そして――創世の女神の正体がわかりましたね。
まさか本当に考察の通りだったとは……次回も目が離せなさそうですね。
――――
――
――4年前。
「――すげぇ……本当に実現できんのか、俺の設計図は」
ケイはある日突然送られてきたデザイアドライバーに興奮していた。
頭の中にある遥か未来の科学、どれだけ彼が願おうとも実現不可能だったそれが今目の前に存在しているのである。
彼は早速分解し中身を解析し、現代の技術で再現できないか試作を進めていた。
加えてデザイアドライバーの技術から逆算し、拡張武装であるレイズバックル、発展形であるヴィジョンドライバーの再現まで行っていた。
「――問題は動力と
しかし彼が天才と言えども限界があった。
いくら頭の中で未来の科学を思い描いても、それを現実にする手段が――実現してくれる素材がないのである。
設計図通りに作り上げても彼の求めた理想形に対して
特に動力とプログラムを動かすための
「――――ッ!?」
ヴィジョンドライバーの再現を行っている最中の事だった。
彼はまばゆい光に包まれる。
「……どこだ、ここ?」
気が付けば慣れ親しんだ研究室ではなくどこかの神殿のような場所にいた。
四方は宇宙の様に星が煌めき、ドーリア式の柱が空間を仕切っている。
そして目の前には――
「あれは……」
遠目に見ればただの彫像のように見える。大きな翼を携えた女性の像。
どこか神秘的な雰囲気を漂わせているそれはまさしく“女神”と形容すべき存在だった。
再び彼の意識は遠のき、自身の研究室に戻ってきていることを理解する。
「……ッ!」
そして彼は開発を再開した。
まるで何かに操られているかのような勢いでドライバーの試作を改良していき、気が付けばそれは本来のヴィジョンドライバーと比較してもそん色のないアイテムとなっていた。
いうならば
――――
――
――現在。
サーバールームでの戦いは佳境を迎えていた。
「やあっ!」
「ジャァ……」
ナーゴの拳がジャマト――ルークジャマトに命中する。
ルークは呻きつつ後ずさりする。あともう少しで斃せそうだった。
「これで――!?」
バックルを再び起動し必殺技を放とうとするナーゴだったが、突如として変身が解けてしまう。
彼女の使うイミテーションデザイアドライバーは本来IDコアによる使用を想定されていない。それゆえ規格の異なるIDコアを使用すればドライバーの回路が負荷に耐え切れずショートしてしまうのである。
「――くっエンスト……!」
「お、オイラの頭皮が……」
続けて飯田の個性のエンジンがエンスト、峰田も頭のもぎもぎをもぎりすぎて頭皮から血を流していた。
「っヤオモモ、次――っ!」
「……っも、もうしわけ、ありま、せん……」
砲弾を創造していた八百万もまた体力の限界が訪れ次弾を作り出すことができなくなってしまう。
「くそっ! こうなりゃ俺の放電で――」
「馬鹿ッ! そんなことしたらサーバーがダメになる!」
上鳴は一か八かの特攻を仕掛けようとするも、彼の個性は精密機械だらけの部屋で使うわけにもいかず耳郎に止められる。
「っみんな!」
「アハハ! もう限界かしら? 威勢のわりに大したことないのね♡」
戦況を見守っていたベロバは心底愉快そうに笑っている。
「下らないヒーローごっこもこれでお終い♪ さあ! あなた達の不幸を見せて頂戴♡」
ベロバは躊躇うことなくジャマトに指示を出す。
ルークジャマトとポーンジャマトは疲弊し動けないヒーローの卵たちへにじり寄ってゆく。
「――――」ボソッ
しかしジャマトを銃弾が襲う。
「……だ、だれ?」
葉隠は現れた人物に問いかける。
その人物は緑谷のような天パのもじゃもじゃヘアに目鼻立ちの整った顔立ち――所謂イケメンである。
彼はレイズライザーを構えつつベロバを睨み付ける。
「あら、キューンじゃない! コミュ障のあんたがこんなとこに来るなんてね!」
「……そんなことはない」
キューンはどこか傷ついたように目を伏せるも、銃口は油断なくベロバに狙いを定めている。
「――ベロバに同意したくないけど、君のコミュニケーション能力に難があるのは事実だよ」
どこからともなく現れたジーンはキューンに追い打ちをかける。
「ウェッ!? ど、どこから出てきたっ!?」
急に現れた二人組に上鳴は目を丸くしている。
「……」
「オレ達は通りすがりの未来人さ♪」
――LASER RAISE RISER ...
ジーンはレイズライザーからカートリッジを抜き取り腰にかざす。
「そしてあのババアはベロバ。他人の不幸が大好きな性悪ババアさ」
「ッ何度もババアっていうんじゃないよッ!」
年齢を引き合いに出されたベロバはキレた。彼女はレイズライザーを引き抜くと素早くジーンを撃つ。
対するジーンはカートリッジで弾を受け流しつつレイズライザーにそれを装填する。
――ZIIN:SET
「……人を怒らせるのが上手いな」
――KYUUN:SET
キューンはいつの間にかベルトを装着しており、レイズライザーにカートリッジを再装填していた。
「事実を言って何が悪いんだよ」
「……そういうとこだよ」ボソッ
全く反省していない様子のジーンを心底いやそうな目で見つめるキューン。
ジーンは腕を交差させつつ指を弾き、キューンは左手をカギヅメの様に曲げつつ顔の前で構える。
「「変身」」
――LASER ON ...
彼らの“デザイン力”を読み取ったレイズライザーが装甲を形成、それぞれの“理想の姿”を作り上げていく。
――ZIIN:LOADING ...
ジーンは狐を思わせる仮面の戦士。
――KYUUN:LOADING ...
キューンは翼の生えた巨大なライオン。
それぞれの“戦う姿”に変身する。
「……ベロバ! お前の望む不幸は実現させない! ……悲しむ顔は見たくないからね」ボソッ
「言いたいことがあるなら最後まではっきり言ったらどうだい?」
威勢よく啖呵を切ろうとして口ごもってしまうキューンにジーンは苦笑している。
「ほら、ここはオレが受け持つから、君は彼らを最上階まで運んであげるんだ」
「…………」
キューンは何か言いたげにジーンを見つめると、ヒーローの卵たちに背を向ける。
「……乗って」
「あ、ありがとうございます?」
状況を飲み込めていない葉隠は疑問符を浮かべつつもキューンの背中に飛び乗る。
「きっ君のためじゃないッ!!」
「わっ!」
唐突にキューンが叫ぶ。何の脈絡もない叫びで葉隠は戸惑っている。
「……本当に大丈夫なのか?」
情緒不安定なキューンを前に飯田はその背に乗るのを躊躇っている。
「……まあ、コミュ障らしいし」
耳郎は苦笑しつつ八百万が乗るのを手助けしている。
「助けてくれるってなら、悪い人じゃないっしょ」
楽観的な上鳴は峰田と共にキューンの背中に上った。
「ッ待ちなさいよ!」
「ふん」
駆けだしたキューンを逃がすまいとベロバは銃弾を放つも、ジーンの重力操作によって狙いを反らされてしまう。
「オレの好きなデザグラは奪わせないよ――お前の目的はなんだ?」
「……ッベーだ!」
ジーンの問いかけに応えることなくベロバは姿を消してしまった。
「やれやれ……」
残されたのはジーンと二体のジャマトだけだった。
「サクッとこいつら斃して、ギーツの雄姿を見に行くとするか」
ジーンはどこか軽薄そうにつぶやくのだった。
――――
――
グレア2とタイクーンがぶつかり合う。
タイクーンは持ち前の敏捷性を生かしグレア2の攻撃を捌いている。
「――ふむ」
ヒュプノレイをかいくぐったタイクーンがグレア2に一太刀入れる。
タイクーンはすかさず飛び退き背後に回るとクロスするようにニンジャデュアラーを振り下ろす。
「……経験の差は埋められんか。さすがは雄英生だ」
グレア2はよろめきながら首を回す。
形勢有利と判断したタイクーンはここぞとばかりに畳みかける。
「――が、分析では俺も一家言ある」
「ッ!?」
「イズク・ミドリヤ、君の攻撃は一見すると隙がない。経験に裏打ちされた、非常によく考えられた動きだ」
すかさず背後に回り込んで攻撃しようとするも、グレア2はそれを読んでいたかのように回避する。
「いうなれば君の動きには
グレア2はヒュプノレイを操りタイクーンを誘導する。
「例えば――」
ヒュプノレイのレーザーを回避しつつ、タイクーンは再び背後からの奇襲をかける。
「この動きはグラントリノ――」
しかしそれはいとも簡単に躱されてしまう。
今度は背後を取る様に見せかけて回避を誘発し、大きな一撃を入れようと試みる。
「そして決めは右の大振り――これはカツキ・バクゴウの動きに酷似している」
「ッ!」
ニンジャデュアラーを受け止められタイクーンの体が空中で制止する。
「俺に同じ攻撃は二度通じないと思った方がいい。一度見りゃ覚えれる」
「……っ!」
タイクーンは仮面の下で唇を噛みしめる。
グレア2――ケイの個性、“
――DELETE ...
グレア2はプロビデンスカードを読み込ませ必殺技を放つ体勢に入る。
タイクーンは逃れようともがくも、グレア2の回し蹴りを喰らい大きく吹き飛ばされ壁にめり込む。
「かはっ……!」
変身が解け、破損したニンジャバックルが地面に落ちる。
「ん? メリッサは――ああ、コントロールルームか」
グレア2は緑谷の方を見向きもせずに部屋を後にする。もはや興味など失くなってしまったかのようだった。
――――
――コントロールルーム。
「どうして……」
メリッサは厳重にプロテクトがかけられた警備システムを見て愕然としている。
ヴィランによって乗っ取られたのだからプロテクトは解除されている――その読みは大きく外れた形となる。
「――当然だ。警備システムは俺が乗っ取ったんだからな」
「ッ!」
グレア2が姿を現す。メリッサは振り向きざまに彼を睨み付ける。
「まさか――あなた完全にシステムを書き換えたの!?」
「その通り。復旧させたきゃ俺のかけたプロテクトを解除しなきゃならんよ」
グレア2――ケイは変身を解除しつつ微笑む。
「酷いけがだな。折角のドレスアップが台無しだ」
「っ触らないで!」
ハンカチの巻かれたメリッサの腕を気遣うケイだったが、彼女に思い切り振り払われる。
「……っ緑谷クンはどうしたの? まさか」
「いや、殺しちゃいね……多分、生きてるはずだ」
全く関心がなかったのか、ケイは必死になって思い出そうとしている。
「ま、あんな奴どうでもいいだろ。重要なのは、俺の
「どうでもよくないわよ……っ!」
メリッサは伸びあがる様にしてケイの胸倉を掴む。
「一体どれだけの人を巻き込んだかわかってるの!? 緑谷クン達だって、どれだけ大変な思いをしたか……!」
「イズク・ミドリヤは勝手に巻き込まれに来ただけだろ。しかもお前を巻き込んだ。俺はそっちの方が許せないな」
乾いた音が響く。
ケイは叩かれた頬をさすっている。
「信じられない……ッ! 身勝手な奴だと思ってたけど、ここまでとは思わなかった!」
「……科学の根源は“
メリッサの剣幕を受け、ケイは悲しそうに微笑んだ。
「空を飛びたい、暗闇を失くしたい、どこでも誰とでも繋がれるようになりたい――そんな
人間の歴史は争いの歴史ともいえる。
他国との争いに
「俺の望みは――メリッサ、お前の
ケイはメリッサを振り払い、踵を返すと外へ向かう。
「待ってよっ! こんなことして、本当に私が笑顔になれると思ってるの!?」
「なれるさ。俺の、“理想の世界”が叶えばな」
彼の脳裏に浮かぶのは子供の頃の記憶。
友達と一緒に遊んでいるメリッサを遠巻きに見ていた時の――二人の仲がそれなりに良好だったころの記憶。
「……罵りたけりゃ好きなだけ罵れ。お前になんと言われようとも――俺は俺の理想を叶える」
「っ……待ってよ……」
気が付けばメリッサの瞳からは涙が零れ落ちていた。手を伸ばしてもケイの背に届くことは無く、空しく空ぶるだけだった。
――――
――
――屋上、ヘリポート
屋上は風が吹き荒れていた。
ケイはスーツの懐からバックルを取り出す。
「――待て!」
「……ああ、生きてたか。メリッサが心配してんぜ」
壁を伝うようにして現れた緑谷を一瞥したケイは、ため息をつきながら答えた。呆れているような、驚いているかのような、そんな表情だ。
「どうしてヒーローを目指す奴ってのは、余計なことに首を突っ込むかね?」
「……目の前で困っている人がいるのに、助けないヒーローがいるかよ……っ!」
緑谷は歯を食いしばりながら個性を発動させる。
全身に力が迸り緑色の稲妻が迸る。
「成程。確かに一理ある」
「貴方の計画は――僕が止めるッ!」
弾丸の様に緑谷は走り出す。
それでも生身のケイにとっては十分脅威となる力だった。
「早いが――その動きは
「ッ!?」
ケイは合気道の要領で緑谷の攻撃をいなす。だが躱されるのは織り込み済みだった。
触れ合った瞬間にケイの持っていたバックルを奪い取る。
「――僕の狙いは、初めからこっちだ!」
緑谷は奪い取ったバックルを掲げてみせる。
「……確かに、目の付け所は悪くねな。俺もそれが無きゃ計画を進めらんねしな」
――INSTALL ...
ケイは即座にグレア2へ変身しバックルを指差す。
「こうしてヘンシンすれば即座にそれを奪い返せんが……科学者の性か、お前がそれで変身するところを見てみたい」
「……ッ!」
――SET
緑谷はバックルをドライバーへ装填、真っ赤なグリップをゆっくりと握り締める。その脳裏に浮かぶのは変身に失敗するデヴィットの姿。
「……変、ッ身!」
バックルを起動すると、4つの排気筒が火を噴く。彼の周囲で炎が渦巻き高出力のエネルギーが装甲を形作る。
――BOOST:Mark2
緑谷――タイクーンに装甲が装着される。
緑を基調としていたタイクーンのマスクは真紅に染まり、まるで全身がブーストフォームであるかのような姿――いうなれば“真っ赤なタヌキ”そのものだった。
――READY ... FIGHT!!
炎が収束しタイクーンの姿が露になる。
「っぱそうだよな! お前らの
動作成功に喜ぶグレア2の仮面にタイクーンの拳が突き刺さる。
その速度はまさに音速。
「――ッッ!?」
殴られたのつかの間、今度は強烈な踵落しが命中する。
あまりの速度にグレア2は反応することもままならなかった。
「…………」
距離を取りバックルに手をかけるタイクーン。しかし次の瞬間には糸の切れた人形のように倒れ、変身が解除されてしまう。
「……っこいつは想像以上だ。これが俺の見ていた
グレア2は倒れている緑谷のドライバーからバックルを引き抜く。
「確かに出力は申し分ね。が、出力が高すぎて制御が困難なのが課題か」
彼の開発したバックル――ブーストマーク2は全盛期のオールマイト並みの力を発揮することができる。デザイアグランプリの基準でいうならばブーストバックル5つ分の力だ。
それだけの力を発揮するということは、それだけ制御が難しいということである。
「……これなら、想定の範囲内だな――コード66を実行」
グレア2のコマンドに従ってI・アイランドの警備ロボに仕組まれた“生命エネルギー奪取機構”が稼働を始める。
彼の目的は“儀式”の再現だった。
デザイアドライバーを送ってきた主から伝えられた“理想の世界”を叶えるための“儀式”――指定されたエリアを生命エネルギーで満たし、“創世の女神”と呼ばれる存在の力を引き出す。
警備ロボは周囲の人間の生命エネルギーを少しだけ奪い取り、それを彼の持つブーストマーク2バックルに集約させて解き放つ。
集約されたエネルギーはバックルの力で
「叶えてもらうぜ――俺の、理想の世界をッ!」
グレア2はバックルを天高く掲げる。
警備ロボが吸い上げた生命エネルギーが収束し、バックルの内部に蓄えられていく。
「――っ!?」
バックルが一際輝いた瞬間、それを何者かが撃ち抜く。
「――させないよ♪」
タワーの壁面からヘリポートへと跳躍した巨大なカエル――ケケラ。その背に乗っているギーツがグレア2のバックルを撃ち抜いたのだ。
それは弧を描くようにしてギーツの手元に収まる。
「――オラッ!」
バッファはケケラの背から飛び降りるとグレア2につかみかかる。
ギーツはケケラから飛び降り緑谷の下へ駆け寄る。
「なる、ほど! お前らも“儀式”参加者ってことか! 世界ってのは案外狭いんだな!」
「ッッ!」
鍔迫り合いになるグレア2とバッファだったが、突如として変身が解除されてしまい牛込は投げ飛ばされてしまう。
「えっ?」
ギーツもまた、変身が解けてしまう。腰のドライバーからは煙が立ち上っている。
「……ま、規格の違いってヤツだ。お前の
「へぇ……」
エースは意識を失っている緑谷の腰のドライバーへと手を伸ばす。
「だったら――」
そしてドライバーを引きはがし、自分の腰へと装着する。タイクーンのIDコアは取り除き、緑谷の手に握らせた。
「本物を使えばいい」
――SET
エースはギーツのIDコアを装填しバックルをセットする。
その瞳には怒りの色が浮かんでいた。
「……hum……お前ら、恋人同士ってワケ? だったらお門違いってヤツだ。そいつは自滅しただけだぜ?」
「そんな関係じゃないさ――でも、なんだか心の底から怒りが湧き上がってくるのさ」
エースはゆっくりと腕を突き出し、指を弾く。
「変身!」
――BOOST:Mark2
装甲が展開されて装着される。タイクーンが真っ赤なタヌキならばギーツは真っ赤なキツネだった。
「……覚悟しておけ――私はもう、自分で自分をコントロールできそうにない」
――READY ... FIGHT!!
――――
ギーツはゆっくりと歩を進める。
その体は陽炎の様に揺らぎ、途方もないエネルギーが発せられていることをうかがわせた。
「……もうそいつに興味はないんだがな!」
グレア2は肩をすくめつつも両肩のヒュプノレイを展開する。
ギーツは一瞬でトップスピードに到達するとグレア2へ右ストレートを放つ。しかしヒュプノレイによって生成されたバリアによってそれは阻まれる。
「残念、予習済み――!」
次の瞬間にはギーツの姿は掻き消えている。即座にバリアの内側に回り込み、アッパーカットを決める。
勢いよく浮かび上がるグレア2、追い打ちをかけるようにギーツは飛び上がり拳を振り下ろす。地面にめり込みだところを更にストンプで追い打ちをかけた。
――REVOLVE ON
ギーツはベルトを反転させ形態を変化させる。本来は上半身と下半身を入れ替えるはずのそれは、彼(?)の姿を狐の様に変化させた。
「かは――っ!?」
ヘリポートから大きく弾き飛ばされたグレア2。そのまま地上へ落下するかと思われたが、ヒュプノレイを足場とすることで難を逃れた。
「……」
――REVOLVE ON
ギーツは再び人型に戻り、バックルに手をかける。
「っいいのか!? ここで俺を斃したら警備システムは一生元に戻らんぜ?」
必殺技を発動しようとしたところをグレア2は言葉で牽制する。
確かにこのまま斃すことは簡単だが、警備システムを復旧させなくては誰も助けることができない。
『――I・アイランド警備システムからお知らせです――』
その時、警備システムのアナウンスが入る。
それはシステムが復旧し厳戒態勢が解除されたという知らせだった。
「ふふっ……これで、心置きなくやれるね」
――BOOST STRIKE!
真っ赤な拳が出現し、ギーツの動きに合わせて狙いが定められる。
「……このままやられっかよ!」
――SHUT DOWN ...
グレア2は負けじとプロビデンスカードを2回読み込ませ必殺技の体勢に入る。
拳にヒュプノレイを収束させ、巨大なグローブのようなものを生み出す。
――二人のこぶしがぶつかり合う。
力は拮抗し互いにせめぎ合っていたが――わずかにギーツが押し勝った。
グレア2は思い切り地面に叩きつけられ、変身は解除されるのだった。
――――
――
『――儀式?』
ケイはデザイアドライバーを怪訝な瞳で見つめている。
『そうよ♡ この世界のどこかでは、今も儀式が行われているの。ジャマトって生命体を殺し、その生命エネルギーを使って“理想の世界”を叶えるゲッ……儀式がね』
黒髪の少女は意地の悪そうな笑みを浮かべつつゼリービーンズを口に運ぶ。
『“理想の世界”……要は願いを叶えてくれる、ってことか』
『理解が早くて助かるわ♡ ……貴方の頭脳なら――同じことができるんじゃない?』
ケイは瞳を閉じて逡巡する。
『生命エネルギー……生物が生み出すエネルギーと仮定するなら、何もジャマトって生命体に限らずとも――人間でもいいってか』
『! ええ、そうとも言えるわね』
少女――ベロバは心底楽しそうに微笑んでいる。
これから起こるであろう“不幸”を想い、狂気的な笑みを浮かべた。
『……“理想の世界”ってのは、本当に何でも叶えてくれんのか?』
『ええ♪ もちろんよ』
『例えば――俺の頭の中の世界を実現にする。そんな願いでも叶うのか?』
ケイの問いかけにベロバは微笑みながらうなずいた。
――――
「ん……」
「あ、目覚めた!?」
緑谷はやわらかな感触で目を覚ます。
ゆっくりと目を開けば、目の前には嬉しそうにこちらを見つめる美少女――葉隠の顔。
「……葉隠、さん――っそうだ戦いは!?」
彼は起き上がろうとして全身が筋肉痛の様に痛み顔を顰める。
「エースさんが解決したみたい。警備システムもメリッサさんが復旧させたんだって」
葉隠が示した先では、自由を取り戻したヒーローたちによってケイが捕縛されていた。
「そっか……エースさんとメリッサさんが」
緑谷は安堵の息をつきながら再び体を寝かせる。
(ん……あれ?)
が、そこで自分が何を枕としているのか気づき顔を真っ赤にする。
(これ、葉隠さんの膝っ太もも……っ!)
俗にいう膝枕である。
慌てて起き上がろうとするも、葉隠に頭を撫でられてそのまま体を落ち着けてしまった。
「――あーあ! つまんないの!」
屋上に少女の声が響き渡る。
「牛……?」
ヒーローの一人が呟く。
屋上に姿を現したのは巨大な牛のロボ――ベロバ。
「あれが、グラントリノの言っていた――!」
即座に動いたのはオールマイトだった。
宿敵、オール・フォー・ワンを打ち破った牛型のロボット、ベロバ。こうして現れた以上ここで捕らえるのが吉であると言える。
「アハハ! 私を斃すつもりかしら?」
「ッshit!」
ベロバはオールマイトの拳を真っ向から迎え撃つ。
活動限界も近いせいか、オールマイトは打ち勝てずに返り討ちにされてしまう。
「ほら、邪魔よ!」
「ウッ!」
オールマイトの敗北に動揺していたヒーローは薙ぎ払われてしまう。
ベロバは無機質な瞳をケイに向ける。
「あーあ。折角“極上の不幸”が見れると思ったのに……!」
「……何、言ってんだ?」
ケイは怪訝な目をベロバに向ける。
「アハハ! まさか本当に叶うと思ってたの? そんなわけないじゃない! この島の人間を皆殺しにして、そんなことをしても願いを叶えられないで絶望するアンタの不幸を楽しみたかったのよッ!」
「ッ!」
ベロバは巨大な手を器用に動かして腰のヴィジョンドライバーを奪い取る。
そして拘束された彼の手を取り、指紋をレイズライザーで読み取った。
「これはもらってくわ。アハハ! アンタの不幸を楽しめなかったのは残念だけど――代わりにもっと楽しいことができそう!」
愉快そうに笑うベロバだったが、彼女に3つの銃口が向けられる。
「このまま逃がすと思ってんの?」
「野放しにするわけにはいかねぇな」
「……」ボソッ
戦いを見守っていたセセラ、ケケラ、キューンはレイズライザーを向けてベロバを逃がすまいとする。
「アハハ! こんな“終わった世界”相手に夢中になって……バッカみたい」
ベロバは銃を掃射し、姿をくらませるのだった。
――――
――
こうしてI・アイランドで起きた未曽有のテロ事件は幕を閉じることとなる。
首謀者のケイ・アッドは逮捕され、彼の開発したイミテーションデザイアドライバーやイミテーションコアは設計図から抹消され、歴史の闇に葬られることになる。
「――こんばんわ。ヤクザさん♡」
しかし彼の発明が全て葬られたわけではなかった。
「……誰だお前は」
死穢八斎會の若頭、治崎は咄嗟に手袋を外しつつ少女――ベロバと対峙する。彼女の腰にはケイから奪ったヴィジョンドライバーが装着されている。
「私はデザイアグランプリのサポーターよ♪ ねえ、私にアンタを支援させてよ――仮面ライダークロウ」
ベロバは意地の悪そうな笑みを浮かべるのだった。
これにてI・アイランド編は終了です。
なんだか思っていたよりも上手くまとまりませんでした……やっぱりキャラが増えると動かすのが大変ですね……本当ならオリキャラのケイをもっと掘り下げる予定だったのですが、あっさり終わってしまいました。最低限、彼のキャラが表現できていたら幸いです。
次回、オリジナル展開を挟みつつ、文化祭編をやってifルートは〆ようと思います。ちょっとグダるかもしれませんが、最後までお付き合いいただけると。