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――
――1時間前
葉隠、耳郎、八百万はプレオープンを楽しんでいた。
A組女子は全員I・アイランドへ赴いていたが、八百万父の入手していたプレオープンのチケットは3枚しかなく、厳正なるじゃんけんの結果3人がプレオープンをめぐることになったのだ。
『――そこのお嬢さんたち!』
『へ? もしかして……私たち?』
そんな中、怪しげな女性科学者に声をかけられる。彼女は紙コップの乗せられたお盆を持ち、怪しげな微笑を浮かべている。
『そうとも! 君達のような若い女性向けのドリンクの治け――げふんげふん。試飲をしていてね! ぜひとも飲んで感想をもらいたいんだよ』
本心を隠しきれていない女性科学者の言い分に八百万と耳郎の目が白くなる。
『……うさんくさ』
『ええ……I・アイランドにいる以上は悪い人ではないんでしょうけど』
冷たい視線もなんのその、女性科学者はめげずに続ける。
『まあまあそう固いことは言わずに! 一口飲めば余計な脂肪とはおさらば! 抜群のプロポーションが手に入ること間違いなしだよォ?』
『っ抜群の、プロポーション……?』
『耳郎さん!?』
抜群のプロポーション――それは耳郎にとって何よりも魅力的な響きだった。
彼女は決して貧相な体つきではない。総じて平均的な女子高生のスタイルだ。
しかし――クラスメイト達はまさしく“発育の暴力”とでもいうべき抜群のスタイルを誇っている。
クラス一のスタイルともいえる八百万はもちろん、彼女を除く他の女子も出るところは出て締まるところは引き締まっている。シルエットの見えない葉隠とて制服を着ていればスタイルがいいことが分かる。
そんな者達と比べてしまうと耳郎のスタイルはいささか見劣りしてしまう。故に彼女は体型に若干のコンプレックスを抱えていた。
『……ほ、本当に、抜群のプロポーションになんの……?』
『もちろんだとも! 私の計算が正しければ自信はないけど脂肪の燃焼が――』ペラペラペラ
人間とは不思議なもので、乗り気な時にそれを後押ししてくれる情報を出されるとどんなに怪しくとも信じてしまうものである。
『いいんじゃない? 折角だし試してみようよ!』
『ま、まあ……体に悪い物でもなさそうだし』
『わっわたくしは飲みませんわよ?』
葉隠、耳郎はドリンクを受け取ると恐る恐る口へと運ぶ。
『んっ! おいしい!』
『っ……意外とイケる』
謎のドリンクはリンゴを思わせる甘酸っぱさで、口いっぱいにさわやかな風味がひろがっていった。
本当にダイエット効果が発揮されるかどうかはさておき、ジュースとしてみるならば合格と言えるだろう。
『ヤオモモも飲んでみなよ! 本当においしいよ!』
『でっですからわたくしは――』
葉隠の強引な誘いを断ろうとかぶりを振る八百万だったが、葉隠の体に起きた異変を察知し即座に個性を発動していた。
それはまさしく迅速な判断であり、僅かにでも反応が遅れていれば大惨事を回避できなかっただろう。
のちに八百万はこう語る――「気が付いたら体が動いていた」、と。
『へっ?』
突如として布をかぶせられた葉隠は驚いてじたばたする。
『ちょっヤオモモ何す』
『じっとしてくださいまし! でないと
布の向こうの葉隠の動きが止まる。
『み、見え?』
『見えるったって葉隠は透明なんだ、し……!?』
八百万の暴挙に苦笑していた耳郎は葉隠の足元を見て固まる。
布の下に肌色の生足が覗いていたのだ。
『えっ……なんで、見えて』
葉隠の個性は“透明化”、全身が透明な透明人間の個性である。
それ故に彼女は誰からも“真の姿”を見られることもなく、服を脱ぎ去ってしまえばたちまち姿をくらますことのできるステルスボディを持っているのだ。
そして彼女のヒーローコスチュームは透明であることを生かすべく手袋とブーツを除いて着用していない――とどのつまり、
『えっ……嘘、でしょ……?』
葉隠は布の内側で自分の体をまじまじと見つめる。
透き通るような白い柔肌に少しむっちりとした二の腕、感触でしかわからなかった豊満な胸、腰からヒップラインにかけてはしっかりとくびれつつ優美な曲線を描き、すらりと伸びる脚へとつながっていく。
彼女は生まれて初めて見る自分の姿に見とれてしまうも、あることに気づく。
『あ、あれ……もしかして、今
葉隠のヒーローコスチュームは手袋とブーツのみのシンプルスタイル。それは透明な肉体を生かした隠密行動を前提としており、いわば「見えなければ恥ずかしくない」の精神である。
現に彼女もコスチュームデザインを考える時は開き直って要望を書いていた。
そう、
もう一度言おう、見えなければ、恥ずかしくない。
つまり見えるようになってしまえば人並みに羞恥を覚えるものである。
『ええ……ですから、ひとまず人目の付かない場所に移動いたしましょう』
『そ、そうだね……葉隠、アンタ今動いたらとんでもないことになるから』
八百万と耳郎は葉隠を両サイドから支え、間違っても布が剥がれ落ちないようにホールドしている。
『――ほほう! 透明化の個性が解除されているって? これは興味深いねぇ!』
悲しいかな、好奇心に突き動かされた科学者は時に倫理も配慮も忘れるのである。
ドリンクを配布していた女性科学者は盆を傍らに置くと、なんのためらいもなく葉隠の体を隠していた布をめくりあげる。
『――っ!』
怪しげなドリンクの効果で透明化を解除されてしまった葉隠の姿が白日の下に晒上げられてしまう。
無論、ヒーローコスチュームのままであるため着用しているのは手袋とブーツのみ――傍から見れば痴女そのものである。
これが“透明で見えないから”とまかり通ってしまうのはいかがなものか。
『ふむふむ……本当に透明でなくなってるねぇ。私のドリンクが君の個性因子にどんな影響を与えたのか興味は尽きないねぇ』
女性科学者にしげしげと肢体を観察され、葉隠の羞恥心は次第に膨れ上がっていく。
幸いにも、他の客は世にも珍しい“空飛ぶライオン”のオブジェに目を奪われており、うら若き乙女の体が白日の下にさらされていることに気づいていなかった。
『あっあっ……! いやあああああっ!』
遂に耐えられなくなった葉隠は、悲鳴を上げながら布で自分の体を覆い隠すのだった。
――――
「――ってことがあったんだよね~」
葉隠は頬を赤く染めつつもあっけらかんと語る。
メリッサの提案で場所はパビリオンから近くのカフェへと移っていた。
「そ、そんなことが……っ!」
緑谷は当時の状況を想像してしまい思わず鼻を押さえる。オタクとはいえ彼も思春期真っただ中の健全な男子高校生なのである。
「不思議ね……どうして葉隠サンの個性だけ止まっちゃったのかしら? 耳郎サンの個性は何ともないのよね?」
「はい。ウチの個性はこの通り」
耳郎は耳のイヤホンジャックを器用に動かしてコーヒーカップを掴む。個性が万全な証拠だった。
「もう少し強く止めるべきでしたわ……まさかこんな事態になってしまうなんて」
八百万は心底悔しそうに頭を抱えている。
「もう大げさだな~! 明日か明後日には元に戻るって言ってたじゃん!」
当の本人が笑って済ませている以上他の者がとやかく言う資格はないだろう。
「こうなったら見えるようになったことを全力で楽しむしかないよっ! そうだっ! 写真撮ろっ!」
今のうちに自分の姿を記録してしまおうという魂胆なのだろう、葉隠はポケットをまさぐりスマホを取り出そうとするも、持っていないことを思い出す。
「あっ……コスチューム着てたからスマホ置いてきちゃった」
「じゃあ僕ので撮る?」
「いいの? ありがとう!」
緑谷はスマホのカメラを起動し葉隠に向ける。彼女はノリノリのダブルピースでポーズをとっている。
「――はいチーズ……! うん、後で送っておくね」
「ありがと~! 今度はみんなで一緒に撮ろっ!」
素顔での写真に興奮しているのか、葉隠は子供の様にとびはねている。
「……うーんこの距離じゃ収まらないな……メリッサさんもう少し寄って」
「何やってるの! 緑谷くんも一緒だよっ!」
「わわっ!」
カメラマンに徹しようとしていた緑谷だったが、葉隠によって手を引かれて集合する。
思い切り抱き寄せられたことで葉隠のやわらかな体と密着する。
(っち、近……っ!)
思わぬ密着に顔を真っ赤にする緑谷。心臓は早鐘を打ち今にも破裂してしまいそうだった。
「……う~ん、自撮じゃ入りきらないかな」
自然とカメラ内に収まるよう八百万とメリッサは席を立って移動してくれているも、うまくカメラ内に収めるのが難しい状況だった。
「――だったら俺が撮りましょうか、お客様?」
「え~いいんですか――って上鳴くん!?」
「よっ!」
カメラマンに名乗り出たのはウェイター姿の上鳴だった。
「バイト募集してたから応募したんだ。休憩中はエキスポ見れるし、それに――出会いがあるかもしれないからな」
「?」
彼はメリッサの方へ視線をやるとアピールするようにウィンクする。しかしメリッサは意図が理解できずにきょとんとしていた。
「そうなんだ~! だったら上鳴くんも一緒に撮ろうよ! みんなと一緒の写真撮りたーい!」
「うぇっ!? 嬉しいけどそしたらカメラマンいなくならね!?」
「でしたらわたくしが――」
八百万は個性を使って胸元から棒を創造する。所謂自撮り棒だ。
「こちらを使いましょう」
「ヤオモモナイスぅっ!」
葉隠は自撮り棒を受け取ると早速スマホを取り付け自撮りの準備に取り掛かる。
「――ず、ずりぃぞ! オイラも混ぜてくれぇっ!」
上鳴同様にバイトをしていた峰田は写真に混ざろうとし全力で駆けてきていた。
「でもってこの勢いでラッキースケベブヘッ!?」
しかし邪な考えを耳郎に聞かれた結果彼女の個性で制裁される。
偶然にもそのタイミングでシャッターが押されてしまったため彼は間抜けな表情で写真に写ることになってしまったのだった。
――――
――
「……はふぅ」
緑谷たちのテーブルから少し離れた席、そこでは二人の男女がティータイムを過ごしている。
片方はミステリアスだがどこか愛嬌のある感じられる少年――ジーン。
「今日も今日とて推しが尊い……」
もう片方は銀灰色のストレートヘアにどこかタヌキを思わせる顔立ちの女性――セセラ。
彼女は緑谷たちのやり取りを見て卒倒しかけていた。
「わざわざこんなところまで追いかけてくるなんて、君は本当にタイクーンが好きなんだね、セセラ」
彼らはデザイアグランプリを楽しんでいる
「ったりめーでしょ! できることならもっと近くで推しの一挙手一投足を見届けたいぃぃぃっ!」
セセラは顔をだらしなく緩ませながらドリンクをすすっている。それは緑谷が注文していたものと全く同じものだった。
「まるでストーカーだ。趣味がいいとは言えないね」
対するジーンはアイスコーヒーを飲みつつセセラの醜態を笑っていた。
「……ってかなんで当たり前のように相席してるんですかねぇ? タイクーンウォッチングに邪魔だからどっか行けっての」
「相変わらずだなぁ……僕だって意味もなく君の所には来たりしないさ」
「あふん! そうそうそう! タイクーン×ナーゴのカップリングはいつ見ても尊いぃぃぃ!」
「……ねえ、聞いてる?」
ジーンの事を思い切りスルーしセセラは緑谷と葉隠の会話に夢中だった。
「――奇遇だな。お前らもここにいたのか」
「……だれ?」
そんな二人の元に現れたのは見るからに怪しい風貌の男。髪には白と緑のメッシュが入っており、スーツは胸元を大きく開け18金のネックレスが覗いている。どこからどう見てもアングラな世界の住人にしか見えないが、I・アイランドに入国できている以上真っ当な人間であるのは確かだ。
「俺だよ! 人間の
男は自分の体を見せびらかすようにポーズをとっているも、セセラは誰だかわからずにポカンとしている。
「その声は“ケケラ”だね。君が外に出るなんて珍しいじゃないか」
怪しげな男――ケケラは近くのテーブルから椅子を拝借するとどっかりと腰を下ろす。
「俺だって好き好んで外にゃ出ねぇよ。なんてったって愛すべきデザグラの一大事だからな」
「はっ? デザグラの一大事ってそれマ!?」
セセラは思わずタイクーンウォッチを中断し話に加わる。だらけ切っていた表情は一気に引きしまる。
「そうさ――ベロバが動いてる」
ジーンはアイスコーヒーを一気に飲み干し、苦みに顔を顰めた。
「……チッ。あの性悪ババア余計な事すんじゃねーっての」
「同感だ。あいつが動くと碌なことがねぇからな」
セセラは舌打ちしつつも目では緑谷の事を追っている。
ケケラも思い切り顔を顰めつつ大きく天を仰ぐ。今にもタバコを吸い始めそうな雰囲気だった。
「ベロバはここ数か月で何人かの人間に接触している。その一人が――この男だ」
ジーンは懐からタブレット端末を取り出すと画面をセセラとケケラに見せる。
「名前はケイ・アッド――I・アイランドの科学者だ」
映し出されているのは猛禽類を思わせる鋭い表情で赤銅色の髪をオールバックにしている青年――ケイ。
「彼は3年前、デザイアドライバーにそっくりな発明品を生み出している」
「マ? この時代の科学力で私らの技術パクれねーでしょ」
セセラは信じられない物を見るかのような怪訝な表情を浮かべている。
「同感だが――この世界にゃ個性ってのがあんだろ。つまりはドライバーをこいつの個性で再現したってとこか?」
対するケケラはケイの個性に言及する。
「当たらずとも遠からず、と言ったところだね。この男の個性は
「「!?」」
写真の中のケイはどこからどう見ても普通の人間と何ら変わりのない容姿だ。
しかし彼の頭の中には4つ分の脳みそが収まっている。それこそが彼を天才たらしめている要因だった。
4つの脳みそを並列で動かすことで常人の何倍もの思考力を発揮する。
だが折角脳みそが4つでも性能が今一つでは宝の持ち腐れ、0に0をかけても意味がないのである。
彼を天才たらしめる真の要因は彼自身の“完全記憶能力”にあった。
「――超人的な記憶力に裏打ちされた知識と4つの脳みそを生かした超人的な思考力、確かに個性と言えば個性だけど、それだけじゃないだろ?」
ジーンは得意げに微笑んでいる。
「う~ん……でもそれだけでドライバー再現できるってのも妙な気がするんですがねぇ。いくら天才と言っても私らの時代の技術に追いつけるとは到底思えない」
「そう! 問題はそこなんだ」
興奮するジーンにセセラは心底めんどくさそうな表情を浮かべる。
「恐らく彼は――本物のデザイアドライバーを持っている」
「馬鹿言え。参加者なら俺たちが知らないワケないだろうが」
デザグラの参加者の大半はオーディエンスからの推薦によって選ばれている。厳正なる審査とはオーディエンスによるものなのだ。
「そう。本来ドライバーはデザグラ参加者にのみ配布されるもの――でも何事にも例外はある」
「げぇっ……もしかしてあのババア、退場した人らのドライバー横流ししたってコト?」
「そういうことか。ったく運営の管理はどうなってんだ」
退場者は全員例外なくジャマトの本拠地ジャマーガーデンへ転送される。
亡骸と遺品はそこで回収され、前者はジャマトの肥料に、後者は必要な物以外処分される。
そして話題となっているベロバはジャマトを支援する変わり者のオーディエンス。スポンサー特権でジャマーガーデンの物を拝借することも可能だろう。
「……なんにせよ、ベロバの野郎のたくらみはどうにかしなきゃぁな」
「……悪趣味なケケラさんに同意するのは癪だけど、ホントその通り」
「決まりだね。デザグラをめちゃくちゃにされる前に――オレたちでケリをつけよう」
サポーターたちの話がまとまる中、彼らを遠巻きに見つめる者がいた。
天パのもじゃもじゃヘアに整った顔立ちの青年――キューン。彼もまたデザグラのサポーターだったが、コミュ障のためジーンたちの下へ踏み出せずにいた。
「……俺も協力するよ」
ぼそっとつぶやいたキューンの言葉は、誰に聞かれるともなく響くのだった。
――――
「――そういえばさ、一つ気になってたんだけどさ」
ドタバタな撮影会がひと段落したところで耳郎が切り出す。
「緑谷と葉隠って仲いいけどさ、付き合ってたりすんの?」
彼女は耳のイヤホンジャックをいじりながら平静を装いつつ問いかける。
「実のところ……わたくしも気になっておりましたの」
八百万もまた、どこか気まずそうに切り出す。
「ええっ!? い、いやいやいやっ! ぜ、全然付き合ってるとかそんなこ――ッッ!」
全力で否定する緑谷だったが、隣の葉隠は拗ねたように彼の腿をつねる。
「酷いよ! そんなに全力で否定することないじゃん!!」
葉隠は拗ねたように頬を膨らませている。普段と違い表情も丸見えなため怒っている様子がありありと伝わってくる。
「いっいや葉隠さんに魅力がないという意味じゃないし僕も気がそういう気がないとかじゃなくて純粋に誤解を解かなきゃって!」
緑谷は大慌てで弁解する。
だがそのせいか大きな爆弾を投下してしまっているが彼はそれに気づいていない。
「もしや……緑谷さん」
「あーごめん、余計な事言っちゃったか」
「?」
八百万と耳郎は彼の様子から全てを察するも、メリッサだけは気づかなかったようでポカンとしている。
「あ、あれ……?」
「もう……!」
頬を膨らませつつもどこか嬉しそうな雰囲気を隠せない葉隠。表情を隠せないのは普段隠れているせいか。
緑谷は自分の発言を思い返して思わず赤面している。
「……ごめん。この話はまた今度に……」
「……うん」
葉隠は頬が熱いことを自覚しつつも、背中に突き刺さるような視線を感じた。
「み、峰田くん?」
視線の主は峰田だった。仕事をさぼり、葉隠の背中――否、体全体を舐めまわすように観察している。
「なあ葉隠」
峰田はとても深刻そうな表情で問いかける。
「な、なんでしょう?」
葉隠も雰囲気にのまれてかしこまってしまっている。
「もしかして今――ノーブッ!?」
「――サボってんじゃないわよ……ッ!」
とんでもないことを口走った峰田に背後からのアイアンクローが襲い掛かる。
あまりの握力に彼の頭蓋骨がきしんでいる。
「ッちゃんとヤオモモに作ってもらってるよッ! ……って牛込さん?」
「……奇遇ね」
制裁を加えてる主は牛のような角が特徴的な女性、牛込 茜――デザイアグランプリの参加者、“仮面ライダー”バッファだ。
彼女はカフェの制服を身にまとっており、上鳴と峰田同様にアルバイトとして雇われていることが分かる。
「エキスポ中限定の短期バイトよ。忙しい分、時給は結構いいのよ」
「ぐぎぎ……つ、潰れる……オイラの頭がつぶれる……!」
小柄な峰田は頭をがっちりホールドされたまま牛込に持ち上げられてしまっている。
「お見苦しいところを……葉隠さん、お知合いですの?」
「うん! 牛込 茜さん……えっと、
デザイアグランプリの事を口外するわけにもいかないのでゲーム外で出会った時が初対面であると咄嗟に嘘をつく。接点の少ない緑谷は軽く会釈するだけにとどめる。
「職場体験っ! ねえ、ヒーロー科の職場体験って何をするのっ?」
その言葉に食いついたのはメリッサだった。彼女は興味津々で雄英の職場体験について尋ねている。
「……だっ誰か助け……!」
「セクハラしてる間があったら働きなさいよ給料泥棒」
「ひっ……貧乳に罵倒されてもあんま嬉しくな――ッッ!」
連行されていく峰田は余計なことを口走ったせいで余計にダメージを受けている。
緑谷はその様子を見て“自業自得”という言葉が思い浮かぶのだった。
――――
――
――日本。
『――っオール・フォー・ワンが生きていた!?』
「ああ……だが安心せい。今はもう
悪の帝王、オール・フォー・ワン。
6年前のオールマイトとの決戦で死亡したと思われていたが、思わぬ形で生存が確認されることとなった。
神奈川県の神野区で起きた事件――表向きは爆発事故として処理されたが、周辺の住人によってあるものが目撃されている。
――巨大な牛型のロボット。
牛型のロボットは周囲のビルを破壊しながらも何かと戦闘をしており、最終的に牛型ロボットが勝利しどこかへ姿を消していた。
現場へと駆け付けたヒーローたちが目撃したのは、顔の上半分を失い半壊した呼吸器をを身にまとっている男性――オール・フォー・ワン。
彼は蹂躙されつくし、意識を失った状態で発見されたのだ。
「なんともまあしぶとい男よ。じゃが……喜んでばかりもいられんかもしれんぞ、俊典」
グラントリノは電話の向こうのオールマイトへ牛型のロボットについて語る。
『……力を失っているとはいえ、あのオール・フォー・ワンを斃せるロボット』
「世代交代があるのはヒーローもヴィランも同じ。ずーっと君臨し続けてきた
玉座に座り続けてきたものがいなくなったらどうなるか?
当然、次に座ろうとするものが現れるだけである。
正義を志す者が後を絶たないように、悪を志す者も同じだけ存在するものなのだ。
「気ぃ抜くんじゃねぇぞ俊典! お前も、弟子の緑谷 出久もな!」
『ええ……! わかっていますとも……っ!』
電話を切ると、グラントリノは改めて牛型ロボットの写真を眺める。周辺住民から提供されたものだ。
「しかし……こりゃ本当にロボットか?」
写真に写る牛型ロボット――“仮面ライダーベロバ”の姿は、ロボットと言うにはあまりにも異質で、とても現代の技術で作られたとは思えない見た目をしているのだった。
【分岐要素】
・はぐれジャマトが出現していない
→ オール・フォー・ワンがちょっかいかけれてないのでそもそも個性持ちジャマトが生まれない
なのでこの世界の葉隠さんの職場体験は平和に終わる
・オール・フォー・ワン、ベロバに敗北
→ AFOはベロバにボコられてタルタロスへ
死柄木も捕まってるのでヒロアカ本編のような脱獄ルートは構築できない
本編執筆時では本格参戦していなかったデザグラサポーターズ。ifルートではがっつり関わることになりますが、本作は名前こそ同じでも若干性格が異なります。
ジーン → 感動を求めるのは同じだが嫌味っぽさが追加されている。
セセラ → オリキャラ。強火なタイクーン限界オタク。
ケケラ → セセラにポジションを奪われたカエルさん。この世界ではバッファを推している。
キューン → 不審者仕草は同じだがコミュ障要素が追加。勝手に切なくなって勝手に強くなる。
ベロバ → 見た目女子高生の350歳。本編以上にプルスケイオスすべく活動中。
みたいな感じです。まさかサポーターがこんなにも重要なポジションだったとは……(無計画)
余談ですが、葉隠さん(素顔のすがた)はi・アイランド編限定のフォルムです。
……そうじゃないと葉隠さんが仮免で痴女になってしまいますからね。透明だからって手袋とブーツだけは大胆だよ葉隠さん。
ちなみに、彼女が今着ている服は八百万製。