【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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早速ですがifルートです!
時系列は夏休み前、映画二人の英雄あたりのストーリーからスタートです。
基本的に明るい内容なので、気軽にお楽しみください!













ifルート:仮想編
Ex1 仮想Ⅰ/いざ I・アイランドへ


―――――

――

 

『――ヒーローごっこしようぜ!』

 

 無邪気に遊ぶ子供たち。

 ヒーローが登場して久しい中、子供たちの遊びはもっぱらヒーローごっこだった。

 

『あ、ごめん……』

 

 そんな中、子供の一人が謝る。視線の先にいるのは一人の少女――名前をメリッサと言う。

 謝罪を受けたメリッサは微笑みながら手を振る。

 

『ううん。気にしてないわ! 遊ぶのに個性は関係ないもの』

 

 彼女はさも平気であるかのように振る舞い遊びに加わる。

 友人たちが時折個性を見せる中、彼女だけは何の能力も見せていなかった。

 メリッサに個性は無かった。所謂無個性である。

 

『……フン』

 

 そんな彼女らを冷ややかに見つめる少年がいた。

 名をケイ・アッドと言う。

 年不相応に大人びていた彼は、同年代の子供たちの遊びに混じらず遠目に眺めているのみだった。

 

『無理してんじゃん……』

 

 彼は自然とメリッサの姿を目で追っている。楽しそうに遊んでいるメリッサ、だがその笑顔は心からの者ではないように見えた。

 一人だけ周りとは違う、一人だけ当たり前の夢を追いかけられない――そんな悲しさを帯びているようだった。

 

『……平等(フェア)じゃねぇ……こんな不平等(アンフェア)な世界、俺が変えてやる』

 

 少年は心に固く誓った。

 いつか不平等な世界を変えてやろう、と。

 個性や才能といった先天的な不平等のない、皆が心の底から幸せになれる世界を作ってやろう、と。

 メリッサが心の底から笑えるような世界を作ってやろう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「――ケイ! しっかりしろッ!」

「ッ!?」

 

 揺り起こされてケイは意識を取り戻す。

 広大な空間、実験場で倒れているところを師匠――デヴィットに介抱されていた。

 

「あれ、俺もしかしてトんでた?」

「ああ! 声をかけても反応がないから心配したよ」

 

 ケイは腰に装着したベルトからバックルのようなものを引き抜く。

 真っ赤なグリップに4つの排気ユニット、グリップの反対側にはカバーのようなプレートが付いている。

 

「っぱ、模倣品(イミテーション)じゃコイツの出力に耐えらんねな」

「もっと出力を押さえる方向性も検討すべきだ。そこまで過剰な火力を持ってたら認可も下りないだろう?」

 

 デヴィットはケイの腰からベルトを引きはがす。中心にソケットが付いた白い円に楕円状の黒いパーツ――それはデザイアドライバーそのものだった。

 見れば、実験場の片隅にはデザイアドライバーと思しきサポートアイテムが山積みにされており、その傍らにはマグナム、ニンジャ、ゾンビといった大型バックルと似た形状のアイテムが積まれている。

 

「規制が怖くて開発はできんでしょ? 理論上、こいつのフルパワーはオールマイトを凌ぐ」

 

 ケイはバックルを弄びながらため息をつく。

 

「っぱ欲しいのはそこに収まるべきもの――いや、答えはわかってッけど、その現物だ」

 

 彼は手をくるくると回転させ、デヴィットの持つドライバーのソケット部分を指差す。

 そこはIDコアを装填するためのソケットだった。IDコアを装填することでデザイアグランプリの参加を受け付け、装着者をエントリーフォームへ変身させることができる。

 

「先を急ぐ必要はない。一歩ずつ確実に進めていこう」

「悠長極まれりだねぇ師匠(せんせい)。そんなじゃ俺に先越されんぜ?」

「もう栄誉は十分貰ったさ。あとは君の設計図を実現する手伝いをしたいだけだよ」

 

 デヴィットは苦笑しつつデザイアドライバーを返却する。

 数々の特許を得てノーベル個性賞まで獲得し、科学者としての栄誉を極めたデヴィットは後進の育成に専念していた。

 

「さいですか」

 

 ケイはデザイアドライバーとバックルを作業台の上に置くと、隣に置いてあったドライバーに手を伸ばす。バックル部分にはモニターのようなものと指紋認証装置、右の腰にあたる部分にはカードを収めるホルダーが装着されていた。

 

「んじゃま、次の実験始めるから記録はよろしく」

 

 

 

 ――その後、彼の研究は凍結されることとなる。

 力なき一般市民を戦士へと変えるサポートアイテム、ともすればプロヒーローなど不要と断ずることのできるアイテムは、様々な業界の人間にとって目障りでしかなかったのだ。

 発明品は接収され、これ以上の研究が禁止されることとなってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――時は夏。

 

 一般的な高校生はイベント渦巻く夏休みにうつつを抜かし、あるものは部活、あるものは恋、あるものはイメチェンにとせわしなく青春を謳歌する時期。

 しかし雄英高校に通うヒーローの卵にとっては夏休みすら自己研鑽に費やされる。

 夏休みの半ばに行われる林間合宿、個性を鍛えヒーローへの階段を上るイベントが待ち構えているのだ。

 

「――あ!」

 

 とはいえ夏休みは夏休み、胸躍るイベントも多々起こるものである。

 緑谷は自家用ジェットの窓に頬を押し付け、眼下に広がる景色を眺めている。

 

「オールマイト! 見えてきましたよ!」

 

 彼は夢の世界へと旅立っていたオールマイトを揺り起こす。

 彼らの目的地は人工都市I・アイランド――世界中の優秀な科学者の集められた学術都市だ。

 

「夏休み早々I・アイランドに行けるなんて……!」

「そんなに喜んでもらえるとはね。誘った甲斐があったよ!」

 

 オールマイトはI・アイランドで行われるイベント、I・エキスポの招待券をもらっていた。

 そこには同伴者も可と書かれていたため、彼は勉強にと緑谷を誘っていた。

 

「――さ、そろそろ到着だ! 気合入れてかないと!」

 

 がりがりのトゥルーフォームだったオールマイトの体から蒸気が噴き出したちまち筋骨隆々とした大男へと変身する。

 宿敵から負った致命傷のせいで彼の活動時間は刻一刻と削れており、今では一日1時間程度しかマッスルフォームになれないのであった。

 

「なんせ向こうではずっとマッスルフォームを維持しないといけないからね!」

 

 オールマイトは誰に見せるでもなくポージングをしている。

 

「緑谷少年、君も着替えるんだ。コスチューム、申請して持ってきてるだろ?」

「はいっ!」

 

 緑谷はコスチュームの入ったケースを手に更衣室へ向かうと着替えにかかる。

 制服を脱いでいると、ポケットからタイクーンのIDコアが零れ落ちる。

 

「おっと」

 

 機体の揺れに合わせて転がっていくそれを慌てて手に取り、じっと見つめる。

 その脳裏には荷造りの際の出来事が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

『――あ、そうだ』

 

 荷造りを一通り終え、緑谷は変身道具一式(ドライバーとバックル)に手をやる。

 デザイアグランプリは恐らく日本国内限定で行われているゲーム。守秘義務があるため海外にドライバーとバックルを持ち出してもいいのか思案する。

 

『……絶対に荷物検査で引っかかるよな』

『――でしたらこちらでお預かりいたします』

『おわっ!?』

 

 どこからともなく現れたツムリに緑谷は思わず腰を抜かす。

 

『海外へお出かけになる際は、こちらでドライバーとバックルを一時的にお預かりする規則となっておりますので』

『あ、あの……一体どこから……?』

 

 緑谷の問いにツムリは答えない。捉えどころのない笑みを浮かべたまま彼を見つめている。

 

『ご安心を。ゲーム開始時にお届けしますので』

 

 ツムリはIDコアを抜き取ったドライバーをどこからか取り出したボックスに収める。それは緑を基調としカバーにはタイクーンのアイコンが描かれている。

 続けてマグナムバックルとブーストバックルも同様にボックスに収めて蓋を閉じる。

 

『確かに、お預かりしました。こちらのIDコアは失くさぬようお気を付けください。では――』

 

 重そうにボックスを抱えたツムリは窓から飛び降りて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

(I・エキスポの間はデザグラが開催されないといいんだけど)

 

 緑谷はIDコアをコスチュームのポケットに収める。

 飛行機は着陸態勢に入っていた。

 彼は慌てて荷物を収めると、オールマイトの下へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

「――こうしていると、ここが島ってことを忘れちゃいますね」

 

 オールマイトの友人、デヴィット博士と面会したのち、緑谷は博士の娘メリッサと共にI・エキスポのプレオープンに赴いていた。

 

「大都市にある施設は一通り揃ってるわ。できないのは……そうね、旅行くらいかしら?」

 

 I・アイランドに住んでいる科学者とその家族は機密保持の観点から気軽に島外へ出かけることはできない。

 一見するとセキュリティ万全で最高の治安を兼ね備えた都市だが、裏を返せば人の出入りに厳しく自由が大きく制限されるのだ。

 島内はエキスポ開催中とあって賑わっており、怪獣ヒーローが人々をにぎわせ、サポートアイテムの実演も行われていた。

 

「――さあさあ! 飲めばたちまちスタイル抜群になれるドリンクだよ! ぜひとも治け……じゃない、試飲していってくれたまえ!」

 

 中には怪しげな女性科学者がこれまた怪しげなドリンクを配布しており、半ばお祭り騒ぎのようでもあった。

 

「ね、次はあそこのパビリオンに行かない?」

 

 緑谷はメリッサに連れられ展示館(パビリオン)へと足を踏み入れる。

 

「わあ……!」

 

 室内はまさに近未来の縮図、()()両用の万能ビークル、深海にも耐えれる特殊スーツ、様々なアイテムの展示がされていた。

 

「これらのほとんどはパパの発明した特許を元に作られてるのよ!」

 

 アイテムを紹介しつつメリッサはどこか誇らしげだった。

 父親を心の底から尊敬している――話しているだけでそれがありありとわかるほどだった。

 

「――少し訂正しよう。特許を発明したのはデヴィット・シールドだが、それをブラッシュアップしたのはこの俺――ケイ・アッドだ」

 

 楽し気に話している二人の間に割って入る者がいた。

 赤銅色のオールバックに猛禽類を思わせる強面、白衣の下にはI・アイランドにあるアカデミーのTシャツを着ている。

 

「……はぁ」

 

 メリッサは乱入者の顔を見て心の底からため息をついた。それは体中の息を吐き切ってしまうかのようだった。

 

「おいおい! ずいぶんな反応(リアクション)だな。あーデートのお邪魔だったか?」

「でっ!?」

「そういうのじゃないわよ、ケイ」

 

 白衣の青年――ケイは茶化すように緑谷とメリッサを指差すも、彼女は冷ややかな視線を送るだけだった。

 

「はぁ……紹介するわね。これはケイ・アッド、一応パパの一番弟子で一応私の幼馴染」

「おい随分な紹介だよ。傷つくなぁ」

 

 メリッサのぞんざいな紹介に落ち込むケイだったが、すぐさま気持ちを切り替え緑谷へ右手を差し出す。

 

「いずれ世界一の頭脳となる男、ケイ・アッドだ。よろしく」

「あっよ、よろしくお願いします」

 

 ケイの自信はあふれんばかりで、緑谷はエースの事を思い出してしまう。

 メリッサにとってケイは緑谷にとってのエースや爆豪に近しい存在なのかもしれない。

 

「えと、僕は――」

「ああ君のことは知ってるぜイズク・ミドリヤ。雄英高校1年A組、体育祭のリザルトはベスト8。個性は遅咲きの増強系」

 

 自己紹介をしようと口を開いていた緑谷はつらつらと語られる個人情報を聞いて固まってしまう。

 

「ようこそI・アイランドへ。クソみたいな時代遅れ(レガシー)を楽しんでいってくれ」

「は、はぁ……」

 

 緑谷の頭の中には疑問符が浮かび上がる。

 I・アイランドは科学の最先端が集まる都市だ。それをケイは時代遅れ(レガシー)と言い放ったのだ。

 

「気にしないで緑谷クン。こいつの戯言は真に受けない方がいいわ」

「失敬だな。俺の頭の中は1000年先を行く。お前らの最先端は俺にとっては時代遅れ(レガシー)さ」

 

 ケイは手をくるくると回し、ビシっと緑谷を指差す。

 

「ジャパンでは“百聞は一見に如かず”って言葉があるだろ? 折角だし俺の発明を見せてやるよ」

 

 案内されたのはパビリオンの片隅、パワードスーツの展示を行っている一角だった。

 

「――えっ」

 

 そこに展示されているアイテムを見た緑谷は思わず固まる。

 白と黒を基調としたベルトのバックルを思わせる形状、中心は白い円形でその外側を黒い楕円形のパーツが配置されている。中心には円柱状の物を収めるようなくぼみが存在しており、そこには半透明な物体が装填されている。

 

(デザイアドライバー……? なんでこんなところに)

 

 緑谷は戸惑いつつもそれを手に取る。遠目に見ればほとんどそっくりだったが、触ってみれば細部が異なることに気づく。

 特に形態変化、リボルブオンを行うための機構が存在していなかった。

 

「腰に当ててみな?」

「……ッ」

 

 ケイに促され緑谷はそれを腰に当てる。

 たちまちベルトが出現し彼の腰に巻き付く。デザグラ参加のため何度もドライバーを巻いているのにも関わらず、腰にフィットする感覚に驚いてしまう。

 緑谷はドライバーの外にもバックル――マグナムバックルに酷似した物だ――も展示されていることに気づき、バックルを手に取る。

 

「ひゅぅ……さすがはアニメの国。使い方は――説明しなくてもわかるみたいだな。お試しはそっちのエリアで頼むよ」

 

 緑谷はデモンストレーション用のスペースへ移動するとバックルをドライバーへ装填する。システム音声はならず簡素な電子音が鳴るのみだった。

 どこまでもデザイアドライバーに近かったが、本質的には別物であることが分かる。

 

「……変身」

 

 バックルを起動するとドライバーから装甲が展開され、緑谷の体へと装着される。

 素体はエントリーフォームと同等、装甲のデザインもマグナムフォームと同等だったがどこか無骨さと重量感を感じさせた。

 特徴的な動物の仮面は装着されず、黄色の複眼が顔に張り付いている状態だった。

 緑谷は手を握ったり開いたりして装着感を確かめる。まるでタイクーンへ変身しているかのようだったが、どこか窮屈さと息苦しさを感じていた。

 

「そいつは俺の開発した戦闘支援スーツ。ってもプロトタイプだけどな」

「開発? ある日送られてきたアイテムをパクったんじゃなかったっけ?」

 

 楽しそうにしているケイが気に食わなかったのか、メリッサは意地悪そうにささやく。

 

「パクったんじゃねし。設計図は元々(ここ)にあったが、実現する方法がなかったってだけだ」

「っこれを一から考えた……ってこと、ですか?」

 

 緑谷は変身を解除しつつ問いかける。

 デザイアドライバーは元々ジャマトに対抗する装備として開発さたもの。確かに、ツムリの話が真実ならばそれを開発した人間がどこかにいるはずなのだ。

 もしケイがドライバーの開発者の一人だとするなら――デザグラの根幹を知ることができるかもしれない。

 

「まな。つってもそれはクソみてぇな模倣品(イミテーション)だ。本来の出力の半分も出せてねぇのよ」

 

 当てが外れて緑谷は肩を落とした。

 

「俺の頭には遥か未来の科学が詰まってる――1000年先の未来さ。人は遠い未来、人格から寿命まで全てをデザインできるようになり、3.5次元の世界を娯楽として楽しめるようになる」

「(あっ真に受けちゃダメよ? たまにあいつ適当なこと言ってるから)」

 

 メリッサは緑谷にこっそりと耳打ちする。

 ケイの話はにわかには信じがたかったが、妙な説得力があった。

 

「でも現実はクソさ。俺の設計図をほんの少ししか実現できねのさ」

「それを研究するのが科学なんじゃないんですか?」

 

 緑谷は至極当然な疑問を口にする。

 人は誰しも“あんなことこんなことできたらいいな”と未来を思い描くものである。過去と未来を自由に行き来し、扉ひとつでどこへでも行けるようになる――そんな未来を誰しも夢見ている。

 そんな絵空事を現実にしようと人は科学を研究する。

 いつか、子供の頃空想した未来へ一歩でも近づけるように。

 

「ははっ! そいつはおっしゃる通り! こう見えても俺、結構な数の論文書いてるんだぜ?」

 

 ケイは手をくるくると回しつつウインクする。

 

「このままいけば俺は死ぬまでに科学の時計を300年は進める自信がある。が……それじゃ(おせ)んだ」

「遅いって……300年も進めば十分なんじゃ」

「君には十分でも――俺の理想には足りねんだ」

 

 彼は白衣のポケットに手を突っ込むとどこか遠い目をしている。

 

「ま、いつかこいつの完成品を拝ませてやるよ。せいぜい長生きするんだぜ?」

「は、はぁ……」

 

 まさか完成形を使ったゲームをしていると言えるわけもなく、緑谷は曖昧に返事をしておいた。

 

「さて、と。メリッサ、折角だから彼を案内してやってくれよ。俺の発明ほどじゃないが、エキスポは十分楽しめんだろ」

「案内中だったんだけど? 割って入ってきたのはそっちじゃない」

「おっとそいつは失礼。んじゃま、楽しんで!」

 

 緑谷への興味が無くなったのか、ケイはブースの奥へ引っ込んでいってしまった。

 

「なんというか……変わってる人、なんですね」

「昔っからそうなのよ! 勝手に割り込んで勝手に引っ張っていって飽きたら放り出して……っ!」

 

 メリッサは頬を膨らませていた。

 

「さ、あいつなんて忘れて楽しみましょ! 見せたい発明がいっぱいあるの!」

 

 文字通りの乱入はあったが二人は展示会めぐりを再開する。

 展示品はどれも彼女の父、デヴィット博士携わったものばかりであり、メリッサはそれらを得意げに解説していた。

 

「――だーれだ?」

 

 そんな中、再び乱入者が現れる。

 緑谷は突如視界を奪われパニックになるも冷静に犯人を導き出す。

 

(この声、葉隠さん? え、でもなんで視界が?)

 

 少しハスキーで可愛らしい声色――これは葉隠で間違いないだろう。

 だが彼女は全身が透明のため、目隠しをしようにも透けてしまって失敗するのが道理だろう。

 

「え、と……葉隠さん?」

「正解っ! えへへ……やっぱバレちゃうかぁ」

 

 そっと目隠しを解除され、緑谷は視界を取り戻す。

 ゆっくりと振り返ると、そこには見知らぬ少女がいた。

 どこかあどけなさの残る幼い顔立ちにウェーブのかかった薄い黄緑色のロングヘア。Tシャツにスウェットのラフな姿だが、抜群のプロポーションのため妙な色気があった。

 つまるところ、美少女がそこにいた。

 

「ぁ……ごめんなさい間違えました」

「間違ってないよ!」

 

 見知らぬ顔に思わず謝罪してしまう緑谷だったが、美少女はぷんすか、という擬音が似合うような怒り方をしている。

 

「えっ? あっでも……え? 本当に葉隠さん?」

「うん! 私は葉隠 透だよ!」

 

 美少女――葉隠はえっへん、と胸を張っている。

 あまりの情報量に、緑谷の背後には宇宙が出現するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

『――へぇ? 本当にこの座標にデザイアグランプリの本拠地が?』

「そうよ♪ 嘘なんてつく必要ある?」

 

 悪の帝王、オール・フォー・ワンは少女から渡された端末を見てほくそ笑んでいる。

 彼の目的はデザイアグランプリの乗っ取りと崩壊――自分の計画をめちゃくちゃにされたことへの報復であった。

 

「私が見たいのは他人の不幸♡ アハハ! 貴方が作る不幸な世界を見てみたいのよ!」

 

 対するはゴスロリ風な衣装を身にまとった少女。ピンクのメッシュが入った黒髪のロングヘアは清楚な印象を与えるも、邪悪な表情がそれを打ち消した。

 少女の名はベロバ、デザイアグランプリのスポンサーであり、特にジャマトへの支援をしていた。

 彼女はゼリービーンズを食べながらオール・フォー・ワンと対峙している。その態度はおよそ悪の帝王を前にしているとは思えないほどだった。

 

『不幸な世界、ねぇ』

 

 オール・フォー・ワンは品定めをするようにベロバを観察する。

 直接的な視界は失っているも、その身に宿した個性を駆使してその体を精査していた。

 

「あら?」

 

 無邪気そうに笑っていたベロバだったが、ポーチの中のスマホが鳴動したことでそれが消える。

 彼女はスマホを取り出し通知を確認すると、再びその顔に狂気的な笑顔を浮かべる。

 

「アハハ! そう! 本当にやるのね! ……だったら、こっちはナシね」

 

 ベロバはスマホをしまうとオール・フォー・ワンに渡した端末を奪い取る。

 

『……なんのつもりかな?』

「別に? もっと面白いおもちゃが見つかったからそっちで遊ぶだけよ?」

 

 彼女は悪びれもせずオール・フォー・ワンへ言い返す。

 突き刺すような殺気を向けられているも、彼女は全く意に介していなかった。

 

『……ナメられたものだね』

「アハハ! こわーい♡ 悔しかったらアタシからこれ奪ってみなさいよ」

 

 ベロバは端末をポーチへしまうと、代わりに銃口を模したアイテム――ライズカードリッジを取り出す。

 

 ――LASER RAISE RISER ...

 

 それを腰にかざすとベルトが出現、腰には銃のようなアイテム――レーザーレイズライザーが出現する。

 

 ――BEROBA:SET

 

 レーザーレイズライザーにライズカートリッジを装填、ベロバはまるでダンスをするかのような動きでオール・フォー・ワンへと銃口を向ける。

 

「変身♡」

 

 ――LASER ON ...

 

 彼女の“デザイン力”を読み取ったレイズライザーは装甲を形成、それはみるみるうちに膨れ上がっていきたちまち建物を内側から推し壊していく。

 

『っ……!』

 

 想定外の事態を前にさしものオール・フォー・ワンも息を呑む。

 変身したベロバの姿は優に10mに迫り、それはさながら巨大なビルのようであった。

 

 ――BEROBA:LOADING ...

 

 巨大な牛のようなロボへと変身したベロバは、挑発するようにレイズライザーをオール・フォー・ワンへと向ける。

 それはさながら、巨人と小人だった。

 

「アハハ! ほら! アタシと一緒に遊びましょ?」

 

 ――READY FIGHT ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











【分岐要素】
・オリキャラ(ケイ)の存在
 → 本編ルートに彼は存在しません
   こいつがifルートのキーパーソンとなります
・お茶子さんではなく葉隠さんがじゃんけんに勝つ
 → 本編ルートでは原作同様お茶子さんがプレオープンに参加
・ベロバ、AFOを裏切る
 → 本編ルートではベロバが神殿の座標をリークしたことでAFOが襲来します
   よくやったベロバ!




ifルートはこんなノリで進んでいきます。基本的に本編で拾えなかったギーツ要素、具体的にはサポーターだったりブーストマークⅡだったりを拾っていきつつ、ヒロアカ文化祭編くらいまでのストーリーを書けたらと思っています。
本編でさんざん鬱ルートはやったので、基本的に明るいストーリーを目指しています。ご期待ください!



ギーツ本編では遂にレーザーブーストが登場しましたね! 変身までの流れがよすぎてますますギーツが好きになりました。福さん(ジーン)は退場となりましたが、また登場してほしいものですね。

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