・セセライヤー
超高性能レーダーの役目を果たし、たとえ視界が効かない状況でも見えているかのように行動できる。
推しの声をどこからでも聞き取ることもできるが、これは彼女自身の変態性がなせる業。
・センチネルバイオレット
セセラの複眼。他のサポーター同様、ライダーとの視界共有ができるほか、彼女が推しの尊さを感じた瞬間、その場面をキャプチャすることができる。
・バレットカリキュレーター
セセラの特殊デバイス。
マグナムフォームを凌ぐ高次元の弾道計算を行う他、射出後の弾丸を自由自在に操ることも可能。
一見当たらないように見える射撃もあり得ない軌道を描き必中となる。
※その他の能力は他のサポーターと同等のため割愛。
――――
――
ヒーローの卵たちがヴィランと遭遇している中、最上階ではデヴィットによる保管庫のプロテクト解除が行われていた。
「――おい! まだ終わらないのか!?」
グレア2の手下は遅々として進まないデヴィットの作業をせかしている。
「せかさないでくれ……何重にもプロテクトがかかってるから大変なんだよ」
「チィッ!」
手下は舌打ちをしつつ床を蹴りつける。
「こんなことならガキども始末しに行った方が良かったぜ……」
『おい……さっきの言葉、まさか忘れてないよな』
苛立つ手下にグレア2は冷たい視線を投げかける。
「あ?」
『金髪の女性――メリッサ・シールドには手を出すな、丁重に扱え、と言ったはずだ』
「……わーってるっての。小煩ぇ雇い主様だ」
手下は苛立ちながらも監視の巡回に戻っていく。
(止めなければ……! 私が、なんとしても)
やり取りを小耳にはさんでいたデヴィットは、自分の弟子の発明を悪用させまいと、心に固く決意するのだった。
――――
――
「――いざ参らん。
「――久々の変身だ。少しは楽しませてくれよ?」
――READY FIGHT ...
「姿が変わった……?」
メリッサは乱入した二人組が変身したことに驚き目を丸くしている。
好奇心が疼いて仕方なさそうな様子だったが、辛うじて理性が働いて飛び出していないと言った状態だった。
「はっ! なんだそりゃ!?」
マグナムフォーム(?)はマグナムシューター(?)から弾丸を掃射する。
ケケラは大きく跳躍してそれを避け、セセラは弾道を見切り最小の動きで躱す。
「隠れている人たち! ここは私らが押さえますんでお先にどうぞっ!」
セセラはレイズライザーを掃射しつつ背後の緑谷たちに呼びかける。弾丸は垂直に曲がりつつもあり得ない軌道でヴィランたちへ飛んでいく。
「でっでもあなた達は――」
「はぅぅっ! お声をかけていただいた幸せすぐるぅぅぅっこほん。こんなところで二の足を踏んでいれば、こいつらが目的を達成しちゃうので急いだほうがいいかと!」
「――行かせるかよッ!」
ゾンビフォーム(?)は緑谷たちを通すまいと突撃する。
「ま――足止めってやつだ!」
「ぐっ!?」
ゾンビフォーム(?)はケケラに体当たりされ大きく吹き飛ばされる。
「っ誰だか知らねぇが、助かる!」
轟は茂みから飛び出すと氷の坂を作り出す。
「今のうちだ、登れっ!」
「ありがとう轟君!」
緑谷たちは足止めをしてもらっている隙に氷の坂を上っていく。
「行かせるかっ!」
「ひぃっ!?」
マグナムフォーム(?)が銃弾をかいくぐって氷の坂に飛びつく。そして最後尾を走っていた峰田の足を鷲掴みにする。
「ったく世話が焼ける――!」
それに気づいた牛込はすかさずマグナムフォーム(?)の顔面に跳び蹴りを食らわし手を離させる。
「――そらっ!」
「いでぇっ!?」
その後峰田の尻を蹴り上げて一気にメンテナンス用の通路へ到着させる。
「牛込さんッ!」
「あたしのことはいい! さっさと先に進みなよ!」
氷の坂はケケラの舌攻撃の流れ弾で破壊されてしまっている。そのため牛込が再び上に上るには敵を斃す必要があった。
「……やれやれ」
そんな彼女を見たエースは作業用通路から飛び降りて加勢に入る。
「安心して、私が手助けするから」
「……っわかった!」
ここで駄々をこねても時間の無駄になるだけ。それを理解している緑谷たちは先へ進んでいく。
「……かっこつけっちゃって。あんたっていつもそうなのね」
「君こそ。案外、世話焼きなんだね」
視線の先ではセセラとケケラがヴィラン相手に戦っていた。
「……ねえバッファ。一つ提案があるんだけど――奴らのドライバーを奪ってみないかい?」
「奇遇ね。あたしも同じこと考えてた」
エースと牛込は互いに笑みを浮かべている。
「じゃ、ハイライトと行こうか♪」
「んっ!」
――――
――138階、サーバールーム。
その後、峰田のファインプレーもあって何とか上層階へと進むヒーローの卵たち。
しかしそんな彼らの前にヴィランが立ちはだかる。
「――ガキども。調子に乗るのも大概にしろよ」
――ppp
ヴィランはモンスターバックルのようなものをドライバーに装填し変身する。
「お前らッ! ここは俺が食い止めるから――ッ!?」
「轟君ッ!」
氷壁を生み出しヴィランを阻もうとした轟だったが、モンスターフォーム(?)の攻撃は非常に鋭く、氷壁を打ち破り轟に右ストレートを命中させる。
「っこの――」
緑谷は即座に個性を発動しモンスターフォーム(?)へ肉薄する。
――『そのガントレットは、マイトおじさま並みのパワーでも3回までなら耐えられるわ』
その右こぶしにはメリッサのサポートアイテム――“フルガントレット”が装着されており、彼は個性を全開で発動していた。
「スマァァァッシュ!」
「オラッ!」
モンスターフォーム(?)の拳が振り抜かれるも、緑谷は咄嗟に姿勢を低くしてそれを躱し、カウンター気味にアッパーカットを放つ。
その拍子にドライバーが外れ、変身が解除される。
「……よしっ! 先に進みま――」
ヴィランは大の字に倒れたまま動かなかったが、その奥からゆるりと人影が現れる。
「――あらあら、個性ってすごいのね♪」
姿を現したのはゴスロリ風な衣装を身にまとった少女。ピンクのメッシュが入った黒髪のロングヘアは清楚な印象を与えるも、邪悪な笑みを浮かべておりその印象を打ち消す。
年不相応に大人びているのは濃い化粧が原因だろう。
「うおっスゲー美人!」
「あら、ありがと♡」
思わぬ美少女の登場に上鳴は色めき立つも、相手が敵であると悟り気を引き締める。
「……おいらにはわかるぜ。スゲー若作りしてるってな」
こんな状況でも峰田は平常運転だった。
「年の事を言うんじゃないよぉッ!」
少女――ベロバは激怒した。
彼女はこう見えても350歳、理想の姿で少女の見た目をしているが、その中身は長い時を生きた老獪である。
「……いけないいけない♪ 危うく目的を忘れるところだったわ♡」
一瞬で怒りを収めたベロバは嗜虐的な笑みを浮かべつつ指を弾く。
「順調なあなた達に――私から不幸のおすそ分け♪」
「――ジャ……」
何もないところからジャマトが出現する。その数は2体だったが、変身できない緑谷たちにとっては十分に脅威だった。
「ッなん、だ……?」
得体の知れない生命体を前に飯田は思わず後ずさりする。
「――っ!」
葉隠は咄嗟に地面に転がっていたデザイアドライバーのようなもの――イミテーションデザイアドライバーに飛びつき自分の腰にあてがう。
「葉隠っ! 何を」
「決まってるでしょ! あれと――戦うんだよっ!」
――ENTRY
彼女はドライバーに装填されていたIDコアのようなもの――イミテーションコアを取り除き、代わりにナーゴのIDコアを装填する。
「無茶ですわ! ここは一旦退いて」
「大丈夫! それにここで退いたら――誰がここを守るの?」
葉隠はニコッ、と笑いつつモンスターバックルのようなものを構える。
「みんなは別のルートを探して! 絶対に――追いつくから!」
――SET
バックルを装填し、葉隠は猫を思わせるポーズをとる。
「変身!」
――MONSTER!!
ナーゴに変身した葉隠だったが違和感に気づく。
「っあれ? 体が……重い」
「アハハ! 本当にそのコピーで戦うのね! 面白いわ! 無様に負けて、お友達を不幸のどん底へ叩きこむのかしら?」
戸惑っているナーゴをベロバはあざ笑っている。
「――一人じゃないッ!」
「ジャッ!?」
飯田の蹴りがジャマトに命中する。
「オイラだって――」
峰田は頭のもぎもぎをジャマトに投げつける。
「――砲手はお任せします!」
「上鳴、もう少し右!」
「うえぃっ!」
八百万の創造した大砲で耳郎と上鳴がジャマトに砲撃を行う。
「緑谷君! 轟君! ここは俺達が受け持つ! メリッサさんを連れて迂回路を探してくれ!」
「待ってよ! ここは私が――」
「確かにそのサポートアイテムは強力ですが、初めてでは十分に使いこなせないでしょう?」
八百万は砲弾を創造しながらはナーゴ――葉隠を諭す。彼女が何度もドライバーを使って戦っているなど夢に思っていなかった。
「っわかった! くれぐれも無茶はしないでっ!」
緑谷と轟はメリッサを連れてサーバールームを後にする。
「――へぇ? 生身でジャマトを相手にするなんて……アハハ! いい不幸が見れそうね!」
「不幸になんかさせないッ!」
あざ笑っているベロバに向けナーゴは拳を振るう。威力は本来の半分しか出ていなかったが、衝撃波がベロバに襲い掛かる。
「私が……私たちが、みんなを守るんだからッ!」
――――
――
植物プラントではセセラとケケラによる蹂躙が繰り広げられていた。
「――ぐぁっ!?」
ゾンビフォーム(?)はケケラの舌攻撃になす術もなく殴打されている。
「まがっ!?」
マグナムフォーム(?)はセセラが繰り出す変幻自在の弾丸に翻弄され一方的に攻撃されている。反撃にマグナムシューターを撃っているも、彼女はまるで
そもそも、ヴィランの装備するデザイアドライバーの複製品――イミテーションデザイアドライバーは本家の半分ほどの出力しか発揮できていない。現代科学ではデザイアドライバーの機構を完全に再現することができなかったからである。
それに対しケケラ、セセラ両名の使うレーザーレイズライザーはフルスペックのライダーに負けず劣らずの性能を誇っている。
「チィッ! ここは一時てった――」
「よそ見してんじゃないわよッ!」
形勢が不利だと判断したゾンビフォームは撤退しようとするも、そこに牛込のタックルが命中する。彼女はそのままドライバーに手をかけ引きはがしにかかる。
「小癪な――」
「えいっ♪」
たまらず牛込を振り払おうとするゾンビフォーム(?)だったが、エースが生み出した狐火に阻まれてしまう。
牛込はドライバーを引きはがしヴィランを蹴り飛ばす。
「これで……3対2ね」
――ENTRY
彼女はドライバーを装着し、イミテーションコアを取り除きIDコアを装填する。
「いいや――」
「なっ!?」
エースはマグナムフォーム(?)からマグナムシューター(?)を奪い取っており、それで容赦なくマグナムフォームへ銃弾を放ち変身を解除させていた。
「4対2さ♪」
――ENTRY
彼(?)は奪い取ったドライバーを装着しIDコアを装填、マグナムバックルのようなものを構える。
「……何よ。余裕アピール?」
「ふふっ♪ 余計なお世話だったかな?」
「……お礼は言わないわよ」
――SET
牛込はバックルをドライバーにセットし起動。
「ふふっ。素直じゃないなぁ」
――SET
エースもまたバックルをセットし起動する。
「「変身!」」
――ZOMBIE ...
――MAGNUM
二人はそれぞれバッファとギーツに変身する。
しかし二人が活躍することは無かった。
「ガキが――舐めやがってぇッ!」
「舐めてるのはそっちだっつーの」
――FINISH MODE ...
セセラはレイズライザーの撃鉄――クロスオルタネーターを一回起動させ必殺技を放つ体勢に入る。
小太りのヴィランは個性を発動させて怪物の形態へ変身するも、自身の周囲を取り巻くカード状の物体に戸惑いを見せる。
――LASER VICTORY ...
放たれた弾丸は二つ、四つと分裂していき、ヴィランの周囲を漂うカードに命中し跳弾のごとく次々と命中する。
「ぐっ……!」
怪物化したヴィランの皮膚は固く、銃弾を受けても耐えていたが意識を失ってしまう。
「――んじゃま俺も」
――FINISH MODE ...
ケケラもクロスオルタネーターを操作し必殺技を放つ体勢に入る。舌から粘性の弾丸を発射し細身のヴィランの下半身を拘束する。
「くっ動けねぇ……!」
細身のヴィランは脱出しようともがくもすぐ近くにケケラの巨体が迫っている。
「このっ!」
個性を発動しケケラを排除しようとするヴィランだったが、ケケラの体は攻撃を寄せ付けずそのまま舌を振り下ろした。
「――ッ!」
何かが砕ける音が響く。
「……ねぇ、死んでない?」
バッファ――牛込は変身を解きつつヴィランの身を案ずる。
「いや、息はあるみたいだね」
ギーツ――エースは細身のヴィランが無事であることを確かめるも、彼の行き先は刑務所ではなく病院であることは間違いないだろう。
「――おいお前ら! 上まで連れてってやる。俺の背中に乗りな!」
牛込とエースは先に向かった仲間に追いつくべく、ケケラの背を借りるのだった。
――――
――タワー外壁
「――タワー内部を進んだらすぐに見つかっちゃうわ。だから外側から……」
緑谷、メリッサ、轟はセントラルタワーの外壁、風力発電装置の近くへとやってきていた。
「ほら、あそこ! あそこまでいければ」
と、メリッサが指差すのは遥か高い位置にあるメンテナンス用通路の入り口。
「だがどうやって」
「轟クン、君の
轟の個性――半冷半燃は非常に小回りの利く個性である。特に右側の氷は練度が高く、足場を作ることなど朝飯前だった。
「そういうことか……!」
轟が理解したのもつかの間、外壁への出入り口から一斉に警備マシンが姿を現す。
「っ急げ!」
彼は咄嗟に緑谷とメリッサの足元に氷塊を生成し、それをリフトアップさせることで二人を押し上げていく。
「ま、待って轟君!」
「この場は俺に任せろ……!」
足場を持ち上げつつ轟は左側の炎を迸らせる。
「っ!」
高層階と言うこともあり突風が吹き荒れている。
風にあおられたメリッサは体勢を崩し、氷塊から足を踏み外してしまう。
「メリッサさん――!」
緑谷は咄嗟に飛び出しメリッサを抱えるも、既にその身は空中に投げ出されてしまっている。
このままでは地面に向かって真っ逆さま、大惨事は免れないだろう。
(いや――まだいける!)
しかし緑谷は諦めていなかった。個性を全開で発動させ、右の拳を振りかぶる。
「ニューハンプシャー、スマァァアッシュ!!」
ワン・フォー・オールはオールマイトから受け継いだ個性――すなわち反動を気にしなければ彼と同じことができるのだ。
拳の衝撃波で推進力を得た緑谷はメリッサを抱き留めたままタワーの外壁まで急接近する。
「ッ――デトロイト・スマァァァッシュ!!」
続けざまに外壁に向けて右ストレートを放ち破壊。
辛うじてタワー内部に戻れたものの、耐久限界を迎えたフルガントレットは破損してしまう。
「たっ……助かった……」
危うく命を落としかけたメリッサはほっとして安堵の息をついている。
「すみませんメリッサさん……折角もらったのに」
「いいのよ。壊れたらまた作ればいいんだもの――っ危ない!」
階段上から飛び降りてきたヴィランを見たメリッサは咄嗟に緑谷を突き飛ばす。
「チッ!」
ヴィランはニンジャフォームのような姿をしており、ニンジャデュアラーのようなものでメリッサの右前腕を傷つける。
「メリッサさん――ッ!」
緑谷はニンジャフォーム(?)に向けて飛び掛かる。
その手はドライバーへと伸びていく。
「させるかよッ!」
しかしニンジャフォーム(?)は自分の弱点を自覚していたようで、緑谷のたくらみを阻止する。
「んなわかりやすい弱点さら――あ?」
緑谷をあざ笑うニンジャフォーム(?)だったが、変身が解けてしまい間抜けな声を上げている。
「……これが無きゃ、変身できないだろっ!」
と、緑谷が掲げてみせるのはイミテーションコア。交錯した一瞬でドライバーから抜き取っていたのだ。
「チ――ッ!?」
ヴィランはすかさず両腕を刃物の様に変化させるも、素早く飛び込んできた緑谷の右ストレートを受けて意識を失ってしまう。
「……すみませんメリッサさん。けがを」
「“ありがとう”、でしょ?」
自分は守られる側ではない、メリッサの瞳はそう訴えかけていた。
「……はい!」
緑谷はハンカチを取り出すと彼女の傷口を手当てする。
最上階まではあと少しだった。緑谷は気絶しているヴィランからドライバーを引きはがすと、メリッサと共に階段を駆け上がるのだった。
――――
――
――最上階、保管庫。
「――よし、解除できた」
プロテクトを解除し終えたデヴィットは保管庫の扉を開き、アタッシュケースを取り出す。
ケースを開くとそこにはデザイアドライバーとイミテーションコア、そして真っ赤なグリップに4つの排気筒が取り付けられたバックルが収められている。
『ようやくか。待ちくたびれたぜ』
グレア2はあくびのような仕草をしながらデヴィットへ手を伸ばす。
「……っ」
――E ... ENT ... RY ...
デヴィットはデザイアドライバーを装着しソケットにイミテーションコアを装填する。
ドライバーは電池切れのおもちゃの様に弱弱しい音声を発していた。
『……何の真似だ?』
「決まってる……お前を、止めるんだ……!」
バックルを構えるデヴィットの手は小刻みに震えていた。その胸中には恐怖が渦巻いていた。
「お前だって知ってるだろう? これを使えば私はオールマイト並みに強くなる。だから変身を解除するんだ」
『……』
グレア2は深いため息をついた。
『成程。実にヒーロー精神あふれる行動だ。親友の影響か?』
「はっ早く変身を解けッ!」
動じていないグレア2をデヴィットは恫喝する。
『……使いたければどうぞご勝手に』
「っなん、だって……?」
しかしグレア2は余裕の姿勢を崩さず、むしろデヴィットを挑発していた。
『使いたいのならば使えばいい! さあ! 俺にそのバックルの力を見せてくれ』
「……!」
――S ... SET ...
ドライバーにバックルが装填される。デヴィットの額には冷や汗が浮かんでいた。
彼はこのバックルが使えないことを知っていた。理論上はオールマイトを凌ぐパワーを発揮する武装を生成できるも、完成に至る前に研究を中断させられてしまっていたのだ。
「っ……!」
はったりで武装解除できなかった以上、使用できるようになっていることを祈るしかなかった。
デヴィットはバックルに手をかけ、スロットルをひねり起動させる。
「――――ッッ!!」
デヴィットの体に電流が走る。
バックルが発する高出力のエネルギーにイミテーションコアが耐え切れず、ショートし動作不良を引き起こしてしまっていた。
「ぐあっ!」
安全装置が作動しドライバーがはじけ飛ぶ。衝撃でデヴィットは保管庫に叩きつけられ苦しそうに呻く。
『……そのバックルは理論上、オールマイトを凌ぐ超高出力な武装を展開できる。が、
地面に転がるドライバーの中心からは煙が上がっている。イミテーションコアが焼け焦げてしまっているのだ。
グレア2はそれを拾い上げるとバックルを引き抜く。
「……なぜ、それを」
『なんだ。まだ気づいてなかったのか?』
グレア2は変身を解除し、かぶっていたフードと仮面を取り外す。
「なっ……!」
露になった素顔を見たデヴィットの顔は驚愕に染まる。
猛禽類を思わする鋭く彫りの深い顔立ち、赤銅色のオールバック――その正体はデザイアドライバーの複製品を発明した科学者、ケイ・アッドその人だった。
「別に隠そうとはしてなかったぜ? なのに気づいてくれなかったとか……割とショックだな」
ケイは仮面を投げ捨てると入口の方へ視線を向ける。
「そう思わないか――メリッサ」
「……ッケイ、どうして」
入り口ではメリッサが立ち尽くしている。その隣には緑谷が立っており、彼女を庇うように半身を出していた。
「とうとうたどり着いたか。あーその怪我、もしかして奴らにやられた? ったく丁重に扱えって命令してたんにな」
「ふざけないでよッ! どうしてこんな大それたことをッ!」
メリッサの剣幕にケイは少しだけ目を見開く。
「……お前のためだ。メリッサ」
彼は優し気に微笑んだ。
「俺はもう一度“女神”に会い“理想の世界”を叶える。メリッサ――お前のための世界だ」
「何、言ってるの……?」
メリッサはケイの言葉が理解できず戸惑いを隠せないでいる。
「ま、理解できんだろうな。が――お前は違うだろ、イズク・ミドリヤ」
「っ!」
名指しされ緑谷は思わず身構えてしまう。
ケイの語る“理想の世界”の話はまさしくデザイアグランプリの優勝特典に他ならない。もう片方の“女神”についてはわからなかったが、彼がデザグラの根幹を知っているということは間違いないだろう。
「
ケイはデザイアドライバーを緑谷に向けて放り投げる。
「お前も儀式の参加者なんだろ? ほら、俺に見せてくれよ」
「……メリッサさん、下がってください」
緑谷はズボンのポケットからタイクーンのIDコアを取り出すとドライバーに装填する。
――ENRTY
そしてドライバーを腰にあてがい装着し、ヴィランから奪ったニンジャバックルのようなものを構える。
「いいね! さすがは雄英生、抜け目がない」
――GLARE2:LOG IN
ケイもまたドライバーを起動し、変身シークエンスを起動する。
「……ケイさん、貴方を――止めますっ!」
――SET
「やれるもんなら、やってみな」
緑谷はバックルをセットし、ケイはプロビデンスカードのようなものを構える。
「変身っ!」
「ヘンシン」
――NINJA
――GLARE2
緑谷は召喚されたニンジャデュアラーを構える。
グレア2は両肩のヒュプノレイを展開する。
――READY FIGHT!!
一陣の風が吹き、二人はぶつかり合った。
【アイテム解説】
・イミテーションデザイアドライバー
ケイがデザイアドライバーを解析し作り出したサポートアイテム。デザイアドライバーを現代科学で可能な限り再現しているが、出力は本家に比べると半分程度。
またリボルブオンの機構は現代の技術では再現不能だったため搭載されていない。
基本的には後述のイミテーションコアで変身するが、本家IDコアを装填しても変身できる。ただし、ドライバーの回路がIDコアに対応していないため長時間の変身はできない。
・イミテーションコア
ケイが開発したIDコアの代用品。
デザイアドライバーのソケットに収まるであろうアイテムを彼なりに考察した結果生み出されたもので、本家デザイアドライバーに装填すればエントリーフォーム(仮面ナシ)に変身が可能。ただし、出力が足りないため本家ドライバーに装填した場合は10分程度しか変身できない。
・イミテーションバックル
ケイが開発したイミテーションドライバーの拡張武装。
基本スペックは本家の半分しかないものの、現代の水準では十分脅威となる。マグナム、ゾンビ、ニンジャ、モンスターが実用化に至っており、ビートやコマンドツインは試作段階。
本家デザイアドライバーに装填して使うことも可能だが、一部機能がオミットされた状態となる。例えば、マグナムフォームの場合は弾道計算の支援などが行われない。
ケイが生み出したデザイアドライバーのコピーは基本的にデザイアドライバーとの互換性があります。ただし本家ドライバーの方が高出力なのでイミテーション品では耐えられないという感じです。
プロット上ではI・アイランド編は次回でお終いとなります。
残りは文化祭とラブコメ展開をやってifルートは〆ようと思っています。