【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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ゲス眼鏡、お前デザスターじゃなかったのか……?
ギーツ最新話、予想できそうでできない展開でワクワクしますね! それはそうと最新の支持率合計したら110%なの伏線なのかただのミスなのか気になるところ。
















28 逆境Ⅲ/超えてはならない一線

――――

――

 

 ――十二年前。

 

『???』

 

 狐は板の中で動く人を見て目をぐるぐるとさせている。

 板の反対側に誰かがいるのかと思い覗き込むも何もない。では一体この人々はどのようにして板に表示されているのだろうか?

 もしかしたら自分のように閉じ込められてしまっているのかもしれない。

 

『はははっ! テレビも初めてか! やっぱおめぇタイムスリップしてきたのか?』

 

 そんな狐の様子を見て男は豪快に笑っている。

 

『でも江戸時代とかに個性ってあったのか? ま、こまけぇことはいいか!』

 

 男は首をひねっていたが、深く考えない性質なのか思考を放棄した。

 

 ――pipipi!

 

 響いてきた電子音に狐は驚き毛を逆立てる。

 

『お、炊けたか』

 

 男はゆっくりと立ち上がると台所へ向かう。狐もその後を追いかけると、炊き立てのご飯のいい香りが漂ってくるのを感じる。

 男が黒い箱のふたを開けると中から炊き立てのご飯が姿を現す。

 どうやら釜を使わずにご飯を作るからくりのようだった。

 

『見てたってなにも変わんねぇぞ? テレビでも見て待ってな』

 

 男は桃色の蓋の容器を取り出しつつ狐を今へ送り返す。

 彼女(?)は再び動く人の映る板(テレビ)へと向き直る。

 

『――“私が来た!”』

 

 筋骨隆々の大男が椅子に腰かけ何やら話を聞かれている映像が映し出されている。

 狐は恩人が落としていった紙を取り出す。

 服装は違ったが、同じ人物が描かれている。

 

『……おおる、まいと?』

 

 狐は大男がオールマイトと呼ばれていることを理解し、彼が平和の象徴と呼ばれていることを知る。

 もしかすると、このオールマイトなる人物こそがこの平穏な世界を作り出した主なのではないか、狐はそう感じていた。

 

『――ほら、出来たぞ』

 

 オールマイトのインタビューに見入っていると、男がおにぎりの乗ったお盆を手に戻ってくる。

 

『腹、減ってんだろ? 遠慮せず食いな』

 

 狐は恐る恐るそれを口に運ぶ。

 米の甘さではない人工的な甘さが口いっぱいに広がり、思わず唾液が迸ってくる。腹の虫はもっと寄越せと主張をはじめ、気が付けば彼女(?)はおにぎりを夢中で頬張っていた。

 

『そうか、うめぇか』

 

 男の言葉に彼女(?)はしきりに首を縦に振る。

 彼は嬉しそうに微笑むと自分もおにぎりを一つ手に取りかぶりつく。

 

『――うっ! あ、甘……っしまったぁ! 塩と間違えて砂糖入れちまってた!』

 

 調理の際彼が持っていたのは桃色の蓋の容器――つまり砂糖が入っている物である。

 狐にとって色で調味料を入れる容器を区別する習慣がなかったため、間違いに気づかなかったのである。

 

『ま、待ってな! すぐに作り直し――』

 

 慌てて皿を下げようとする男の手を、狐は掴んで引き留める。

 

『これで、いい……おいしい、から』

 

 彼女(?)は激甘なおにぎりをゆっくりと口に運んでいる。

 男はその様子をみて強がりではないことに気づき、安堵の息をつく。

 

『そっか……でも次はちゃんと塩むすび作ってやるからな』

 

 頭を撫でられ狐は穏やかな気持ちになる。

 きっとこれは“平和の象徴”とやらのおかげなのだろう、と思い彼女(?)は嬉しそうに尻尾を揺らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

()()()()ッ!」

 

 タイクーンの決め台詞をダパーンは鼻で笑う。

 

「ははっw オールマイトオタクキッショwww 大人しく葬式でもしとけってのwww」

 

 ダパーンは自分が勝てると信じてやまなかった。

 なぜなら、彼にとってタイクーンはモブキャラもいいところ。ギーツについて回る金魚のフン。マグナムバックルさえあれば()()()()勝てる雑魚キャラだと思い込んでいるのだ。

 

「……オールマイトを――ボクの師匠を笑うなッ!」

 

 ――TWIN BLADE

 

 タイクーンはニンジャデュアラーを分割し二刀の構えになる。

 怒りに任せて突撃するのではなく、冷静に相手の隙を伺っている。

 

「師匠ってw オールマイトはお前だけの先生じゃないだろwww 勘違いオタクキッツwww」

 

 ダパーンは二人の関係性を知らないがゆえにタイクーンをあざ笑う。

 彼らには血のつながりをはるかに凌駕する深いつながりがあることを知らない。

 タイクーンは複数の分身を生み出すとダパーンへ飛び掛かっていく。

 

「雑魚が何体増えても雑魚のままだろw」

 

 ダパーンは完全に舐め切っており、迫りくるタイクーンの分身を冷静に撃ち抜いていなしていく。

 かつてギーツと相対した際にはライフルモードによる狙撃にこだわっていたが、タイクーン相手ならばそうするまでもないと判断しているのだろう。

 

「――はっ!」

「!」

 

 タイクーンは分身を消すとダパーンに一太刀を入れる。

 そして両手のニンジャデュアラーを交互に巧みに操りダパーンを攻撃していく。

 一撃入れて距離を取り、そしてまた一撃を叩きこむ。ヒット&アウェイでトリッキーに立ち回っていく。

 

「チッ……!」

 

 ダパーンはようやくタイクーンを厄介な敵であることを認め、遠距離狙撃で仕留めるスタイルに切り替えようとする。

 タイクーンが距離を取った瞬間、腕のアーマードガンで牽制しつつ距離を取り始める。

 

「っさせるか!」

 

 距離を取られれば不利になるのはタイクーン。ダパーンの行動を妨害しようと手裏剣上のエネルギー弾を放って牽制する。

 ダパーンはそれを易々と回避すると、近くの街灯の上に陣取る。

 

「ははっw やっぱお前雑魚だわwww」

 

 ――RIFLE

 

 自分が有利な状況になった途端、ダパーンはタイクーンを煽り始める。

 そしてマグナムシューターで狙撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

「……すごい」

 

 波動は右肩から流れ出る血を押さえつつ、目の前で起こるダパーンとタイクーンの戦いを眺めていた。

 まるで特撮番組を見ているかのような戦いで、もしかしたら夢を見ているのではないかと錯覚してしまうかのようだった。

 

「――始まっていたか」

「っ!」

 

 背後からの声に波動は飛び上がる様にして振り返る。

 そこには雀のような仮面を身にまとっている人物――ナッジスパロウが立っている。

 動物の仮面の者達に命を狙われていることを自覚している彼女は咄嗟に戦闘態勢に入る。

 

「……待て、俺は味方だ」

 

 ナッジスパロウ――周は変身を解除することで敵意がないことを示す。

 

「……お前のその傷、止血をしないと失血死する」

「あっ……ッ」

 

 周は波動のそばに腰を下ろすと懐から取り出した治療キットで彼女の傷を手当てしていく。

 キットの中に止血剤が入っている辺り、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのようだった。

 

「あなたヒーローじゃないよね? なのにどうしてそんなに本格的な道具を持っているの? もしかしてお医者さん?」

「……たまたまだ」

 

 好奇心が抑えられなくなった波動は周に質問をぶつけている。

 

「ねえ、あの動物頭の人たちは何? それにあの怪物も、わたしたちの命を狙っているけどどうしてか知ってる?」

「それは――」

「――ジャァ……」

「――い、いた! ヒーロー!」

 

 周が質問に答えようとしたところへジャマトと虎を思わせる仮面のプレイヤーが姿を現す。

 

「……やれやれ、ゆっくり話をさせてくれないか!」

 

 ――SET

 

 彼はモンスターバックルを装填し、大きく深呼吸し首を回す。

 

「変身」

 

 ――MONSTER!!

 

 周――ナッジスパロウは近くにいたジャマトを殴り飛ばし、続けて虎のプレイヤーのドライバーへ手をかける。

 

「えっ……!」

「……そうか、そういうことか。ようやく合点がいった」

 

 そのまま力を籠め、ドライバーを引きはがすとIDコアを引き抜く。

 IDコアをそのまま放り捨てるとドライバーを()()()()()()()と投げ飛ばす。

 

「――なっ!」

 

 ダパーンとの戦いの最中、それを目撃したタイクーンは利敵行為に固まってしまう。

 

「ははっw 隙ありィwww」

 

 ――BULLET CHARGE

 

 その隙をダパーンは見逃さず、すぐさま必殺技を叩きこむ。

 タイクーンは攻撃を受け大きく吹き飛ばされ、ドライバーからニンジャバックルが外れて落ちる。

 

「っ……!」

「――ジャ……ジュラピラ、ヘンシン」

 

 ――Jyamato

 

 変身解除され転がっていった緑谷の隣にはドライバーを手にしたジャマト。

 ジャマトライダーは変身するや否や武器を振り下ろす。

 

「ッフルカウル――!」

 

 緑谷は咄嗟に個性を発動するとその攻撃を躱した。

 

「ははっw やっぱ俺()()()んな~! やっぱ世界は俺を中心に回ってんだよwww」

 

 ダパーンは陣取っていた街灯から飛び降りると、落ちていたニンジャバックルを拾い上げる。

 彼はナッジスパロウの行為を()()()()()だと拡大解釈し、変身解除されて逃げ回る緑谷をあざ笑う。

 

「“僕が来た”? www ヒーローごっこはお友達とするもんだぜ?」

 

 ――MAGUNUM VICTORY!!

 

 ダパーンはニンジャバックルを手中に収めるとマグナムバックルを起動させ必殺技を放つ体勢に入る。

 

「そういや、お前斃すミッションあったなw じゃ、これでミッションクリアだwww」

 

 緑谷はダパーンの攻撃を躱そうとするも、ジャマトライダーの攻撃を捌くので手いっぱいだった。

 ダパーンは両腕のアーマードガンを展開すると前へならえのように緑谷へ向ける。

 

「――へぶっ!」

 

 アーマードガンが火を噴くも、緑谷は突如として飛来したバックルが顔面に命中し事なきを得た。

 

「は?」

 

 ダパーンは思わぬ横やりで必殺技が回避され怒りの声を上げている。

 

「……っこ、これは……?」

 

 緑谷は顔面に突き刺さったバックルを引き抜く。彼の顔は(アスタリスク)のように凹んでしまっていた。

 

「よくわかんないけど――」

 

 ――SET

 

「変身っ!」

 

 彼はバックルを装填し起動する。

 

 ――GREAT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「はぁっ……はぁ……まずは、一体」

 

 バッファはゾンビブレーカーを杖のように突きながら崩れ落ちる。

 

「い、今のがジャマトライダー、ですのね……なんという強さ」

 

 ロポもまた、ビートアックスを抱えたまま膝をついた。

 ジャマトライダーは強敵だった。

 以前バッファ――牛込は生身の状態でジャマトライダーをボコボコに打ちのめした実績があったが、それは一種の暴走状態にあったことが好影響を与えていたにすぎない。

 まともな精神状態で斃そうと思えば、いくらか手こずることになってしまうのだ。

 

「ですがこれであともう一体斃せれば勝ち抜けは決定しますわね」

 

 決め手はロポの一撃だった。彼女はジャマトライダーを撃破したことで得点を獲得していた。

 

「……ん。でも――思った以上にジャマトライダーいないわよね」

 

 バッファはてっきり強敵であるジャマトライダーは数多く解き放たれている物だと思い込んでいた。

 しかし、ここまでで出くわしたのはわずかに一体。

 もしかすると、ヒーローや他プレイヤーを狩らずとも勝ち残る芽が生まれてしまうジャマトライダーは数が少なく設定されているのかもしれない。

 

「急ぎましょ。もしかしたら……もうジャマトライダーはいないのかもしれないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「変身っ!」

 

 ――GREAT

 

 緑谷――タイクーンのマスクにグラスのようなデバイスが装着され、その手には剣のような武器――レイジングソードが装備された。

 

「こ、これだけ……?」

 

 タイクーンはレイジングソードをまじまじと見つめ、装甲が展開されないことに戸惑っている。

 

「っそうか、このくっついてるバックルを――って取れない」

 

 レイジングソードにはバックルが装填されていたが、それは引き抜こうとしてもくっついたまま離れない。

 

「ご愁傷様w ――ってんだよ!?」

 

 ダパーンは見るからに弱そうな武装のタイクーンをあざ笑っていたが、ジャマトが襲い掛かってきたことで応戦せざるを得なくなる。

 

「ジャ……!」

「っ!?」

 

 タイクーンもまたジャマトライダーに襲われレイジングソードで応戦する。

 

(思い出せ……っ! 剣を使ってるヒーローの戦い方っ!)

 

 彼はレイジングソードを振るうも、逆に自分が振り回されてしまっている。小ぶりなニンジャデュアラーはともかく、長刀であるレイジングソードはそう簡単に使いこなせるものでもない。

 幸いにも振るった攻撃はジャマトライダーを翻弄できており、戦況はタイクーン有利だった。

 

「――っこうか!」

 

 レイジングソードにエネルギーが充填される。タイクーンはそれを下段で構え、迫りくるジャマト達をカウンター気味に迎え撃つ。

 だが腰が入っておらず、まだまだ振り回され気味だった。

 

 ――『焦る必要はないぞ』

 

 そんな中、合宿中の指導が頭に浮かび上がる。

 

 ――『“溜めて、打つ”、動きに緩急をつけるんじゃ』

 

 格闘技指南での言葉。

 説明しながら見せてもらった空手の型はとても美しく、放たれた拳は音を切り裂くような鋭さだった。

 

(溜めて、打つ……緩と、っ急!)

 

 再びレイジングソードを構えて振り抜く。今度は腰が入っておりジャマトを斬ってなお軸がぶれていなかった。

 ジャマトを撃破するごとにレイジングソードにエネルギーが充填されていき、やがて一際青く発光した。

 

 ――FULL CHARGE

 

「えっ……まさか――」

 

 タイクーンはレイジングソードのバックル――コマンドキャノンバックルに触れる。さっきは固く動かなかったそれは、レバーを引き起こすことができるようになっており、いとも簡単に外れてしまう。

 

「取れたッ!? じゃ、じゃあ――」

 

 ――TWIN SET

 

 取り外したそれをドライバーの左側に装填、レバーを引き起こして起動する。

 

 ――TAKE OFF COMPLETE! JET & CANNON

 

 上半身には両肩に一対の砲台を装備したアーマー、下半身にはジェット機の翼を思わせるパーツの付いたアーマーが装備される。

 タイクーンの変身したレイジングフォームは、一定数の敵を撃破することで真の姿へ変身することができる形態だ。

 

「すごい……っこれなら!」

 

 ――READY FIGHT!!

 

 残されたのはジャマトライダー。

 タイクーンは両肩の砲台――トロンキャノンから弾丸を発射しつつジャマトライダーに接近する。

 

「!」

 

 今までライダーの攻撃を寄せ付けなかったジャマトライダーはタイクーンの攻撃になす術もなくやられている。

 タイクーンは接近するとレイジングソードを振るいジャマトライダーを滅多打ちにする。

 

「スマァァッッシュ!!」

「ジッ――!」

 

 レイジングソードによって切り裂かれたジャマトライダーは傷を修復しようとツタのようなものを発生させている。

 

「これで――決める!」

 

 ――LOCK ON

 

 トロンキャノンの照準がジャマトライダーに定められる。

 タイクーンは再びバックルのレバーを引き起こし、必殺技を放つ。

 

 ――COMMAND TWIN VICTORY

 

「はっ!」

 

 攻撃は全弾命中し、見事ジャマトライダーを撃破するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――デザイア神殿。

 

『――へぇ? あんなアイテムがあったんだねぇ』

 

 戦闘の一部始終を見ていたオール・フォー・ワンはタイクーンの得たバックルを興味深そうに眺めている。

 

『……ついに尻尾を現した、と言うことかな?』

 

 アイテムをプレイヤーにどう配布するかはゲームマスターの権限で決めることができる。

 ミッションの設定、緊急措置としての配布――今回のゲームにおいて彼は前者しか行っていない。

 つまりミッションをクリアしていないタイクーンがバックルを得たということは、ゲームマスターよりも上の権限を持つ者が介入してきたということを意味する。

 

『――初めまして、かな。悪の帝王』

 

 突如、神殿に声が響き渡る。

 タイクーンの戦いを映していた画面が切り替わり、どこかの一室が映し出される。

 

『まさかそっちからコンタクトしてくるとは思わなかったよ。君はさしずめ――このゲームの“プロデューサー”と言ったところかな?』

『ご想像にお任せするよ』

 

 映像に映る人物――ニラムはふてぶてしく肩をすくめてみせる。

 

『ご想像、ねぇ……僕の()()では、君はデザイアグランプリを取り戻そうと仮面ライダータイクーンにバックルを支援した、といったところなんだがね』

『成程、具体的な()()だ』

 

 オール・フォー・ワンの指摘にニラムは呆れたようにため息をつく。

 

『別に私はゲームに干渉するつもりはないのだが……観客(オーディエンス)からのクレームが入れば話は別だ』

『……へぇ?』

 

 観客(オーディエンス)と言う言葉にオール・フォー・ワンは仮面の下で顔を顰める。

 確かに“リアリティーライダーショー”と冠している以上、ショーを楽しむ観客がいるのは当然のことである。

 

『それに――ゲームマスターがゲームの勝敗に直接関与するのは、()()()以外の何物でもない

『おいおい! 言いがかりはよしてくれよ! 僕は真剣にゲームを盛り上げようとしてるんだぜ?』

 

 ニラムの指摘を大げさなリアクションで否定するオール・フォー・ワン。

 確かに、彼の設定した“仮面ライダータイクーンを討伐”するミッションはどう見ても特定のプレーヤーを退場させようとする意図が透けて見えている。

 ゲームマスターに都合が悪い人物が勝ち残らないように仕組んでいると言われても仕方ないことだろう。

 

『他者を蹴落としてでも勝ち残りたい者と、逆境に負けず抗う者の戦い――盛り上がると思わないかい?』

 

 オール・フォー・ワンは心にもないことを並べてニラムを丸め込もうと試みる。

 彼の狙いはタイクーン――緑谷の持つ個性、ワン・フォー・オール。

 彼はオールマイトとの戦いから既に個性は譲渡されていることを見抜いていた。そして様々な情報から緑谷こそが後継者であることを突き止めていた。

 緑谷を退場させればその肉体はジャマトの農園――ジャマーガーデンへ転送され、そこでは彼の息がかかったものがそれを受け取ることとなる。

 つまり、タイクーン――緑谷を退場させればワン・フォー・オールを手に入れることができるのだ。

 

『…………本当に?』

『気に入らないのなら僕をクビにするかい?』

『…………』

 

 映像が途切れ、再びタイクーンの戦闘に切り替わる。

 

『……やれやれ。一筋縄ではいかない、か』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 ジャマトライダーを撃破したタイクーンは再びダパーンに向き直る。

 

「っ次は、お前だ……!」

「は? なんでそんなチートアイテム手に入れてんだよッ! 俺に寄越せよッ!」

 

 ジャマトをようやく片付け終わったダパーンは苛立ったように地団駄を踏む。

 

「なんでお前に渡さなきゃいけないんだよ……っ!」

 

 タイクーンはダパーンの身勝手な言動に苛立ちを覚える。どこまでも自分本位で、他者を思いやることすらできない人柄に嫌悪感すら抱いている。

 

「っいいぜ、このバックルでとどめを刺してやるよw」

 

 ――SET

 

 ダパーンはニンジャバックルを装填し、起動する。

 

 ――MAGNUM & NINJA

 

 ニンジャの装甲を得たダパーンは素早い動きでタイクーンへと迫る。直線的で、何のひねりもないが動き方だけは様になっていた。

 

(溜めて、打つ!)

 

 タイクーンはその動きを見切るとカウンター気味にレイジングソードを振るう。がら空きだったダパーンの腹部に攻撃が吸い込まれる。

 

「ぐあっ! ……てめ」

 

 ダパーンは斬られたわき腹を押さえつつマグナムシューターでタイクーンを銃撃する。

 しかしその弾丸はタイクーンの装甲――キャノンシンクロジションによって防がれる。

 

「くそっ! くそっ!」

 

 二発、三発と入れてもタイクーンをのけぞらせることすらできない。

 弾丸を受けつつも彼は一歩ずつダパーンへと迫る。

 

「……降参してバックルを全部渡すんだ」

「ふざけっ! やがってッ!!」

 

 ――REVOLVE ON

 

 ダパーンはベルトのロックを外して反転、悔し紛れに形態を変化させる。

 そして煙幕を張り逃走を試みる。

 

「……っ!」

 

 ――REVOLVE ON

 

 タイクーンもそれに応じて反転、ジェットモードに切り替わる。

 下半身に集中していた飛行ユニットが背中側へ移動し、飛行能力を獲得する。

 そして脚部のスラスターからジェット噴射を行い煙幕を薙ぎ払いつつ上昇する。

 

「くそッ! ふざけんなッ!」

 

 ダパーンは悔し紛れにニンジャデュアラーを振るいタイクーンをけん制する。ジェット噴射による直線的な動きでは避けることができないと判断したのだろう。

 しかしタイクーンは背中の翼――ウインガンカーを操ることで急旋回することでそれを回避、ダパーンの背後へ回り込みライダーキックを叩きこむ。

 その動きはさながら、グラントリノのようであった。

 

「うがっ……!」

 

 受け身も取れずダパーンは無様に転がっていく。当たりどころがよかったのと、タイクーンが加減をしたおかげで変身は解除されずに済んでいる。

 

「……降参しないと、本当に退場しちゃうんだぞッ」

「俺に――指図すんじゃねぇよッ!」

 

 タイクーンは躊躇いながらも、心のどこかでダパーンは退場させなくてはならないのではないかと感じていた。

 きっとこの男は改心しない。

 どこまでも自分本位で他人を傷つけても心が痛まない男は、生涯この性格のまま過ごしていくことになるのだろう。

 

(なんで……こいつが生き残って――葉隠さんが退場しなきゃならなかったんだッ!)

 

 何より許せないのは、葉隠が退場してしまったのにダパーン――伴野が生き残っているということである。

 他人を慮れない悪人のような男が脱落で済んで、ヒロイックで誰かのために動ける善人な葉隠が退場してしまっている。その理不尽が彼には耐えられなかった。

 

「……忠告は、したぞ」

 

 タイクーンはレイジングソードを振り上げる。

 以前の彼ならばバックルを没収するだけで済ませていただろう。しかし胸の内に広がる怒りは彼に一線を踏み越えさせようとしていた。

 

「――待て」

 

 そこへ割って入るのはナッジスパロウ。静かに傍観していた彼は、突如として二人の間に割って入る。

 

「い、いいぞ――やっちまえっ!」

 

 ダパーンはそれを自分への助太刀だと思い込み、ナッジスパロウを応援している。

 

「……どいてよ」

「断る」

「…………どいて、くれよ……っ!」

「……冷静になれ。ここで一線を越えれば、お前はもう後戻りができなくなる」

 

 ナッジスパロウは静かにタイクーンを諭す。それは聞き分けのない子供に言い聞かせているかのようだった。

 

「……ふざけんなよ。利敵行為(あんなこと)しておいて、今更味方のつもりかよッ!」

「……もとよりお前を裏切ったつもりはない。あれが()()だっただけだ」

 

 タイクーンはゆっくりとレイジングソードを下ろす。いくら怒りに染まっていようとも、自分を助けてくれた恩人に手を上げることはできなかった。

 

「……そうだ、それでいい。お前は()()手を下さなくていい」

 

 ――MONSTER STRIKE!

 

 ナッジスパロウはそれを見て満足げに頷くと、バックルを起動させる。

 

「あんなクズは――()()()()

「へっ?」

 

 ダパーンは迫りくる拳を前に間抜けな声を上げてしまう。

 ナッジスパロウは振り向きざまにエネルギーを纏った拳をダパーンへ振り下ろした。

 

「あっ……くそっ……」

 

 変身が解除され、伴野は苦しそうにうずくまる。彼のIDコアは無残にひび割れている。

 

「なんで……俺にこうげき」

「……それが俺の目的を果たすために()()だったからだ」

 

 ナッジスパロウ――周は変身を解除しつつ伴野を見下ろす。3mに迫る高さからの視線は伴野を恐怖のどん底に叩き落とした。

 

「くそっ……! コアが……っ! お、おい……たすけてくれよっ! なあ、おまえオールマイトにあこがれてんだろ? だったらチャンスだろっ」

 

 伴野は無様に這いつくばりながらタイクーンへ縋りつく。さっきまで敵視していたとは到底思えない無様さだった。

 

「……ふざけんなよ……っ! なんで――助けてもらえると思ってんだよッ!」

「うっ!」

 

 タイクーンは伴野を払いのける。

 さっきまでとどめを刺そうとしていた相手に助けを求める図々しさに、彼はある種の尊敬の念を抱いていた。

 伴野は地面を情けなく転がっていき、やがて行く末を見守っていた波動の下へ転がりつく。

 

「……ねえ、大丈夫?」

 

 傷ついてボロボロな伴野を波動は心配そうなまなざしで見つめる。

 その視線は、彼のプライドと劣等感を大いに刺激した。

 

「そんな、そんな目でみるんじゃねぇっ!」

「きゃっ!」

 

 窮鼠猫を噛む、伴野は最後の力を振り絞って波動に飛び掛かり彼女の首を両手で締め上げる。

 

「おまえさえっ……! おまえさえいなければァァアァァ!」

 

 波動は首を絞められながらも、可哀想なものを見る目で伴野を見つめていた。

 

「おまえもみちづれに――――」

 

 ――MISSION FAILED...

 

 伴野の体が消滅する。

 持ち主を失ったマグナムバックルとニンジャバックルが波動の手元に落ちる。彼女は苦しそうに息をしながらもそれを持ち上げる。

 

「……変なの。あんなに酷いことしてきたのに、伴野くん……()()()()()()()()()()()()

「そりゃ、自分が消えそうになってたらそうなりますよ」

 

 タイクーン――緑谷は変身を解除しつつ、波動の持っていたニンジャバックルを受け取る。

 

「ううん。君が来る前からずっと、ずっと……助けて、って言ってるみたいだったの。変なの」

「……奴を助けられるとしたら、それはお前だけだった」

 

 周もまた波動からマグナムバックルを受け取る。

 波動は周の言葉にきょとんとしている。

 

「……ただの直感だ。気にしなくていい」

「直感? それってどういうことなの? 貴方の個性のこと?」

 

 曖昧な周の言動は波動の好奇心に火をつけてしまったのか、彼は質問攻めにあってしまう。彼は困ったように顎をさすりつつ彼女の質問に答えている。

 

(っ……僕は、なんであんなことを)

 

 二人のやり取りを見ていた緑谷は、ダパーン――伴野に対して抱いた怒りを思い出し嫌悪感に陥っていた。

 半ば八つ当たり、当てつけのような敵愾心。

 オールマイトのような“笑顔で助けるヒーロー”を目指している者としてはあるまじき感情だった。

 ネガティブな思考は止まるところを知らず、彼はどんどん自己嫌悪に陥っていく。

 

 ――そんな彼をフォローし励ましてくれるものは、残念ながらこの場にはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――ジャマーガーデン。

 

 ジャマトを育てる農園では、次々と死体(ひりょう)が運び込まれてきて大忙しだった。

 

「よしよし、順調だな♡」

 

 農園の主――アルキメデルは個性持ち(ひんしゅかいりょう)のジャマトの成長ぶりを見て満足げに頷く。

 

「うんうん――立派に育ったなぁ……複数の改良種を掛け合わせて出来た最高傑作」

 

 そして彼は成体となったジャマトの両肩を叩き満面の笑みを浮かべている。

 そのジャマトはどこか女性的なシルエットで一見可憐さを見せているが、その実食虫植物を思わせる禍々しさも兼ね備えていた。

 ジャマトは両腕から筋繊維のようなものを放出したり、指先から糸を放出しては引っ込めたりと、自身に備わった個性の状態を確かめているようだった。

 

「そうだな……お前の名前は――」

 

 ジャマトの体が一瞬、透明に変化した。

 アルキメデルは腕を組んで悩みつつ、ひらめいたのか手を叩く。

 

「そう! クイーンだ! 立派なジャマトになるんだよぉ」

「……ツヨク、ナル」

 

 ジャマト――クイーンはその言葉を受け、()()の強い想いをつぶやくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


















伴野……これでもう二度と登場できまい。
書いていて楽しいキャラではあるのですが、読み返しててうざいのでもう出てこないで欲しいところ。まあ、私の匙加減次第ではありますが……
実のところ、伴野が再登場したのは当初、ジャマトサイドでねじれさんとの因縁を書けそうだな、って思ったのがきっかけでした。その結果が前回です。
そして感想でいただいた凌辱ルートも読みたいとの声。
……も、もしかして凌辱ルート、需要あったりしますか?
……な、ないですよね? ね、念のためアンケート取ってみます。

ねじれさん凌辱ルートについて

  • ぜひとも読ませていただきたい
  • 待て、早まるんじゃない
  • 私に任せろ!
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