【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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ロポ……あんたがデザスターだったのか……?
そして次回予告で登場する新ライダー、まさかのグレアがリペイントされてて驚きました。さ、流石に早すぎるのでは……?
ジャマト側のスポンサーも登場しましたし、ここからどうなるか楽しみですね!

そして本作は逆境編で終了……する予定でしたが、どうにも収まりきらなさそうだったのでもう1章増えるかもです。
と、言うのもサブタイで使っているローマ数字、デフォルトのフォントだと12までしか出てこないんですよね……あまり話数が増えすぎてもローマ数字がなくなっちゃうので、いい具合のところで区切る予定です。















30 逆境Ⅴ/戦う決意

――――

――

 

 クイーンジャマトは挑戦してくるプレイヤー相手に無双の活躍を見せていた。

 

「へっ……て、てめぇなんざ怖かねぇっ……!」

 

 クマの仮面のプレイヤーはレイズハンマーを両手で握り締めるように構えている。

 ここに至るまで十分に痛めつけられており、あと一撃でも喰らえば退場してしまいそうだった。

 

「私だって――理想の世界をッ!」

 

 もう一人、猫の仮面――ナーゴと違ってグレーとシルバーを基調としている――のプレイヤーもまたレイズハンマーを構えている。

 

「野郎ぶっころしてやぁぁっ!」

「やあああああッ!」

 

 ――HAMMER STRIKE!

 

 二人のプレーヤーは同時にクイーンジャマトへ飛び掛かる。

 

「……ジャァ……モット、ツヨク」

 

 対するクイーンジャマトはゆるりと右手を上げると個性を発動する。

 

「なっ! 待って! 止まれ――」

「えっう、うそ――」

 

 二人のプレーヤーは互いに引き寄せられてしまい、それぞれの必殺技を受けてしまう。

 

「……そん、な」

 

 ――MISSION FAILED...

 

 まんまと同士討ちに引っかかってしまった二人はあっけなく退場してしまう。

 

「……ジャ」

 

 クイーンジャマトは次なる標的を探して歩み始める。

 そんなジャマトの様子を、ビルの陰に隠れて見つめる者がいた。

 鹿のような仮面に、重機を思わせる装甲を纏ったプレイヤー――その名もシーカー。

 

「……あれがクイーンか。成程、強敵だな」

 

 シーカーはヒーロー狩り暫定1位のプレイヤー、つまりもっともヒーローを狩ったプレイヤーであると言える。

 

「だが――あんなのを斃すより、一人でも多くのヒーローを狩った方が生産的だな」

 

 ベルトからバックルを外し変身を解除する。

 正体は高校生ぐらいの少年だ。長身だが猫背のせいでそれを感じさせず、黒髪は不格好に伸ばされ目元を隠しているも、その目の奥には憎悪の込められた瞳が覗いている。

 

「せいぜいとれもしない報酬(ニンジン)を追いかけるがいいさ」

 

 彼は報酬狙いでクイーンジャマトへ挑むプレイヤーを嘲る様に笑うと、まだ生き残っているヒーローを狩りに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「俺は周 隼人――出身は雄英高校のサポート科だ」

 

 周の自己紹介に緑谷は大きく目を見開く。

 

「サポート科……思い出したッ! 10年前の体育祭で優勝してた、あの周さん!?」

「そういえば、3年生の部でヒーロー科でない生徒が優勝して話題になっていましたわね」

 

 雄英高校体育祭。それは日本においてかつてのオリンピックに匹敵する規模のイベント。

 緑谷と八百万も体験したが、まさに日本中の誰もが若きヒーロー候補の活躍を応援し、大いに盛り上がるのだ。

 が、体育祭の主役はあくまでヒーロー科だ。

 普段の訓練の成果を存分に発揮し、体育祭を観戦しているプロヒーローたちにアピールする絶好の機会。

 全校生徒にチャンスがあるとはいえ、訓練を積んでいるヒーロー科に勝てるはずもなく、毎年決勝にコマを進めるはヒーロー科の生徒が主である。

 そんな体育祭を、サポート科に所属しながらも優勝したのがこの男――周 隼人である。

 

「……?」

 

 牛込だけは思い出せないのか顰め面で首をひねっている。

 

「……まあ、無理もない。お前らにとっては子供の頃の話だろうしな」

 

 周はしゃがむと、彼女の落としたおにぎりを拾い砂を掃う。

 

「話は逸れたが、俺がお前の幼馴染について知っていた理由はこれだ」

「……そ」

 

 牛込は思い出すのを諦め彼からおにぎりを受け取るも、すぐに顔を顰める。

 

「……ねえ、喧嘩売ってんの?」

「……ん?」

 

 おにぎりの具材は“牛のしぐれ煮”、バッファローの個性を持つ牛込にとっては共食いに近く忌避感を覚える具材だろう。

 

「……そういうことか。すまない、配慮が欠けていたな」

「いいわよ。こんなことで怒ってたらキリがないもの」

 

 彼女はため息をつきながらおにぎりの包装を破って一口ほおばる。

 甘じょっぱい牛肉の味が口いっぱいに広がり、記憶にしまい込まれていた幼馴染との思い出がよみがえってくる。

 

 

 

――――

 

『あかね! 焼けたって!』

 

 それは牛込家と後藤家でバーベキューに行ったときの事。

 

『やった! いただきま……』

 

 彼女は焼き立ての肉を食べようとかけていくも、怒り心頭な父の姿を見て固まる。

 

『オイ“リキオ”ォ……俺の前でよくも()()を焼けたモンだなァ!?』

 

 牛込父は牛肉を食べさせられそうになっていることに大層ご立腹だった。

 彼は()()()()の強い容姿をしているため、共食いをしているように感じてしまう牛肉が大の苦手だった。

 

『いいじゃないすか。これ知り合いにもらったA5ランクの和牛なんすよ? 共食い、しちゃいましょ?』

 

 後藤父――リキオは悪びれもせず牛肉を薦める。確かにサシが十分に入っており、口に入れればたちまち溶けていくことだろう。

 

『よぉし! その喧嘩、勝った! 表出ろやっ!』

『え~』

 

 牛込父は後藤父の首根っこを掴んで引きずっていく。

 

『また始まった……』

 

 牛込少女は呆れつつも、母に肉を取り分けてもらい満面の笑みでかぶりつく。

 

『……あかねは平気なの? あかねだって牛の角はえてるのに』

『べつに? おいしーもん!』

 

 後藤少年に問いかけられた牛込少女は朗らかに笑う。それは逸れ、これはこれ、と言ったところなのだろう。

 彼は身もふたもない少女の感想に、思わず笑いをこぼすのだった。

 

 

 

 

――――

 

 それはまだ、二人の関係がうまくいっていたころの楽しい記憶。

 あの日、共に笑いあった少年はもうこの世にはいない。

 そのことをまざまざと思い出してしまい、牛込の瞳から涙が零れ落ちる。

 

「……あんた、あのジャマトがムツキと――幼馴染と関係があるかも、って言ったわよね?」

 

 牛込は八つ当たりするかのように周へと問いかける。

 

「……ああ、その可能性は高い。ボス級のジャマトはともかく、普通のジャマトは個性に近い特殊能力を獲得したことは無かった。つまり人間の“個性”を分け与えられたと考えるのが妥当だ」

「でも、ムツキはデザグラで退場したわ。それなのにどうして」

「そもそも退場して消滅したライダーはどこへ行くのか、それは運営のみぞ知るところだ」

 

 致命傷を受けたプレイヤーは消滅しこの世から退()()してしまう。

 その体はドライバーもろとも消え去り、どうなってしまうのかは誰も知らない。

 

「……これは俺の推測だが、退場した人間は消滅したのではなく、どこかへ転送されているのではないかと思う」

「そのようなことが可能なのですか?」

 

 周が人類の技術力をもってしても不可能な“物質の転送”に言及したことで八百万は思わず食いつく。

 個性を使うのならばともかく、純粋な技術で人を転送することは可能なのだろうか?

 彼女は好奇心を押さえられなかった。

 

「……忘れていないか? 俺たちは神殿からジャマーエリアへ転送されている」

「あっ……!」

 

 そもそもデザイア神殿がどこにあるのか誰も把握できていない。 

 場所の割れていない神殿から市街地へ瞬間移動のように移動と言うことは、つまり“物質の転送”が可能と言うことである。

 

「……俺の推測が正しいことを前提に話すなら、退場した人間の肉体はどこかで保管され、個性を抜き取られジャマトに与えられた」

「個性を……与える?」

 

 緑谷は個性の移動について思い当たる節があった。

 かつて師匠(オールマイト)から聞いたワン・フォー・オール誕生の経緯。

 個性が生まれて間もない頃から生きているという悪の象徴(オール・フォー・ワン)

 ()()()()()()()()()()()という個性を持ち、その力と類まれなるカリスマで混迷を極めた日本を陰から支配したという巨悪。

 

「……オール・フォー・ワン」

 

 ワン・フォー・オールは、“力をストックする”という個性に初代の持っていた“他人に個性を与える”という個性が混ざり合った結果生まれたという。

 “力をストックする”個性を与えた存在こそがオール・フォー・ワン。

 

「……そうだ。個性を奪い、与えるという力は確かに存在する。もしその力の持ち主が退場者の個性を奪い、ジャマトへ与えたとしたら?」

「っ個性を持ったジャマトが、生まれる……?」

 

 緑谷の背筋に悪寒が走る。

 思えば前回のゲームは後半に向かうにつれてい異変が起きていた。

 ジャマトの変身、ゲーム外ジャマトの出現に個性を使うジャマト。

 もし、オール・フォー・ワンが運営に干渉した結果がそれならば。

 もし、オールマイトとの決戦が運営に干渉した結果なのだとしたら。

 

「……じゃあ、ムツキは個性を()()()()ってこと?」

「まあ、俺の推測が正しければ、の話だが」

 

 周は静かに瞳を閉じる。

 推測はもう一つあったが、それはあまりに残酷であったためあえて言わないことにしていた。

 

「……それはやめておいた方がいい」

「ッまだ何も言ってないでしょ……っ!」

 

 牛込は考えを読まれたように錯覚し、思わず怒鳴ってしまう。

 口に出してもいない考えに対し、“お前は間違っている”と指摘されたかのようで腹立たしかった。

 

「もしや、クイーンジャマトを守ろうと……?」

「……そうよ。悪い?」

 

 八百万に図星を突かれ、牛込は誤魔化すように残ったおにぎりを口へ突っ込む。

 

「……個性が奪われた、ってならあたしは取り戻したい。だから奴を斃させるわけにはいかない、って思っただけよ」

 

 ジャマトが斃されれば、その体に宿った個性も失われてしまうだろう。

 ならば個性を取り戻せるその時まで、クイーンジャマトには生きてもらわねばならない。

 

「……別に、お前に覚悟があるなら強く止めはしないさ」

「……覚悟って、何よ?」

「クイーンジャマトが、お前の幼馴染の個性を使って世界を破壊するのを黙って見届け、手助けする覚悟だ」

「……っ!」

 

 クイーンジャマトをここで斃さないということは、それはこの先のゲームでも登場するということを意味する。

 斃さないということは、この先のゲームでクイーンジャマトが破壊の限りを尽くす様を見届けねばならず、悪人の烙印を押されようともジャマトの破壊活動を手助けせねばならなくなってしまうのだ。

 

「……みなまで言うんじゃないわよ……っ! あたしだって、そのくらいわかってるわ」

 

 牛込は涙を拭うと勢いよく立ち上がる。

 

「戦うわ。戦って――ムツキの個性がこれ以上悪用されないようにするわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ゲームの残り時間は10分を切ろうとしていた。

 一発逆転のアイテムを手に入れようとクイーンジャマトに挑んだプレイヤーたちはことごとく返り討ちにあっており、残りプレイヤー数は数えるほどしかいなかった。

 

「うっ……」

 

 クイーンジャマトは犬のような仮面のプレイヤーの首根っこを掴んでいる。

 

「……ジャ」

「この……!」

 

 犬の仮面のプレイヤーはここに至るまで多くのヒーローを狩ってきていた。

 得点でいえば暫定2位。このままでは次のゲーム以降でも勝ち残れるとは限らない。彼の所持しているバックルはクローバックルのみ、より強いバックルを手に入れようとクイーンジャマトへ戦いを挑んでいた。

 

「ただでやらせっかよっ!」

 

 ――CLAW STRIKE!

 

 クローバックルを起動し、レイズクローを振り上げる。

 窮鼠猫を噛む、悔し紛れの一撃だった。

 

「……モット、ツヨク」

「が……ッ!」

 

 クイーンジャマトは即座に手を放し、腕の筋肉を肥大化させる。

 そしてレイズクローが振り下ろされるよりも先にプレイヤーを殴り飛ばす。

 

「っ……! く、くそ……っ!」

 

 ――MISSION FAILED ...

 

 犬の仮面のプレイヤーはビルの壁にめり込むようにして体を消滅させる。

 クイーンジャマトは持ち主を失くし地面に落ちたクローバックルをつまらなさそうに見つめると、次なる標的を探す。

 

「ジャ……?」

 

 そんなクイーンはこちらへ向かってくる4人の人影に気づく。

 緑色のもじゃもじゃの髪にそばかすが特徴の少年――緑谷。

 スタイルの良い体に大きなポニーテールが特徴の少女――八百万。

 額には牛の角、まさに牛人間ともいえる容姿の少女――牛込。

 そして外国人を思わせる彫りの深い顔で3mに迫る長身の青年――周。

 

「――残り時間も少ないし、とっとと始めるわよ」

 

 牛込は懐からマグナムバックルを取り出す。その手はわずかに震えていた。

 

「牛込さん……無理はしないでください。ここは僕たちだけでも」

 

 緑谷はそんな牛込を案じ、引くように進めるも彼女は首を振る。

 

「……やるって言ったでしょ」

「はいっ……!」

 

 緑谷はニンジャバックルを取り出し、構える。

 

「……俺たちは手はず通り、サポートに徹しよう」

「ええ、心得ておりますわっ!」

 

 周はモンスターバックル、八百万はビートバックルを取り出して構える。

 

 ――SET

 

 四人はバックルをドライバーに装填し、起動する。

 

「「「「変身っ!」」」」

 

 ――MAGNUM

 ――NINJA

 ――MONSTER!!

 ――BEAT

 

 四人はライダーへ変身するとクイーンジャマトと対峙する。

 

「ジャ……!」

 

 強敵を前にしたクイーンジャマトはどこか嬉しそうに鳴き声を漏らしながら、両手を広げてポーンジャマトを次々と複製して生み出す。

 

 ――READY FIGHT!!

 

 ――一陣の風が吹く。

 

「はッ!」

 

 口火を切ったのはバッファ、マグナムシューターを両手で構え弾丸を放つ。

 しかしその弾丸はあらぬ方向へと飛んでいく。

 

「うわっ!?」

 

 素早く接近しようとしたタイクーンは臀部に弾丸が命中しもんどりをうって倒れる。

 

「あっ……」

「しっかり狙ってくださいましっ!」

 

 ロポはバッファの下手くそな狙撃をとがめつつ迫ってきたジャマトをビートアックスで叩きのめす。

 

「……今まで見てきた中で、お前が一番下手くそだぞ」

 

 バッファに追い打ちをかけるナッジスパロウ。悪意はなかったが、事実は時に人を大いに傷つけるものだ。彼女は羞恥で肩を震わせていた。

 そもそもマグナムフォームの装甲、マグナムチェスターには弾道計算をする機能が搭載されている。そのため完全な初心者でもある程度は弾丸を命中させることは可能であり、百発零中などと言う無様な結果はそうそう起こりえないのである。

 

「~~~~っ!」

 

 ――RIFLE

 

 バッファはマグナムシューターをライフルモードに切り替えると、それを大きく振りかぶって鈍器のように振り下ろす。

 

「ジャッ!?」

 

 ポーンジャマトは銃で殴られたことに驚愕しながら溶けて崩れる。

 

「あ、あの……銃は殴る武器では」

「うるさい」

 

 マグナムシューターを鈍器として扱ったバッファにロポが苦言を呈するも、彼女は拗ねたようにそっぽを向いた。

 

「……まあ、フレンドリーファイアされるよりは幾分かマシだが」

「だまってて」

 

 ナッジスパロウは呆れつつも拳を振り下ろした。ポーンジャマトは泥のように崩れてはじけ飛ぶ。

 

「ったた……だ、だいじょうぶです、僕だって最初は」

「いいから黙って!」

 

 タイクーンのフォローを受け、ついにバッファはキレた。マグナムシューターは打撃武器だと言わんばかりに突き進んでいく。

 ポーンジャマトは複製体で耐久力は高くないため、バッファの突撃を受けてその数を急速に減らしている。

 

「すごっ……!」

 

 ――TACTICAL SLASH

 

 タイクーンは付近のジャマトを一掃しつつ驚嘆する。

 当たらなければ殴ればいい、そんな強引な発想は彼にとって目から鱗だった。とはいえ銃は弾丸を放つからこそ強力なのである。決して近接武器として強みを発揮するものではないのだが、彼は感心してしまっていた。

 

「――ジュラピラ、ヘンシン」

 

 ――Jyamato

 

 そんな中現れたのは複製体ではないポーンジャマト。そのうちの2体はドライバーを装着しており、ジャマトライダーとなって襲い掛かる。

 

「数が多いなら――」

 

 ――GREAT

 

 タイクーンはバックルをコマンドツインバックルに変更し起動する。

 レイジングソードが召喚され、マスクにはゴーグルのようなデバイスが装着される。

 

「……そっちは任せるぞ」

 

 ナッジスパロウはクイーンジャマトと戦うバッファの応援へ向かう。

 

「ではわたくしがサポートを!」

「ありがとうやおっ――ロポ!」

 

 タイクーンとロポは二人並び立つ。

 レイジングフォームが本領を発揮するためには少し時間を要する。

 それまでの時間をサポートしてもらおうという狙いだった。

 

「ジャ」「ジャ」

「はっ!」

 

 迫りくるジャマトを的確に撃破していくタイクーン。二度目の使用のためか、その動きは様になっていた。

 

 ――TACTICAL BLIZZARD!

 

 ロポの放った必殺技がジャマトの下半身を凍結させて拘束する。

 そこをタイクーンのレイジングソードが一閃、まとめて撃破する。

 

 ――リアクトメーターが満タンとなり、コマンドキャノンバックルが解放される。

 

「よしっ!」

 

 ――TWIN SET

 

 ジャマトライダーの攻撃を躱しつつ、タイクーンはコマンドキャノンバックルを装填、レバーを引き起こし起動させる。

 

 ――TAKE OFF COMPLETE! JET & CANNON

 

 展開された装甲でジャマトライダーを弾き飛ばしつつ、タイクーンはコマンドフォームへと姿を変える。

 飛び掛かってきたジャマトライダーと鍔迫り合いになる。

 

「――ジャ」

 

 ――Jya Jya Jya STRIKE!

 

 もう一人のジャマトライダーはバックルを起動させ味方もろともタイクーンを斃そうと構える。

 

「させませんわっ!」

 

 ――BEAT STRIKE!

 

 ロポはすかさず必殺技を放とうとしたジャマトライダーの前へ躍り出てビートアックスを振り上げる。

 必殺技同士がぶつかり合って相殺されるも、衝撃で互いに弾かれるように吹き飛ばされる。

 

「――っ!」

 

 タイクーンはジャマトライダーを押し返しトロンキャノンで追撃する。

 二体のジャマトライダーは折り重なるようにして倒れる。

 

 ――LOCK ON

 

 そこへ照準を合わせ、タイクーンはバックルのレバーを引き起こす。

 

 ――COMMAND TWIN VICTORY

 

 無数の砲弾が放たれ、ジャマトライダーたちは撃破された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「ジャ」

「ふんっ!」

 

 バッファはマグナムシューターを打ち据えるも、そのゴムのような体は衝撃を吸収し打撃を容易く受け止める。

 やはり打撃では有効打にならないのだ。

 

「やっぱ――効かないわよねっ!」

 

 即座にアーマードガンを展開し銃撃を繰り出すも、弾丸はあらぬ方向へ飛んでいく。

 

「待てっ! 下手に撃つなっ!」

 

 流れ弾を喰らいそうになったナッジスパロウは慌ててバッファを止める。彼は体が大きい分被弾しやすいのだ。

 

「ああもうっ! なんで当たらないのよッ!」

 

 子供の様に癇癪を起したバッファはマグナムシューターを二度、三度とクイーンジャマトへ叩きつける。一度でダメなら二度、三度、相手が打撃を吸収するというのなら吸収できなくなるまで。

 力任せな解決方法だったが、変に作戦を考えるよりは彼女の性に合っていた。

 

「ジャッ……」

「――そこだッ!」

 

 ジャマトライダーを斃したタイクーンとロポが加勢に入る。

 タイクーンのトロンキャノンがクイーンジャマトを捉え、吹き飛ばす。

 

「……キョ()()キョ()

 

 攻撃を喰らったクイーンジャマトは呻きながら地面を転がっていく。転がりながら時折、その体が透明に変化する。

 透明化――それを見たタイクーンは怒りで身を震わせる。

 

「まさか……葉隠さんの個性まで……っ!」

 

 レイジングソードを握る手に力が入りギリギリと音を立てる。

 ()()()()の力が悪用されることがこんなにも腹立たしいとは思ってもいなかった。タイクーンはドライバーのロックを外し、反転させる。

 

 ――REVOLVE ON

 

 タイクーンはジェットモードへ移行し、腰のスラスターを噴出させる。

 

「ッ!?」

 

 クイーンジャマトはタイクーンの突撃をもろに喰らい、その体を浮かせる。

 

「これで――終わらせてやるッ!」

「――ヤ、メテ」

 

 クイーンジャマトが命乞いの様につぶやくも、彼の耳には届いていなかった。

 タイクーンは垂直に上昇し、放物線を描きながら急降下する。レイジングソードはクイーンジャマトの腹部に突き立てられている。

 

 ――地面が震え、蜘蛛の巣状の罅が入る。

 

 ゴムの体は急降下による叩きつけに耐えるも、腹部にはレイジングソードが深々と突き刺さっていた。

 クイーンジャマトを地面に縫い付けたタイクーンはレイジングソードから手を離すとゆっくりとその体から離れていく。

 

「……あとは、お願いします」

「……ん」

 

 バッファはマグナムバックルを外すとマグナムシューターに装填する。

 

 ――MAGNUM

 

 そしてレイジングソードを引き抜こうともがいているクイーンジャマトの腹部を足で押さえつけるとマグナムシューターの銃口を頭部に押し当てる。

 

「……この距離なら外さないわよ」

「タ、タス、ケ、テ」

 

 引き金にかかった指が固まる。

 クイーンジャマトの食虫植物のような顔は、どこか恐怖心のようなものが宿っていた。

 

「……助けるわけ、ないじゃない」

 

 バッファは躊躇いながらも引き金を引いた。

 

 ――MAGNUM TACTICAL BLAST

 

 至近距離で攻撃を喰らったクイーンジャマトはその体を爆散させる。

 爆炎が晴れると、飲み込まれていたゾンビバックルが姿を現す。

 

 ――MISSION CLEAR!

 

 彼女がそれを拾い上げると、スパイダーフォンがミッション報酬を運んでくる。

 

「……ごめんムツキ、もう少しだけ待ってて」

 

 ボックスの中身は報酬であるフィーバースロットバックル。

 バッファはそれを手に取ると、静かにつぶやくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 第一回戦、ヒーロー狩りはこうして幕を閉じた。

 多くのプレイヤーが生き残ったかと思われたが、予想に反してその数は少なかった。

 

「――それでは、結果発表です」

 

 生き残ったプレイヤーは計6人だった。

 第1位――仮面ライダーシーカー、心瞳(しんどう) (つくる)

 第2位――仮面ライダーナッジスパロウ、周 隼人。

 第3位――仮面ライダータイクーン、緑谷 出久。

 第4位――仮面ライダーバッファ、牛込 茜。

 同率4位――仮面ライダーロポ、八百万 百。

 そして――

 

「得点を獲得できなかった仮面ライダーケイロウ、出水 聖拳様はここで脱落となります」

 

 聖拳は得点を獲得することができなかった。

 不運にもジャマトライダーと遭遇できず、他のプレイヤーがヒーローを襲っていれば割って入って阻止していたため、得点稼ぎをしている余裕はなかったのである。

 

「ジジイが出しゃばってもいいことは無い……あとは任せた!」

 

 ――RETIRE...

 

 聖拳の体が消滅する。

 勝ち残ったプレイヤーは5人。

 

「……ふぅん、思ったより少ないな」

 

 シーカー――心瞳は勝ち残った者達を見て鼻で笑う。

 

「その方が都合がいいな。お前ら全員――特にそこの緑の奴と、ポニテの女は必ずぶっ潰してやるから覚悟しとけ」

 

 心瞳は緑谷と八百万を指差すと親指をかき切る仕草を見せる。

 

「っ僕だって負けるつもりは……ないですッ」

 

 対する緑谷は毅然と言い返した。

 精一杯不敵に微笑みつつ、余裕満々な風を装っていたが、その胸中は不安でいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 ――個性特異点。

 個性が世代を経るごとに混ざり合い、より強力に、より複雑になっていくことで人の手に負えなくなってしまうという終末論。

 

「――より強力な個性を扱うには、それ相応の肉体が必要となる。それゆえ“マスターピース”を作り出す研究をしておったが……」

 

 オール・フォー・ワンの腹心であるドクター――殻木はジャマーガーデンへ赴いていた。

 

「なに、答えは簡単だったわい!」

 

 混ざり合い強力に、複雑になった個性は人の手で制御するにはあまりに難しく、それ相応の強度を持つ肉体がないと耐え切れず暴走してしまう。

 殻木は主たるオール・フォー・ワンがいつか迎えてしまうかもしれない()()を乗り越えるべく、あらゆる個性に耐えうる肉体を生み出す研究を行っていた。

 

()()()()()()()使()()()()()()()()

 

 人間の肉体には限界がある。

 どんなに強化してもいずれどこかで限界が訪れてしまう。

 だがそれが人間の体でなければどうだろうか?

 

「まったく……こんなにもそそられる生物がおるのだったら、早くから研究をしておくべきじゃった」

 

 彼は新たに成長しつつあるジャマトの幼体から体組織を採取する。

 複数の個性を持ちうる“変異種”――いずれクイーンジャマトへと成長する幼体だった。

 

「楽しみじゃな……こいつの()()()を拝みたいもんじゃな」

 

 クイーンジャマトの幼体がギロリ、と目を見開いた。

 成体となるときは、刻一刻と近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



















おじいちゃん、ことオリキャラの出水 聖拳はここで脱落となりました。本音を言うと異変編のラストで退場する予定でしたが、想像以上に暗い展開だったので躊躇ってしまいました。やはりためらわずにすっぱり行くのが一番ですね!
風呂敷を広げ過ぎている感が否めませんが、頑張ってたたんでいきますのでお付き合いいただけると幸いです。
……あ、アンケート的にほのぼのifルートは執筆します。本編終了後がちょうどいいすかね。
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