【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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異変編、ラストです!
果たしてどのような結末を迎えるのか、こうご期待ください!
……まあ、サブタイ見ればわかるかもしれないですね!



※アンケートの結果を考慮し、保険として“鬱展開注意”のタグを追加しておきました。


























25 異変F/僕の世界

――――

――

 

 ――時は少しだけ遡る。

 

「さよならだ、バクゴウ。君のことは嫌いだったが……それなりに楽しかったよ」

 

 ――READY FIGHT!!

 

「んだよ……その姿は……!」

 

 突如として変身したエースに爆豪は呆然としてしまう。

 エース――ギーツはニンジャデュアラーを手に爆豪へと迫る。

「っ!」

「――邪魔」

「だっ!?」

 

 ギーツは爆豪を押しのけるとその背後に迫っていたジャマトを一刀のもとに斬り伏せる。

 

「……何勘違いしてるんだ? 私は君を傷つけるつもりなんてないさ」

「っ……紛らわしい真似しやがって。殺すぞ!」

「ふふっ♪ その罵声も最後だと思うと名残惜しいよ」

「だから勝手に別れようとしてんじゃねえよクソがッ!」

 

 犬猿の仲ながらも抜群のコンビネーションを発揮しつつジャマト達と戦うギーツと爆豪。

 来た道を引き返しつつ逃げ遅れているB組の者がいないかを確認する。

 ――だがその成果は思わしくはない。

 ジャマトに襲われ息の無い者。そこにいたであろう痕跡のみを残して姿を消している者。

 彼らは何の成果も得られなかった。

 

「……おいクソ狐。いい加減知ってることを話しやがれ」

 

 いくら普段他人へ“死ね”だのと暴言を吐いている爆豪だったが、いざ死人を前にしては穏やかでいられない。

 

「……私だってこの状況には混乱しているところさ」

 

 ギーツは禍々しい通知音を発するスパイダーフォンを手にため息をつく。

 何らかのランキングは表示されるものの、何が基準で変動しているのかすら不明瞭。唯一わかることは“何らかのゲームが開催中であること”のみ。

 ルールはもちろん、クリア条件も不明。

 

「でも――こいつらを斃せば問題はないさ」

「ッだが――こいつら虫みてぇにわらわら湧いて出てきやがる……! 終わりなんて……」

 

 爆豪の額に脂汗が浮かんでいる。

 彼は現在進行形で襲い来る異形に既視感を覚えていた。

 時折夢に出てくる怪物――両腕を切り落とし、全身を刀で貫いてくる怪物と瓜二つの容姿をしているのだ。

 それはまさしく“死”のイメージそのもの。どんなに戦ってもいずれ死をつきつけられるのではないかと、心の底から恐怖心が湧き上がってくるのだ。

 

「まさか――ビビってるのかい?」

「……あ”?」

「ふふっ……これは、傑作だ……!」

 

 こらえきれなくなったかのように笑い出したギーツに爆豪は殺意を覚える。

 どんなに姿を変えようとも中身はエース、次第に普段の“クソを下水で煮込んだ”性格の爆豪が姿を見せ始める。

 

「……っテメエ……!」

「そうさ。それでいい。恐怖で死を覚悟するような姿は君らしくもない」

「……っ!」

 

 爆豪ははっと気づかされる。

 夢で殺されたからなんだというのだ。

 夢の中で()()()()()現実でも()()()などという道理がまかり通るはずもない。

 

「私は君の“異常なまでの勝利への執着心”は嫌いじゃないんだぜ――はっ!」

 

 隙をついて飛び掛かってきたジャマトを追い返しつつ、ギーツは爆豪を褒める。

 

「……勘違いするな。私は君のことは嫌いだ。だがその向上心だけは認めてやってもいい」

「……クソが――っ!」

 

 爆豪もまたジャマトを打ち破りつつ笑う。

 彼の原点――オールマイトのような“勝って助ける”ヒーロー。

 この状況、オールマイトなら決して絶望せず、笑顔で勝ち抜いて見せるのだろう。

 

「テメエなんざに言われなくとも――俺は、勝ァつ!」

 

 気力を取り戻した爆豪を、ギーツは満足そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 盾を創造し、警戒しつつもと来た道を引き返す八百万。

 幸運なことに彼女は未だジャマトと遭遇していなかったが、聞こえてくる叫び声から何らかの異変が起きていることは察知していた。

 

「――っ!」

 

 十数分前、B組の小大たちが隠れていた地点にたどり着く。

 そこは惨状としか言いようがなかった。

 茂みに投げ捨てられている鉄哲と塩崎の体――さっきいなかった二人はどこかから引きずられてきたのだろう、下半身には擦過傷が見受けられた。

 地面に体が半分埋まった状態で力尽きている骨抜。

 血まみれになって倒れ伏している小大と拳藤。

 

「っ息は……」

 

 八百万は応急処置用の道具を創造しつつ、倒れている5人の安否を確かめる。

 鉄哲と塩崎はまだ息があったが、直ちに処置をせねば危険な状態だった。

 骨抜は残念ながら心肺停止の状態――八百万の知識ではどうすることもできなかった。

 小大と拳藤は意識こそないものの止血をすればまだ助かりそうな状態だった。

 

「……やお、よろ……?」

 

 微かに拳藤の意識が戻る。

 

「っ拳藤さん? 喋らないで! 少しでも体力を……!」

「……みんな、は?」

「今応急処置をしておりますわ! それにプッシーキャッツの方もいずれ来られます……っ! 気をしっかりもってくださいましっ!」

 

 止血と応急処置を終え、八百万は続けて台車を創造し始める。

 訓練で創造時間は短縮できていたが、それでも大きなものは作るのに時間がかかる。それまでの間で襲われれば一巻の終わりだ。

 

「――ジャァ!」

「っしま」

 

 しかし悪い予想と言うのはことごとく当たってしまうものである。

 ジャマトが茂みから飛び出し、八百万へ襲い掛かる。

 

「――死ねェッ!」

 

 爆発音が響く。

 

「――はっ!」

 

 ――TACTICAL SLASH!

 

 続けて光の刃が飛来しジャマトへとどめを刺した。

 

「……怪我がなくてよかったよ。ヤオヨロズ」

「その声……まさか狐火さん?」

「おい手ェ止めんな。こいつら運ぶンだろ?」

 

 爆豪は八百万の残した応急処置の道具を使い、処置がしきれていなかった者達の手当てを行う。

 

「は、はい……っ!」

 

 発破をかけられ台車の創造を完了させる。

 

「爆豪さん、狐火さん、完成いたしましたわ――っ!?」

 

 その瞬間、台車の金属パーツから火花が走る。

 

「ジャ……ビリ、ビ、リ……」

 

 体中からスパークを発しているジャマトが姿を現す。

 

「嫌な、敵だね……!」

 

 電気系の攻撃が弱点のギーツは心底いやそうにため息をついた。

 だが戦闘を避けるわけにもいかず、ニンジャデュアラーから斬撃を放ち攻撃を仕掛ける。

 対するジャマトは放電するかのように電気を放ち、斬撃を相殺している。

 

「っ今すぐ絶縁シートを――!」

 

 ギーツが不利と悟った八百万は絶縁シートの創造に取り掛かるも、その瞬間、ギーツのドライバーからニンジャバックルが外れてどこかへ飛んで行ってしまう。

 

「しま――っ!」

 

 突然のことで反応が遅れ、エントリーフォームに戻ってしまったギーツは攻撃をもろに受け変身が解除される。

 

ピ()モス()テウ()()

「か――――――ぁっ!」

 

 変身が解除されてしまったエースに容赦なく電撃を浴びせるジャマト。

 

「狐火さんッ!」

 

 八百万の悲鳴のような声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ナーゴはビートアックスでラグドールを拘束していた糸を切断する。

 

「――葉隠ちゃん!? その姿は」

「あとで、話せるだけ話しますっ! だからみんなの避難を――!」

 

 ジャマトは戦えれば誰でも構わないのか、今度はナーゴにつかみかかる。

 ラグドールは問い詰めるよりも救助の優先を決意する。

 

「無茶だけはダメよ!」

「わかってますっ!」

 

 ラグドールたちが遠ざかるのを確認するとナーゴはビートアックスエレメンタドラムを2回叩き、必殺技を発動させる。

 

 ――TACTICAL THUNDER

 

 青白い稲妻がジャマトへ降り注ぐ。

 ジャマトは咄嗟に指先の糸を地面に突き刺し電撃を逃がす。

 

「指先から糸!? この個性って――」

 

 ――『――私は――生きてるっ!』

 

 ケイドロゲームで退場したライダー――レターに変身していた糸成の個性だ。

 退場する直前まで個性を使ってジャマトと戦っていたことからナーゴの印象にも残っていた。

 

「……ワタ、シ、ハイキ、テル」

「っ!」

 

 なんとも皮肉めいた言葉だ。

 ジャマトの使う個性の持ち主は既に退場してしまっていた。

 

「やるしか……ないよね……っ!」

 

 ナーゴの脳裏に退場する糸成の狂気的な笑い声が思い出される。

 デザイアグランプリに参加したことで運命を狂わされてしまった一般人。

 

「っ!」

「ジャァ……ジャジャジャ」

 

 戦いながら笑うジャマトに背筋が凍り付くナーゴ。

 まるで退場したライダーの人格をコピーしているかのようだった。

 

「――っ!」

 

 ナーゴはビートバックルを起動させ、必殺技を放つ。

 

 ――BEAT STRIKE!

 

 躊躇ってはいけない。

 少しでも躊躇えば――少しでも判断が遅れれば、それは死につながってしまう。

 この前の職場体験で、彼女はそのことを学んでいた。

 

「――ッッ!!」

 

 音波を纏ったキックがジャマトへと命中する。

 ジャマトは糸で威力を相殺しようとするもしきれず、その体を爆散させた。

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 ナーゴは精神が疲弊しているのを感じた。

 

「……!」

「ッ!」

 

 顔を上げると、そこには俯きながら佇むパンクジャックの姿。

 味方であったことに安堵し、警戒心を解いた。

 

「よかった……パンクジャックさん、だよね……?」

 

 しかしすぐに異変に気付く。

 ナーゴと遭遇してもなお無言のままで、仮面の奥の瞳は暗く意志を感じられない。

 

「…………」

 

 パンクジャックが動く。拳を振り上げてナーゴへと襲い掛かった。

 

「ぇっ!? なんで――プレイヤー同士の戦闘は、禁止のはずじゃッ!」

「……ァ、ァア」

 

 ナーゴは訳も分からずビートアックスで受け止め攻撃を受け止める。パンクジャックはまるで意志のないゾンビのようにうめき声を上げる。

 なおも襲い掛かろうとするパンクジャックを追い払おうとナーゴはビートアックスを振り抜く。

 その拍子にパンクジャックの仮面に切っ先が命中しその仮面が外れる。

 

「えっ……!?」

 

 オレンジのクマの仮面が外れて現れたのは無機質な紫の仮面。頭頂部には赤く発行するユニットがあり、瞳は禍々しく輝いている。

 それはまるで()()()()()()()()()()()()()かのようだった。

 

「アァ……!」

 

 ――MONSTER STRIKE!

 

「ッッ!?」

 

 硬直していたナーゴはパンクジャックの攻撃をまともに受けてしまい、大きく吹き飛ばされ変身が解除される。

 

『――葉隠!?』

 

 その体を受け止めたのは心配して戻ってきていた障子だった。

 

「……しょ、しょうじ、くん……なんで?」

『逃げ遅れた奴らの捜索だ。近くにラグドールも来ている』

 

 障子は自身の個性、複製腕を即座に展開し傷ついた葉隠の体を抱きかかえる。

 

「……は、はなして――わたし、戦わなきゃ……!」

『無茶を言うな! その怪我じゃまともに動けはしないッ!』

 

 障子に抱えられながら葉隠は口惜しさに歯を食いしばる。

 

(私……また何もできないまま終わっちゃうの……っ!?)

 

 前回の最終戦、葉隠は最終的にどのような結末を辿ったのかを覚えていない。

 なぜならば彼女はサボテンジャマトの攻撃によって意識を失っており、その間にゲームが終了してしまっていたからである。

 そして今回のゲームでも、彼女は大きな活躍を見せることはできていない。

 レターと共に戦うも、目の前で退場してしまった。

 タイクーン、ヤイバと共に戦うも、力及ばずヤイバも退場してしまった。

 

(強くなるって、決めたばっかりだったのに……っ!)

 

「――ジュラ、ピラ」

『っ!』

 

 葉隠を背負って逃げる障子の前にデザイアドライバーを装着したジャマトが姿を現す。

 

「ヘン、シン」

 

 ――Jyamato

 

 迷宮ゲームでライダーたちを苦しめたジャマトライダー。負傷しきったナーゴでは手に余る相手で、生身の障子では戦うことすら困難だろう。

 変身したジャマトを前に障子は冷や汗を浮かべながら後ずさる。

 

「――っ!」

 

 葉隠は緩んだ障子の腕から滑り降り、震える足で立ち上がる。

 

「へん、しん……っ!」

 

 ――BEAT

 

 ――Jya Jya Jya STRIKE!

 

 変身するや否や、ジャマトライダーが必殺技を放つ。

 

「――っ!」

 

 ナーゴはそれをその身で受け止め、根性でその場に踏ん張る。このまま吹き飛ばされれば後ろの障子は無事では済まない。

 

「うあああああああっ!」

 

 ――TACTICAL FIRE

 

 ビートアックスのエレメンタドラムを1回叩きインプットトリガーを引く。

 炎を纏った斬撃はジャマトライダーの必殺技をはじき返し、返す刀でジャマトライダーを大きくのけぞらせ、森の奥へと吹き飛ばす。

 

「はぁ……っはぁ……」

 

 ナーゴの変身が解除される。

 

『葉隠――っ!?』

 

 無茶をした代償か、彼女のドライバーに装填されたIDコアには無残にも罅が入ってしまっていた。

 

「しょ、しょうじ、くん……けがは、ない?」

『あ、ああ……だが』

「よかった……」

 

 IDコアが消滅する。

 

 ――MISSION FAILED...

 

 消滅する刹那、エフェクトに紛れて葉隠の表情が浮かび上がる。

 その顔は、どこか穏やかな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

「――狐火さんッ!」

 

 電撃は容赦なくエースの体を苦しめる。

 

「おいポニテ! はよシート作れやっ!」

 

 爆豪の言葉で止まっていた八百万の思考が動き始め、絶縁シートの創造が完了する。

 

「できましたわっ!」

 

 完成したそれをひったくるようにした爆豪は、電撃を受け痙攣するエースの体に覆いかぶせ、自身は単身ジャマトに攻撃を仕掛け後ずさらせる。

 

「あっ……っぅ……っ!」

 

 致命傷には至らなかったものの、絶縁シートの下ではエースが苦しそうに体を痙攣させている。

 目の焦点は合っておらず、口元は苦しそうに引き結ばれている。

 

「狐火さ――!」

 

 爆豪がジャマトへ追撃する中、エースを救出しようとしていた八百万は彼(?)のドライバーに装填されていたIDコアに触れる。

 その瞬間、彼女の脳裏にかつての記憶が蘇る――

 

 ――『おめでとうございます! 厳正なる審査の結果、貴女は選ばれました!』

 

 それは中学生に進学して間もない頃、謎の女性がボックスを片手に現れたこと。

 

 ――『待て! 私の娘をゲームには関わらせないッ!』

 

 ボックスを受け取ろうとした瞬間、鬼のような形相で父が現れそれを脇から強奪したこと。

 

 ――『百、今日のことは忘れなさい。いいね?』

 

 渡される間際、女性はボックスの蓋を開けていた。中に収められていたのは、丁度今エースが装着しているデザイアドライバー。

 

「っまさか……!」

 

 彼女はポーチから小箱を取り出す。

 心臓の鼓動が早まるのを感じる。恐る恐る蓋を開けると、中には()()()()()()()()()()()()()()()I()D()()()が収められていた。

 

「やはり……!」

 

 そして緑谷が落としていったマグナムバックも取り出し、IDコアと交互に見つめる。

 IDコアはドライバーの中央、バックルは左右に丁度収まりそうなデザインをしていた。

 

「狐火さん……」

 

 彼女の中で全てがつながっていく。

 エースの変身していた姿は恐らくこの謎の生命体――ジャマトと戦うための装備であること。

 父の言動から恐らくそれは“ゲーム”として扱われていること。

 そして――過去、彼女自身もそのゲームに参加するはずだったこと。

 

「……少しだけ、お借りしますわ……っ!」

 

 八百万はエースからデザイアドライバーをはぎ取りギーツのIDコアを外す。その行為はゲームの棄権を意味するが、他人の手によるものだったため何も起こらなかった。

 彼女はギーツのIDコアをエースの手に握らせると、代わりに自分のIDコアを装填した。

 

 ――ENTRY

 

「爆豪さん! 私が代わりに戦いますわ!」

「あ? 何言って――っ!」

 

 爆豪は八百万の腰に装着されたドライバーを見て驚愕する。

 

「っそれは」

「私もよくわかりませんの……ですが、その怪物と戦えることは確かかと!」

 

 ――SET

 

 彼女はマグナムバックルを装填し起動させる。

 

「へ、変身?」

 

 ――MAGNUM

 

 狼を思わせるマスクにマグナムの装甲が装着され、彼女は狼のようなライダー――ロポへと変身する。

 彼女は装着されていたマグナムシューターを構えつつ、ジャマトへ対峙する。

 

 ――READY FIGHT!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「ニ、クメ……」

「――ッ!?」

 

 ジャマト口が開かれ、そこから鋭い()が飛び出す。

 それは轟の生み出した氷の壁をいとも簡単に破壊してしまう。

 

「――なめこちゃん!」

「――よいしょっ!」

 

 迫るジャマトは小森の個性によって生えていたなめこのぬめりに足を取られ転倒、そこをB組の凡戸が顔の穴から吐き出したセメダインによって体を拘束する。

 

「とどめだッ!」

 

 追い打ちをかけるように轟が氷結攻撃を繰り出してジャマトを完全に閉じ込める。

 

「――やったか?」

「ちょっそれフラグ!」

 

 B組の泡瀬のセリフに耳郎がツッコミを入れる。漫画などではお決まりの“復活フラグ”である。

 

「今のうちに逃げるぞ! 宿舎まで行けば先生がいるッ!」

 

 よくも悪くも冷静な轟の言葉は仲間たちを鼓舞している。先日、職場体験で修羅場を経験したことがいい方向へと作用していた。

 

「――ッ」

「ジャ」

 

 しかし追いかけてきていたジャマトは1体だけではなかった。

 もう一体のジャマトは金属を操る力で耳郎へ刀を突きさした。

 

「ッ耳郎!」

 

 わき腹を貫かれた耳郎はつんのめる様に倒れ込んでしまう。

 

「おい大丈夫か!?」

「っ馬鹿……! 逃げなきゃ」

 

 慌てて駆け寄った泡瀬を追い返して逃がそうとする耳郎。

 

「お前も一緒になっ! 凡戸、手ェ貸して!」

「うん!」

 

 だがヒーロー志望たるもの、誰かを見捨てて逃げるような非情な選択はできない。

 泡瀬、凡戸の2人は耳郎を脇から抱えるようにして走り出す。

 

「ジャァ……」

「ッぐ――っ!」

 

 ジャマトは耳郎の腹に刺さった刀を操り引き抜き、その刀で泡瀬と凡戸を斬りつけた。

 

「――ジャッ!」

 

 もたついているうちに最初に拘束していたジャマトが氷を突き破る。

 口から歯を引き延ばして戒めを解き、氷塊を内側から突き破ったのである。

 

「クソッ!」

 

 轟は炎でジャマトを攻撃する。しかし生半可な火力は通用しない。

 個性伸ばしの訓練によって彼の炎の精度はわずかながら向上していた。しかしそれは彼の父エンデヴァーのそれにはほど遠く及ばない。

 もし父親に反発せずに炎の個性も高めていたら、この場でジャマトを撃退することだって可能だったはずだ。

 

「ニ、ニ……」

 

 歯の刃が倒れている三人――耳郎、泡瀬、凡戸の三人へ襲い掛かる。

 

「――セイヤッ!」

 

 一か八かで助けに入ろうとした轟は、吹き荒れる風に思わず顔を覆った。

 

「まったく……近頃の若いモンは、異能――個性に頼り切るからこうなる」

 

 衝撃波はジャマトの歯を粉々に砕き、大きく後ずさらせる。

 

「っおじいちゃん……ノコ?」

 

 ゆっくりと歩んでくるおじいちゃん――聖拳を見た小森は思わず息を呑んでしまう。

 増強型個性の者達へのスパルタ指導の時とも、夜の見回りの時に見せている穏やかな表情とも違う、冷静でいて静かな殺気の込められた表情。

 自然体で歩みながらも隙など一切見当たらず、いつどこから攻められても対処可能なように身構えられている。

 

「っじいさん……」

「紅白少年、お前さんも個性に頼り切らず武術を習ってみなさい。その体で個性だよりは宝の持ち腐れだ」

 

 聖拳は倒れている3人の傷を見ると即座に止血、轟と小森を呼び寄せる。

 

「内臓は傷ついて無いようだ。早く宿舎に行って先生に診てもらいなさい」

「っでもあんたを一人にするわけには」

「猪口才な」

 

 一人援軍に残ろうとする轟だったが、聖拳は生意気だと彼の額を小突く。

 

「半端者などいくらいても足手まといだわいっ!」

「……トドロキ、大丈夫ノコ。だって――」

 

 小森は聖拳が腰に巻いているドライバーを見て全てを察する。

 

「安心しなさい。老人の仕事は――若いモンの糧になってくたばること。それに」

 

 ――SET

 

「こんなところで死んだら、エリちゃんが悲しむわい!」

 

 聖拳はドリルバックルを装填し、空手の型を思わせる動きで構える。

 

「変……身ッ!」

 

 ――ARMED DRILL

 

 彼はケイロウへと変身し、即座にレイズドリルを投げ捨てる。

 

「あの……姿は?」

「怪物と戦う姿ノコ! 今のうちに逃げないと!」

 

 ケイロウは傷ついた友を連れて逃げる轟と小森を背に感じつつ、起き上がってきた二体のジャマトを待ち構える。

 

「ジャ……ニク、メン」

「……ジャ」

「ふぅ……はっ――!」

 

 出水 聖拳、個性は無し。中学生の時、憧れの先輩から馬鹿にされたことで一念発起し地獄のような鍛錬をし、その末に個性を持った人間をはるかに凌駕する肉体を得る。

 学力の都合でヒーロー科高校に進学できなかった彼は普通の高校に進学し卒業し就職。スポーツジムのインストラクターや空手道場の師範代として働く傍ら、ヴィジランテとして活動する。

 

「ジャッ!?」

「セイッ!」

 

 結婚し一児の父となるとヴィジランテ活動は下火となり、子煩悩な父親としての側面が強くなる。

 だが16年前、彼はとある事件に遭遇する。犯人のヴィランはまさに悪辣にして下劣、人を虐げ傷つけることを幸せとするような愉快犯(サイコパス)であった。

 慰み者にされ惨たらしく殺害された被害者を前に笑う犯人を見た聖拳はその非道さに激昂、犯人を殺害するまで殴り続け、付近を巡回中だったヒーローによって逮捕される。

 

「そいやっ!」

「ジッ!」

 

 非道なヴィランを誤って殺害してしまった――これだけならば執行猶予付きの判決になったかもしれなかった。しかし彼はヴィジランテとして活動していた()()を持っていた。

 そのため数年間刑務所で服役することとなってしまっていた。

 

「――エイッ!!」

 

 ケイロウの拳がジャマトの体を突き抜ける。

 ジャマトは力なく崩れ落ちる。

 

「ニ」

「はいやっ!」

 

 ジャマトの口から伸びてきた歯の刃を即座に叩き割り、顔面へと正拳突きを放つ。

 歯を根元から砕かれ、ジャマトは動かなくなった。

 

「さてと、子供たちは逃げれたか」

 

 森の奥から次々とジャマトが現れる。

 

「……やるしか、ないかの」

 

 ケイロウは再び拳を構えた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

 

「――最後に勝つのは、僕だからだッ!」

 

 ――READY FIGHT!!

 

 タイクーンの雄叫びにジャマトは腹立たしそうに首をかしげる。

 

(体が、軽い――っ! これなら)

「ジャッ!」

 

 ジャマトの拳が迫る。

 タイクーンは洸汰を安全な場所へ退避させつつ攻撃を躱し、カウンターの要領でニンジャデュアラーを振るう。

 ニンジャバックルはタイクーンのIDコアと最も相性がよく、その本領をいかんなく発揮することができる。

 その性能は他のライダーが変身した時とは比べ物にならないほどである。

 

「ジャッ!?」

 

 加えて忍術を思わせる多彩な攻撃手段は、分析タイプな彼との親和性も高かった。

 煙幕を展開したタイクーンは煙に紛れてニンジャデュアラーのシュリケンラウンダーを回転させ必殺技のエネルギーをチャージする。

 

 ――ROUND 1・2・3 FEVER!!

 

「――スマァァァッシュ!!」

 

 ――TACTICAL FINISH

 

 斬撃が十字状に交差し、ジャマトの幾重にも張り巡らされた筋繊維を切断する。

 タイクーンは生まれた大きな隙を利用し、地面に落ちたままだったブーストバックルを拾うとドライバーへセットする。

 

 ――DUAL ON

 

 すぐさまバックルを起動し、ブーストの装甲を装着する。

 

 ――NINJA & BOOST!!

 

「これで――決めるッ!」

 

 ニンジャブーストとなったタイクーンは、筋繊維の鎧を再構築しようともがくジャマトへ向き直り、ブーストバックルのスロットを2回連続で吹かす。

 

 ――BOOST TIME!!

 

 筋繊維の再構築をあきらめたジャマトは、千切れかかったそれを鞭のように振るいタイクーンをけん制する。

 タイクーンは肘の装甲から手裏剣を生成しそれを迎撃、ブーストのマフラーから火を放ちつつジャマトへ急接近、その体を蹴り上げる。

 その動きは彼の級友――飯田の“レシプロバースト”を彷彿とさせる動きだった。

 

「――っはあぁッ!」

 

 ――NINJA BOOST GRAND VICTORY!!

 

 飛び上がったタイクーンは空中で風を纏いながら右足を突き出す。

 ライダーキックは蹴り上げられていたジャマトを捉えると、タイクーンの紋章を浮かび上がらせる。

 マフラーの炎とニンジャの風を纏ったライダーキックは見事、ジャマトの体を撃ち抜くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――鐘の音が響き渡る。

 

「――何っ!?」

 

 森から転がり出てきたジャマトライダーと戦っていたバッファは響き渡る歪な鐘の音に思わず耳をふさぐ。

 それは彼女が幾度となく聞いてきた“デザ神の理想の世界”を作り上げる時の音。

 

「っ……! なんで!? 誰が勝ったっていうのよッ!」

 

 ジャマトライダーを追い払いつつ彼女はスパイダーフォンを見つめる。

 やはりその表示は崩れており、誰が勝利し“デザ神”となったのかすらわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「っこの、音は――?」

 

 八百万――ロポはジャマト達を撃ち抜きつつ鐘の音を捉える。

 その疑問の答えを知るエースは未だに意識を取り戻していなかった。

 爆豪にもその音が聞こえているのか顔を顰めている。

 鐘の音なるたびに、破壊しつくされていた森は逆再生のように修復されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 役目を終えたブーストバックルはデザイアドライバーから射出され、どこへともなく吹き飛んでいく。

 変身の解けた緑谷は鐘の音を呆然と聞いていた。

 

「今のが、ラスボス、だったのか……?」

 

 彼がジャマトを斃した直後になり始めた鐘の音。

 状況を考えれば緑谷が“終了条件”を満たしたからと考えるのが妥当だろう。

 

「何が、どうなって……!」

 

 破壊されたジャマーエリアが修復されていく。

 もし緑谷が“デザ神”となっていないのならば、この段階で敗退(リタイア)がアナウンスされるはずである。

 だがその知らせはいつまで経っても来なかった。

 つまり、それは――

 

「僕が、デザ神……?」

 

 緑谷が呟くと、意識が途切れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――デザイア神殿。

 

「――僕はね、子供の頃絵本で読んだ“魔王”に憧れた」

 

 グレアはこの瞬間を見ているであろう“観客”に向けてアピールするかのように大仰な身振りで語り始める。

 ギロリとツムリは鎖で縛られ、檻のようなものに閉じ込められてしまっていた。

 

「僕はこの個性を使って子供の頃の夢を叶えた。とても楽しかった……みんなが僕を想い、僕のために行動をしてくれる」

 

 グレア――オール・フォー・ワンはかつての栄華を懐かしむように語る。

 彼が裏社会の帝王として君臨し、裏社会はヒーローなど物ともせずに華やいでいた時代だった。

 望む者には力を与え、望まぬものからは力をもらい受ける。力の再配分を行うことのできる唯一無二の存在として彼は自らの欲望を満たし続けていた。

 

「それをぶち壊したのが平和の象徴(オールマイト)さ。奴は僕の()()を次々に捕らえ、やがて僕のこともこんな体にした!」

 

 グレアは一時的に頭部の変身を解き素顔をさらけ出す。

 顔の上半分を失ったのっぺらぼう。

 唯一残された口には呼吸器をつけなければ生命維持もままならず、周囲の様子は音と赤外線を探知する個性を併用せねば知ることすらできない不自由な生活。

 

「永遠だと思っていた僕の栄華は突然終わりを突きつけられた! そうなったらやることは一つ――後継者を作ることさ!」

 

 そうして育てたのは敵連合の首魁――死柄木 弔。

 悪の帝王の後継者として育て上げ、ゆくゆくは()()()()()を差し出す計画だった。

 

「僕の計画は順調だった――君たちが現れなければね」

 

 だが育成計画は初っ端から頓挫してしまった。

 雄英高校で勃発したデザイアグランプリに巻き込まれ、敵連合の面々は程なくして逮捕されてしまう。

 

「久しぶりだったよ、腹の底が熱く煮えくり返ったのは。そして僕は思い出した――それが“怒り”という感情であったことを!」

 

 グレアは愉快そうに笑っているも、声は恐ろしほどに冷たかった。

 

「……“リアリティーライダーショー”、デザイアグランプリ。世界を守る様をエンターテイメントとして提供する! 成程、確かにヒーローを“見世物”にして楽しむ(オールマイト)の作った世界じゃ、なんと立派な娯楽だろうね!」

 

 ――鐘の音が響き渡る。

 ゲームマスターの権限によってゲームが強制終了され、今シーズンのデザイアグランプリは打ち切りとなったのである。

 

「だったら僕は君たちの“エンターテイメント”を否定しよう。君たちの作り上げたデザイアグランプリはみぃんな、僕の物さ!」

 

 ――“デザ神なし”。

 ごくごくまれだが、デザイアグランプリは時に優勝者なしで幕を閉じることもある。

 その場合はただ破壊された世界が修復されるだけで終わり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「さあ、始めようか――たった一度しか楽しめない、()()()()()()()()()!!」

 

 役目を終え、グレアの変身が解除される。

 途中からゲームマスターが変更されたとしても、シーズン中のルール変更は承認されない。

 ならば――強制的にシーズンを終了させる。

 そうすることで、彼の望むままのゲームが開催できるようになるのだ。

 オール・フォー・ワンは残された口大きく開き、歯を見せて笑う。

 その様は悪戯に成功した子供のようであった。

 

 

 

 

 

「ようこそ! 僕の世界へ……!」


















はい、サブタイを回収して異変編はラストです。
あまりすっきりとしないというか、ちょっとフラストレーションの貯まる展開かもしれませんが、次の章はこのフラストレーションを解消していきます! もうしばしお付き合いいただけると……
そして次章はほぼほぼオリジナルの展開を考えています。原作から乖離しているので、要素を拾うのが難しいので……キャラが多すぎて収集つかなくなるので……
予定では次章が最終章になる予定です。もう少しだけお付き合いいただけると!

……あ、展開を練るので更新速度については期待しないでいただけると……
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