【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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評価してくださった方々、本当にありがとうございます! ご期待に沿えるよう精進していきます! 
お気に入り登録してくださってくれている方々もありがとうございます! お気に入りが増えるたびにモチベも上がっていってます!

そんなわけで異変編も終盤に突入です!
暗い展開が続くかもですが、もう少しだけお付き合いください!


※昨日二話更新しているので、話が飛んでる? と感じた方は前回を確認してみてください。





















24 異変Ⅺ/それぞれの決意

――――

――

 

「――緑谷さん!」

 

 八百万は緑谷を呼び止めようとするも既にその背中は森の中へ消えてしまっている。

 

「……っこれ、は?」

 

 彼女は緑谷が落としていった物に気づきそれを拾い上げる。

 リボルバー銃を思わせるバックルだ。

 

「サポートアイテム……ではなさそう、ですわね」

 

 どうやら()()()()()()()使うことが想定されているようで、バックルの裏面には四角いでっぱりがついていた。

 

 ――『――それを開けるべき時が来たら、開けなさい』

 

 不意に、腰に付けたポーチの中にある小箱に意識が向く。

 中身も知らされず父から渡された謎の箱。

 彼女は不思議と、それを開ける時が近づいているのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「ジャ・・・・・・」

「え……」

 

 ひみつきちで一人物思いに更けていた洸汰は突如として現れた異形――ジャマトに恐怖し後ずさる。

 

 ――合宿所内に未確認生命体出現! みんな逃げ

 

 マンダレイから送られてきたテレパスも不自然に途切れ、彼の恐怖は頂点に達する。

 

「っな、なんで……!」

 

 慌てて洞窟内へ逃げ込もうとするも、見えない壁のようなものに阻まれて逃げ込めない。

 

「……ジャァ」

 

 ジャマトの両腕がうごめき、筋繊維のようなものが生み出される。

 それは、洸汰の両親の敵――マスキュラ―の個性に他ならなかった。

 

 ――『――犯人は筋繊維を肥大化させる個性で――』

 

 ――『――変死した遺体の身元が判明しました。ヴィラン名:“血狂い”マスキュラ―、本名:今筋 強斗、ウォーターホース夫妻を殺害したヴィランであり――』

 

 幼い洸汰には事態がうまく呑み込めていなかった。

 しかし相手の個性がマスキュラ―の個性と同じであることに気づくだけの知恵はあった。

 

「……ブッコ、ロス」

「たっ……助け」

 

 ジャマトの拳が振り下ろされる。

 

「――っ!」

 

 命中する寸前、緑色の閃光が迸る。

 洸汰は寸前のところで助けられ、一命をとりとめる。

 

「はぁっ……はぁっ……まに、あった」

「おまえ……なんで」

 

 個性を使って全力でかけてきていた緑谷は、肩で息をしつつジャマトと相対する。

 ジャマトは筋繊維で体を肥大させ、新たな敵を迎え撃つ準備をしていた。

 

「っ下がってて――ここは、僕が」

 

 緑谷はバックルを取り出そうとポケットをまさぐるも、異変に気付く。

 

「あれっ? マグナムバックル――まさか、落し――っ」

ピ()アーブ()!」

 

 バックルを探す緑谷だったが、そんな隙を与えてくれるほどジャマトは甘くない。

 迫りくる拳をさばきつつ、代わりにブーストバックルを取り出す。

 

「出し惜しみしてる場合じゃ、ないッ!」

 

 ――SET

 

 ブーストバックルは一発逆転を可能にするだけの能力を秘めた強力なバックル。

 その強力さ故、必殺技を放てるのはたった一度のみ。使いどころは慎重に見極めなくてはならない。

 

「変身っ!」

 

 ゲームでの勝利と洸汰の命を天秤にかけ、後者を取った。

 

 ――BOOST!

 

 緑谷はタイクーンに変身し、ジャマトへと対峙する。

 

「安心して、洸汰くん……! 僕が、必ず助けるからッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「はぁ……ここまで、かな?」

「なに、諦めてやがんだ!?」

 

 エースと爆豪は突如として出現したジャマトと戦っているも形勢は不利。

 弱音のようなものを吐いたエースに対し、爆豪は鼓舞のような激励をする。

 

「……爆豪。君はもっと自分の弱さを自覚した方がいいよ。傲慢な態度では誰もついてこない」

「あ?」

「才能は私以上なんだ。いいヒーローになってもらわなきゃ困る」

「……寝言は死んでから言え」

 

 相変わらずな物言いにエースは苦笑する。

 

「第一、俺はまだお前に()()()()()()()勝利はできてねェッ! 生き延びて、決着つけんぞ!」

「ふふ……それは無理さ」

 

 エースはデザイアドライバーを取り出して装着する。

 

「……何、言って」

「だって――これで君たちとはお別れだからさ」

 

 ――SET

 

 エースはニンジャバックルを装填し起動する。

 

「変身」

 

 ――NINJA

 

「さよならだ、バクゴウ。君のことは嫌いだったが……それなりに楽しかったよ」

 

――READY FIGHT!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「――そこ! 右から二番目の木の裏」

 

 ちょうど中間地点付近にいた障子と葉隠は、プッシーキャッツの一人、ラグドールの指示のもとB組の者達を探しながら避難をしていた。

 

「ジャァ……」

「――っ!」

 

 追いかけてきていたジャマトは指先から糸を放ちラグドールの右腕を封じる。

 

「切れない――みんな先に逃げて! まだその先にも何人か()()()子がいるよ! 障子くん! 君ならできるね?」

『あ、ああ……!』

 

 ラグドールは共に逃げることを断念し、自ら殿となってジャマトを喰いとめることを決意した。

 葉隠はその姿を見て立ち止まる。

 ドライバーとバックルは念のため持参していた。今すぐ変身しないのはクラスメイトに正体が割れないようにするため。正体がばれればデザグラのことを隠し通せる自信がないからだ。

 

「……っ!」

 

 ここで逃げればきっとラグドールは命を落としてしまう。

 でも変身して戦えば、助けることができるかもしれない。

 

『おい葉隠! 呆けてる場合じゃ』

「ごめん障子君……私」

 

 ――SET

 

 葉隠はドライバーを装着、ビートバックルを装填し変身する。

 

 ――BEAT

 

『葉隠……その、姿は』

「私……戦うよ。だから――みんなを助けるのはお願いねっ!」

 

 葉隠――ナーゴはビートアックスを手にジャマトへと立ち向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「――っマンダレイ!」

「ジャッジャッジャッ……」

 

 ジャマトは小さなビー玉のようなものを手に笑っている。

 その足元には左わき腹からおびただしい量の血を流すマンダレイの姿があった。

 

「くっ……体が――!」

 

 プッシーキャッツの一人、虎は何か引力のようなものに引き寄せられる。

 

「……ピ()アーブ()

 

 引き寄せたヴィランは刀で虎の体を貫く。

 彼(?)は吐血するも、ジャマトの首をひっつかむ。

 

「ふぬっ!」

「ジャッ」

 

 ジャマトは首を引き抜かれて体を消滅させた。しかし虎に重傷を与えることに成功し、生徒を守りつつの戦闘を困難にした。

 

「~~っ!」

 

 更にピクシーボブもまた、超高温の炎を扱うジャマトの攻撃を受け意識を失っている。

 

「(せめて――生徒だけでも)」

 

 マンダレイを手に掛けたジャマトはその手を虎へと向ける。

 表情は読み取ることはできなかったが、どこか殺しを楽しんでいるようにも見えた。

 

 ――ZOMBIE...

 

 恐怖に染まる生徒たちを前に、救世主が姿を現す。

 

「――ッ遅かったわね……」

 

 バッファはゾンビブレーカーでジャマト達を退治しつつ、登場が遅かったことに舌打ちした。

 

「っ他は全員無事? 無事ならあたしから離れないで! 守れなくなる」

「――待ってくれ! 貴方は何者だ? このヴィランたちの仲間なのか?」

 

 唯一、ヴィランと対峙したことのあった飯田が奮起しバッファへ問いかける。額には冷や汗を浮かべ、体は小刻みに震えながらも毅然と対応していた。

 

「……あんたたちの敵じゃないわ。少なくともね」

 

 バッファ――牛込は信用を得るために変身を解除する。

 中身が人間であったことが分かり、生徒の間にわずかな安堵の空気が流れる。

 

「……あたしだって知ってること全部話してもいけど、それは“ルール違反”だからできない。これで満足かしら?」

「っ……!」

 

 凄まれた飯田は言い返せずに押し黙ってしまう。

 

「……あと、誰かあの人の出血止めなきゃ死んじゃうわよ。いつもならクリア時に襲われた人は生き返るけど――今回はどうなるかあたし達にもわかんないから」

 

 牛込はスパイダーフォンを取り出し画面を見つめる。

 普段はゲームのルールやランキングが参照できるが、表示は文字化けしてしまっており全くと言っていいほど全容が分からない。

 

「……あたしは戦うしか能がないけど――あんたらは違うでしょ、雄英生」

 

 ぶっきらぼうだが、どこか暖かさの感じる言葉に生徒たちは平常心を取り戻すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「――ふっ! はっ! せいっ!」

 

 宿舎にもジャマトは出現していた。聖拳はひとまず変身せずにジャマトへ立ち向かう。

 

「出水さん! あんたは一般人だ! 下がっていてくれ」

 

 これらのジャマトも個性に似た力を持っていたが、相澤の個性によって機能は停止していた。

 相澤はジャマトの攻撃を捕縛布でいなしつつ、前線で戦う聖拳を諫める。

 

「猪口才な! こんな時にヒーローも一般人もないじゃろ――あたっ!」

 

 聖拳は回し蹴りを放った直後、腰の激痛に顔を顰める。

 エリの個性によってある程度症状を()()()()()()いたが、再び元の状態へと戻りつつあった。

 

「ほら言わんこっちゃない!」

 

 相澤はそんな聖拳を捕縛布で引っ張り安全圏へと対比させつつ最後のジャマトを斃しきる。

 

「っ……これがジャマト、か。確かにヴラドたちの言ってた通りの姿だな」

 

 彼は動かなくなったジャマトをくまなく観察する。

 異形型にしても異様な見た目、思わず嫌悪感を抱かずにはいられない異質な存在感。

 

「――おじいちゃん?」

 

 そこへ姿を現したのはエリ。聖拳と共に合宿について来ており、陰ながら生徒たちに可愛がられていたのだ。

 彼女は聖拳のデザイアドライバーとドリルバックルを抱えるようにして持っており、この異常事態にも関わらずドライバーを()()()()()()彼を心配し届けに来たのだ。

 

「すまんの……」

 

 聖拳はドライバーを受け取ろうとして躊躇してしまう。

 ドライバーは()()()置いていっていた。

 彼の理想の世界は“全盛期の肉体”――怨敵マスキュラ―を屠れる身体能力を取り戻したいがためだけに願った自己中心的な願いである。

 そんな願いは怨敵の死と共に“原点(オリジン)”を失ってしまった。

 故に、彼は戦い続けることを迷っているのだ。

 

「……出水さん、あんたも()()()だったのか」

「……なんじゃ、思ったより知られとるんだな」

 

 相澤の鋭い視線を物ともせず、聖拳は嘲る様に笑う。

 

「俺が勝手に調べていただけです。一つ聞きたい――あんたは狐火も緑谷も、恐らく葉隠も、今回の合宿より前から知っていましたね?」

「なんのことやら」

 

 聖拳はとぼけるも、傍らのエリの表情が全てを物語ってしまっていた。

 

「……勝てば、理想の世界が叶うそうじゃ。ワシも詳しくはわかっとらんがな」

「都合のいいエサでこんな得体の知れない者と戦わせているのか……ナメた真似しやがって……!」

 

 相澤は己の不甲斐なさを感じ思わず壁を叩きつける。

 聖拳の暴露は外部に内容を伝えてはならないというルールに抵触してしまっていた。しかしルール違反を取り締まるはずのナビゲーターは姿を現さない。

 

「……そのおかげでこの子を助けられた。じゃがワシはもう戦う理由が分からなくなった。なんのために“全盛の肉体”を求めたのか、わからなくなってしまったんじゃ」

「――みんなをたすけるため、じゃないの?」

「……っ!」

 

 エリの何気ない言葉に聖拳は衝撃を受けた。

 

「だって、わたしのこと、たすけてくれたでしょ?」

「……そうじゃな」

 

 どこかのヒーローが言った――“過去は変えられる”、と。

 起きた出来事そのものではなく、出来事に対する解釈を変え、その出来事の()()を変えることができる。

 確かに、聖拳が全盛の肉体を願った動機は単なる復讐だったかもしれない。鋼の肉体を手に入れるに至った経緯は、先輩を見返したいというささやかな復讐心だったかもしれない。

 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()

 復讐ではなく、誰かを守れる力を取り戻したかった。見返すのではなく、無個性でも戦えるのだと証明したかった。

 そのように過去の解釈を変えてしまえば――

 

「エリちゃん、ありがとう。ちょいと、みんなを助けに行ってくる!」

 

 聖拳はエリからドライバーを受け取るとそれを装着する。

 

「……()()()()、よろしく頼みますよ」

「……ええ、任せてください」

 

 エリは聖拳の腰に手を当てて個性を発動させる。

 

「おじいちゃん、がんばって!」

 

 そしてぎこちなく笑って見せる。

 

「……うむ、必ず帰ってくるわい!」

 

 再び調子を取り戻した腰をさすりつつ、聖拳は宿舎を飛び出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 ――♪

 

 暗い室内。

 スパイダーフォンが薄暗く光輝く。

 

「……」

 

 治崎はそれを一瞥すると、傍らに置かれたドライバーへ手を伸ばす。

 

 ――『いろいろと偉そうなこと言っておったが――まずはこのくらいやってみい!』

 

 脳裏に浮かぶのは、ジャマトの迷宮で聖拳からかけられた言葉。

 個性は病気――それは彼の持論だった。

 病原菌が由来と言う説のある個性はまさに人類を犯すウイルス。それはあらゆる合併症を発症させ人類を蝕んでいる。

 それを治癒してやるのが自分にできること――ひいてはそれがヤクザ者を復権させる道標になるのだと信じていた。

 個性を消失させる薬と復活させる血清。この二つを牛耳ることでヤクザ者の権力を確かな物とし、超常社会を失墜させる。

 

「……個性に頼らない、か」

 

 彼は個性が病気と断じながら、その実個性に頼り切っていた。

 戦闘はもちろん、薬の作成のためにエリを“リセット”するため、地下施設を確保するため――あらゆる面で個性に頼り切っていた。

 

「……やってやるさ。俺自身の手で、な」

 

 治崎はスパイダーフォンを裏返しにし画面が見えないようにする。

 そしてデザイアドライバーに装填されていた己のIDコアを引き抜いた。

 それは、彼がデザイアグランプリを棄権したということを意味していた。

 個性にも、デザイアグランプリにも頼らない。

 己の力のみでやれることをやり切る――望みを叶えるのは、まずはその“筋”を通してから、彼はそう決心した。

 

「……ジジイ、あんたのほえ面を見るのが今から楽しみだ」

 

 ――RETIRE...

 

 自らの意志でIDコアが外されたことで自動的にリタイアが承認され、クロウのIDコアは消滅するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 タイクーンとジャマトの戦いは熾烈を極めていた。

 

(っ速い……!)

 

 特殊なボス個体のジャマトを除き、ジャマトは数以外は脅威ではない。例外を上げるならジャマトライダー、どんなジャマトでも変身すればあっという間に強敵となる。

 

(個性があるだけで、こんなに変わるのか……っ!)

 

 そして今、変身だけでなく個性の使用も厄介であったことに気づかされる。

 目の前のジャマトは筋繊維を何層にもわたって体にまとい、その力をより強化していた。

 ただでさえ人間離れしているジャマトの身体能力が、更に増強されてしまっているのである。

 

「この――ッ」

「ジャ!」

 

 タイクーンとジャマトの拳がぶつかり合う。

 

「わっ!」

 

 物陰に身を隠していた洸汰はあまりの衝撃波に思わず顔を覆った。

 

ファ()バ()キョ()

「――っ!」

 

 押し負けたのはタイクーンだった。

 すかさずジャマトのラッシュが仕掛けられ、ダメージに耐え切れなくなり変身が解除され地面を転がされる。

 

「っ……!」

「お、おい……お前……」

 

 洸汰の下へ転がっていた緑谷はまさに満身創痍。スーツでも相殺しきれなかったダメージが体に反映され、至る所から血を流してしまっていた。

 それほどのダメージを負いながらIDコアが無事なのは、幸運という他に無いだろう。

 

(……ブーストでも、ダメなのか)

 

 緑谷は頼みの綱だったブーストバックルでもジャマトに太刀打ちできない事実に心が折れかかる。

 

 ――『さ、打ち上げと行こうか!』

 

 ――『“ブーストナーゴ”、行くよッ!』

 

 ――『――折れろッッ!』

 

 心の中にあった“勝利のイメージ”、ブーストバックルを使った者は誰もが最後に勝利を勝ち取ってきた。

 

「ジャッジャッジャッ……」

「グッッ!?」

 

 目の前に落ちるブーストバックルを手に取り再び立ち上がろうとする緑谷だったが、バックルを掴んだ右腕をジャマトに踏み抜かれて折られてしまう。

 

()オズ()!」

「ッ!」

 

 ジャマトは続けざまに緑谷の体を蹴り上げ、拳を振り下ろす。今度は個性によって腕力を増強はしていない。

 何度も何度も、まるでいたぶることを楽しんでいるかのような動きだった。

 

(っマズい……このままじゃ、無駄死に、だ……!)

 

 意識が朦朧とする中、緑谷は背後で怯えている洸汰に意識を向ける。

 ここで彼が死ねば次は洸汰を襲うだろう。そして同様にいたぶり恐怖の底へ叩き落としながら命を奪うに違いない。

 

(せめて――ワン・フォー・オールの100%で、こいつを引きはがすんだ……!)

 

 彼に残された手札は一つ――個性(ワン・フォー・オール)のみ。

 死の間際に全力(100%)を放つことでジャマトをこの場から引きはがし洸汰が逃げる猶予を作る。

 

「ワン――かはっ!」

「ジャァ?」

 

 そんな緑谷のたくらみを察知したのか、ジャマトは思いきり緑谷の腹を殴り飛ばし個性使用をキャンセルさせる。

 彼にとって個性使用は息をするように使えるほど体に馴染んでいない。

 妨害されてしまえば途端に使えなくなってしまうのだ。

 

()ヴォ()()チャ()――」

 

 ――『大丈夫?』

 

 走馬灯のごとく、緑谷の脳裏に映像が浮かび上がる。

 子供の頃、母親と一緒に遊びに行った山。何かに呼ばれたように感じて向かった先で出会った狐のような姿の子供。

 ずっと思い出そうとしても黒い靄のようなものがかかっていたが、それが死を間近にして晴れていく。

 

(そっか……やっぱ、あの時の子が――)

 

「――やめろっ!」

()()()

 

 とどめを刺そうとしていたジャマトは突如顔に降りかかった水に戸惑い攻撃を取りやめる。

 

「こ、こうた、くん……」

 

 緑谷が振り向くとそこには体を震わせながらも手のひらから水をしたたらせる洸汰の姿が。

 

「そ、それ以上やったら……し、しんじゃ」

「ジャ?」

 

 ジャマトは洸汰の言葉を理解できずに首をひねる。

 

「ヨ、ワイ、ノ、ガワ、ルイ」

「っ!」

 

 それはただの偶然だった。

 ジャマトは何かから学んだ言葉をただ再生しただけに過ぎない。

 

「あっ……ぁっ」

 

 ジャマトは標的を洸汰に切り替え拳を構えた。

 

(何、やってんだ――!)

 

 緑谷は最後の力を振り絞り個性を発動、ジャマトにつかみかかる。

 

「洸汰くん逃げてっ!」

「で、でも……!」

「いいからッ!」

チャ()ガ()……」

 

 満身創痍の緑谷は足止めすらまともにできなかった。あっさりとジャマトに振り払われ、ジャマーエリアの壁に叩きつけられる。

 

(くそっ……! まただ! また……助けられないッ!)

 

 緑谷は必死に手を伸ばす。

 

「――とどけぇェッッ!」

 

 その時、彼のバックルに装填されていたタイクーンのIDコアが何かに共鳴するようにきらめく。

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()に共鳴したニンジャバックルが飛来し、彼のドライバーに装填され、自動的に起動する。

 

 ――NINJA

 

 ジャマトの拳が振り下ろされ洸汰の体を殴りつぶす。

 

「ジャァ……()?」

 

 しかし残されていたのは肉の塊ではなく、粉々に砕け散った()()()()()

 

 ――ROUND 1

 

「ジャッ!」

「はっ!」

 

 ――TACTICAL SLASH!

 

 ()()()()()はニンジャデュアラーでジャマトの背中を斬りつけつつ着地する。その腕には洸汰を抱えていた。

 

「……ごめん、洸汰くん。君を危ない目に遭わせた」

 

 ニンジャフォームとなったタイクーンはクナイのような武器――ニンジャデュアラーを構えつつジャマトを睨み付ける。

 

(エースさん……ありがとう。いつも、君に助けられてばかりだ)

 

 タイクーンはニンジャバックルが手元にやってきたのはエースの差し金であると思い、心の中で深く謝意を示す。

 

「……でも大丈夫。っだって――」

 

 彼は仮面の下で不敵に微笑む。

 まるで、心の中にある“勝利のイメージ”がそうさせているかのようだった。

 

「最後に勝つのは、僕だからだッ!」

 

 ――READY FIGHT!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



















遂にデクくんがニンジャフォームになりました! タイクーンがニンジャを使うと判明してから、マスキュラ―戦の所で初使用させたろ! と決意しプロットを考えていました。マスキュラ―戦は序盤(中盤?)の大きな見せ場、ここで使わせなきゃいつ使わすんだい! の気持ちでした。
ただ、ライダーが生身の人間をボコボコにするのは絵面的にどうなん? という思いもありました。(そういうSSを書いている方をdisる意図はないです、あくまでこの作品内での話です)
だったらジャマトと戦わせればいいじゃない→え、ジャマトはデザグラ運営が育ててる?→せや、ジャマトに個性を持たせたろ!
といった経緯でこのストーリーが出来上がりました。もしジャマトが純粋な侵略者だった場合は、ジャマトの幹部級を捏造して戦わせるルートもありましたが、そちらはお蔵入りですね。

と、制作秘話のようなものはここまでにしておきます。
次回、異変編はラストです! 果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか、こうご期待です!
……念のため「鬱展開注意」のタグ付けとこうかな……?

鬱展開注意のタグは

  • あった方がいい
  • いや、そこまで鬱じゃないでしょ?
  • もっとだ! もっと曇らせろ!
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