・・・い、いやようやくオリキャラの名前思いついたとか、そういうのじゃないんだからねっ!
――――
――
海浜公園の掃除は既に日課となっていた。
「よしっ……」
緑谷はごみ置き場に運び終えた後、回収業者がやってくるのを待つ。
ぼーっと波の音を聞いていると、遠くからトラックのエンジン音が響いてくる。
軽トラックが停車し、中から作業員が降り立つ。
「……あっ」
「っあんた、なんでここに」
緑谷は作業員の一人を見て大きく目を見開く。
牡牛を思わせる額の角、中性的な顔立ちに暗い色のセミロングの髪――今は後ろで一つに束ねている。つなぎと帽子をかぶっていても、その顔を見間違えることは無いだろう。
作業員の正体はバッファ――牛込 茜だ。
「あれ? 二人、知り合い?」
「……ええ、まあ」
彼女は苦々しい表情でもう一人の作業員に対して答える。なれ合いを好まないようだが、最低限の社交性は備えているようだ。
「……ほうほう」
もう一人の作業員――中年の男だ――は緑谷と牛込の双方を見つめると、何かに気づいたように手を叩く。そして静かに緑谷へ近寄ると、手を口に当てて彼に耳打ちする。
「青春してるな、少年!」
「は? へ? えっ……?」
緑谷は訳が分からず目をぱちくりとさせている。
「彼女が目当てなんだろ? ごみ掃除でいい男アピールしようって魂胆だろう? かわいいな~もう」
どうやら男性は緑谷が好きな人の気を引きたい純情な少年であると勘違いをされたようだ。
「ちっ違いますよっ! 僕は体を鍛えようと」
「だがなぁ、あの娘はかなり気難しいぜ」
緑谷の弁明など耳に入らないのか、作業員の男は訳知り顔で続ける。
「あんないい個性持ってりゃ雄英は無理にしてもいいとこのヒーロー科卒業して中堅程度のヒーローにはなれたはずさ」
油を売っている同僚など気にも留めず、牛込は緑谷の運んできたごみを軽々と持ち上げてトラックへと積み込んでいる。
「が、なぜか知らんが中学卒業してフリーターになってる。ま、
「は、はぁ……」
思いがけず知った
ヒーローオタクの彼の脳みそは自然と考察を始めている。
「牛みたいな角……個性は
「ははは! ま、頑張りなさいよ」
自分の世界に入り込んでしまった緑谷をよそに、作業員の男はごみ運びを手伝い立ち去ってしまった。
しばらく考察を続け、誰もいなくなってしまったことに気づく。
波の音が静かに響き渡っていた。
――――
――
デザイアグランプリ第1回戦から2か月の時が経とうとしていた。
あれ以来音沙汰なく、参加者たちは本当に続きがあるのか疑いたくなっている頃だった。
(あ……筆箱忘れちゃった)
葉隠は慌てて教室へと駆けていく。
「――やっぱ才刃さんかな~」
「っ!」
教室では残っていた男子たちによる“誰が一番好きか”の討論が行われていた。
○○はかわいいけど性格が~だの、××って顔は普通だけど結構好きだな~だの、女子がいないのをいいことにあれやこれや好き勝手語っていた。
(男子って、ホントこういうの好きだな~)
教室へ入りにくい雰囲気を感じた葉隠は扉の陰に隠れて彼らの話に聞き耳を立てていた。
「俺、けっこう葉隠さんとか気になってんだよね~」
「!」
葉隠は自分の名が上がり聞き耳が大きくなる。多少顔が出ていても見えないのをいいことに、大胆に顔を教室の中へ近づける。
「え~……」
「なんだよ“え~”って」
(そうだそうだ!)
言い出しっぺは不満そうに頬を膨らませていた。
「だってよ、葉隠って――
胸に何かが突き刺さったように感じた。
彼女の個性は透明化。文字通り透明で誰からもその姿を見ることはできない――自分自身でも。
「馬鹿、あのシルエットを見て何にも思わないのかよ! 制服越しにわかるあの胸、くびれた腰……普通にエロくね?」
「だからって、それだけでお前付き合えんのかよ」
「えー? よくね?」
「どうすんだよ、素顔がとんでもなく不細工だったら」
「あー確かに」
本人がいないと思って言いたい放題言っている男子たち。
図らずもそれを聞いてしまった葉隠は、当初の目的も忘れて教室を後にしていた。
「素顔、か……」
葉隠はぎゅっと胸を押さえる。
誰も見たことのない本当の顔。子供の頃、どうしても自分の顔を知りたくて粘土に顔を押し付けてみたり、絵の具を自分の顔に塗りたくったりした思い出がよみがえる。
足早に帰り道を歩きながら彼女は自分の顔に手を触れてみる。
滑らかな肌の感触がある。見えないなりにケアをしてきた賜物だ。
頬、唇、鼻筋、目元、順番に触れてみる。確かに顔の輪郭や貌が指先を通じて意識できる。それでもどんな顔をしているのかわからない。
――『どうすんだよ、素顔がとんでもなく不細工だったら』
「人の気持ちも……しらないで……っ!」
指先に雫が伝うのが分かる。
怒りや悲しみが涙となってあふれ出る。
初めから見えないのだから気にしなければいい。子供の頃から自分にそう言い聞かせてきた。だが小学校、中学校に進みいろいろな個性を持った人と出会い、その気持ちが揺らぎ始めていた。
――いつか、私の事が
葉隠は見えないことを受け入れ、
それでも――
(私、今……どんな
思わずにはいられない。本当はどんな姿形をしているのか。
心無い男子たちの言葉は、封じ込めていた彼女のネガティブな心を掘り起こしていた。
――♪
鞄の中のスパイダーフォンから通知音が響く。
「……っ来た!」
葉隠は涙を拭うと通知を確認する。
デザイアグランプリ、第2回戦の始まりを告げる招待状だった。
「よーし!」
彼女は暗い気持ちを振り払うと、鞄の奥底へとしまっていたデザイアドライバーを装着した。
――――
――
デザイアグランプリ第2回戦。
内容は“ゾンビサバイバル”。
エリア内で迫りくるゾンビジャマトたちを斃し続けるサバイバル形式のゲームだ。
プレーヤーはゾンビの討伐、エリア内に取り残されてしまった人々の救助など、様々な行為を“採点”され、総合得点が最下位のプレーヤーが脱落となる。
(コンビ攻撃に加点要素……ってことは、協力も視野に入れつつ戦わなきゃ、か)
緑谷は得点一覧を確認しつつ方針を組み立てる。
「よーし! 頑張るぞ~!」
同じエリアに転送された葉隠はブンブンと腕を振り回し張り切っている。
『それでは1stWAVE――開始です!』
ツムリの合図が響き渡る。
遠くの森からゾンビジャマト達が姿を現す。
「「変身!」」
――――
「さて……」
ギーツはレイズウォーターでゾンビジャマトの頭部を砕きつつ周囲を伺う。
ここまで順調にゾンビを撃破していき、スコアは現在1位だった。
「今回の“シークレット”は撃破系じゃないのかな?」
狙っていたのは“シークレットミッション”の報酬。
今回のゾンビサバイバルでは基本的にジャマトはアイテムをドロップすることは無い。だがゲーム内で一定の条件を満たすと報酬を得られることがある。
彼(?)はそれを達成することでブーストバックルを確保、のちの戦いに備えようと考えていた。
――SCORE UP
スパイダーフォンからスコア変動の通知が響く。
「残念、そんな余裕はなさそう……かな?」
スコアランキングは目まぐるしく変動しており、少しの差で最下位にまで転落しかねない過酷な状況だった。
「ジャァァァ……」
ギーツはゾンビジャマトへと向き直ると、レイズウォーターを構えながら突撃していった。
――――
「――こっちです!」
タイクーンはゾンビジャマトに襲われていた家族を安全な方へと誘導する。
――SECRET MISSION CLEAR!!
突如、近くの地面にアイテムボックスが出現する。
「え、シークレットミッション?」
ゾンビの頭を砕いたナーゴはアイテムボックスへと駆け寄り、蓋を外す。
中にはブーストバックルが収められていた。
「やった! ブーストバックル! これってあの強い奴だよね!」
「そっか、ゲームだから隠しミッションも」
レアアイテムを手に入れたナーゴははしゃいでいたが、ミッションを達成したのは自分でないことを思い出しシュンとなる。
「ごめん、これって私のじゃないよね……」
がっかりしながらブーストバックルを返そうとするナーゴ。
「いっいやいや! 早い者勝ちだよっ!」
タイクーンは返却されたバックルを受け取り拒否した。欲しい気持ちは山々だったが、早くアイテム獲得に向かわなかった戒めとして受け取らなかった。
『――1stWAVE終了~!』
そうこうしているうちに最初の戦いが幕を閉じた。
――――
――
「――皆様、お疲れ様でございます。第2ウェーブ開始まで、しばしおくつろぎを」
ゾンビサバイバルは複数ウェーブに分かれた長期戦、参加者たちは次の戦いに備えて疲れを癒していた。
「やば~得点最下位だよ~!」
メリー――黄金 誠三は最下位であることに狼狽えている。5位のナーゴ――葉隠とは5,000pt以上の差があるため、現状の脱落候補筆頭であった。
「なあ少年~どうやったらポイント稼げるの?」
「えっ! ぼ、僕ですか?」
黄金は近くにいた緑谷に肩を回して図々しく尋ねる。
「そうそう。若いのに3位なのすごいじゃん~おじさんにも攻略法を教えて欲しいな~」
「いっいや……僕も必死だったというか……っゾンビの討伐以外にも、救助したりとか、ですかね?」
人のいい緑谷はつい自分の攻略法を伝えてしまう。
黄金はニカッと笑うと緑谷を解放する。
「ありがとよ! よーし、次は頑張るか!」
「……あーあ、なんで教えちゃうかな。お前馬鹿なの?」
そんな緑谷をダパーン――伴野 優太は冷ややかに見つめる。
伴野は自分が年上であることを自覚してか、威圧的な態度だった。
「うっ……」
「ま、お前オタクっぽいしなw オタク君は先を見据えられないおバカなんでちゅね~www」
気の強い方ではない緑谷は心無い煽りに体を縮こまらせている。
「――フン」
そのやり取りを見ていたバッファ――牛込は苛立ったようにサロンを出て行く。
「せいぜい跳ねのいい当て馬になってくれ、な? こういう時くらい社会貢献しようぜwww」
伴野もまた、緑谷を馬鹿にしてからその後を追いかけていく。
「……何なの、あいつ! 緑谷くん気にすることないよ!」
やり取りを見ていた葉隠はプンプンという擬音が似合うような怒り方をしていた。表情を見ることはできなかったが、怒り心頭であるのは確かだろう。
「うん……わかってる」
緑谷は気にしていない風を装っているが、どこか傷ついたような表情だった。
「――人間、生きていれば出す拳の見つからない喧嘩もあるさ」
ギーツ――エースはコーヒーをたしなみながら緑谷を慰める。
狐耳と尻尾の毛は逆立っており、穏やかな気分でないことは確かだった。
「どう見ても、君の方が大人さ。
エースはカップ片手にウインクしている。その様子を写真に収めてプリントすれば、ちょっとした小遣い稼ぎになっただろう。
「ギロリさん、ご馳走様。さて、私は散歩でもしてくるよ」
エースは手をひらひらさせながらサロンを後にした。
――――
――
「ねえ、お姉さん!」
神殿の中はサロンの他にも練習場やロッカー、シャワールームなどプレーヤーをサポートする施設がそこかしこに設けられていた。
「……何?」
打ちっぱなしのコンクリートの通路、牛込は呼び止められ不機嫌そうに振り返る。暗い照明はその表情を2割増しで不機嫌に見せていた。
「あのさ、俺と手を組まない? レアバックル持ってる同士、さ」
伴野は人を小馬鹿にしたような笑みで協力を申し出ていた。
二人の順位はそれぞれバッファ――2位、ダパーン――4位、可もなく不可もなくと言った位置。点数の差はあまりなく、セーフティリードとは言い難い点差だった。
「……冗談でしょ。あたし、なれ合うのは好きじゃないから」
「は? わかってないなぁw 二人で漁夫ってけば他の奴らを蹴落とせる。そうすりゃ安全に次ラウンド進出」
性能の差を生かして他プレーヤーの撃破を横取りしていく。
ゾンビの撃破ptを手に入れられるだけでなく、タイミングが良ければ協力ptを手に入れる機会もあるだろう。
効率よく、かつ安全に――それが伴野の戦略だった。
「……悪いけど他を当たって」
「チッ……これだから低学歴は。もっと脳みそ使って生きようぜwww」
牛込は拳を握り締め、伴野を睨み付ける。殺気が放たれているが、伴野はそれに気づいていなかった。
「……ひとつ、教えておいてあげる」
そしてずんずん突き進み、伴野を壁へと押し付ける。傍から見れば壁ドンだったが、拳の叩きつけられた壁にひびが入っているため胸のときめけるシチュエーションではなかった。
「あたしはお前みたいな奴が大嫌いなんだッ! 二度とその面見せんな!」
――他プレーヤーへの攻撃は違反行為となります。
「……ウザッ。ヒーロー気取りかよ」
無機質なアナウンスが響き渡る。
冷静さを取り戻した牛込は、痛そうに拳をさすりながらその場を後にする。
「――ひゅぅ……気の強い子は怒らせると怖いね♪」
その様子を見ていたエースはわざとらしく怖がりながら肩をすくめる。
「ふん……」
伴野は忌々しそうに肩の埃を掃うと、いやらしい笑みでエースに問いかけた。
「ねえスター。俺と手を組まない?」
その手には牛込が持っているはずのゾンビバックル。
「それ、バッファのだよね? いつの間に手に入れたの?」
レアバックルはゲーム中1つしか出現しない。それゆえマグナムとマグナム、ゾンビとゾンビ、ブーストとブーストといった組み合わせはできないのである。
「あいつが壁ドンしてきた時。隙だらけで笑っちゃったよwww」
伴野は壁ドンされた隙に懐からゾンビバックルをスリ取ったのである。
「別にルール違反じゃないでしょ? 勝つために手段を選ぶ方が――馬鹿を見るんだよw」
「ふふ。悪い人だね、君は」
エースは呆れて笑いながらゾンビバックルを受け取った。
「決まりだね」
伴野は交渉成立、と言わんばかりに笑っていた。
――――
――
程なくして第2ウェーブが開始される。
メンバーの転送は毎回ランダムなのか、今回は緑谷と牛込が同じエリアに解き放たれていた。
「っない!?」
第2ウェーブが始まり、変身しようとする牛込だったが、ゾンビバックルが無いことに気づいて狼狽える。
「なっないって何が」
「ゾンビバックルに決まってるでしょっ! なんで……ずっと持って」
記憶をたどり、気づく。
「っあの時……!」
「ないってどうして」
「パクられた! クソッ! あいつやりやがった!」
牛込は悔しそうに地団駄を踏む。芝の茂った地面に足形がくっきりと刻み付けられる。
「パクるって……そんな、普通に犯罪じゃ」
「……そんな言い訳、
バックルが無くては変身ができなくなる。
そうこうしているうちにゾンビジャマトたちが迫り来ていた。
「っ危ない!」
緑谷は咄嗟に牛込を突き飛ばし、ジャマトの攻撃から守る。
――SECRET MISSION CLEAR!!
二人の足元にアイテムボックスが出現する。
ミッションの達成条件は『一番最初にゾンビの攻撃から他の参加者を守る』だった。
「こ、こうしちゃいられない」
――ARMED ARROW
緑谷はわざと気づいていない体で変身し、ジャマトに立ち向かっていく。
「……っ礼は言わないからな!」
牛込はボックスを開く。中には爪を思わせるバックルが収められている。
――ARMED CLAW
バッファは両手にカギヅメのような装備を身に着けると、ジャマトへと立ち向かっていった。
――――
――
葉隠と伴野――ナーゴとダパーンが同じエリアへ転送されていた。
二人は全くと言っていいほど協力せず――むしろダパーンが協力を拒んでいた――各々が個別でジャマトと戦っていた。
「ナーゴ! あっちに取り残された人が!」
「えっ? それ本当?」
ダパーンは近くの建物を指差す。
コンクリートでできた3階建ての建物だ。ずっと使われてないのか、壁は痛み窓はくすんだり罅が入ったりしている。
「こんなときに嘘つくかよ! 早く来て!」
「ぅ……そうだよね、ごめん!」
ナーゴはダパーンに連れられ建物の中へと入る。
中は照明の一つもなく、ホラー映画に登場しそうな不気味さだった。
「ねえ! 残された人は――」
「こっちだよっ!」
「きゃっ!」
吹き抜けのフロア。目の前には一段低い空間が広がっている。
ダパーンはナーゴの背中を蹴飛ばし、そこへ突き落す。
落ちてきた
「……っ!」
ナーゴは必死にハンマーを振り回し、ゾンビジャマト達を追い払う。だが地の利も数の利もない彼女に勝機は殆どなかった。
――ガブリ!
「ぁあぐっ!」
ゾンビジャマトが大きく口を開き、ナーゴの肩口に噛みつく。
「あっはっは! いいザマだwww」
ダパーンはその様子を面白がって笑っていた。そんな彼の事をゾンビジャマト達は見向きもしなかった。
「っなんで、こんなこと」
「……ムカつくんだよ。お前みたいな低能な女が勝つかもしれないってことが」
ダパーンはマグナムシューターの照準をナーゴへ合わせる。
「お前、噛まれたからゾンビだよな? じゃ、斃してポイントゲットだw」
引き金に指がかかる。彼の表情は仮面に隠れて見えないが、おそらく人を小馬鹿にしたような笑みなのだろう。
「……ん?」
そんなダパーンの周囲を狐火が漂い始める。
青白く不気味なそれをダパーンは警戒し、銃口をナーゴから外した。
「――コン♪」
「うっ!?」
狐火が爆ぜる。
爆風をもろに受けたダパーンは無様に転がっていく。
爆炎の奥から現れたのはエース。楽しそうに狐耳を揺らしながら歩いてくる。
「なんで……お前っ!」
手を組んだ相手からの攻撃にダパーンは激昂する。
「あれ? 狐は人を化かす動物だって、知らなかった?」
エースは愉快そうに笑うとゾンビバックルを取り出す。
「それに、私は君と組む、なんて一言も言ってないんだけど――ひょっとして、化かされちゃった?」
ダパーンははっと何かに気づく。
確かに、エースはゾンビバックルを受け取った。それを伴野は交渉成立と
「さ、悪い子には――お仕置きの時間だ」
――SET
エースはすっと笑顔を引っ込めるとゾンビバックルを装填する。
「変身」
――ZOMBIE...
ギーツは右手にチェーンソーのような武器、ゾンビブレーカーを左腕はカギヅメのような装甲を身にまとう。
「目には目を――ゾンビには、ゾンビをってね♪」
――READY FIGHT!!
――――
――
「ふざけやがって!」
ダパーンの放つ銃弾をゾンビブレーカーで弾き、カバーを上部までスライドさせる。
――POISON CHARGE
「ナーゴ、伏せてっ!」
伏せるまでもなくナーゴは地面に倒れてしまっていた。
ギーツはトリガーを引き、ゾンビジャマトに向けて攻撃を放つ。
――TACTICAL BREAK!
爆散、ギーツは大量のスコアを獲得する。
続けざまにダパーンへと飛び掛かる。ダパーンはマグナムシューターをライフルモードにしたまま飛び退き距離を取ろうとする。あくまで長距離から狙撃をしたいのだろう。
ギーツもその意図を察知、距離を詰め続けダパーンを追い詰める。
本来、マグナムフォームは遠近両対応の柔軟な立ち回りが可能な形態。装甲には弾道計算をアシストする機能が付いており、近接戦のガンカタや長距離狙撃もお手の物だ。
しかし、ダパーン――伴野は近づいて戦うことを良しとしない慎重派。
よく言えば慎重だが、悪く言えばリスクの取れない臆病者。
故にマグナムシューターを用いた近接戦闘を嫌い露骨に距離を取ろうとしていた。
「くそっ! 同じレアバックルなのになんで……っ!」
ダパーンは使いこなせない自分を棚に上げ、装備に当たり散らしている。
片やギーツは使い慣れていないはずのゾンビバックルを使いこなし、ダパーンを着実に追い込んでいく。
「――ジャァァァ」
これはあくまでゾンビサバイバルゲームの途中。ギーツとダパーンの戦いにゾンビジャマトが乱入する。
「へへっ! お生憎様www」
これ幸いとダパーンは高所へ陣取りギーツへと照準を定める。
ギーツはそれを認めるとベルトのロックを解除、半回転させる。
――REVOLVE ON
ダパーンの狙撃を形態変化で回避、ギーツは続けざまにバックルを起動させる。
――ZOMBIE STRIKE!!
数多の墓標が出現する。
囲まれたダパーンは逃げるか迎え撃つか一瞬躊躇してしまう。
その隙をギーツは見逃さない。一足で距離を詰めるとダパーンにライダーキックを命中させた。
――――
――
ダパーンの敗北と共に第2ウェーブが終了する。
ダメージ過多により変身を解除されたダパーンは無様に芝の上を転がっていく。
「ふん!」
バッファは転がってきた伴野を見て鼻で笑う。バックルを盗まれた恨みは相当深いようだ。
「大丈夫?」
自分を馬鹿にしてきた相手にも関わらず緑谷は伴野へ手を差し伸べる。
「触んな!」
だがその優しい手を伴野は払いのける。
彼は負けたことが相当悔しいのか、歯を食いしばって拳を地面に叩きつけている。
「……少しは身に染みたかい?」
建物のある方角からエースが姿を現す。ぐったりとしている葉隠をお姫様抱っこしており、その表情は険しかった。
「まさか……あんたがぶっ飛ばしたの?」
他プレーヤーへの攻撃や妨害行為は減点対象となる。いくら相手が嫌な奴だからと攻撃すれば自分の得点を下げることになってしまう。
「ふふ。意外かな?」
エースは少しだけ微笑む。
「いいの? だってプレーヤーへの妨害は」
「減点行為、でしょ? 私だってそれはわかってるよ」
牛込は自身のスパイダーフォンでスコア一覧を確認する。
そこにはギーツがいまだに得点1位であることが記されていた。
「どういうこと? なんでまだあんたが1位なのよ」
「っもしかして」
緑谷はルールを思い出す。
“ゾンビに噛まれたら感染し、自身もゾンビとなってしまう”
伴野は慌てて左腕を隠し始める。緑谷は駆け寄り、伴野の左手を取ると袖をまくる。
「やっぱり……!」
「触んなって言ってんだろッ!」
その腕にはゾンビに噛まれた跡があった。
傷口からはウイルスが侵食しており、グロテスクにうごめいていた。
「……ダパーンはゾンビに噛まれてゾンビ化した。だから攻撃してもペナルティにならなかった?」
牛込もようやく理解し、伴野へと憐みの目を向ける。
「……何見下してんだよ。ムカつく」
彼は第1ウェーブで既にゾンビに噛まれてしまっていた。
例のごとく安全圏から狙撃し、得点を稼いでいたところ、背後のゾンビジャマトに気づかずに噛みつかれてしまったのだ。
「もう俺が勝つのは絶望的だ。だから一人でも多く――お前みたいなムカつく女を道連れにしてやろうって思ったんだよッ!」
真実を明るみされてしまった伴野は、狂ったように高笑いするのだった。
――――
――
サロンへ戻った参加者たち。
ギロリから第3ウェーブまで時間があるため途中帰宅できることが告げられる。
「バッファ」
「んっ」
エースはゾンビバックルを牛込に渡す。
「どういうつもり?」
「これはダパーンが盗んだものを受け取っただけ。私はそのまま使えるほど図太くないの」
「……っこの借りは返すからッ」
牛込はバックルを受け取ると足早にサロンを後にする。
「っさすがに帰らないと母さん心配するかな……葉隠さんは」
緑谷が振り返ると、葉隠はソファーの上で崩れるように倒れている。
表情は見て取ることはできなかったが、荒い呼吸から具合が悪いことが見て取れた。
「っ私、どうし、ようかな」
「葉隠さん?」
緑谷はその姿を不審に思い、彼女を抱き起す。
その瞬間、首筋の皮膚が黒く濁っていることに気づく。
「まさか――!」
緑谷は謝罪をしつつ葉隠の上着を脱がせる。隠れていた肩にはゾンビに噛まれた傷跡があった。
傷口は彼女の透明な肌を着実に蝕んでおり、体の輪郭をうっすらと浮かび上がらせていた。
「やっぱり、そうだったんだね」
エースは悲しそうに眼を伏せた。
緑谷は自分の鼓動が早くなっているのを感じた。
「はは……私も、噛まれ、ちゃった……」
葉隠は辛い気持ちを誤魔化すように、力なく笑っていた。
遂に邂逅編完結!
英寿の願った世界、一体どんな世界なんですかね? それに景和は再び参加出来のか・・・予告だけでワクワクが止まんないですね!
来週が楽しみです!
・・・え、来週は駅伝?
・・・おのれ駅伝ジャマト!
『ニチアサがスポーツ番組で休止しない世界』をかけてデザグラに参加してやる!