げられ轟は焦りを覚え始める。エースに勝つと宣言していながらそれ以外の者達にすら勝てないのでは話にならない。

 2位以下が混戦状態となる中、1位のエースは第三関門に到着していた。

 

 ――一面の地雷原、通称“怒りのアフガン”。

 

『――地雷の位置はよく見りゃわかる使用になってんぞ!!』

 

 プレゼントマイクの言葉の通り、地雷の埋まっている個所は地面がわずかに盛り上がっており観察しながら歩けば地雷を回避しつつ突破も可能だ。一発の威力が低いとはいえ、塵も積もれば山となる――受けないに越したことは無いだろう。

 そしてこの関門のキモは――早くに到着するほど多くの地雷に対処しなければならないという点。

 地雷を踏まぬよう牛歩で進めばたちまち後続に追いつかれ、かといて踏み抜く覚悟で駆け抜けてしまえば後続は安全なルートを走ることができるようになってしまう。

 

「さて――これは難関だね」

 

 エースは地雷原の入り口でぐっと膝をめげて踏み込む。

 徐々に彼女(?)の姿が変化し、より狐に近く変化していく。

 

「――ふぅ……はっ!」

 

 弾丸のような速さでエースが駆けだす。

 

『――ナニィ!? おいイレイザー! オメーんとこの生徒はどうなってんだァッ!? 狐に変身した狐火が地雷原を一気に駆け抜けるゥッ!!』

『……まあ、隠し玉ってとこだろうな』

 

 信管を踏み抜き、地雷が起爆する頃には既にエースは前に進んでいる。傍目に見れば彼女(?)が爆風を物ともせずに駆け抜けていっているように見えるだろう。

 

「クソッ! 後続に道作っちまうが――」

 

 それを見た轟は即座に地面を凍結させ自分用の通り道を作る。

 

「はっ! 俺にはこんなもん――関係ねぇっ!」

 

 もたついている轟を爆豪が抜き去る。彼は爆風を操り巧みに着地せぬよう空中を進んでいる。

 

「俺は()()()()()()()()()()()()()()! てめえらの目に存在焼き付けたらァッ!」

 

 トップ争いに加われなかったことがよほど癪に障ったのか、爆豪は殺気をにじませながらエースとの距離を縮めていく。

 

「――もう少し静かにしてくれないか? 耳鳴りがする」

「うるせぇっ! てめえの鼓膜なんざ破け死ねっ!」

 

 爆豪の個性は掌の汗腺が活性化するほど――つまり手汗をかくほどに威力を増していく。故にスロースターターだが、一度火がついてしまえばもう誰にも留められなくなる。

 エースは背後の爆風を感じ取りながらも、悲鳴を上げている心臓を思わず押さえつける。

 ()()をして地雷原を突破したはいいものの、体力を大幅に消耗してしまっていた。

 

「っ!」

 

 轟は目の前で先頭争いを繰り広げる二人の背を見て炎の個性(ひだりがわ)を使うことを一瞬検討してしまう。

 炎による推進力があればまだまだ追い抜く可能性を掴むことができる。それに凍結の使い過ぎでかじかんできた右の手足を温め再び万全な状態へ戻すこともできる。

 だが思い浮かぶのは父親(エンデヴァー)の顔。

 

「ッ!」

 

 歯を食いしばり、炎が迸りそうになるのを押さえる。

 

 ――BOOM!!

 

 そんな轟の横を通過するのは――緑谷。地雷を故意に爆破させ、その推進力を用いて一気に先頭へ躍り出る。

 

『――1位が目まぐるしく変わるデッドヒートッ! 喜べマスメディア! お前ら好みの展開だぜっ!?』

 

 ゴールまでは数百メートル。

 体勢的に爆豪がやや有利だった。

 

「――コン♪」

 

 エースの指が鳴る。

 

「――はっはぁ! どうだ見たか! 俺が一位だッ!」

「ッ……追いつけ、なかったか」

 

 ゴール手前、突如として爆豪と緑谷は走るのを止めてしまう。

 まるで()()()()()()()()()()()()()かのようなふるまいだった。

 

「ふふ♪」

 

 エースはそんな二人を脇目にゴールをくぐり、もう一度指を鳴らす。

 

「「っ!?」」

 

 個性による幻覚が解除され、爆豪と緑谷は自分たちがゴールの手前で立ち止まってしまっていることに気づく。

 

「――悪いなっ!」

 

 轟はその隙に差を縮め、2位でゴール。

 続けて個性ありの短距離ならばまだ分のある緑谷が3位、遅れながら爆豪が4位でゴールインした。

 

「わすっ……れてた……そういえば、エースさん幻覚見せられるんだった」

 

 緑谷は自分が何をされたか理解し、個性の使い方のうまさに舌を巻いた。

 端から個性を使って全員を惑わせれば労せず1位になることができていただろう。だがそんなことをすれば後の競技で全員から警戒されてしまう。

 故に、使うの必要最小限。警戒されない最小限のタイミングで発動することで最大限の効果を発揮させたのだ。

 

「ふふ……化かされてくれて、ありがと♪」

 

 他の面々も続々とゴールしていき、第2種目である騎馬戦に出場するメンバーが決定する。

 騎馬戦ではこの障害物走の順位に応じたptが割り振られ、そのポイントを奪い合い決勝トーナメントに進出するメンバーを決定させる。

 ポイントは順位の高かったものほど高く、組んだメンツの合計得点が高ければ高いほど他の騎馬から狙われやすくなる――まさに下剋上サバイバルだった。

 

『――そして1位に与えられるポイントは――1000万!!』

「……は?」

 

 バラエティ番組のようなやけくそな高ポイントに、さしものエースも頬を引きつらせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 第一競技のトップ通過者は1000万pt。

 それはトップヒーローとなった時にさらされることの疑似体験。トップともなれば常にヴィランから敵視され続け、その肩に乗る重圧は比べることもできないほど重い。

 2位とは大差の付いた配分はそのプレッシャーを疑似体験させるために用意した雄英の策略。

 

「ふふ。それにしても……1000万はやりすぎでしょ」

 

 騎馬を組むための時間は15分。

 組んだ者達の合計点数が持ち点となるため、何も考えずに組んでしまうと狙われやすい格好の的となってしまう。

 逆に言えば、使い勝手の良い個性を持っていようとも持っている得点が多くては組みにくい――エースは露骨に避けられていた。

 

「――1位の人! その立場利用させてくださいっ!」

 

 だからこそ組もうとする者もいる。

 サポート科の発目 明。彼女は自身の発明品(ベイビー)をより多くの企業へアピールすべく、1000万ptと言う注目度の高いエースに目を付けたのである。

 

「……成程。サポート科の人はサポートアイテムを使ってもいいんだね」

「ええ! ()()()()()()()私たちは自分の開発したサポートアイテムの持ち込みを許可されていますので! 私にはたくさんの発明品(ベイビー)が居ますのできっとお役に立ちますよ!」

「ふふ。私に使いこなせないアイテムはないよ♪」

 

 騎馬の最小人数は2人。少なくとも騎馬としては成立している。

 そして更に助けの手が伸ばされる。

 

「――エースさん、僕たちと組んで欲しい」

 

 緑谷と鳥頭の男子――常闇の二人がエースの下を尋ねる。

 

「……同情かい?」

「ううん。()()()()()()()()()()

 

 緑谷はエースと組みたい理由を語る。エースは身体能力もさることながら、相手の感覚を錯覚させることも可能だ。故に、1000万ptの鉢巻きを奪ったと思ったら失敗していた、終盤まで自分の鉢巻きを奪われていることに気づかない、など敵対していれば常にそのことを考慮に入れながら動く必要性が生まれる。

 しかし味方ならば攻防兼ね備えた強力な味方となる。

 常に狙われ続けようとも、既に組んでいる常闇もまたその個性で死角をカバーすることで防御性能が更に増す。

 つまり、この4人で組めば向かうところ敵なし。確実に勝ち残ることができる。

 

「ふふふ。そこまで言うなら仕方ない」

 

 緑谷に褒めちぎられ、エースは照れ隠しのようにそっぽを向く。彼女(?)の尻尾は嬉しそうに揺れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 15分後。

 各チームにポイントの書かれた鉢巻きが配布され、騎馬が組まれる。

 

「――うん。悪くない」

 

 騎手を務めるエースは銃のようなサポートアイテムを回転させつつ構える。弾種はゴム弾、装填数は10発。背には弾倉(マガジン)の交換をサポートするサポートアイテム。

 騎馬は前衛が緑谷、右翼が常闇、左翼が発目。死角になりやすい背後は常闇の個性である黒影(ダークシャドウ)が目を光らせている。

 

『――START!!』

 

 プレゼントマイクのカウントダウンで騎馬戦がスタートする。

 開始直後、エースの持つ1000万ptを狙いほぼ全ての騎馬が一斉に襲い掛かる。

 

「――当然1000万pt(それ)狙いだろッ!」

 

 B組の鉄哲は個性を発動させつつ鉢巻きを奪い取ろうと迫る。

 

「ああ……知ってるさ♪」

「っ!?」

 

 銃弾が鉄哲の鉢巻きをかすめる。元々外れやすいそれははらりと落ちていく。

 

「はっ!」

 

 それを皮切りにエースは次々と鉢巻きをかすめるように撃ち抜いていく。

 全弾撃ち切ると弾倉を排出――それに合わせ背後からアームが伸び、新たな弾倉を供給しリロードする。

 

「いいね! これは使いやすい」

「そうでしょうそうでしょう!? 私の発明品(ベイビー)はかわいいでしょう!?」

 

 エースによって撃ち落された鉢巻きを拾いおうと――あるいは奪い取ろうとし――多くの騎馬がバランスを崩しかける。

 

黒影(ダークシャドウ)!」

「アイヨ!」

 

 それを常闇のダークシャドウが次々と脇からかすめ取っていく。

 エースが鉢巻きを撃ち抜きダークシャドウが回収――効率的に鉢巻きを奪いつつ、相手に防御を強いる作戦だった。

 

「――撃てるモンなら撃ってみやがれッ!」

 

 そんな中真っ向から攻めてくるのは爆豪。

 彼は重力の枷から解き放たれたように空中を進み、エースへと飛び掛かる。

 

「へぇ。ウララカの個性か」

 

 爆豪の騎馬の右翼を担っているのは麗日。彼女の個性により重力を無効化された爆豪は爆破による推進力を巧みに使い空中戦を仕掛けてきたのだ。

 無重力化での動きは訓練せねばまともに動けない中、いとも簡単に適応しているのは、偏に爆豪のセンスの賜物だろう。

 

『――空中殺法ッ! あんなのアリかッ!?』

『テクニカルなのでオッケー! ただし、ずっと離れたままは反則とっちゃうわよ!』

 

 騎馬戦なのに空中戦はアリかというプレゼントマイクの指摘に対し、ミッドナイトは制限付きでOkの判定を下す。

 

「死ねぇッ!」

「ほっ!」

 

 飛び掛かる爆豪をエースは跳躍して躱す。

 そして始まるのは高度な空中戦。エースの背負うサポートアイテムは弾倉の交換だけでなく短時間の対空が可能となっている。

 

『スゲーっ! でもあれ騎馬戦じゃねーだろッ!?』

 

 プレゼントマイクは空中戦に驚いているも、確かに騎馬戦なのに騎馬に乗らないのはルール違反だ。

 

「ッ!?」

「おっと」

 

 爆豪の背にテープが貼りつき、エースの腕を発目の装備するサポートアイテムのアームが掴む。

 

「ッ何しやがっ」

「落ち着けって! このままじゃ反則とられるぞッ!」

 

 戦いを中断させられいきり立つ爆豪を赤髪の男子――切島がたしなめる。見れば主審のミッドナイトがイエローカードを準備しており、あのまま空中戦を続けていれば反則負けの可能性もあっただろう。

 

「チッ……!」

 

 爆豪は舌打ちしつつ余裕そうな笑みを浮かべるエースを睨み付ける。彼女(?)は常闇の回収した鉢巻きを首に装着している。

 

「おい! 今度は騎馬で――!?」

 

 再び戦いを仕掛けに行こうとするも、鉄哲が率いる騎馬によって鉢巻きを奪い去られる。

 

「……奪い返すぞ」

「俺らの鉢巻き位奪われても大丈夫だろ!?」

「何寝ぼけたこと言ってやがんだ――」

 

 急な路線変更に戸惑っている切島、爆豪から立ち上る闘気に思わず息を飲む。

 

「俺が目指してんのは()()()()()()()()()だッ! 一点たりとも取られたままでいられっかッ!」

 

 爆豪チームは奪われた鉢巻きを奪い返すべく進軍を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「――そろそろ、奪りに行くぞ」

 

 時間は半分を過ぎていた。轟チームは得点を抱え込んでいるエースへ狙いを定める。

 

「遅かったね――はっ!」

 

 エースが出合い頭に銃弾を放つも、八百万によって創造された盾で防がれる。

 

「ああいうのも……! 創造、厄介だね」

「ふふ。でも私には――」

 

 焦る緑谷に対し、エースは余裕を見せながら指を弾くそぶりを見せる。

 

「――ッ八百万! 上鳴!」

「ええっ!」

「任せろっ!」

 

 個性は使わせまいと轟は八百万と上鳴の二人に指示を出す。彼が生み出された絶縁シートをかぶるや否や、無差別放電が行われる。

 上鳴の個性は“帯電”、電気を放出できる強い能力だが指向性を持って放出することはできないという欠点を持っている。それ故に味方を巻き込まぬように工夫する必要がある。

 

「――がっ!?」

 

 これまで体感したことのないダメージにエースは思わず銃を取り落とし胸を押さえる。

 そして崩れるように緑谷へもたれかかる。

 

「エースさんッ!?」

「弱点! そりゃあるよなっ!」

 

 轟は漁夫の利を狙っていた他の騎馬の足元を凍結させると、痺れて動けないエースたちへと迫っていく。

 

「不味いです! 発明品(ベイビー)ちゃんたちがオシャカになっちゃいました! 改善の余地ありです!」

「言ってる場合か! 緑谷、俺達で凌ぐぞっ!」

 

 放電は発目のサポートアイテムも機能不全に陥らせていた。騎手は実質不在、騎馬の一角もほぼ機能不全の中、迫りくる轟チームをどうにか躱さねばならなかった。

 

「ああ! 常闇君、発目さん! 轟君の左側へ!」

 

 緑谷は即座に司令塔となり、轟の弱点を突く策を実行する。

 炎の個性(ひだりがわ)を一切使わないことを逆手に取り、攻撃能力の薄い左側へ陣取り続ける。

 

『――残り1分! 狐火チーム逃げ切れるかっ!?』

 

 作戦が功を奏し、轟チームから鉢巻きを死守することに成功する。

 

「――これを使えば俺は動けなくなる。後は頼んだぞ!」

 

 残り時間も少なくなり、騎馬を務める飯田のエンジンがうなりを上げる。

 トルク数を急激に引き上げることで爆発的に加速する必殺技――レシプロバースト。

 轟チームは緑谷たちが反応する間も与えず1000万ptの鉢巻きを奪い去る。

 

『――ついに轟チーム1000万pt獲得ッ! 形勢逆転!』

「――隠し玉を持っているのは君だけじゃない。エースさんに挑みたいのは、何も轟君だけではないんだ!」

 

 飯田のエンジンが停止する。先ほどまでの機動力は失われてしまったが、残り時間を考えれば十分逃げ切れるだろう。

 

「よし、後はこれを死守――」

 

 轟は奪った鉢巻きを装着しつつ逃げる算段を考え始めるも、突如として放たれた殺気のようなものに思わず息を飲む。

 

「行かせない……!」

 

 回復したエースは、奪われた1000万ptを取り返さんと轟を睨み付けている。

 所持得点は十分決勝進出圏内、しかしやられたままでいられるほど彼女(?)は穏やかな性格ではなかった。

 

「ぅっ」

 

 あまりの気迫に、防御しようとする轟の左腕からは炎が迸り――

 

『――TIME UP!!』

「……ダメ、か」

 

 エースの手は轟の鉢巻きにかかるも、奪い取る寸前で時間切れとなる。

 

「っごめ……力、でない」

 

 彼女(?)は崩れるように轟へもたれかかる。電気のダメージは確実に尾を引いてしまっていた。

 もし仮に、万全の状態で奪いにかかっていたら?

 もし電気のダメージが人並みにしか入らなかったら?

 

(時間までに、奪い返されてた、か……?)

 

 轟はエースを抱き留めつつ騎馬を降りる。

 

「――エースさん!」

 

 介抱されているエースを眺めつつ、轟は思わず左手を見つめる。

 

(戦闘で使わねぇって決めてたのに……思わず気圧された)

 

 あそこまでダメージが尾を引いているということは、最後は精神力のみで動いたということになるだろう。

 

 ――『半分の力で勝てるほど、世界は甘くない』

 

(半分……もしかして、お前は――左側(こっち)も俺の力だって言いたかったのか?)

 

 ――『なりたい自分に、なっていいんだよ』

 

 思い返されるのは忘れ去っていた母の言葉。

 

「……なりたい、自分か」

 

 担架で運ばれていくエースを尻目に轟は思わずつぶやいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 












【ケイドロゲーム:ルール】

・勝利条件はエリア内に散開している警察ジャマトから参加者を逃がすこと。
・エリアの四方に配置された脱出ゲートまで参加者を連れて行くと救出ポイントを獲得できる。
・捕まると看守ジャマトが守る檻へ連行されてしまい、その時点で失格、脱落となってしまう。
・妨害行為はペナルティ、減点となる。
・看守ジャマトから捕らえられた者たちを救い出すと解放ポイントを獲得できる。
・解放に成功すると一定時間警察ジャマトと看守ジャマトが行動不能となる。
・警察ジャマトを攻撃して斃すことは可能だが、警察ジャマトは何度でも復活する。これは看守ジャマトも同様。
・一般人を全て救出する、もしくは全員が逮捕されて全滅してしまった場合ゲーム終了となる。
・解放ポイント > 救助ポイント となっており、檻からの解放に成功すると大量得点が可能となっている。
・終了時、最も得点が高かったプレーヤーにはボーナスとして“今後ゲームを有利に進めることのできるアイテム(フィーバースロットバックル)”が渡される。

ざっくりとですが、ケイドロゲームについてまとめました。
ゲームとしてはジャマト側が警察陣営、人間側が泥棒陣営で作っています。泥棒側が逃げ切る=エリアから脱出する という前提でルール作成、例によって妨害は減点行為です。

さて、次回トーナメント編です。サクッと終わらせてデザイアグランプリ信仰させます。急がないとオリキャラの事を忘れられてしまいそうなので……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。