【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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新年一発目です。
お正月でギーツの最新話はお預けですが、新展開楽しみですね!
本作は年内での完結を目指して頑張ります!
これからギーツサイドの設定が開示されていくことになると思いますが、破綻しないように気を付けたいと思います……






















21 異変Ⅸ/彼女のオリジン

 

――――

――

 

 ――時は少しだけ遡り、職場体験1日目の昼間の事。

 

「――ワタシが今追ってるのはこのヴィラン」

 

 この日から葉隠はパトロールについていくこととなっていた。

 アイズはホワイトボードに写真を貼り付ける。フランス人形を思わせる可愛らしい顔立ちの少女。

 

「この子が、ヴィラン?」

「見た目に騙されちゃダメよ。この子は体内で毒の胞子を作れる――不意なキスには要注意ってトコ」

 

 渡された資料を見て葉隠は戦慄した。

 ヴィラン名“ギノガ”、本名は木芽 楓。始まりは小学校2年生の時、両親の殺害を皮切りに同級生、預けられた更生施設の職員と次々に殺人を繰り返し、若干18歳にして立派な大量殺人犯だった。

 

「いい? もし見つけても戦っちゃダメ。すぐにワタシに知らせて頂戴。キミに捕縛の仕事を体験させてあげたいけど――この子だけは絶対に戦っちゃいけないわ」

「はいっ……」

 

 何をどう間違えたらこんな人生を歩んでしまうのだろうか。

 葉隠はこの超常社会の暗い部分を見てしまったようで、気がとても重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 この日、少女は一世一代の大勝負に出ていた。

 

「あ、あのっ……!」

「……何か?」

 

 心臓が破裂しそうなぐらい跳ねている。

 木芽は過呼吸になりそうになるのをこらえ、口を開く。

 

「わ、私と……っ!」

 

 憧れのお姉さま――牛込は不思議そうに木芽を見つめる。

 

「私とっ……デートしてくださいっ!」

 

 心臓が早鐘を打つ。返答までの短い時間が、永遠とも思えるくらい長く感じた。

 牛込は気まずそうに頬を掻き、困ったように口を開く。

 

「えっと……あたし、女なんだけどな……ごめん」

「いいえ! それは承知の上、どうか……どうか私とっ!」

 

 性別を超越した恋愛感情。牛込も漫画の世界で見たことはあったが、現実世界で出くわすとは思ってもいなかった。

 まるで生まれたての子犬のように震える木芽を見て、その願いを無碍にできるほど牛込は非道ではなかった。

 

「……ん」

「へ……?」

 

 牛込はスマホの画面を見せる。そこにはトークアプリの友達交換用のQRコードが表示されている。

 

「デート、するんでしょ? なら連絡先ぐらい知らなきゃ」

「~~~~!?」

 

 悲鳴のような歓声と共に木芽はスマホを取り出し自分のトークアプリに友達登録をした。

 

「ふぅん……カエデ、ね。よろしく」

「あっ……あっ……ああっ!」

 

 いきなり名前で呼ばれ木芽は早くも卒倒しかけていた。連絡先を交換しただけではなく、早くも下の名前で呼んでもらえたのである。

 今日は人生の記念日と言って差し支えないだろう。

 

「――はい、これがあたしの空いてる日。後で連絡頂戴、あたしこれからバイトだから」

「……はひぃ…………」

 

 牛込が去った後も、木芽はしばらく恍惚とした表情でその場に立ち尽くしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

 ――職場体験2日目、夜。

 

「……ジャ」

「っ待て!」

 

 緑谷は思わずジャマトの後を追いかける。

 

(っそうだ! ジャマトの言葉で話しかければ)

「えっと――()()()!」

 

 手帳に書かれていたジャマト語で話しかける。ジャマトはピタリ、と動きを止めゆっくり振り向く。

 

ラサ()ツーム()?」

(っ通じた!)

 

 緑谷は続けて手帳のページをめくりジャマト語を紡ぎだす。

 

()レレ()イズ()チャ()テウ()?」

「ジャ……?」

 

 ジャマトは緑谷の言葉の意図が分からないようで、不思議そうに首をかしげている。

 

「…………ジャ」

「あっ!」

 

 くるり、とジャマトは踵を返し、人ごみへと走っていく。

 

「――へ?」

ビ()()キョ()キョ()

 

 そして通りすがりの男性――どこか緑谷と雰囲気が似ていた――の喉元に食らいつく。

 

「なっ! やめろ……っ!?」

「ジャァ……」

 

 緑谷は止めようとして体を強張らせる。

 ジャマトの姿が変化し、吸血されていた男性と同じ姿形となったからである。

 

「まさか……個性を?」

「ジャッ!」

 

 気を抜いた刹那の瞬間にジャマトは姿をくらませる。人の姿に変身してしまっているため、完全に紛れてしまっていた。

 

(っ……! どうすれば)

 

 逃げて行った方へ追いかけるも、姿形も見当たらない。もしかしたら再び変身して別の人間に姿を変えているのかもしれない。

 

「っそうだ――ッレレ()()()()!」

「?」

「?」

「?」

「!?」

「?」

 

 突然意味不明な言葉を叫んだ緑谷を通行人たちは怪訝な目で見るも、一人だけその意味を理解し肩を跳ね上げている。

 緑谷は即座に個性を発動し反応した男にラリアットを仕掛け、そのままひきずるように路地裏へ連れ込む。

 

「ジャッ……ゼラ()チャ()

「っごめん……!」

 

 気が付けば緑谷の口から謝罪の言葉が出ていた。

 

 ――SET

 

 

 ジャマトの表面がどろりと溶け、もとの異形の姿に戻る。

 

「……変身」

 

 ――MAGNUM

 

 緑谷――タイクーンはマグナムシューターの照準をジャマトに合わせる。

 

 ――BULLET CHARGE

 

「――イ、イキニ、クイ」

「えっ……」

 

 弾丸に撃ち抜かれる刹那、ジャマトが言葉を発する。

 しかし、確認をしようにも既に撃ち抜かれてしまった後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

「~♪」

 

 薄暗いホテルの一室に少女の鼻歌が響き渡る。

 シャワールームでは少女――木芽が湯あみをしており、迸る湯気が彼女の年相応に発育した体をやんわりと隠していた。

 

「~♪」

 

 木芽は一糸まとわぬ姿のまま、バスタオルで髪を拭きつつベッドルームへ移動する。そんな彼女の肢体を目当てにホテルへ連れ込んだ男はダブルベッドの傍らで息絶えている。

 

(ああ……今日こそ、今日こそお姉さまを……♡)

 

 勝負下着を身に着けつつ、来るべきその瞬間を想い彼女は吐息を熱くする。

 ()()()のプランは完璧――あとは余計な邪魔者(ヒーロー)が現れなければ今日で全てが終わる。

 

「ああ……お姉さま♡」

 

 お気に入りの服でめかし込み髪を完璧にセット、仕上げにメイクを施していく。

 鏡に映る彼女の表情は恋する乙女と言うよりは、発情した獣と呼ぶ方が近いかもしれない。

 

「うん……♡」

 

 木芽は息絶えている男の懐から財布を抜き取り、有り金を全て奪い取る――これで軍資金も完璧だ。

 彼女は高鳴る胸を押さえながらホテルの一室を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ――職場体験3日目。

 

「――ま、昨日はああいったけど、あんま気負わないで! 学生さんを危険な目に遭わせるわけにもいかないしね!」

 

 葉隠はアイズと共にパトロールしながらヒーローの仕事についてレクチャーを受ける。

 殆どのヒーローは日中はパトロール、夜は通報があれば即座に駆け付け事件の解決。給料は完全に歩合制で、その月の活動量に応じた報酬が得られるという仕組みだ。

 

「ま、ワタシみたいに特定のヴィランを追うってのは少数派かもね。今時は現行犯を華麗に逮捕~みたいなスタイルの人多いしね♪」

「え、そうなんですか?」

「だって事件解決しなきゃお給料もらえないからね。ほら、CM出てるヒーローだっているじゃない? そういうの、悪くないかもだけど――ワタシはそういうのは性に合わないの」

 

 アイズは目を細めて笑う。口元はマスクのせいで見えないが、そちらも同様に笑顔を浮かべているようだった。

 

「そっか~社会って大変」

「キミも方向性は考えといた方がいいよ~……っても、それじゃヴィジュアル勝負は難しそうね」

 

 何気ないアイズの言葉が葉隠の心を傷つける。

 誰からも見えない。その事実に対して前向きな気持ちになれるようになってきていたが、それでも他人から面と向かって言われてしまうと少し気になってしまう。

 結局、どんなに強がっても他の人から自分の姿は見ることができない。

 そう、緑谷のようなことを言ってくれる人など――

 

(……あれ?)

 

 緑谷の顔を思い浮かべた瞬間、彼女の胸がざわついた。

 締め付けられるような、キュンとするような不思議な感覚。

 

「あ、ごめん……デリカシーなかったね」

「っいやいやいや! 見えないのが私の長所っ!」

 

 しかしその感覚の答えに至る前にアイズから話しかけられ、疑問は吹き飛んでしまった。

 

「でもさ、キミって透明化を解除できないの? ほらワタシは――」

 

 と、アイズは自分の体表を変化させ、一瞬だけ姿を消す。

 

「自分から透明になれる。キミも頑張ったら見えるようになるのかもね」

「……!」

 

 透明化の解除。

 そんなこと試したこともなかった。

 

「あ、でも今試したらダメよ? すっぽんぽんで透明じゃなくなったらいろいろとマズいしね」

「もう! わかってますよ!」

 

 葉隠は全身で抗議の意を示していたところ、ふと顔なじみの姿が目に入る。

 

(あ、牛込さんだ)

 

 牛のような角を持った女性、牛込。彼女はパーカーにジーンズ、地味なキャップというラフな姿で歩いている。

 そんな彼女の腕を恥ずかしそうに掴みながら歩いているのは――

 

「ぇ……?」

 

 ――『ワタシが今追ってるのはこのヴィラン』

 

 昨日のパトロール前に見せられた写真のヴィラン、ギノガ。

 瓜二つな容姿をしている少女だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

(……誰かと一緒に遊ぶなんて、いつぶりかしら?)

 

 牛込は一人、ため息をつく。

 その両手には大量の紙袋を持っており、これまでの()()()で獲得した戦利品が収められていた。

 

(にしてもあの子、変わってるのね……)

 

 彼女はデート相手が用を足している間、手持無沙汰にスマホを見つめる。

 トークアプリの履歴には木芽から届いたおびただしい量のメッセージが残されており、相手の()()()をうかがい知ることが出来た。

 

「! ……覗きが趣味なの? ナーゴ」

「っな、なんでわかったんですか?」

 

 牛込が気配の主に声をかけると、どこからともなく声が響き渡る。

 姿は見えないものの、ナーゴ――葉隠が近くにいるようで、気づかれたことで慌てふためく声が聞こえた。

 

「……なんとなく。それにしても、全身透明ってすごいね」

「いやぁ……それほどでも――ってそうじゃなくて!」

 

 葉隠が身振りで感情を表現しているのが伝わる。

 牛込は耳に吐息がかかるのを感じる。どうやら耳打ちで伝えたいことがあるようだ。

 

「あの、一緒にいた女の子なんだけど……その」

「……()()()()()()()()()()ってこと、かしら?」

「っ!」

 

 息を呑む声が聞こえる。牛込は薄々察していたことが事実であったためため息をついた。

 

「……やっぱり――なんか、そんな気がしたのよね」

「だっだったらなんで一緒に――あ、もしかして脅されてる、とか?」

「違うっての」

 

 牛込は目元を隠すようにキャップのつばを下ろす。

 

「その……言っても笑わない?」

「……もちろん!」

 

 彼女の頬が少し赤らむ。照れているのか、顔を葉隠がいるであろう方から背けている。

 

「……あの子と――カエデと初めて会ったとき、すごい冷たい目の子だと思った」

 

 ――『お客様。他のお客様の迷惑になるので、やめてもらえませんか?』

 

 二人の出会いはコンビニ。入口でチャラ男たちに絡まれていた木芽を、牛込が店員として助けたのが始まりだった。

 

「でも、なんだろう……あたしはカエデが――()()()()()()()()()()()()()()()()()の」

「っ!」

 

 どこか虚ろで、目に映るもの全てに絶望しているような暗い瞳。

 でもどこかで止めてくれる誰かを探しているような、深い悲しみに飲まれてしまっているような瞳に見えたのだ。

 

「……だから、さ。もう少しだけ待ってくれない? あたしは……カエデを助けてあげたい」

「っ……で、でも」

 

 ――まったく、人を助けるのはヒーローの仕事だぞ?

 

「はっ!?」

 

 どこからともなく響いてきた声に牛込は驚き身を竦ませている。

 

 ――仕方ない。そこまで言うならやって見せてよ、バッファローちゃん。キミは本当にあの子を助けられるか、どうか

 

「いいんですか? アイズさん」

 

 葉隠はどこかで姿を消して隠れているアイズへ問いかける。

 

 ――ここでギノガとバッファローちゃんを引きはがすのは簡単。でも、逆上したギノガが捕まるまでに何人殺してしまうかわからないわ。

 

 念願のデートを邪魔されたとあってはギノガ――木芽も怒り狂うことだろう。

 即座に逮捕しようにも毒の胞子をまき散らし、一般人へ被害が広がってしまうかもしれない。

 

 ――だからここでバッファローちゃんを保護しないのはヒーローとしての合理的判断。安心して、このワタシ――“スニークヒーロー”アイズがちゃんと貴方たちを見張っておく。責任もワタシがとるからさ♪

 

 被害を広めないようにする合理的判断――に見せかけ、アイズは牛込の意志を尊重したのだ。

 幸いにもここには姿の見えない()()()()なヒーロー(とその卵)が控えている。万が一が起こりそうなら不意討ちで制圧してしまえばいいのだ。

 

「ん……ありがと」

「――大っ変! お待たせいたしましたお姉さま♡」

 

 トイレから飛び出してきた木芽は恥ずかしそうに牛込の手を取る。しかし、何かに気づき顔を顰める。

 

「……お姉さま? もしかして誰かとお会いになっていました? 知らない女の臭いが」

「……そりゃするでしょ。場所的に」

 

 妙に鋭いカンに牛込は戦慄するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「えっ……嘘?」

「そりゃそうよ。でも、あの場でギノガを捕らえるリスクがあったのは確か」

 

 牛込、木芽の二人を尾行しつつ、葉隠はアイズから明かされた事実に目を見開く。

 

「ギノガの個性の厄介な点は“常に体内に毒の胞子が生成されている”ってところ。だからちょっと油断するとたちまち猛毒の胞子がまき散らされちゃうのよ」

 

 木芽の生成する胞子は嫌気性であるため空気中での毒性は著しく弱まるものの、少なからず被害が及ぶのも確かである。

 強引に確保できる術があったとしても、捕縛時のもみ合いで胞子が放出されてしまったら大問題である。

 

「……ま、安心して。バッファローちゃんに危害は加えさせないわ。恐らくギノガは“行為(さつじん)”するために人気のない場所へ連れ込む――そこが逮捕のチャンスよ」

 

 人気のない場所であれば、万が一胞子がまき散らされても被害は最小限に抑えられる。

 アイズは牛込を囮として安全に捕縛できるタイミングまで待つつもりなのだ。

 

「職場体験だから、ワタシからキミへアドバイス――“人は絶対に変われない、悪人ならなおさら”、ね」

「っ!」

 

 葉隠は背筋が凍る様に感じた。

 人のよさそうだったアイズの瞳が、急に冷たくなったからだ。

 アイズは再び体色を変化させ風景に溶け込んだ。葉隠は気配を殺しながら尾行を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 夢見心地。

 木芽はまさにそのような心持だった。

 憧れのお姉さまとのデート。プランは思い描いていた通りに進み、牛込も楽しそうにふるまっていた。

 

(ああ……幸せ♡)

 

 牛込の腕に抱き着きながら、木芽は来るべき瞬間が刻一刻と迫っていることを意識する。

 デートプランの最後――それはお姉さまと最初で最後のキスをして殺害すること。

 

(できることなら……この時間が少しでも長く続きますように……)

 

 彼女は名残惜しさで胸がいっぱいとなる。

 少しでも、一分一秒でもこの幸せな瞬間を続けていたい。

 いつまでも、いつまでも、幸福を享受していたい。

 

(ダメよ楓、そんなことをしたらいけないわ――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 幸福はいつか風化し、崩れ去ってしまうもの。

 ならば幸せな思い出が台無しにならぬように――幸せな瞬間のまま終わらせる。

 

「……ね、カエデ」

「はい?」

「……どうして、あたしのことを()()()に誘ったの? ……まあ、同性が好きってだけかもだけど、だったらあたしよりいい人がいたんじゃない?」

「うふふ……それを聞きます? もちろん……あの時、助けていただいたからです」

 

 ――『お客様。他のお客様の迷惑になるので、やめてもらえませんか?』

 

 ふと立ち寄ったコンビニ。間の悪いことに入口でたむろしていたチャラ男たちにナンパされ困り果てていたところにお姉さま――牛込は現れた。

 もし助けてもらえなければ、チャラ男たちを()()()()よかった。

 

 ――『大丈夫?』

 

 優しく差し伸べられた手の感触を、彼女は今でも覚えていた。

 何の打算もないまっすぐな心配は、濁り切った彼女の心を温かく包み込んでいた。

 

「……そ。助けただけなのに大げさね」

「~~~~っ♡」

 

 照れたような牛込の表情に、木芽は思わず心を撃ち抜かれた。

 普段は凛々しいお姉さまの見せる弱り切った表情は恋する乙女の心を射貫いていた。

 

「…………」

 

 きれいな夜景の見える海辺にたどり着く。

 そこは今日のデートの終着点。

 適度に人通りが少なく、誰も邪魔することのない格好のスポット。

 ここで幸せな思い出が完成するのだ。

 

「お姉さま……お願いがあります」

「ん……どうした?」

「……っ()()、してもいいですか?」

 

 はた目から見れば、それは純情な少女が勇気を出した告白。

 しかし彼女を知るものから見れば、殺人の宣言。

 牛込は困ったようにキャップを脱いで乱れた髪を整える。

 

「……それって、あたしを()()()()ってこと?」

「ぇっ……」

 

 心臓を鷲掴みにされたような感覚だった。

 何も知らないはずのお姉さまが、自分の本当の姿を知っている。

 知っていてなお、今日一日付き合ってくれていたのだ。

 

「気づいて、いたの?」

「……カエデがあたしのバイト先に来た日、必ず近くで人が殺されてる。手口はいつも同じ――経口による毒物の投与……ま、確信したのは今日だけど」

 

 気が付けば涙が零れ落ちていた。

 

「酷い人……知っていて、弄んでたのね……」

「違うよ」

「ぁっ」

 

 木芽は抱き寄せられて胸をときめかせる。やわらかな甘い匂いが心を落ち着かせる。

 

「あたしは、カエデの事をもっと知りたかった。だってそうしなきゃあんたを()()()()()()からさ」

「……たす、ける…………?」

 

 牛込の言葉に疑問符が浮かぶ。

 言葉の意味を理解することができなかった。

 

「そ、助けたいと思った。理由はうまく言えないけど……初めて会ったとき、助けて欲しそうな顔をしてた」

「!」

 

 その瞬間、木芽の脳裏に幼いころの記憶がよみがえる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 4歳の時、木芽 楓は個性に目覚めた。

 父の個性とも、母の個性とも違う、所謂“突然変異”の個性だった。

 

『――では、お薬を処方しましょう』

 

 毒の胞子の生成――それは齢4の少女にはコントロールできない力だった。

 笑ったりした拍子に体内の胞子が体外へ放出されてしまう。いとも簡単に毒物を放出できてしまう個性を制御するために医者は薬を処方した。

 体内の胞子を無毒化し、排泄物と共に排出する薬だ。

 だが、この医者の判断は間違っていたと言わざるを得なかった。

 

『――っぇえええっ!』

 

 その薬は少女にとって劇薬だった。

 彼女は処方された薬を摂取したことで体調を崩し、通っていた保育園で嘔吐してしまっていた。しかも他の子と遊んでいる最中でのことだった。

 この出来事は彼女の心を大きく傷つけ、引っ込み思案な性格を形成させることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 時は進み、小学校に入学。

 木芽少女は嘔吐がトラウマとなり、新たな環境で友達を作ることができなくなってしまった。

 またみんなの前で吐いてしまったら、きっと嫌われてしまう。そんな思いを少女に抱かせていた。

 

『――きゃはは! ()()()()()()()が来たわ!』

 

 そんな彼女を面白がって、いじめる者がいた。噂に尾ひれはひれが付き、木芽は“病原菌をまき散らす”個性を持っているとされ、クラス中から除け者にされてしまっていた。

 特に、席の近かった女子はことさら彼女を虐げ、時に暴力じみた行為をすることもあった。

 トイレに呼び出して水をかけたり、彼女の持ち物を隠して恥をかかせたり、木芽が自己主張しないのをいいことにいじめは次第にエスカレートしていった。

 

 ――ほんの出来心だった。

 ある日、彼女は“胞子を無毒化する薬”を飲まずに学校へ向かった。

 薬が引き起こす強烈な嘔吐感はすっかりなく、いまだかつてないほどに爽快な感覚を味わっていた。同時に、体内では猛毒の胞子が無毒化されることなく蓄えられていった。

 

『――なにニヤニヤしてんのよ。気持ち悪い』

 

 その日も女子トイレに呼び出され、いじめが行われていた。

 主犯格は気分がよさそうに笑っている木芽に苛立ち、殴りつけようと拳を振り上げた。

 

『んッ』

『んむっ!?』

 

 彼女はすかさず主犯格の体を引き寄せ唇を押し当てた。

 たちまち体内から胞子が放出され、自分を虐げ続けてきたいじめっ子の体を犯す。

 

『――リンちゃん!?』

 

 取り巻き達は慌てて木芽を引きはがすも時すでに遅し、主犯格――リンは既に毒の胞子に冒され、その体を痙攣させていた。

 

『あはは……』

 

 初めてやり返すことができて、木芽は不思議と充実感を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 結論から言えば、いじめの主犯格であるリンは一命をとりとめた。

 前日まで飲み続けていた薬のおかげで胞子の毒性はある程度弱まっており、死に至らしめることは無かった。

 それでもリンは重篤な障害を負い、かつてのように過ごすことはできなくなっていた。

 

『――もう沢山よッ!』

 

 この事件は重要な部分がそぎ落とされ噂が広まっていた。

 “凶悪な個性を持った子が、同級生を傷つけた”。

 背後関係など第三者にはあずかり知らぬことだ。何も知らない()()()()()は木芽の両親を責め立て、日夜見当違いの罵声を浴びせ続けていた。

 

『仕方ないだろ! それが楓の()()なんだ……俺達できちんと育ててあげなきゃ』

『もう私には無理よッ! あの子、ハガネさんが死んでなくて残念、なんて言ってるのよッ! このままじゃヴィランまっしぐらじゃないの……!』

 

 幸せだった家庭は一夜にして崩れ去ってしまった。

 少女の()()()()()復讐劇は、家庭崩壊の引き金となってしまったのだ。

 

『……ねえ、あなた。もし、あの子が()()()()()()()、今より幸せになれるかしら?』

『そりゃ……あんな個性を持つよりは、マシかもしれないけど』

 

 木芽は夜中、トイレに起きた時にその会話を聞いてしまった。その時の母親の憑りつかれたような表情は、今でも記憶から離れない。

 

『私、こんな噂を聞いたことがあるの……“個性を奪ったり、与えたりできる人”がいるって』

『まさか……楓の個性を?』

『ええ、そうよ……知り合いのアオヤマさんの所のユウガ君も、その人に個性をもらったって聞いたのよ。だったら楓から……個性を取り上げれば……!』

 

 猛毒の胞子を生み出す個性を取り上げてしまえば、木芽はただの気弱な少女に成り下がる。

 いじめられても自衛する手段の持たない、体のいいサンドバックに成り下がってしまう。

 

(それは、やだな……)

 

 両親は娘がいじめられていることに気づいていなかった。

 彼らもまた背後関係を一切知らず、娘から事の詳細を聞こうともしなかったため、娘が意味もなく個性を他人に振るったと勘違いしているのだ。

 故に、娘は理由もなく同級生を傷つけ、あわよくば殺害しようとした異常者だと思い込んでいたのだ。

 

(……こせい、なくなっちゃうの、やだな)

 

 両親を説得して、個性を失くさないようにしたい。

 しかし、自己主張が苦手な少女に対話という手段を取ることはできなかった。

 その代わり、絶対的に信頼できる手段を持っていた。

 

(……パパも、ママも、()()()()()()()()()()

 

 次の日の夜、両親が寝静まった頃を見計らって彼女は寝室に忍び込んだ。

 夕食の後、浴びるように酒を飲んでいた父は酒臭いいびきをかいて寝ている。母の目元には涙の跡があった。

 

(きっと、わたしのこせいがなくなったら……もっとやなことになる)

 

 木芽少女はこれからの未来を想像し、転落していく様を思い描いてしまう。

 自分がいじめられ、学校に行けなくなって、どこかに引っ越してもいずれ個性で誰かを傷つけたことがばれ――幼い頭で考えても、状況が好転しないことははっきりとわかっていた。

 

『……パパ……だいすきだよ……!』

『っ!?』

 

 父親にキスをし、胞子を注ぎ込む。毒は瞬く間に体中に回り、程なくして息絶えたことを確認する。

 

『……ママ……こんなこせいで、ごめんね……』

 

 唇を近づけようとしたところで母親は目が覚めてしまった。

 

『かえ、で……?』

『っ……ママ!』

 

 唇が重なり合う。母は抵抗することなく娘からの接吻(どく)を受け入れ、静かに息絶えた。

 

『っ……ぅあああああん』

 

 暗い部屋に、少女の慟哭が響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「――私を……助ける?」

 

 またもや情報が正しく伝わらなかった結果、彼女は幼いながらに両親を殺した凶悪なヴィランとして更生施設に入れられることになる。

 胞子を出させないよう食事の時以外は口枷を嵌められ、言葉を発することすらままならない生活。

 更生施設の職員は善人ばかりではなく、陰ながら木芽に嫌がらせをしていじめる者もいた。

 大好きだった両親を殺したことで木芽の殺人に対する抵抗感は無くなっていた。

 口枷を外されたタイミングで、自分をいじめていた職員を殺害。騒ぎを聞きつけてやってきた他の職員たちも次々とその手にかけ、施設を抜け出した。

 

「だれも……そんなこと、言わなかった」

 

 もし情報が正しく伝われば。

 もし誰かが木芽少女の話をちゃんと聞いてあげていれば。

 もし彼女に、庇ってくれる誰かがいれば。

 彼女の人生は、もっと違ったものになっていたかもしれない。

 

「……っでも、もう手遅れです。だって……人を殺すのって、とても楽しいの

「っ!」

 

 木芽は頬を涙で濡らしながら凄惨な笑みを浮かべる。

 もうすでに手遅れだった。

 壊れ切った彼女の精神(こころ)は、真っ黒な悪に染まり切ってしまっていた。

 

「……人を、いじめているくせに、善人のようにふるまって幸せに生きている人を殺すと――いいことをした気分になるの!」

「なに……言って」

 

 牛込は困惑していた。

 説得すれば改心してくれる、()()()()()()()()()()であれば聞き入れてくれるのではないか、そんな期待は崩れ去ってしまった。

 

「っみんながみんな、誰かをいじめたりしてるわけじゃないわよ!」

「いいえ! おんなじよ! 誰も私の話なんて聞いてくれなかった! いじめられてるのに誰も助けてくれなかった! みんな――おんなじなのっ!」

 

 木芽は牛込の体に縋りつく。

 ずっと蓋をされ続けてきた思いが解き放たれ、無我夢中でそれをぶつけ続ける。

 

「お姉さま……貴女は優しい人よ。だから私は好きになった。だから……貴女を嫌いになる前に、終わらせるの……!」

「待って……っ!」

 

 バッファローの膂力をもってしても、暴走する少女の怪力を振り払えなかった。

 

「話を……聞けよッ!」

「嫌ッ! もう話すことなんて――ないのっ!」

 

 牛込は指先が痺れるのを感じる。

 興奮した木芽の吐息には毒の胞子が混ざっており、それを吸い込んだ牛込の体の自由を奪いつつあった。

 

「――やめてっ!」

 

 唇が触れ合う寸前、木芽は見えない何かに羽交い絞めにされて引きはがされる。

 

「……っナーゴ?」

 

 見えない何か――それは服を脱ぎ去った葉隠だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「はっ……はなしてっ!」

 

 木芽は拘束を抜け出そうともがくも、葉隠の力が緩むことは無かった。

 

「――ごめんねバッファローちゃん、迷って判断が遅れちゃった」

 

 牛込と木芽の間の空間が歪み、アイズが姿を現す。

 

「少しだけ期待したよ……変われる訳ないのにね」

「ヒー、ロー……?」

 

 アイズは虹色の髪をかき上げながら慎重に木芽へ近づく。

 

「誰も話を聞いてくれなかった、か……そういうキミだって同じじゃないか」

「……っどう、いう」

「七色 光……それがワタシの母の名前。キミがいた更生施設で働いていた」

 

 アイズ――本名は七色 変化。

 彼女の母親はヴィラン予備軍ともいえる少年少女を更生させる施設の職員だった。

 

「母は毎日ワタシにこう言っていたよ――“人は必ず変われる。悪いことをしちゃう子は、道を正してあげれば必ず変われる”ってね」

 

 七色 光は性善説を信じる純粋な善人だった。

 人間は誰しも善として生まれ、悪に走ってしまう人間は進むべき道からずれてしまっているだけ。それを正してやれば必ず正しく生きることができる。

 そう信じてやまない女性だった。

 

「……ご立派な考えですこと」

「白々しいね。母は()()()()()()()()()()

「へ……っ?」

 

 アイズは木芽の胸倉を掴む。

 

「母はキミのようなどうしようもない悪人だってやり直せるって思ってたんだ! それなのにキミはその想いを踏みにじって殺したっ!」

「……わた、しは……」

 

 木芽の抵抗が弱まる。

 葉隠はそっと、掴んでいた腕を放してやる。

 

「母はきっとキミと話そうとしていたはずさ。でもキミはそれを拒否した……別にキミに変わって欲しいとは思ってない。ただ……キミに覚えておいて欲しいだけだ」

 

 アイズは手錠を取り出し、木芽の右手に掛けようとその手を取る。

 

 

ポ()ダ()()!」

 

 

 突如、叫び声を上げながら骸骨のような異形――ジャマトが姿を現す。

 

「っジャマト!?」

 

 葉隠は咄嗟にドライバーとバックルを探すも、自分が今何も身に着けていないことに気づく。

 

「何……あれ?」

 

 アイズはジャマトを新手のヴィランではないかと警戒し身構える。

 

「ジャアアァァアァッ!!」

 

 ジャマトは発狂するかのように叫びながら、両手の平から自分の複製を生み出す。

 

「っインビジブルガール! 一般人の避難を!」

「は、はいっ!」

 

 葉隠は変身するのを諦め木芽と牛込を避難させにかかる。

 

「(ナーゴ! ドライバーは!?)」

「(もってないですっ!)」

 

 牛込は小さく舌打ちしつつ、懐に手を伸ばす。

 

ポ()ダ()()! ポ()ダ()()!」

「やばっ」

 

 ジャマトは次々と手のひらから複製を生み出し、驚異的な速度で迫ってきていた。

 鋭い爪を振り上げ、無防備な牛込の体を貫かんと振り抜く。

 

「っお姉さま!」

 

 真っ赤な血が噴き出す。

 ()()は自分の胸から飛び出した異形の手を呆然と見つめている。

 

「そん、な……」

 

 鮮血は葉隠に降りかかり、透明な体のシルエットを浮かび上がらせている。

 

「カエ、デ……?」

 

 突き飛ばされ地面に倒れていた牛込は、目の前で起きたことが理解できずに呆然としていた。

 

「……ッ」

 

 ジャマトの腕が抜かれ、木芽は力なく崩れ落ちる。

 

「っくそ! おい! カエデっ!」

 

 牛込がジャマトの複製体殴り飛ばすと、それは泥のように崩れ落ちる。

 彼女は近くにいた複製体を一掃すると、倒れている木芽に駆け寄る。

 

「っダメ……! 止まらない……!」

 

 葉隠は傷口に手を当てて必死に止血しようとしているも、血はとめどなく流れ出て彼女の透明な手を濡らしている。

 

「……っいい、の。きっと、これが……むくい、だから」

 

 木芽は力なく微笑んでいる。

 そしてゆっくりと葉隠の手を掴むと傷口からどける。

 

「……おねえさま……わたし、とても、しあわせでした……わたしと、でーと、してくれて……ありがとう……じゅうぶん、すくわれました」

「っカエデ……! まだ、助かるわっ!」

 

 助かるはずもない。

 この超常社会の医療をもってしても、胸に穴を開けられてしまえば治療は絶望的だ。

 

「……いい、んです……このしあわせな、きおくを……こわしたく、ないから」

「っ……いいわけ、ないでしょ……っ!」

 

 吐息が次第に弱くなっていく。

 木芽の瞳から光が消える。

 

「――っ!」

 

 凄まじい怒気に葉隠は思わず身を竦める。

 牛込はデザイアドライバーを装着しバックルを装填、そして叫び声を上げながら変身してジャマトへ突撃する。

 見れば、アイズはジャマトに敗れ意識を失っている。

 

「……私、また……っ!」

 

 消沈する葉隠の下へ、スパイダーフォンがドライバーとバックルを運んでくる。

 

「っ! 変身!」

 

 ――BEAT

 

 葉隠――ナーゴもまた、変身してジャマトへと立ち向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 二人のライダーの活躍により複製体を生み出すジャマトは討伐される。

 その後、近くをパトロールしていたヒーローによって警察と救急車が呼ばれることとなった。

 

「……ゲーム内だったら、カエデはきっと助かってた」

 

 木芽の亡骸を運ぶ救急車を見送りながら、牛込は悔しそうにつぶやいた。

 通常、ジャマトの被害者たちはゲーム終了時に全てリセットされる。しかしゲーム外での死傷者までリセットできるほどデザイアグランプリは全能ではない。

 警察からの取り調べなどが諸々終わり、気が付けば日付の変わる時刻となっていた。

 

「――ごめんね、ワタシ、あれにあっさり負けちゃってた。ヒーロー失格だよ」

「いえっ! そんな……」

 

 夜も遅いとあって、葉隠は最寄りの駅までアイズに送ってもらっていた。

 

「ハガクレちゃん。今日の出来事も、ヒーロー活動をするうえで避けては通れないことよ。目の前で誰かが死んじゃうことなんて、それこそいくらでもある」

 

 ショービズ色の強いヒーロー社会。

 TVの向こうではヒーローが煌びやかに活躍しているが――現実はそうではない。一歩間違えば命を失いかねない、一つのミスが多くの命を失う結果につながることだってある。

 

「もうヒーローなんかなりなくないっ! って思うのも、一つの選択よ。それでもキミがヒーローになりたいってなら……その時はワタシの事務所においで!」

「……はいっ!」

 

 葉隠は努めて明るく返事をした。

 表情は硬かったかもしれないが、おそらく相手に気取られることは無かっただろう。

 

(……ヒーローなんてなりたくない、か)

 

 電車を待ちながら葉隠はアイズからの言葉を反芻する。

 

(ヒーローにはなりたい……でも、もっと強くなりたいな……)

 

 もっと強ければ、あのヴィランの少女は命を落とさずに済んだはずだ。

 変身せずとも、守りながら戦えたかもしれない。

 

(緑谷君とか、エースさんとか、牛込さんみたいに……強く)

 

 思い浮かぶのはデザイアグランプリでしのぎを削るライバル達。

 なぜか真っ先に緑谷の顔が思い浮かんで顔が赤くなる。

 

(もっと強くなって……私は――()()()()()()()()()()()()()()()

 

 少なくとも、ジャマトがいなければ今回の被害は生まれなかった。

 そもそも、ジャマトなどいなければデザイアグランプリを行う必要もなく、失われる命だって減らせるはずだ。

 

(だから……今の戦いを忘れちゃダメなんだよね。次こそ、私が勝たなきゃいけないから)

 

 迷いはもうなかった。

 勝ち抜けて、優勝して、次のデザイアグランプリにも参加し優勝する。 

 そして今度こそ、理想の世界を叶えるのだ。

 

(よーし! 頑張るぞ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




















これにてヒロアカサイドの“ヒーロー殺し編”が終了となります。全然爽快感の無い展開ですみません……
今後の展開を考えた時、葉隠ちゃんの活躍が全然ねーな……と思ったのがきっかけでヒーロー殺し編を追加しました。書いている余裕はありませんでしたが、エースさんは飯田君と轟君と共にヒーロー殺しと戦っています。
そして読み返してみると……あれ、思ったより葉隠ちゃん活躍できてないな……
次回、幕間で合宿前の話を挟んでから林間合宿編に取り掛かりたいと思います!
ヒロアカ原作とだいぶ乖離していますが……どうなる合宿編!?
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