私はTVerで最新話を追っているのですが、まさかまさかの手違いで34話を見てしまうことに……まさかの視聴前に英寿が復活することを知ってしまうという……何も知らない状態で見たかったものです……
冒頭を見て異変に気付き途中で視聴を止めたので何とか完全ネタバレは回避できました。こんなこともあるんですね。
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ヒーロー仮免試験も無事に終わり、ヒーローの卵たちは晴れて活動する資格を手に入れることとなる。
若干名、取り損ねた者もいるが彼らは補講を受けることで再試験の資格を得れるため、近い将来仮免を得ることは決まっていた。
ヒーローへの階段を着実に上る彼らにビックイベントが迫っていた。
誰もが浮足立つそのイベントは――
「――そろそろ文化祭の時期だ」
――文化祭である。
青春の一大イベントにクラス中が浮足立ち、まさに教室は狂喜乱舞と言った様相だった。
「ま、体育祭の主役はヒーロー科だが文化祭はそれ以外の科――サポート科や普通科、経営科が主役となる。が、一クラス一つは出し物を決めなきゃならん。そこで今日はそれを決めてもらうこととする」
連絡事項を伝え終えた相澤は興味がないとばかりに教室の片隅に退避すると寝袋にくるまった。
「ではここからはクラス委員長、飯田 天哉が進行を務めさせていただく! まずは各々のやりたいことを上げていってくれ!」
それに代わって委員長の飯田が音頭を取ってアイデア出しを行っていく。
矢継ぎ早に出される意見を八百万が次々と板書していく。
メイド喫茶、食べ物系、クイズ系などの文化祭の王道を行くものから“暗黒学徒の宴”だの“
「ぬるいわぁッ! オッパ――」
なお峰田は明らかにレーティングに適していない出し物を提案しようとして女子から制裁されていた。
「――休憩所、かな」
「なん、だと……?」
エースの何気ない意見に反応したのは意外にも峰田だった。血走った眼を見開きエースをギロリと睨み付けている。
「お前……オイラだって思いとどまったことをこんなにあっさりと」
「……? よくわからないけど、文化祭を見回って疲れた人たちがくつろげる空間を提供しようかと思ったんだけどな」
「成程! 確かにそういったのもいいな!」
峰田が何を連想したのかは定かではないが、エースの意見も黒板に追加される。
「――出そろいましたわね。このうち実現不可能、不適切なものに関しては削除しますわね」
「……無慈悲」
自分のアイデアが却下され常闇は悲しそうにしていた。
「勉強会ってのもなァ」
「お役に立てればと……」
更に勉強系の催しもつまらないと却下され候補が絞られていく。
「折角の文化祭で休憩所をやるってのも味気ねぇよな」
「そうかい? 食事や飲み物を提供したりする場所をイメージしていたんだけどな」
「あー喫茶店みたいな感じね」
エースのアイデアも却下されかかったが、追加情報によって間一髪生き残る。
しかし皆が皆やりたいことを主張し始めたため議論はどんどん白熱していく。“会議は踊る、されど進まず”の言葉が似合う状況となってしまっていた。
――♪
そうこうしているうちに鐘が鳴り授業時間が終了してしまう。
「――実に非合理的な会だったな」
結局何も決まらないままだったことに対し相澤は不機嫌そうな口調を露にしていた。
「放課後も使っていいから考えとけ。決まらなければ公開座学とする」
タイムリミットは明日まで。
決まらなければ公開座学という地獄が待ち受けている。ヒーローの卵たちに試練が訪れていた。
――――
その後、閉校時間ぎりぎりまで大討論が行われた結果、A組の出し物は“みんなで楽しめるパーティ空間”に決定した。
すっかり日も落ち暗くなってしまい、道は街灯で照らされている。
「……ただいま」
エースは誰も居ない家に帰ると、誰に言うでもなくつぶやく。
彼女(?)の恩人、狐火 英寿の持ち家。主のいない今、そこに住んでいるのはエースだけだった。
「――一体どういうつもり?」
薄暗い和室。部屋の中央に敷かれた布団の上には一人の少女――ピンクのメッシュが入った黒髪のストレートヘア、一見すると清楚な雰囲気だったが濃い化粧がそれを打ち消す。
そして特徴的なのは――
少女――ベロバは心底不機嫌そうにエースを睨み付けていた。
「なんのことかな?」
「とぼけるんじゃないわよッ! どうして私を助けたの!? 恩でも売ろうと思ってるの!?」
ベロバは失った右腕に触れつつ激昂する。
無様に裏切られた上に見下していたライダーに助けられて怒りを覚えていた。
「違うと言ったら。君はその言葉を信じるのかい?」
「アハハ! バカな人、こうなるってわからなかったのかし」
彼女は即座に懐からレイズライザーを取り出し銃口を向けようとするも、カートリッジが装填されておらず弾丸を放つことができなかった。
「ふふっ。お探しの物はこれかな?」
エースは意地の悪そうな笑みを浮かべながらベロバのカートリッジを掲げてみせる。
「っ返しなさいよ!」
ベロバはそれを取り戻そうと手を伸ばすも、それは失われている右腕だったためバランスを崩してしまう。
「……君さ、人の不幸を喜んでいたけど――自分が不幸になった気分はどうだい?」
「不幸? ……馬鹿にするんじゃないわよ。
ベロバら未来人は生まれた時からすべてがデザインされた存在である。
身長、体重、性別、性格――果てには寿命までもが初めから決められた状態で生まれてくる。
そんな彼女にとって体の欠損など取るに足らないこと。もう一度肉体をデザインしなおしてしまえば問題ないのだ。
「デザイン、すれば……」
しかしレイズライザーが使用不可能な状態となっている今は体を再デザインすることができない。本来住んでいるはずの未来ならばともかく、彼女にとっての過去の世界では自由自在にデザインすることは難しいのだ。
「デザイン、ねぇ……君達は一体何者だい? デザグラとは一体どんな関係がある?」
「……教えてあげない! べー! だ」
問いかけるエースだったが、ベロバは拗ねたように舌を出すと寝転がって布団をかぶってしまった。
「……“理想の世界”を叶えるゲーム。世界最先端の技術をもってしても完全に再現できないシステム……世界の一部が消えてもそれを隠ぺいできる情報操作能力……」
エースはため息をつきながら思考を整理する。
「こうして考えると、自ずと答えは浮かび上がってくるものさ」
時が経てば世界は大きく変化する。
それはエースの実体験に基づく世界の理。
それは遥か昔、まだ日本が戦乱の世にあった時代の者からすれば今現在の世界はきっと理解不能で荒唐無稽な光景に映るだろう。
当たり前のように城よりも巨大な建築物が乱立し、思い立てば世界中の誰とでも繋がることができ、暮らしのあれやこれやを手元の
もしそれを過去の人間――エースの生まれた時代の人間に伝えたところで嘘八百、荒唐無稽と鼻で笑われることだろう。
「――君達はもしかして、私たちの住む世界よりも遥かに先――未来の世界の人間かい?」
「!」
的を射た問いかけにベロバは思わず反応してしまう。
「……もし私がそうだと言ったら、あんたはその言葉を信じるのかしら?」
布団からわずかに顔を出したベロバは、とても意地の悪そうな笑みでエースに問いかけるのだった。
――――
――
文化祭の準備は着実に進んでいく。
A組は“雄英の全員を音で
「――ちがうよ緑谷くん! ここは、こう!」
「えっと、こう?」
「そう!」
元々運動が得意ではなかった緑谷は葉隠にサポートしてもらいながらダンスの振り付けを練習していた。
つきっきりで手本を見せてもらいながら、その様子はとても仲睦まじくもはや“そいういう関係”であるかのようだった。
「……ほほう」
そんな二人の様子を見た芦戸の目が鋭く光る。
彼女は同じく練習中のエースを呼び出し部屋の隅へと連れて行く。
「――ねえ狐火、あの二人ってぶっちゃけどういう関係?」
「……? どう、いう?」
エースは質問の意図を理解できずに首をひねっている。
「もう皆まで言わせないでよ~……ぶっちゃけ、付き合ってるの? あの二人?」
芦戸は声を潜めていたが、元来声の大きい性質である彼女の声は少しだけ漏れており、それは偶然近くで練習していた麗日の耳に入る。
麗日は動きを止め、耳を大きくしてエースと芦戸の会話に耳を澄ませている。
「……もしそうだと言ったら、君は信じるかい?」
「もう! もったいぶってないで教えてよ~」
はぐらかそうとするエースに縋りつく芦戸だったが、狐の尾が落ち着かなさそうに揺れている様を見て固まる。
「えっ……まさか……」
恋愛話が好きな芦戸はその様子からあることないことを邪推する。
もしかしたら三角関係なのではないか?
そもそも性別不詳が好きなのはどっちなのか?
彼女の頭でそんなストーリーが瞬く間に組み立てられていく。
「ふふっ……そんなんじゃないさ」
エースは誤魔化すように頭を掻きむしる。狐耳は落ち着かなそうに垂れている。
「……ちょっと外の空気を吸ってくるよ」
――――
雄英の敷地は広大で校内の移動にバスを必要とするほどである。
そんな雄英も今や文化祭一色。どこのクラスも準備に精を出していた。
エースは準備中の者達の間をかいくぐる様にして森へと向かっていく。今は誰とも関わりたくない気分だったのだ。
「……ふぅ」
土の臭いが鼻をつく。彼女(?)はポケットから古びたオールマイトカードを取り出してじっと眺める。
「……私は君のことが好きなのかな?」
エースには性別が存在しない。
つまり男でもあると言えるし女であるともいえる。突然変異として生まれた異形の狐は決して子孫を残すことのできない宿命を帯びているのである。
故に――恋をしたことなど人生で一度もなかった。
誰かを好きになり、子を成し一生を添い遂げる――そんな関係を抱こうとすら思ったことは無かった。
「――恋の悩みかい、ギーツ?」
「ッ誰!?」
エースは狐火を指に宿しつつ声の聞こえた方向へ振り向く。
そこにはミステリアスだがどこか愛嬌を感じさせる顔の少年――ジーンがいた。彼は捉えどころない笑みを浮かべつつエースへ歩み寄る。
「僕は“ジーン”、君のサポーターさ♪」
「……その名を知っているということは、デザグラの関係者かい?」
敵意を隠そうともしないエースを前にジーンは両手を上げて敵意がないことを示す。
「ああ。俺はデザグラのファンなんだ――理想の世界を叶えるために奮闘する君たちの生きざまに
「…………」
晴れやかな表情のジーンとは対照的にエースの表情はどこまでも険しかった。
デザイアグランプリは彼女(?)にとって“最悪”の象徴だった。
ようやく手に入れることの出来た平穏を全て奪い去った諸悪の根源。願いを全て叶えたら消し去ってしまいたいものでしかない。
「……つまり、君は私たちの事を見世物にしてきていた、と」
「そうだね。
エースは指先の狐火を消すとゆっくりと拳を握り締める。
「君をデザグラに推薦したのは
「…………」
無邪気に語るジーンの邪悪さにエースは静かに苛立っていた。すぐにでも殴りかかろうとしないのは、彼が情報を――デザイアグランプリに関する情報を持っているかもしれないと思っているからだ。
「君達は一体何者だ? 私たちの人生を弄んで、何が目的だい?」
「君にしては察しが悪いな。もう薄々気づいてるんだろう?」
ジーンはエースとの会話を楽しんでいるようで、とらえどころのない笑みを浮かべている。
「君らが命がけで戦うヒーローの活躍を楽しんでいるように、オレ達は君達が理想の世界を叶えるために戦う様を楽しんでいる。目的は――しいて言うなら君達そのものさ♪」
エースは苛立つ気持ちを落ち着けるように大きくため息をつく。
他人の人生を弄んで楽しんでいるジーンを殴りたくて仕方ない気持ちを気合で押さえる。
「そしてオレ達の正体は――君が昨日
「…………へぇ?」
遥か未来のエンターテイメント――それが“リアリティライダーショー”、デザイアグランプリの正体。
過去の世界の人間に“理想の世界”というエサを与え、己の欲のために争わせるともすれば悪趣味ともいえる
「……薄々、感じてはいた。こんな悪趣味なゲーム、一個人の道楽でやるには規模が大きすぎる。どこかで
「流石はギーツだ! もしかして、君の決め台詞は俺たちを意識しているのか?」
ジーンはエースの感情に気づかず子供の様にはしゃいでいた。
「……もし、そんな奴らがいたとして、出会ったらこうしてやろうと思ってた」
エースはもはやジーンの言葉を聞くつもりはなかった。
「ッ!?」
彼女(?)はおもむろに拳を構え、笑顔のジーンを思い切り殴りつける。拳がめり込むほどの強烈なパンチを受けたジーンは思い切り地面に顔を打ち付けてしまう。
「ってて……何をするんだ。オレは君のファンなのに」
「いい気なもんだね。自分は安全な所から高みの見物ってわけかい? あのベロバって子の方がまだ好感が持てるよ」
エースはジーンに途方もない嫌悪感を抱いていた。
誰も手出しのできない安全圏からゲームを観戦し、人生が弄ばれる様を楽しむ。まだ他人を不幸にするため自ら前線に出てきたベロバの方がわずかにマシというものだ。
とはいえ、犬のフンとネコのフンどちらがマシか、という程度の物だったが。
「私は今とても、とても気分が悪い。用がないんだったらとっとと消えてくれないか?」
「……そうさ。オレは君のその目に惚れたんだ」
ジーンは怒れるエースの瞳を見て笑っている。頬は真っ赤に腫れ上がり鼻血を流していたがそれでも余裕を崩していなかった。
「今、デザグラは存続の危機に立たされている。現に、次のゲームは
「……ああ、そうだね」
――『諸君、ゲームは一時中止だ』
戦国ジャマト祭り終了後に現れたデザグラのプロデューサーを名乗る男、ニラム。
彼はゲームマスターであるギロリを無視してゲームの中止を一方的に宣言したのだ。
「その理由は一つ――
ヴィジョンドライバーは運営用の装備、ゲームに関するあらゆる事項を管理し、時に願いを叶える根源の力――“創世の女神”にアクセスすることもできる。
持ち主はゲームマスターとプロデューサーの二人――ギロリとニラムのみだった。故にデザグラの運営は滞りなく行われてきていた。
しかしこの時代――彼らからすれば古代で3本目のヴィジョンドライバーが誕生してしまった。
デザグラに干渉しともすれば創世の女神にすらアクセス可能なイレギュラーなドライバー――それがある限り平常のデザグラを行うことは叶わないだろう。
「で? それを私に伝えて何になるんだい?」
「オレは大好きなデザグラを取り戻したい。一緒にヴィジョンドライバーを取り戻さないか? オレは大好きなデザグラを取り戻せて、君は運営に恩を売ることができる。互いにメリットのある話だろ?」
ジーンの話は魅力的だった。
運営にとって3本目のヴィジョンドライバーは目の上のたん瘤でしかない。そんなドライバーを手に入れたら運営の“弱み”を握り、交渉のテーブルにつかせることができるかもしれない。
「……嫌だね」
「どうして!? 一体何が不満だ!?」
自分自身が不満のタネだと気づかないジーンは狼狽えていた。
「決まってるだろ――今文化祭の準備で忙しいんだ。他を当たってくれ」
とはいえそれをストレートに伝えるほどエースは子供ではなかった。
彼女(?)はジーンを睨み付けると、足早に教室へと戻るのだった。
――――
――
――ジャマーガーデン。
「……ほう、これがジャマトの育成場か」
ヴィジョンドライバーの能力を使った治崎はジャマーガーデンへと赴いていた。
「っな、何を……!」
主であるアルキメデルは致命傷を負わされうずくまっている。
「……こいつらは俺の新しい“コマ”だ。これを使って俺は俺の理想の世界を叶える」
治崎の望む理想の世界――“ヤクザの復権した世界”。
かつての計画――エリの体から抽出した個性因子を用いて“個性消失弾”とその血清を作りかつてのオール・フォー・ワンと同じように裏社会を支配する。
その計画が思うように進んでいなかったところに届いたデザイアグランプリへの招待状。
まさに渡りに船な提案だったが、彼の脳には一つの懸念があった。
「もはやオール・フォー・ワンの手法をなぞる必要はない――俺は、俺のやり方でやる」
――他のデザ神によって願いが上書きされてしまうのではないか?
彼の理想は決して万人に受け入れられるものではない。
故に相反する願いを持ったデザ神によって世界を書き換えられ、願いはなかったことにされてしまうのではないだろうか?
故にもっと確実な方法で理想の世界を叶える。
「……ジジイ……エリは返してもらうぞ」
(いろんな意味で)不穏な雰囲気となってきました。片や恋の修羅場、片やデザグラの危機……ifストーリーも後少しで完結です。もう少しだけお付き合いください。
……完結が先か最強フォームが先か……最強フォームが出る前には完結できるよう努力します。