【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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40 終局E / ジャマトの王様

――――

――

 

 デザ神決定戦、ジャマーボール。

 ジャマトを相手としたハンドボールのようなゲームはまさに一進一退の攻防を繰り広げていた。

 

「――こっちだ!」

 

 頭脳戦に定評のあるタイクーンは、忍術を巧みに操ることでジャマトチームを翻弄。確実に相手の守備を躱しつつ得点を決めていく。

 

「ジャ!」

 

 得点を入れられたジャマトチームはカウンター気味にライダーチームのゴールを目指す。

 

「――隙あり!」

 

 隠密、相手の意識の外からの奇襲に長けたナーゴは相手のパス回しを妨害。ボールを奪い取ると即座にゴールへと叩きこむ。

 ジャマトサイドも負けじとロングシュートを決め、得点差を詰めていく。

 

「――へえ、やるじゃん♪」

 

 ゴール下に控えていたギーツはボールを取ると駆けだす。

 

「ジャァ!」

「はいあげる♪」

 

 ギーツはディフェンスの構えを取るポーンジャマトに向けてボールを投げつける。

 

「はいっと♪」

 

 想定外のパスに困惑するポーンジャマトに向け、ギーツはヘッドショットを仕掛ける。

 ギーツはすぐさまボールを奪い返すとゴールに向けて進撃する。

 

「オクポラサキョ!」

 

 そんなギーツの前にポーンジャマト達がスクラムを組んで待ち構える。一歩も通さないといった構えだった。

 

「――っギーツ! こっちにパスを!」

 

 動けないでいるギーツに対し、近くの建物の屋上に陣取っているタイクーンが助け舟を出す。

 

「……いや、必要ないかな♪」

 

 タイクーンの助け舟をギーツはスルー、大きく振りかぶりボールを投げる。

 だがその軌道はゴールの遥か手前、到底ゴールには届かない位置へ向かっていっている。

 

「よっと!」

 

 ギーツはボールへ向けてマグナムシューターの弾丸を放つ。

 弾丸に後押しされたボールは軌道を変え、ゴールへと吸い込まれていく。

 

「長距離シュートは、こういう競技の華だろう?」

 

 彼(?)はタイクーンに指先を向け、銃を撃つような仕草をする。

 ロングシュートが成功したことでライダーチームに大量の得点が入った。

 

「さ、まだゲームは終わってないよ。気を抜かないで!」

「う、うん……」

 

 ギーツに促される形でタイクーンは自陣へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 ――ジャマーガーデン。

 

 バッファの攻撃を受けたジャマトの果実は爆ぜ、ビニールハウスを吹き飛ばす。

 地面にしっかりと根差していた大木はもはや原型をとどめておらず、ツタ状の葉は吹き飛んで宙を舞っている。

 

「な、なんということじゃ……!」

 

 泥まみれになった殻木は惨状を前に膝をついて途方に暮れる。

 念願のジャマト誕生を目前にそれを破壊され、むせび泣く。

 

「ワシの……ワシと先生の夢が……!」

「……ふん! ざまあみろ」

 

 そんな殻木をあざ笑うバッファを、彼はキッと睨み付ける。

 

「お前に人の心はないのかぁっ! 人の夢を踏みにじって心は痛まんのか!?」

「……あんたみたいな悪党の夢を踏みにじったって、ちっとも心は痛まないっての」

 

 バッファは武器を肩で担ぎつつ、殻木へと迫る。

 

 ――ドクン!

 

 爆ぜてばらばらになったはずの果実が脈動する。

 

「……っな、に……?」

 

 バッファは咄嗟に果実へ武器の切っ先を向ける。

 果実の破片はツタのようなものをそれぞれ伸ばし、互いの破片をつなぎ合わせるように引き合っていく。

 たとえバラバラに砕かれようと、再び一つになってやると言わんばかりの生命力だった。

 

「っ何度も再生するなら、何度でもぶっ壊してやるわよッ!」

「うおおおさせんぞいっ!」

 

 再び必殺技を放とうとするバッファだったが、殻木にしがみつかれ妨害されてしまう。

「っ放せ!」

 

 そうこうしているうちに果実は一つの大きな塊となり、次第に人の形を形成していく。

 ハエトリグサと骸骨を混ぜ合わせたような容姿のジャマト。その体躯は2メートル弱であり、がっしりとした肉付きは威圧感を与えるほどだった。

 

「――ふぅ」

「ッッ!?」

 

 ジャマトが息を吐く。

 それだけでバッファは死を錯覚させられた。ただならぬ気配に背筋に悪寒が走った。

 

「おお……! 奇跡、奇跡じゃ!」

 

 殻木はジャマトの誕生に歓喜し、滝のような涙を流している。

 

「――すがすがしい気分だ」

 

 ジャマトの体からツタのようなものが剥がれ落ち、一人の人間の姿になる。

 どこか穏やかな表情を浮かべた紳士的な男性。洋服を着ていないものの、局部はツタのようなもので覆われている。

 

「ようやく、あの男(オールマイト)によって奪われた視界がようやく戻ってきた。実に爽快な気分だ」

 

 ジャマト――オール・フォー・ワンは空を仰ぎ、久方ぶりの視界を楽しんでいる。

 

「五感が満足に働くことが、こんなにも素晴らしいものだとは! 失ってみなければわからないことだろうね」

 

 彼は大きく深呼吸し、やがて目の前に(バッファ)がいることに気づく。

 更に周囲が開けており、自分を生育していたはずのビニールハウスが存在していないことにようやく気付いた。

 

「……そうか、この惨状は君の仕業、と言うわけだ」

 

 オール・フォー・ワンは深いため息をつく。

 ゆっくりと右手を伸ばし、個性を発動させる。

 

 ――“空気を押し出す” +“筋骨発条化”+“瞬発力”×4 +“膂力増強”×6

 

「っ!?」

 

 刹那、巨大な空気塊がバッファに襲い掛かる。

 彼女は身構え衝撃に備えていたが、いとも簡単にその体が吹き飛ばされてしまう。

 寝起きの一撃ともいえる軽い攻撃にもかかわらず、彼女を圧倒するには十分すぎる威力だった。

 

「……うん、素晴らしい威力だ。人間の体よりも強化幅が大きくて楽しいね」

 

 攻撃の余波で蒸気の噴き出る右手を見たオール・フォー・ワンは満足そうに笑っている。

 

「こんなことならもっと早くからジャマトに目をつけておけばよかったなぁ……そうすればオールマイトに負けることもなかったか」

 

 彼は独り言のようにつぶやきつつ、自分のなっていた木の残骸を押しのけ埋まっていたIDコアを取り出す。

 それには爆発の余波でわずかに亀裂が入っていた。

 

「ふんっ!」

 

 傷ついたIDコアを胸に埋め込むと、オール・フォー・ワンの体がツタで包まれる。

 ツタは大きくうごめきつつ、その内側を大きく作り変えていく。隙間からはわずかに光が漏れ出ていた。

 

「……ふぅ」

 

 中から現れるのは先ほどのジャマト体。先ほどまでとは異なり体全体のとげとげしさが増していた。

 

「おお……おおおっ! 遂に、遂になったのじゃな!」

「ああ、素晴らしいよドクター。まさにジャマトの王様――キングジャマトとでも名乗ってみようか」

 

 殻木はジャマトの肉体を得たオール・フォー・ワンを見て感動の涙を流していた。

 

「さて、と」

 

 オール・フォー・ワン――キングジャマトはビニールハウスの残骸に埋まったままのバッファを一瞥する。

 バッファは呻きつつ残骸から這い出ようとしている。

 

「あの攻撃を受けても無事とは……見た目以上に頑丈だね」

 

 ――“引力”

 

 キングジャマトは個性を発動し、バッファを引き寄せる。

 

「っ! この――!」

 

 ――Jya Jya Jya STRIKE!

 

 バッファは再び必殺技を発動、引き寄せられる勢いを利用して攻撃を繰り出す。

 

「へえ?」

 

 ――“衝撃反転” + “衝撃倍化”

 

 対するキングジャマトは個性を重ねがけで発動、受けるはずだったダメージを倍以上にして返す。

 

「かはっ……!」

「猪突猛進、力押しで斃せる相手だとは思わないことだ」

 

 バッファは負けじと拳を繰り出すも、衝撃反転の個性を使われているせいでカウンターを受けてしまう。

 だが彼女は拳が砕けようとも攻撃を止めない。

 まるで殴り続けていればいつかはダメージが通る、そういわんばかりの猛攻だった。

 

「残念だけど――君に付き合っている暇はないんだ」

「ッ……」

 

 何度目かのパンチを受け止めたキングジャマトは拳を掴んでバッファの体を持ち上げる。

 

「は……なせっ!」

 

 捕まろうと蹴りを入れて抵抗するも、やはり攻撃は通らない。

 

「う~ん……衝撃で君を殺すのは骨が折れそうだから、別のアプローチを考えよう。君は切断と刺突、どっちが好みだい?」

「……どっちもお断り、よ!」

 

 キングジャマトの表情はわからなかったが、人間の姿ならばいやらしい笑みをその顔に貼り付けていたことだろう。

 

「よし、まずは切断を試してみようか♪」

 

 ――“刃骨” + “硬質化”×3 + “瞬発力”×4 + “膂力増強”×4

 

 キングジャマトの両手首から西洋剣を思わせる骨が飛び出す。

 刃骨は己の骨格を刃物の様に変化させる個性。手首に限らず体中の様々な場所から剣のような骨を生み出すことができ、生み出した骨は皮膚を突き破って飛び出るため個性を発動するたびに激痛が走る。

 無論、刃の強度は通常の骨と同程度。カルシウムを摂取することである程度硬度を上げることもできるがそれは微々たる程度。

 故に硬質化の個性を重ね合わせ強度を上げる。3つ分重ね合わせたことでその硬度はダイヤモンドにも匹敵するほどだった。

 

「――ッ!!」

 

 目にも止まらぬ速さで振られた骨の刃はソニックブームを生じさせながらバッファの体を引き裂く。

 ジャマトフォームの装甲ですらその攻撃に耐えきることはできず、大きく吹き飛ばされバッファの変身が解除されてしまう。

 ダメージは牛込の肉体にも到達しており、彼女はうずくまりつつ血反吐を吐く。

 

「胴を両断するつもりだったんだけどね……相変わらず頑丈なスーツだ」

 

 キングジャマトはため息をつきつつもゆっくりと歩み寄る。

 

 ――“槍骨” + “硬質化”×3 + “筋骨発条化” + “瞬発力”×4 + 膂力増強”×4

 

 再び個性を発動し、今度は右腕をパイルバンカーのような形状に変化させる。

 腕の先端は槍の様に鋭く尖り、肘から肩にかけて腕が膨れ上がる。

 

「斬撃がダメなら刺突だ。君のお腹にどでかい風穴を開けてあげようか」

 

 牛込は迫りくるキングジャマトをただ眺めることしかできない。

 攻撃を受けたダメージだけでなく、ジャマトフォームに変身した反動が来ているのである。

 耐え難い激痛にうずくまり、その瞬間を待つことしかできなかった。

 

 ――ズシャ……!

 

 しかし攻撃が放たれることは無かった。

 突如、キングジャマトの右腕がずり落ちたのである。まるで根本から腐ってしまっているかのように。

 

「?」

 

 キングジャマトは落ちた右腕を不思議そうに眺める。

 数瞬の後、傷口同士がツタでつながり、何事もなかったかのように体が復元する。

 

「まだ個性の負荷に耐えられないのかな?」

「……そんなバカな」

 

 戦いを見守っていた殻木は突如として起こった異変に怪訝な表情を浮かべている。

 だがキングジャマトはそれを個性の使い過ぎが原因と判断、刺突によって牛込を殺害することを諦める。

 

「仕方ない。あまり気は進まないが――」

「んッ……ぁぐ……!」

 

 首を掴まれた牛込は苦しそうにもがく。脳への血流が断たれ、顔がみるみるうちに紅潮し瞳が反転する。

 

 ――首の折れる音が響く。

 

 個性も何も使わず、ジャマト由来の怪力によって牛込は首の骨を折られて絶命する。

 

「よし、邪魔者も排除したことだし――出かけようか♪」

 

 キングジャマトは人間の姿、オール・フォー・ワンに戻ると黒い靄のようなワープゲートを生成する。

 その表情は新しいおもちゃをもらった子供の様に無邪気な笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ジャマーボール前半戦が終了し、得点はライダーチームがリードしていた。

 支持率は各ライダーで大差なく、誰がデザ神に選ばれてもおかしくない状況だ。

 

「――後半戦だけど、僕らは守備に徹するべきだと思う」

 

 つかの間の休息時間、タイクーンは後半戦に向けた作戦を提案する。

 後半戦からはボールが2つに増えて試合が進行する。それゆえ人数が多いジャマトチームが有利、下手に攻めに転ずれば逆転される可能性も見えてくる。

 

「……随分と消極的なんだね」

 

 そんなタイクーンの姿勢に反感を抱いているのはギーツ。

 彼(?)は防御ではなく攻め――攻勢に出るべきだと考えていた。

 

「私たちなら守りに徹さずとも十分勝てるさ。まさか……自分主体の作戦で貢献度を上げようと思っているのかい?」

「そうじゃないよっ! 僕は確実に勝ちたいだけだ!」

 

 ギーツの指摘にタイクーンは反論する。

 

「そりゃ貢献してデザ神にはなりたいさ! でも――それ以前に負けたらこのエリアが消えちゃうんだぞ!?」

「! 確かに、そうだけど……」

 

 デザ神決定戦は通常のデザグラと同じルールにのっとって試合が進行する。

 すなわち、ライダーの敗北はエリアの消滅と同義だ。

 そうなればデザ神になる権利すら得られないのである。

 

「う~ん……でもさ、攻撃は最大の防御、って言うよね」

 

 ギーツに助け舟を出したのはナーゴだった。

 

「ジャマトに攻める間もないくらいの攻撃をすればいいんじゃない?」

「そうできるのが理想だけど、僕たちは三人しかいないんだ。下手に攻勢に出ればカウンターに対処できなくなる」

「だったらさ、私とエースさんで攻めるから、緑谷くんがディフェンスやるのはどうかな? ほら、分身で守りも鉄壁じゃない?」

 

 ナーゴの提案にタイクーンは思考を巡らせる。

 

「……そうか、僕のバックルを使えば数的不利は無くなるな。僕が一人で自ゴールをカバーすれば攻撃しつつ守りの両方もできる」

「そうそう! チームプレイだから、役割分担すればいいんだよ!」

 

 作戦が練りあがったタイミングで休憩時間が終了、後半戦の開始時間となる。

 スタート位置に集合した彼らに待ち受けていたのはジャマトサイドの戦力強化だった。

 

「ウソだろ……ジャマトライダーが?」

 

 前半戦戦っていたポーンジャマトのポジションにジャマトライダーが収まっている。

 わかりやすい戦力強化だった。

 

「ま、そう簡単に勝たせてはくれないみたいだね」

 

 ギーツはため息をつきつつボールを手に取る。

 ジャマトサイドもルークジャマトがボールを取った。

 

『――それではジャマーボール後半戦、スタートです!』

 

 ツムリの宣言で両陣営が動き出す。

 その瞬間だった。

 

 ――空間が爆ぜた。

 

 圧倒的な衝撃波に見舞われ敵味方関係なく吹き飛ばされていく。

 エリア内のビル群は土塊を壊すかのようになぎ倒されていき、たちまち地獄絵図へと早変わりする。

 

「っ何が、起こった……?」

 

 どうにか空中で体勢を整え着地したギーツは、爆心地の方へ視線をやる。

 黒煙越しに人影――否、異形の影が覗いている。

 

「――楽しいゲーム中に失礼するよ」

 

 その声はどこか軽薄だが威圧感をにじませている。

 安心感と恐怖を同時に想起させる声色だった。

 

「お前は……!」

 

 ギーツはその声に聞き覚えがあった。

 

「久しぶりだね! 会いたかったよ――デザ神サマ♪」

 

 声は心底馬鹿にしているようだった。

 シルエットが動き、両腕を振り上げる。

 

 ――“糸” + “増殖” + “発熱”×3 + “膂力増強”×4 + “伸長”

 

 その指先から赤く発熱する糸が放出される。

 

「っマズい――!」

 

 その攻撃を喰らえばひとたまりもないと悟ったギーツは咄嗟に身を伏せる。

 

 ――一閃。

 

 両腕が交差するように振り抜かれ、指の動きに合わせて糸が振り抜かれる。

 発熱した糸はまるで豆腐でも切るかのように瓦礫を粉々に引き裂いていく。

 

「この組み合わせも悪くないね。次は建物を壊す前に使ってみるか♪」

「……消されたものだと思っていたよ。どんなからくりでよみがえったんだい?」

 

 黒煙が晴れ、中から食虫植物と骸骨を組み合わせたような容姿のジャマト――キングジャマトが姿を現す。

 

「僕のIDコアをジャマーガーデンへ横流しし、ジャマトを育てさせたのさ。厳密に言えば僕のコピーだけど、そんな()()()ことは気にしなくていいさ」

 

 ――“衝撃蓄積” + “膂力増強”×8 + “瞬発力”×4

 

 キングジャマトは個性を重ね合わせギーツへと殴りかかる。

 

「?」

 

 ギーツの腹に拳が突き刺さる。

 だが予想に反してダメージはなく彼(?)は疑問符を浮かべる。

 その後も数発殴られるも、一貫してダメージは来ない。

 

「ふむ、このくらいでいいかな?」

「か――ぁっ!」

 

 キングジャマトが指を弾くと、蓄積されたダメージが爆発する。

 個性“衝撃蓄積”は攻撃を与えた箇所に衝撃を蓄積させ、任意のタイミングで解放する個性だ。

 雄英高校のヒーロー科にも似たような“ツインインパクト”という個性を持つ生徒がいる。彼の個性は一度攻撃をした場所にもう一度攻撃を発生させるトリッキーな能力を持っている。だが“ツインインパクト”と違い“衝撃蓄積”に上限はない。

 攻撃を重ねれば重ねるほど衝撃は蓄積し、解放した時に大ダメージを与えることができるのである。

 

「……っ」

 

 ダメージが許容量を超えたため変身が解除され、エースはがくりと膝をつく。

 そしてどこからともなくツタが伸びてきてエースの両腕を拘束し、磔のように捕らえる。

 

「そう簡単に終わらせないぜ?」

 

 キングジャマト――オール・フォー・ワンは変身を解除し、いやらしい笑みをエースへ向ける。

 

「君は僕の計画を邪魔した。だから君は――そう簡単に楽になれると思わないことだね」

「――んぐ!?」

 

 エースの口にもツタが絡みつき、彼(?)の言葉を封じる。

 

「そこでゆっくりと見物していてくれ――自分の大切なものが破壊されていく様をね!」

 

 オール・フォー・ワンは高笑いしながら、どこかへ姿を消す。

 

「んっ!」

 

 エースは拘束を振りほどこうとするも、ツタは頑丈でそう簡単にちぎることはできそうになかった。

 彼(?)は消えゆく背中を睨み付けることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

(っ何が、起こった……?)

 

 瓦礫に叩きつけられ、タイクーンの全身に激痛が走っていた。

 見回せば辺り一面瓦礫の山、崩壊した建物からは火の手も上がっている。

 

「――ああ、いたいた」

「ッ!」

 

 タイクーンは振り向きざまにニンジャデュアラーを構える。

 現れたのはオール・フォー・ワン、なぜか服を身にまとっておらず局部をツタのようなもので隠しているのみだった。

 

「お前は……」

「久しぶりだね、緑谷 出久――いや、タイクーンと呼ぶべきかな?」

 

 オール・フォー・ワンは穏やかに微笑みつつも、その瞳は獲物を虎視眈々と狙い続ける肉食獣のようだった。

 

「なんで……あの時、消滅したはずじゃ」

「そうだね。僕の本体(オリジナル)は既に消滅している。でもそんな些細なことはどうだっていいんだ――こうして万全の肉体を得ることが出来たんだからね」

 

 彼は晴れやかな表情でタイクーンへ語り掛ける。

 が、突如として顔が崩れかかる。

 

「おっと――まだ万全な状態じゃなかったか……」

 

 崩れた顔はすぐさまツタで覆われて修復される。

 

「さて、僕から君にプレゼントがあるんだ。長く続いたゲームを勝ち抜いた君への報酬さ♪」

 

 オール・フォー・ワンの体から黒い液体が迸り、中から人間の体が出てくる。

 彼は()()の首を掴むと、タイクーンの目の前へ放り投げる。

 

「え……?」

 

 女性の亡骸だった。

 額には牛のような角があり、暗い茶色のセミロングの髪が特徴的な女性。

 

「牛込、さん……?」

 

 タイクーンは信じられないものを見る目で牛込の亡骸を見つめる。

 彼女の首は曲がるはずのない方向へ曲がり、半開きの瞳はうつろで光を宿してはいなかった。

 

「可哀想に……僕に挑まなければ、もう少しだけ長生きできたのに」

「ッッ!」

 

 明らかな挑発にタイクーンは思わず飛び掛かりそうになるも、寸でのところで怒りをこらえる。

 

「何が、目的なんだ……?」

「僕はこう見えて、根に持つタイプでね」

 

 オール・フォー・ワンの体がツタのようなもので覆われ、ジャマトの姿へと変化する。

 

「されたことはずぅっと、覚えてるし、いつか仕返しをしてやろうと思っているんだ」

 

 オール・フォー・ワン――キングジャマトはタイクーンへに使う個性を選択する。

 

「初めは、オールマイトだった。奴は僕の()()を徹底して潰して、遂に僕の体を五体不満足に変えた」

 

 かつて、オール・フォー・ワンは悪の帝王として裏社会に君臨し続けてきた。

 “個性を奪い、与える”個性で人々の願望を叶え、まるで救世主化の様に崇め奉られていた。

 その名声は平和の象徴(オールマイト)の手によって失墜した。

 個性の大半を失い、顔の上半分を奪われ一線を退くことを余儀なくされてしまったのだ。

 

「だから僕は奴の築き上げてきた“平和”ってやつを壊してやろうとした。平和なヒーロー社会を崩壊させ、再び混沌の世をもたらす――最高の計画を立てていたのに、また邪魔された」

 

 雄英高校襲撃事件。

 それは表向きはチンピラ崩れが引き起こした無謀な事件として処理されているが、真実は違う。本来はオール・フォー・ワンによって引き起こされるヒーロー社会崩壊の第一歩、次代の悪の帝王の伝説が幕を開けるはずだった事件なのだ。

 

「デザイアグランプリ、君たちの()()()()()ゲームのせいで僕の計画は振り出しに戻されてしまった。腹立たしいことこの上なかった」

 

 だが襲撃は失敗に終わる。

 デザイアグランプリというイレギュラーのせいで襲撃計画は頓挫、主犯格の死柄木たちはあっけなく逮捕されてしまい、秘蔵の改造人間“脳無”も失ってしまった。

 

「だから僕はゲームをめちゃくちゃにしてやることにした。世界を守るはずのゲームで人々を傷つけさせ、世界を滅ぼすエンターテイメントへ変えてやった」

 

 次なる標的はデザイアグランプリだった。

 自分の計画を邪魔した者として、運営を乗っ取りゲームをめちゃくちゃにした。世界を守るというお題目を真っ向から否定し、世界を滅ぼすゲームを企画した。

 ジャマトの性質を利用し、複数の個性持ちに耐えうる器を生み出した。

 最終的にはデザグラの全てを乗っ取り、世界を自由自在に書き換えてやろうと画策していた。

 

「だがそれすら君に――君達に邪魔された。だから」

 

 ひとしきり語っていたキングジャマトだったが、突如として顔面が崩れ落ちる。

 だが即座に顔がツタで覆われ再構築される。

 

「だから、君たちの嫌がることを考えた。ほら、見てくれよ! 君たちが“理想の世界を叶えたい”なんて思わなければ、この惨状は起きなかったんだぜ?」

 

 キングジャマトは自分が生み出した瓦礫の山を示す。

 まるで“悪いのはお前だ”と言わんばかりである。

 

「街をめちゃくちゃにしたのは、お前じゃないか……!」

 

 タイクーンは声に怒りをにじませながら答える。

 

 ――TWIN BLADE

 

「人のせいに――するなぁッ!」

 

 一足で距離を詰め、キングジャマトへ斬りかかる。

 

「そうだよねぇ……君はそういう人間だ!」

 

 ――“斥力”

 

 ニンジャデュアラーが空を切る。

 確かに懐へ飛び込めていたが、反発する磁石の様に攻撃は届かず、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「っ……!」

「安心してくれよ。ここで君を殺す気はないからね♪」

 

 ――“氷の礫” + “増殖” + “斥力”

 

 キングジャマトの周囲に氷のつぶてが浮かびあがり、それらは瞬く間に数を増やし斥力によってはじき出される。

 まるでマシンガンを掃射されているかのような攻撃に、タイクーンはなす術もない。

 

(っ一発の威力は低いけど、こうも数が多いとキリがない……!)

 

 ――SET

 

 ニンジャフォームでは分が悪いと判断したタイクーンはバックルをゾンビバックルに交換し起動する。

 

 ――ZOMBIE...

 

 ゾンビフォームの耐久力を生かし、徐々に距離を詰めていく。

 

「ふむふむ、遠距離向けの装備は持っていないと見た」

「っ!?」

 

 ――“氷の礫” + “圧縮” + “硬質化”×3

 

 キングジャマトは礫の掃射を取りやめると、一転してそれを圧縮し槍のようなものを形成する。

 

「――ッ!?」

 

 ゾンビフォームはダメージを軽減することで耐久力を上げる形態である。故に小出しの攻撃は物ともしない破格の防御性能を誇っている。

 だがあくまで威力の軽減にとどまっているため、あまりにも大きな一撃には耐えることができないのである。

 巨大なつぶてを喰らったタイクーンは変身が解除され、ゾンビバックルは外れて地面に転がっていく。

 

「……っ」

「拍子抜けだなぁ……もしかして、僕の事を侮っていたのかい?」

 

 キングジャマトは呆れたような声色で緑谷をからかう。

 

「僕の強さをギーツとの一戦だけで判断しないで欲しいなぁ……僕の得意分野はあくまでこっちなんだぜ?」

 

 個性を用いた戦いに長けたオール・フォー・ワンにとってライダーシステムは単なる拘束具でしかない。

 

「さて、と。ここで君を殺すのは容易いが――それじゃぁつまらないよね♪」

 

 キングジャマトは指先からツタを放出し緑谷を拘束しようとする。

 

 ――TACTICAL FIRE!

 

 それを燃え盛る炎が妨害する。

 

「――ごめん! 見つけるの遅くなっちゃった」

 

 現れたのはナーゴ。

 彼女はビートアックスの攻撃でキングジャマトの拘束を阻止する。

 

「おお! 誰かと思えば――愛しき“クイーン”じゃないか」

「やめて!」

 

 ジャマトになっていた時の事を蒸し返されナーゴは怒りをあらわにする。

 

「私は――ジャマトなんかじゃない!」

 

 ――REVOLVE ON

 

 彼女はベルトを反転させ、空いているスロットにフィーバースロットバックルを装填する。

 

「私は葉隠 透――」

 

 ――SET FEVER!

 

 バックルを起動し、絵柄の抽選が始まる。

 下半身に装備されたビート、もしくはブーストの絵柄が選出されれば大幅な戦力強化となる。

 

「“仮面ライダー”ナーゴだよっ!」

 

 ――BEAT

 

 選出された絵柄はビート。

 

 ――HIT! FEVER BEAT

 

 上下共にビート――フィーバービートフォームとなったナーゴはビートアックスを二連ギターの様に構える。

 

「私が――緑谷くんを守るっ!」

 

 ――READY FIGHT!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 












E …… Emergency(緊急事態)

正に本作デザグラに緊急事態が発生です。ジャマトの肉体を得たオール・フォー・ワン……こいつをどうやって斃せばええんだ……
そして地味に戦闘シーンが増えるのが大変な件。どうにかこうにか頭の中で映像化していただけると助かります……

ギーツ本編ではジャマトグランプリが開催されましたね。ただでさえ強かったジャマトライダーがバックルを使ってきて絶望感しかありませんが……一体どうなるんでしょうね?
次回は英寿の秘密が明かされ、中間フォームが登場するっぽいですね。ブーストの強化版……絶対に強いんだろうなぁ……
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