【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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39 終局Ⅴ/ 私のヒーロー

――――

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 かくして、乗っ取られたデザイアグランプリによって崩壊しかけていた世界は元通りに復元され、人々は何事もなく平和を享受していた。

 

「――諸君には最低でも二つ、必殺技を習得してもらう」

 

 合宿での悲劇がなかったことになった雄英高校では2学期に向けた授業が繰り広げられていた。

 ヒーローっぽさあふれるイベントにクラスが沸き立つ中、教室の席には3つの空きがあった。

 緑谷、葉隠、エースの3人は欠席していた。

 欠席の者達を心配しつつも、彼らは自らの必殺技を生み出すべくコスチュームへと着替えて訓練場へ移動していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 クラスメイト達が必殺技を編み出す訓練をする中、緑谷は一人、海浜公園へと足を運んでいた。

 

(デザ神決定戦、か……)

 

 街はニラムの力によって全て元通りに復元されており、ジャマトが闊歩していたという事実は無くなっていた。

 同時に、オール・フォー・ワンによって殺害されていたオールマイトも蘇っており、ライダーたちの退場を除けば世界は元通りに復元されていた。

 

(あと少し……今の僕だったら、正直エースさんだって怖くない)

 

 緑谷はたった一人でゲームを勝ち抜いてきた。

 精神はすり減り、肉体を限界まで酷使して戦ったという経験が、彼に自信を与えていた。

 

「――ここにいたんだね♪」

「エースさん……なんでここに?」

 

 声をかけられ振り向くと、そこにはエースの姿。

 ブラウスにジーンズのラフな姿で、赤い縁の伊達メガネをかけている。

 

「ふふっ。君に会いたくなってね」

 

 彼女(?)はゆっくりと緑谷の方へと歩み寄っていく。

 

「学校には行かなくていいのかい? サボったらダメじゃないか」

「そっちこそ。サボってて大丈夫なの?」

「ふふっ♪ 私はいいのさ……次の世界で私は雄英生ではなくなるかもしれないからね」

 

 と、彼女(?)は不敵に微笑む。

 まるで自分の勝利を疑ってもいないようだった。

 

「相変わらず、すごい自信だね。でも――僕だって負けないよ」

 

 緑谷もまた、エースの様に不敵に微笑む。

 どこか自分を鼓舞するかのような、絶対に勝たねばならないという決意がにじみ出ていた。

 

「言うじゃないか……その自信、私にへし折られても知らないよ♪」

 

 エースは嬉しそうに微笑むと、何かを思い出したかのように続ける。

 

「タイクーン――いや、ミドリヤ。これからデートしない?」

「…………?」

 

 突然の提案に、緑谷は決め顔のまま固まってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 彼女にとって最悪だったのは、ジャマトになっていた時の記憶が残っている事である。

 

(デザ神決定戦、かぁ……)

 

 葉隠は平和を取り戻した街を歩きつつ、頭の中は悩みでいっぱいだった。

 

(私も参加していいのかな……?)

 

 時折、おぼろげながらも脳裏に浮かび上がるのは退場させてしまったライダーの断末魔の叫び。

 頭の中に響く声に操られるかのように人間(ライダー)を傷つけてしまった。

 

(あー……学校サボったのマズかったかな)

 

 スマホを見れば、トークアプリの通知がたくさん来ている。

 欠席した彼女を心配したのか、グループトーク個人トーク問わずに連絡が来ている。

 

「はぁ……」

 

 どうにも学校に行く気にはなれなかった。

 半分は自分の意志ではなかったとはいえ、人の命を奪ってしまったことは事実である。

 そんな自分がヒーロー科に通っていてもいいのか、疑問に感じてしまったのである。

 

(……ここ)

 

 気が付けば海浜公園――緑谷がきれいにしたことで話題になっている場所だ――へたどり着く。

 もしかすれば、無意識のうちに緑谷に会いたいと思っていたのかもしれない。

 

「……あ」

 

 見れば、遠くの浜辺に緑谷とエースの二人がいるのが目に入る。

 

(二人ともここにいたんだ!)

 

 小走りで二人へ駆け寄ろうとしたとき、彼女の耳に思わぬ言葉が飛び込んでくる。

 

「――これからデートしない?」

「――はへ?」

 

 思わず口から変な声が飛び出してしまった。

 デート、それは親密な男女が更に仲を深めるべくお出かけする行為である。

 誘われた張本人はしばし固まり、やがて意味を理解したのか急速に顔を赤くしていく。

 

「……でーと?」

 

 幾多の修羅場を経ても緑谷の初心さは失われていなかった。

 彼はだらだらと冷や汗をかきながらエースの事を見つめている。

 

(な、なんか見つかったらマズい気がする……!)

 

 葉隠は思わず近くにあった東屋に飛び込んで身を隠す。

 

「そ、デートさ♪」

「……僕と」

「皆までいわせないで欲しいな」

「…………」

 

 緑谷は顔を赤く染めながらも、首をちぎれんばかりに縦へ振った。

 

「決まりだね。それじゃ、行こうか♪」

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

 エースに手を引かれ、緑谷はデートへと向かっていく。

 

(こ、こうしちゃいられないっ!)

 

 他人の恋路をからかう趣味はなかったが、どうにも気になった葉隠は静かに二人の後を尾行を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

 エースに連れられ緑谷はショッピングモールへとやってきていた。

 平日ではあったがそこは人々であふれかえっていた。

 

「デートって、ここ……?」

「そうさ♪」

 

 緑谷はポカンと、間抜けな顔を晒している。

 

「……不満かい?」

「い、いやそうじゃなくて……デートっていうから、てっきり遊園地に行くのかと」

「ふふっ。遊園地だけがデートじゃないさ」

 

 エースは緑谷のデート論に苦笑しつつも、彼をエスコートする。

 彼は連れて行かれるがままにショッピングに付き合わされる。

 

(改めてみると、エースさんて不思議だな……)

 

 緑谷はエースのファッションショーを見せられ感心している。

 男物の服を身にまとえば立派な男性モデル。すらりと引き締まった肉体はどのような服でもおしゃれに見せている。

 女性服を身にまとえば、かわいらしさの際立つ女性モデル。街を歩けばたちまちスカウトマンに声をかけられること間違いなしだろう。

 

 ――がさっ!

 

「ん……?」

 

 気配を感じて振り向くも、そこには誰も居なかった。

 

(気のせい、か……)

 

 好みの服が見つからなかったのか、エースは何も買わず今度は緑谷を着せ替え人形のように扱い始める。

 一通り服を試着し、店員にべた褒めされて購入させられそうになるも、財布にあまりお金が入っておらず難を逃れた。

 

「残念。君の気に入る服はなかったか」

「ご、ごめん……」

 

 服屋を後にし、二人はショッピングモールを散策する。

 遊びに来ている親子連れ、学校が休みなのか遊びに来ている高校生らしきグループ、仕事で来ているのかスーツ姿の男性、パトロール中のヒーロー、どれも平和な日常の一コマだ。

 ほんの数日前までジャマトに冒されていた世界とは到底思えない平穏さだった。

 

「――あ、あれは……!」

 

 緑谷は自然とヒーローグッズのショップに吸い寄せられていく。

 いくら精神が成長したとてヒーローオタクの血は消えないのだ。

 

「わっオールマイトフィギュア(デビュー当時)の中古……わぁ……結構いい値段するなぁ」

「オールマイトなら毎日会えるのに」

「い、いやいや! 生マイトとフィギュアは別物だよ! 例えば――」

 

 エースの何気ない言葉が緑谷のオタク心に火をつけてしまった。

 彼は滔々とオールマイトの外見変化をデビューからの時系列に沿って解説し始める。

 曰く、フィギュアは各世代に合わせて皺の数や深さまで忠実に再現しているらしく、同時に陳列されていたフィギュアを比較しての解説が始まる。

 

「――それで目元の皺が――」

「?」

 

 エースは解説を聞いても違いが理解できなかった。

 “全部同じじゃないか”、と言いたくなるのをぐっとこらえつつも静かに解説に耳を傾けた。

 

「――で、これが近年の」

「うん、違いはよく分かった。確かに生で見るのとフィギュアは違うね」

「あっ……! ごめん……一方的に喋っちゃって」

「ふふふっ。君はよほどオールマイトが好きなんだね」

 

 その後も緑谷のオタク魂が爆発しつつも二人はショップ巡りを楽しむ。

 

「――あっ」

 

 緑谷はふと、トレカコーナーの前で立ち止まる。

 食玩のヒーローカードが多数陳列されており、その中には緑谷が唯一持っていないカードも陳列されていた。

 

「……どうかしたのかい?」

「あ、いや……ちょっと懐かしさがあって」

 

 彼はオールマイトのレアカードに手を伸ばす。

 

「昔、かっちゃんと遊んだ時にさ、ヒーローチップス買ったらこのカードが当たってさ」

 

 オールマイトのレアカードは当時の――いや、今の子供たちにも人気なレアカードだ。当然高値で取引されており、ショーケースに陳列されたカードには1万円に迫る値段がつけられていた。

 

「それがめちゃくちゃ嬉しくて、いつも肌身離さず持ってたんだ。でも……山に遊びに行ったときに失くしちゃったんだ」

 

 家族で山に遊びに行った帰り、バッグの中に入っていたはずのオールマイトカードはどこかに消え去ってしまっていた。

 それが相当ショックで幼い緑谷は数日寝込んでしまっていたのだ。

 

「……あのさ、エースさ」

「――万引きよォッ!!

 

 意を決した緑谷をよそに、どこからか甲高い叫び声が響いてくる。

 

「やれやれ――!」

 

 いち早く動いたのはエースだった。狐耳で犯人の逃走方向を探りつつ駆けていく。

 少し遅れて緑谷も後を追いかける。

 

(っ聞きそびれちゃったな)

 

 二人は瞬く間にひったくり犯を取り押さえ、巡回中のヒーローへ引き渡すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「――はい」

「あ、ありがとう」

 

 ちょっとした捕り物の後、二人はクレープを買ってベンチに腰を下ろす。

 緑谷はクレープをかじりつつ、さっきの話の続きをいつ切り出すべきか思案する。

 

「一口ちょうだい♪」

「あ、うん」

 

 エースは緑谷のクレープを一口かじり、おいしそうに咀嚼している。

 

(え、あれ……これって間接キッス?)

 

 食べられてから彼は気づく。

 

「はい」

「あ、ありがとう」

 

 お返しにエースも自分のものを差し出してくれるも、緑谷は間接キスになることに気づいて顔を赤くしていた。

 彼は端の方を恐る恐るかじり、ゆっくりと味わう。

 

「う”甘……っエースさんこれ何……?」

「うん? プリン味にホイップクリームとハチミツトッピングさ。おいしいでしょ?」

 

 甘党のエースには丁度いい甘さなのかもしれないが、そうでもない彼にとっては甘すぎるくらいだった。

 緑谷は曖昧に微笑むだけで済ませておいた。

 

(なんか、本当の恋人同士みたいだ……)

 

 お出かけしてクレープを分け合う、彼の恋人観にマッチしていてどこか気恥ずかしい気分になっていた。

 

「……さっきの話」

「え? あ、うん」

 

 クレープを食べ終えたエースはすっと一枚のカードを取り出す。

 保存状態が悪かったのか、少しだけ色褪せ、角の丸みは取れてしまっていて、ホログラム加工は剥がれかかってしまっている。

 それに描かれているのは――オールマイトの姿。

 

「実はね、私はこの時代の人間じゃない」

「……へ?」

 

 衝撃的な告白に緑谷は固まってしまう。

 

「私が生まれたのは遥かに昔――それこそ、超常が始まる以前、まだこの国が戦乱の世にあった時代……くらいの生まれでね。こんな見た目で生まれた私は“化け狐”と忌み嫌われた」

 

 超常社会、個性によって人の容姿に幅が生まれて久しい中でも差別は起きている。

 特に、地方では今でも深刻な異形差別が行われているという。

 もし超常が起きる以前、個性のない時代に異形として生まれれば――何が起きるかは想像に難くないだろう。

 

「まあ酷いもんだったよ! 父は私が生まれるや否や逃げ出して、母はこんな私を育てようとしてくれたけど、迫害されて早くに亡くなった。村の人間は寄ってたかって母の遺産をむしり取って、私は雨風を凌ぐのにも苦労したよ」

「……ひどい」

 

 あっけらかんと言い放つエースだったが、その所業は到底許されるものでもなかった。

 ただ、狐のような容姿で生まれてしまったがために差別され、迫害を受けていた。緑谷はその事実に憤りを感じていた。

 

「ある時、村に個性のような特殊能力を持った人間が現れた。何かを封印する能力を持っていて、村の人間はこれ幸い、と私を封印した」

 

 不気味な化け狐は殺してしまいたい。だが殺せば自分が祟られてしまうかもしれない。

 消極的に追い詰めていってもしぶとく生き残るのならば、いっそ封印してしまえばいい。

 こうしてエースは村のどこかに封印されてしまった。

 

「どれくらい経ったかわからないけど、ある時封印が解けた。でも私は衰弱しきっていて、長くはもたなかったかもしれない。そんな時――一人の少年が私に手を差し伸べてくれた」

「っ!」

 

 緑谷は心臓が高鳴るのを感じる。

 疑念が徐々に確信へ変わっていく。

 

「これはその少年が落としていった物さ」

「やっぱり……」

 

 彼はエースからオールマイトのレアカードを受け取るとしみじみと眺める。

 本来ならば光を受けて輝くであろうホイルは傷だらけで見る影もなく、挙句の果てにはがれかかっている。カードも角が擦り切れており、状態としては最悪だった。

 

オールマイト(この)カード失くした時、狐の個性の子を助けようとしたんだ……いらないって断られちゃったけど」

「……あの時の甘い水の味は忘れないさ。あの水がなければ、私は山を下りれずに死んでたかもしれない」

「当時の僕からすれば、狐の子を助けようとしたことより、オールマイトカード失くしたことの方がショックでさ、ずっと忘れてたよ」

「私も、そのあと色々とあって大恩人の顔を忘れてたさ」

 

 二人の視線が交わる。

 

「あの時の、狐の子は……君だったんだね」

「私を助けてくれた恩人は、君だったんだね」

 

 くすり、とエースは微笑む。

 

「灯台下暗し、とはこのことだね。まさか君があの時の少年だとは思ってもいなかったよ♪」

「ご、ごめん……すぐに思い出せればよかったんだけど」

 

 緑谷は申し訳なさそうに頭の後ろを掻く。

 

「ふふっ……君のおかげなんだ。君が手を差し伸べてくれたから、私は素敵な出会いをすることが出来た。“エース”って名前をもらえた。普通の“人間”として生きることが出来た」

 

 エースの微笑に、緑谷は不覚にも胸を高鳴らせた。

 

「ありがとう。君は――私のヒーローだよ」

「っ……僕の方こそ」

 

 緑谷は自然とあふれ出る涙をぬぐう。

 

「君があの時――デザグラに巻き込まれた僕を助けてくれたから、今僕はここにいるんだ。本当に……ありがとう」

「ふふっ♪ どういたしまして」

 

 ――♪

 

 二人で微笑み合っていると、スパイダーフォンが鳴動する。

 しかも()()()同時に。

 

「――へ?」

「――あ」

 

 音のした方へ振り向くと、そこには葉隠がいた。

 顔が見えないのをいいことに、植え込みの角から大きく頭を出して様子を伺っていた。

 

「い、いやぁ~……ぐ、偶然通りかかってさ」

「……偶然も何も、本当なら授業中だろう?」

 

 恥ずかしそうにそっぽを向いたエースは、非難するように葉隠へ視線を送る。

 

「ご、ごめん……緑谷くんに会いたくて探してたら……」

「もしかして、今日ずっと後を?」

 

 こくん、と葉隠は頷く。

 

「だ、だってデート行くって聞こえたからさ! つい……」

「ふぅん……私たちの仲が気になったのかい?

「ぅっ!」

 

 エースに耳打ちされ葉隠は頬を赤く染める(見えないが)。

 

「えっと、その……二人ってさ、付き合ってたりするのかな、って」

「ぼ、僕とエースさんが!? ないないな――ッ!?」

 

 大慌てで否定する緑谷の足の甲を、エースは思い切り踏みつけた。

 

「~~~~っ!」

「事実だけど……そこまで必死に否定されると傷つくな」

 

 エースは拗ねたようにそっぽを向いている。狐耳は機嫌が悪そうに寝ており、尻尾の毛は逆立っていた。

 

「……で? ナーゴ……ハガクレはミドリヤの事好きなの?」

「――ッ!」

 

 覗きの仕返しと言わんばかりにエースは意地悪な笑みを浮かべている。

 当の葉隠はあたふたとしている。その表情は百面相の様に変化していた(見えないが)。

 

「……ぅん」

 

 ひとしきりテンパったのち、彼女は消え入りそうな声で答える。

 返事をしたのち、彼女は慌てて否定しにかかる。

 

「あ、いやその人として! 人として、好き……というか、男女としては気になってるというか……」

 

 なお、緑谷は情報量の多さに頭がパンクし、虚無を見つめたまま固まっている。

 

「……私、ジャマトになって緑谷くんを辛い目に遭わせちゃってたから……ちょっと伝え辛い、んだよね」

 

 葉隠は緑谷の前で正座すると、じっと彼の瞳を見つめる。

 

「ごめんね。本当は伝えたい気持ちがあるんだけど……今のままじゃ伝えちゃいけない気がする。だから――私が理想の世界を叶えたら、その時改めて伝えるね!」

「……え、っう、うん……」

 

 意識を取り戻した緑谷は首がちぎれんばかりに縦に振った。

 

「ふふっ……悪いけど、私だって負けるつもりはないからね?」

 

 エースは不敵に微笑みながらデザイアドライバーを取り出す。

 どんな事情があれ、勝利は譲らない。

 己の理想のため、勝ちを譲るわけにはいかないのだ。

 三人は人気のない場所へ移動すると、ドライバーを装着し神殿へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「――それではデザ神決定戦、“ジャマーボール”のルール説明をいたします」

 

 ツムリは厳粛な面持ちでエリアマップを表示する。

 ゲーム名はジャマーボール、ハンドボールの様にお互いのゴールにボールをシュートし得点を競うゲームだ。

 プレイヤーサイド、ジャマトサイドの2チームに分かれて対戦し、合計得点の多いチームの勝利となる。

 得点はシュート位置とゴールまでの距離に応じて変化し、至近距離のゴールは3点、遠距離のゴールは5点。オフサイドなどの特殊ルールはないため純粋にゴールをすれば得点を得ることが可能。

 ただし、ジャマトサイドは撃破されてもメンバーの補充が可能となっている。

 

「――そしてゲーム終了時、観客(オーディエンス)からの支持率が1位となったプレイヤーがデザ神の栄誉を勝ち取ることになります」

「……オーディエンス?」

 

 唯一、デザグラが見世物(ショー)であることを知らない葉隠はツムリの言葉に疑問符を浮かべる。

 

「デザグラを楽しんでる、悪趣味な連中さ」

 

 エースは忌々しそうに吐き捨てる。

 過去、デザグラによって大切な人を失っている彼(?)にとって、オーディエンスに対していい感情を持っていないのだろう。

 

「――それでは、デザイアカードに願いをご記入ください。なお、緑谷 出久様にはご記入いただいておりますが、改めて願いをご記入いただきます」

 

 エース、緑谷、葉隠、三人の手元にデザイアカードが出現する。

 彼らはそれぞれ思い思いの願いを記入していく。

 

 ――“過去、デザイアグランプリで退場した人たちが生きている世界――緑谷 出久”

 

 ――“退場した人、ジャマトになった人が元の生活に戻れている世界――葉隠 透”

 

 ――私の願いが全て叶っている世界――狐火 エース”

 

 デザイアカードの願いが受理される。

 この中で願いを叶えることができるのはたった一人のみ。

 

「それでは10分後、ゲームスタートです!」

 

 ツムリの宣言と共に、三人はジャマーエリアへと転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 どこかのビルの屋上。

 それがジャマーボールのスタート地点だった。

 

「――葉隠さん」

「えっ……これって」

 

 緑谷はビートバックルとフィーバースロットバックルを葉隠に差し出す。

 

「僕だけ持ってるのも不公平だと思って。やるなら正々堂々、対等な条件でやりたいんだ」

「……ありがとう」

 

 葉隠はそれを受け取り、フィーバースロットバックルは懐へとしまう。

 

「お相手さんのお出ましだよ」

 

 ぞろぞろと現れるのはウツボカズラのような見た目のジャマト――ルークジャマトに数体のポーンジャマト。

 当然というべきか、人数は均等ではなかった。

 

「負ければデザ神どころかジャマーエリアの消滅、しまっていこうか」

 

 ――SET

 

「……わかってる!」

 

 ――SET

 

「うん!」

 

 ――SET

 

 三人はベルトにバックルを装填し、構える。

 エースは指を狐の影絵にし、ゆっくりと前に突き出す。

 緑谷は腕を斜めに交差させ、ぎゅっと拳を握り締める。

 葉隠は猫を思わせる形で両腕を顔の前に持っていく。

 

「「「変身っ!」」」

 

 ――MAGNUM

 

 ――NINJA

 

 ――BEAT

 

 バックルを起動させ、変身。エース――ギーツは目の前に出現したボールを片手に進み出る。

 対するジャマト側はルークジャマトが前に出る。

 

『――それではデザ神決定戦、“ジャマーボール”を開始いたします!』

 

 ギーツはボールを投げ上げジャンプボールを行う。

 ルークジャマトとギーツは同時に飛び上がり、ボールに触れる。

 わずかに体勢有利だったギーツがボールを奪取し、ライダーサイドにボールを持っていく。

 緑谷――タイクーンと葉隠――ナーゴは既に散開し、ボールを受け取る準備は万端だった。

 

「それじゃ……始めようか♪」

 

 ――READY FIGHT!!

 

 デザ神を決める戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――ジャマーガーデン。

 

「――おおおおっ! もう少し、あと少しと言ったところじゃのう!」

 

 殻木は今にも熟しそうなジャマトの果実を前に興奮を抑えきれていなかった。

 果実は栄養を吸いきり、誕生の時が刻一刻と迫っている。

 悪の帝王、オール・フォー・ワンの全情報、収集され続てきたヴィラン、ライダーの個性、そのすべてを宿した凶悪なジャマトが誕生しつつあった。

 

「……やっと見つけた」

 

 その誕生を阻止しようとするものが一人。

 牛の角に暗い茶色のセミロングの髪が特徴の女性――牛込 茜。

 彼女は体の一部をジャマトの苗木に侵食されつつも、辛うじて意識を保っていた。

 

「なんじゃ……折角いいところだというのに」

「ふん! そんなこと、させるわけないでしょ?」

 

 牛込はジャマトバックルを取り出してベルトへ装填する。

 

「んっ……っ! 変、身っ!」

 

 ――Jyamato

 

 ジャマトフォームへと変身した牛込――バッファは薙刀のような武器を生み出して構える。

 

「お、お前……一体何を」

「決まってるでしょ……!」

 

 ――Jya Jya Jya STRIKE!

 

 彼女は即座にバックルを起動し、必殺技を放つ。

 

「これをぶっ壊すのよッッ!!」

「や、やめるんじゃ――っ!」

 

 殻木が止めようと縋りつくも間に合わず、バッファの必殺技がジャマトの果実に命中した。

 中に蓄えられていたエネルギーが爆ぜ、ビニールハウスを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
















エースの着せ替えシーン、文章だけでしか表現できないことが悔やまれる……
私は絵心ないマンなので挿絵については期待しないでいただけると。書いてくれるという奇特な方がいれば……
いよいよ本作もクライマックス、大詰めです! 伏線もバックボーンもあらかた拾い終わったので、後は風呂敷をたたむのみです!
……拾い忘れてる伏線ないよな……書き忘れてるバックボーンないよな……?
もう少しで完結しますので、今しばらくお付き合いください。
なお、ほのぼのifルートは現在構想練り中です。
今のところ、映画1作目+文化祭って感じの内容になりそうです。
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