いろいろとあって感情が追いつきませんが、本編は先の読めない展開で面白くなっていますね!
果たして来週、クリスマス回はどうなるのか見逃せませんね!
※結構やばめなミス発見したので修正しました。
――――
――
個性は“不眠”。
その能力を多く語る必要はない。文字通り
しかし睡眠は生物にとって必要不可欠な生理的行動。体を休息させるだけでなく記憶を整理する大事な行動だ。
眠らなければ大抵の生物は長く生きることはできないが、個性は身体能力の延長。彼の体は眠らなくとも支障の無いように進化を遂げていた。
「なあ不眠。俺この後外せない用事があってさ。この資料、代わりに作っといてくんね?」
「……はい、構いませんよ」
そんな不眠はごくごく普通の会社に勤めるサラリーマン。
彼は同僚から頼まれた――押し付けられたともいう――仕事を受け取ると、タスクの一覧に追記する。
「不眠君。済まないが営業部が急に打ち合わせをセッティングしてしまってね。なるはやでレジュメを作っておいてくれ」
「……はい、承知しました」
上司から理不尽な作業を振られるも、彼は眉一つ動かさずに受け入れる。
「不眠さん~あの件だけど――」
「ごめん、子供が急に体調崩して――」
「これよろしく――」
気が付けば彼はあふれんばかりのタスクが積み上がり、残業なしでは到底終わりそうもなかった。
「――なっ! 不眠さんが断らないのをいいことにどいつもこいつも」
淡々とタスクを消化する不眠に対し、隣の席の女性社員――
「どうして断らないんですか!? みんな体よくあなたに押し付けてるんですよ?」
「……別に、この程度の量なら日付が変わる前に終わりますよ」
不眠は怒る時間がもったいないと言わんばかりにディスプレイから目を離さない。
「だからって……それじゃ不眠さん終電じゃないですか!」
「ええ。何か問題でも?」
「大ありですよ! 不眠さんのプライベートな時間が奪われてるってことじゃないですか!」
気にかけてもらえたのが嬉しかったのか、不眠はわずかに口角を上げる。
「そうでしょうか? 終電で帰宅し、夕食と入浴を済ませて午前1時。朝は7時頃から準備すれば間に合いますから、都合6時間の自由時間があります。これだけあれば十分ですよ」
「えっ……それ睡眠時間計算してな――あ」
不眠は個性の都合上睡眠を必要としない。故に普通の人間の睡眠時間の分、彼は余分に活動することが可能なのである。
さながら、“人の倍の人生を生きている”と言ったところか。
「ええ。私は眠る必要がありませんから」
糸成は申し訳なさそうに俯く。余計なお節介で忙しいところを邪魔してしまったのである。
「あと1タスクくらいならこなせます。妹さんのために時間を割きたいでしょう? よければ引き受けますよ」
「うっ……確かに。紬、未だに連絡も寄越さないんですよね……ヴィラン犯罪に巻き込まれてなきゃいいんだけど」
糸成 紬――彼女は仮面ライダーレターとしてデザイアグランプリに参戦し、先日のケイドロゲームで退場してしまっていた。
デザイアグランプリの事を知らない者からすれば、行方不明になってしまったように思えるだろう。
「って、お言葉に甘えるわけにはいきません! あの子だって高校生だし、無断外泊の一つや二つくらいするってもんですよ!」
糸成(姉)は空元気を出すように仕事に取り組み始める。
不眠は大きくため息をつく。
(この分だと、今日の講義は間に合わなさそうですね)
彼の鞄の中には、夜間学校のテキスト――それもヒーロー養成を実施している学校だ――が収められていた。
気が付けば、不眠の口から一際大きなため息が漏れていた。
――――
――
少女は必死に逃げていた。
白髪を振り乱し、真っ赤な瞳は苦しそうに細められている。両腕は怪我でもしているのか包帯がまかれており、服装は手術着のようで靴は履いておらず裸足だった。
明らかに
関わりたくない、関わってはいけない。
いつかきっと
「……はぁっ……っ」
少女はこれ以上走ることができず、たまらず立ち止まる。そして脳裏によぎるのはペストマスクをした男――治崎の顔。
「――なあ、だいじょうぶか?」
「っ!」
そんな少女に声をかけたのは、同い年くらいの少年。彼は明らかに普通じゃない少女を心配し手を差し伸べる。
「オレ、セツリ ミサオって言うんだ。きがるに名前でよんでくれよな」
少年――ミサオはばんそうこうの貼られた頬をさすりつつ自己紹介をした。
「おまえ、名前は?」
「……エリ」
「エリっていうのか! エリ、このオレが来たからにはあんしんだ! こまってるならなんとかしてやれるぜ!」
ミサオは誇らしげに胸を叩く。少女――エリはその根拠のない自信がまぶしく見え、思わずつぶやいた。
「ったすけて……!」
「! おう! 任せろ!」
安請け合いをしたはいいが、ミサオは何をしたらいいかわからず首をひねる。
「……で、たすけるっても何すれば」
「――あ! いたぞ!」
遠くから明らかに堅気じゃない男たちがこちらを指差していた。
ミサオはエリがその男たちに追われていることを悟り、彼女の手を取って駆けだす。
「こっちだ!」
「あっ……」
二人は右へ左へ入り組んだ路地を駆け、男たちを撒こうとするも、所詮は子供の浅知恵。一向に距離を離すことができなかった。
「――っしめた!」
遠くからバスが走ってきていた。
「エリ、とぶぞ!」
「えっ?」
ミサオはエリを抱っこし、橋の上から走ってきたバスの屋根に飛び乗った。それはさながらアクション映画のようだった。
「――あっ! クソッ!」
「はっはー! ざまー見ろ!」
橋の上では男たちが悔し気に右往左往している。ミサオはどこで覚えたのか、両手の中指を突き立てて挑発していた。
「ぇ……に、にげ」
エリは逃走に成功した高揚感と、見つかってしまったときのことが頭をぐるぐると駆け巡ってめまいがしていた。
逃走に成功したのは嬉しいことだ。もう二度と体を刻まれるようなことはされたくない。
しかしこのまま逃げることができるとは思えない。もし見つかれば、この親切な少年が治崎によって殺されてしまう。
「っやっぱりダメッ! こ、殺されちゃう」
「しんぱいするな! このオレがいればだいじょ」
誇らしげに胸を張るミサオだったが、突如としてバスが
「お、落ちる~!!」
「っ!!」
バスと少年少女は暗い穴の底へ落ちていった。
――――
――
――雄英高校。
体育祭も終わり、全国放送デビューした生徒たちはちょっとした有名人だった。
そんな中、彼らが次に挑戦する試練は職場体験。
現役ヒーローの下へ赴きその仕事を体験するのである。
それに伴い急務となったのはヒーロー名の考案。この段階では仮決めだが、職場体験を通じてそれが浸透してしまうということもあり、ミッドナイトの補佐の下で考案タイムがとられる。
「――私のヒーロー名は、“ギーツ”」
エースがどや顔でフリップを見せた瞬間、緑谷と葉隠は驚いたように身を竦ませる。
デザイアグランプリでのライダー名を躊躇うことなくヒーロー名に使うエースの図太さに二人は戦慄した。
「あら、狐と自分の名前を掛け合わせたのかしら? 中々しゃれてるじゃない!」
「ふふ。いいでしょう?」
エースは促すように緑谷と葉隠に視線を向ける。
「――ぇっと……い、インビジブルガール」
「――ぼ、僕は――“デク”」
それぞれ“ナーゴ”、“タイクーン”と名付ける度胸は二人に無かった。エースは拗ねたように尻尾を揺らしていた。
「――時間内に決まらなかったのは爆豪だけか。職場体験までに考えておけよ」
「ぐっ……!」
小学生のようなネーミングを連発していた爆豪は悔し気に歯を食いしばった。
「あと、狐火」
相澤はエースにプリントを手渡す。
「……これは?」
「
教室がざわつき始める。
体育祭で日本中を沸かせる活躍をし、クラス内でも成績上位に名を連ねるエースが、あろうことか中間テストで赤点を取っていたのである。
「……もし、受けなかったら?」
「単位を落として留年だ。
相澤は深いため息をつく。雄英は国内最高峰の高校、授業の難易度も高いとはいえまさか最初のテストから赤点を取ってくるとは思ってもいなかったのだろう。
プリントを受け取ったエースの表情は、どこか引きつっているのだった。
――――
――放課後。
「国語の点数は?」
「100点」
「マジ!? スゲー!」
「数学は?」
「97点」
「うおっ! 計算ミスなきゃ満点じゃん!」
「ヒーロー情報学」
「88点」
「まあ、結構マニアックだったよな」
「理科系は?」
「90点」
「じゃあ――英語は」
エースはバツが大量につけられている答案用紙を見せる。
「5点♪」
「何でだよッ!?」
上鳴のツッコミがさく裂した。
「いや、むしろすごいよ……選択式の問題なんか、もはやあてずっぽうで書いた方が正解できるよ」
他のテスト結果からは考えられない低得点に緑谷は絶句していた。
「……」
エースはむすっとしたようにそっぽを向く。
「第一、どうして日本に住む私たちが英語を勉強しなくちゃいけないんだい?」
「出た、英語苦手な奴特有の言い訳」
「必要だよ! 僕たちだってヒーローになってから海外のヒーローとチームアップするかもしれないし!」
「…………」
緑谷の正論にエースはますます拗ねてしまう。
――♪
スパイダーフォンから通知が響く。
「……お呼び出し、か」
「そういや気になってたけど、二人ってなんのゲームやってんの?」
上鳴はかねてからの疑問をぶつける。
タヌキのキャラクターが出てくるゲームを調べたが特にヒットすることがなかったため、疑問を覚えていたのだ。
「ふふ。それは秘密♪ 招待制だから、他の人に話しちゃいけないのさ」
エースは唇に人差し指を当ててウインクした。上鳴は彼女(?)が性別不詳と知っていながらドキッとしてしまう。
「もしかしたら、君にも招待が届くかもしれないね♪」
――――
――
「――ジャマーエリアの出現しました。デザイアグランプリ、第3回戦を開催いたします」
現在勝ち残ったプレイヤーは7名。
「ゲームの内容は――こちらです」
ツムリが説明をしようとすると、神殿の床が消滅する。
「え?」
想定外の事態だったのか、普段は捉えどころのない笑みを浮かべているツムリも驚きの表情を浮かべる。
プレイヤーたちは神殿から地面に空いた大きな穴の底――ジャマトの生み出した迷宮へと吸い込まれていった。
――――
どこか既視感のある城。
「……ここ、は?」
芸術的な姿勢で着地――落下ともいう――していた緑谷は痛そうに腰をさすっている。
「ジャマトの作り出した迷宮です……」
ツムリは自分自身も転送されたことが想定外だったのか、心底面倒そうな表情を浮かべていた。
「――ねえ、あれって」
葉隠が城の階段の方を指差す。
そこにはいばらのような首輪をした一般人が困り果てたように立ち尽くしていた。
「! これは……すごい偶然だね」
一般人の中には牛込――かつてデザイアグランプリに“仮面ライダーバッファ”として参加していた女性も紛れていた。
「――え、君たち雄英の人たちだよね?」
一般人の一人、恰幅の良い男性が足早に駆け寄ってくる。
「いや~体育祭見てたよ! 惜しかったね!」
自分が囚われているのにも関わらず、男性は呑気にエースを励ましている。
「ふふ、どうも。ところであなた方はどうしてここに?」
「ああそうだった。私、バスの運転手なんですが……運転してたら道路に突然穴が開いてしまって、あの人たちは乗客の方たちです」
中学生ぐらいの男女――恋人同士なのか、不安そうに体を寄せ合っている――に気だるそうにしている牛込、そして――
「――壊理?」
治崎は乗客の中の一人、白髪に赤い瞳、額に一本の角が生えた少女を睨み付ける。
「あっ……」
少女――エリは怯えたように後ずさり、隣の少年の後ろに隠れる。
「ほお、お前娘がおったのか」
ちょうど治崎の隣にいた聖拳はどこかからかうような表情だったが、エリの怯えたような表情とその腕に巻かれた包帯に気づくと表情を一変させる。
「……おい、まさか」
「他所の教育方針に口出しするな」
殺気を向けられるも治崎は意に介さずエリへ近づこうとする。
「――歯ぁ食いしばれ!」
「ッ!?」
聖拳は治崎の胸倉を掴むと、ツムリが止めようとするのも間に合わず思い切り殴り飛ばす。
「てめえ子供に――それも自分の子になんてことしてやがるッ! あの子の目ぇ見りゃわかる、てめえがやってんのは躾じゃなくてただの暴力だッ!」
続けざまに胸倉を掴んで引き寄せ、更に殴り飛ばす。
一度殴っても怒りが鎮まることは無く、ヒートアップするばかりだった。
「うっ……!」
凄まじい気迫で誰も止めることができない中、聖拳の頭を冷やしたのは持病の腰痛だった。
「――っ」
治崎は個性で砕けた顔を修復しつつ報復に動こうとするも、その間にツムリが割って入る。
「出水 聖拳様、治崎 廻様、プレイヤー間での戦闘は違反行為となります。これ以上続ける場合は失格とさせていただきます」
「……ふん」
「チッ……」
ツムリは咳ばらいをし、改めてルールを説明する。
「それでは改めまして――デザイアグランプリ第3回戦、“迷宮脱出ゲーム”を開催いたします。まずは各ライダーと一般人とでペアを組んでください」
促されるままにプレイヤーは一般人に手を差し伸べる。
「……ねえ、僕は誰と組めばいいんだい?」
一般人の数は6人、必然的に一人余ってしまうこととなる。
物間は一人だけ取り残され、不満げに尋ねる。
「……私です」
この場において、ゲームナビゲーターのツムリも戦闘能力の無い一般人。ただし、運営サイドの2人が組むのはある意味“やらせ”に近いのかもしれない。
「一般人を保護しつつ無事に脱出できた方は勝ち抜け、そうでない方は脱落となります」
「……脱出……あの扉から出れそうですが」
不眠は城壁の扉を示す。鋼鉄製のようで、多少の攻撃ではびくともしなさそうな硬度に見える。扉の隣には何やら不思議な文様が刻まれた石板が備え付けられている。
「無駄よ。さっきこじ開けようとしたけどびくともしなかったわ」
不眠と組んだ一般人――牛込は何か思い出すように額をさする。頭突きで破壊を試みていたのかもしれない。
「これが脱出ゲームなら、出るために謎解きをするのがお決まりだよね」
葉隠はスマホで扉の隣の石板を撮影する。
「――ジャ」
だが悠長に謎解きを許してくれるほどデザイアグランプリは甘くない。大量のジャマトが城の中から姿を現す。
「っジャマトが現れました! ライダーの皆さま、よろしくお願いします」
ツムリは一般人を下がらせる。
――SET
プレイヤーたちがベルトにバックルをセットし、ジャマトへと立ち向かっていった。
――――
――SET FEVER!
エースはフィーバースロットバックルを装填、レバーを倒して起動する。
「ん……?」
前回の使用時はブーストの力を引き当て、謎の生物“脳無”と渡り合っていたフィーバーバックル。しかし今回引き当てたのは――ウォーター。
「成程、毎回当たってくれるわけじゃ、ないのか!」
召喚されたレイズウォーターでジャマトを追い払いつつ、バックルをニンジャへと交換する。
望みの絵柄を引き当てれば無双の活躍ができるも、この状況で何度も試行している余裕はないだろう。
「……ジュラ、ピラ」
「えっ! 喋った!?」
ジャマトが言葉を発したことに驚いているナーゴ。
「ジュラピラ――」
ジャマトの中の2体――執事服とメイド服をまとった個体がそれぞれ懐からデザイアドライバーとバックルを取り出す。
「ヘン、シン」
――Jyamato
2体のジャマトは変身――ジャマトライダーへと姿を変える。
「嘘ッ……だろ?」
デザイアドライバーはジャマトと戦うために必要なサポートアイテム。それをジャマトが使用することはプレイヤー――否、運営サイドも想定外の事態だ。
タイクーンは驚きつつも、ゾンビブレーカーで斬りかかる。
「ジャ……!」
「っ強い……!」
今まで戦ってきた一般ジャマトとも、ボスジャマトとも違う強さにタイクーンは苦戦する。
しかもそれが2体いるのである。
「――困るなぁ! そういうの」
もう一体のジャマトライダーはゆっくりとパンクジャックへと近づいていく。
――Jya Jya Jya STRIKE!
「――ぐっ!?」
パンクジャックは腕を交差しつつ必殺技を受け止めるも、防ぎきれずに吹き飛ばされる。
「まずい……これは――」
敵はジャマトライダーだけではなく他にもいる。
「「「!」」」
ジャマトの接近により、一般人の首輪が絞まり彼らを苦しめる。
「近づかせちゃダメってことか――なら」
――NINJA
ギーツはすかさずニンジャバックルを装填。
「ここは一時撤退だ!」
ニンジャフォームの特殊能力に煙幕が貼られ、ジャマト達の視界が奪われる。
「ジャ……ケカカト!」
煙が晴れるとそこには人っ子一人いないのだった。
――――
――
城の中へ逃げ込んだプレイヤー達。
しかし中でもジャマトが待ち受けており、戦闘を余儀なくされる。
「――ふぅ……撒いたはいいけど、はぐれちゃったか」
エースは変身を解くと、ホッと一息をつく。
部屋は長いこと使われていないのか、調度品には埃がかぶっている。
「な、なあ! この文様って扉の所にあったのと同じじゃないか!?」
エースと組んでいた一般人――バスの運転手は部屋に飾られていた絵画と、その下に配置された石板を指差しつつエースを呼ぶ。
「これは……海の絵、かな?」
「……うーん、俺謎解き得意じゃないからなぁ」
二人は絵の前で思考を巡らせる。絵画と石板の関係性――そこから暗号解読のヒントを得られるかもしれないのだ。
「ま、雄英生と言えばエリート。謎解きは君に任せるよ! 俺は他に手がかりがないか探してみる」
「ふふ……」
運転手は早々に解読を諦めると部屋の物色を始める。
しかし当のエースは内心冷や汗をかいていた。
(え……何これ? 全然意味わかんないんだけど)
絵画は海、石板の数は二つ。
察しの良い者ならば絵画のタイトルが石板の記号で表現されていることに直ぐ気づくだろう。
「ふふ……ふふふ……」
エースは言語分野が死ぬほど苦手だった。国語――日本語はデザイアグランプリで培った
が、知らない言語となるとからっきしだった。
アルファベットを見れば頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされ、脳が理解を拒む。
英語だけ壊滅的な実力は伊達じゃない。
「ふぅ……」
石板とにらめっこすること数分、エースはさも何かわかったかのようにため息をつく。
「お! もう解けたの? 流石は雄英生、違うなぁ」
「ふふ……」
自信満々にふるまっているエースだったが、実は何もわかっていなかった。
「他の手がかりも探そう。入口の石板は3枚、他にも手がかりが必要なはずさ」
「お、おうとも!」
そのエースに影響されたのか、運転手もまた自信満々な様子でエースの後をついていく。
(まずいまずいまずい! 暗号解ける気しないんだけど!)
実はエースが死ぬほど焦っていることを、運転手の男は知る由もなかった。
――――
――広間。
「――きっとこの記号とひらがな一文字が対応しているんだと思う」
ジャマトを撒いた緑谷、葉隠、不眠と共に行動する一般人――中学生のカップルと牛込。
彼らは緑谷主導のもと謎解きを行っていた。
「だからこの絵はひまわりだから――」
緑谷は借りたノートのページを使い記号とひらがなの対応を作り出す。
「あっこれ入口のと同じ形!」
葉隠はあらかじめ撮影していた入口の石板の写真を見せ、緑谷の作った対応表から正解を導き出す。
「――だから、答えは“ひらけ”!」
「……本当にそうでしょうか?」
答えに疑問を呈したのは不眠だった。
「この記号はジャマト達が生み出した物でしょう。ならば彼ら独自の読み方があるのではないでしょうか?」
「……考えすぎじゃない?」
不眠の推察を否定するのは牛込。苛立ったように椅子に腰かけ、貧乏ゆすりをしている。
「あいつら、ジャージャー鳴いてるだけだし、そんな頭いいとは思えないけど」
「そうでしょうか? 知性が無いにしては、動きに統率が取れすぎているようにも見えますが」
「――あっ」
葉隠は思い出したように目を見開く(見えないが)。
「そういえば、変身したジャマト、“ジュラピラ”って喋ってた!」
「てことは今までのジャマト達が発していた鳴き声にも何か法則性があったんじゃ――」ブツブツブツ
緑谷は独り言をつぶやきながら考察タイムに突入した。
「……彼、いつもああなんです?」
「……うん。ああなったら暫くは話しかけない方がいい、かな」
不眠と葉隠れは緑谷の邪魔をせぬようそろりそろりと後ずさり、ジャマトがやってこないか見張りにつく。
広間に緑谷の独り言と、中学生カップルが互いに励まし合う小さな声が響く。
「ッ!」
突如、牛込はテーブルの上の燭台を手に取るとそのまま叩きつけ、テーブルを破壊した。
「さっきからブツブツうっさいわよ!」
「え、あ、ご、ごめんなさ」
「あとお前らッ! ピーピーピーピー泣いてて目障りなのよッ!」
「っ!」
「っはい……」
彼女は八つ当たりするかのように緑谷と中学生カップルに食って掛かる。
「ちょっと! そんな言い方ないでしょ!?」
「うるさいっ!」
「きゃっ!」
理不尽に怒り始めた牛込に抗議した葉隠だったが、燭台を投げつけられ身を竦ませている。
「っ……イライラする……ッ! 薬、飲まなきゃ」
牛込は頭を掻きむしりながら上着のポケットからピルケースを取り出す。
「――ジャ」
「ぁぐっ」
しかし、ジャマト――それもジャマトライダーだ――が迫ってきたことで首輪が絞まり、それを取り落としてしまう。
「っまずい見つか」
バックルを取り出し変身しようとした緑谷だったが、背後から凄まじい怒気を感じて身をひるませる。
不眠、葉隠も同じようでバックルを構えたまま
「――ああっ! 目障りなのよッッ!!」
首輪によって鎮静剤を飲むことを妨害され、牛込の怒りは頂点に達していた。首が絞まるのも構わず、闘牛のごときどう猛さでジャマトライダーへ突撃していく。
「ジュ?」
ジャマトライダーは突っ込んできた
二度、三度、動かなくなるまで何度も振り下ろす。
「ジャ……ジャ……」
瀕死の重傷を負ったジャマトライダーだが、彼らには驚異的な再生能力があった。その体をツタのような物質で覆いながら再生を試み――
「っらァッッ!」
牛込のストンプが再生しつつあったジャマトライダーの頭部を砕いた。
「ジャー……」
騒ぎによって引き寄せられた執事ジャマト、メイドジャマトが集まってくる。
彼女は首が絞まるのも構わずに暴れまわる。
「――ヘン、シン」
「するなッ!」
落ちていたドライバーを拾い、変身しようとしたメイドジャマトの頭部を砕き、集まっていたジャマト達の殲滅が完了する。
肩で息をしながら牛込は周囲を見回す。
ひと暴れしたからか、すっかり落ち着きを取り戻していた。
「……あの、これ」
緑谷は落ちていたピルケースを拾い、恐る恐る牛込へ手渡す。
「っ……」
彼女はそれをひったくるように奪い、中の薬を水を使わずに飲み込んだ。
「……怖がらせて、ごめんなさい……あたし、個性のせいで、その……時々抑えが利かなくて」
「いえっそんな……」
――『が、なぜか知らんが中学卒業してフリーターになってる』
緑谷はかつて聞いた話を思い出す。バッファローと言うわかりやすく強そうでヒーロー向きな個性を持った牛込が、なぜかヒーローを目指さずにフリーターをしている事。
確かに、感情の波が激しく薬に依存した個性ではヒーローを目指すのは難しいかもしれない。
「っ!」
「また来たのかっ!」
再びジャマトが接近してきたことで牛込の首輪が絞まり始める。
彼らは逃げるように広間を後にする。
「――ジュラピラ、ヘンシン」
追いかけてくるジャマトは広間に残されていたドライバーを拾うとジャマトライダーへ変身、執事ジャマトとメイドジャマトを引き連れて行進する。
「っここは僕が!」
――SET
緑谷はこのままでは逃げられないと判断、殿を買って出る。
「私もっ! おじさん、みんなをお願いっ!」
――SET
同じように葉隠も並び立ちバックルをセットする。
「「変身!」」
――ZOMBIE...
――BEAT
中学生カップルと牛込を連れて逃げる不眠だったが、目の前からジャマトライダーが迫ってくる。
「……下がっていてください」
――SET
「変身」
――ARMED HAMMER
不眠はヤイバへ変身、ジャマトライダーへ立ち向かう。
彼の装備はハンマーバックル――小型で性能の低いものだ。大型バックルを使って戦っても苦戦するジャマトライダー相手にハンマーバックルでは分が悪かった。
「っ……!」
果敢に立ち向かうヤイバだったが、あっけなく押し返されてしまう。
「……無茶よ……そんな弱そうな装備じゃ勝てっこない!」
牛込に抱き留められるヤイバ、しかし彼はため息をつきながら起き上がる。
「自分が敵わないからと敵に背を向けるヒーローが、この世界のどこにいるというんです?」
「……ヒー、ロー?」
ジャマトライダーは鎌のような武器を構え、じりじりと距離を詰めてくる。
「私、ヒーローになるのが夢でした。でも、父が職を失ったので高校進学すらできませんでしたが」
ヤイバはレイズハンマーを構え、迫るジャマトライダーを待ち受ける。
「こうしてあなたたちを救って散る――そういうヒーローもアリ、ですかね」
ヤイバ――不眠がデザイアカードに書いた願いは“ヒーローになりたい”。
家庭の事情で諦めざるを得なかった夢、それを叶えたいと願っていた。
「っ不眠さん!」
死を覚悟するヤイバにタイクーンはマグナムバックルを放る。
「使ってください! 僕たちはいずれ争うことになるけど――一緒にここから脱出しましょう!」
ヤイバは頷くとバックルを左側のスロットに装填、起動させる。
――MAGNUM ARMED HAMMER
「ジャ~」
――Jya Jya Jya STRIKE!
ジャマトライダーはそれを迎え撃つかのようにバックルを起動させる。
「伏せてください」
――MAGNUM HAMMER VICTORY
二つの必殺技がぶつかり合った――