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これは遥か昔の話。
まだデザイアグランプリが“栄誉”をかけて戦っていた時代の話。
当時のデザグラは勝者に金貨が与えられていた。
“理想の世界”などという壮大な報酬ではなく、戦いに勝ち抜いたという“栄誉”を与えられる。それが原初のデザグラだった。
デザグラの転機は唐突に訪れる。
時代をさかのぼるほど2000年程前。不思議な能力を持つ女性がいた。名を“ミツメ”と言った。
彼女は“他人に幸福を分け与える”力を持っており、その力で人々のために働いていた。
当時のゲームマスターは彼女の能力に目を付けた。
『――ミツメ。君の力を貸してほしい』
ミツメはデザグラのナビゲーターに任命され、勝者は報酬として彼女から幸福を分け与えられるようになる。
幸福を分け与えられたものは後の人生での成功が約束され、欲に駆られた者達の“リアリティ”あふれる戦いは
これを良しとした運営は次第にゲームをより過激に、より大きな願いを叶えられるように多くの幸福を奪えるように規模を拡大していく。
『――もう嫌っ! これ以上誰かの幸福を奪いたくないッ!』
初めは協力的だったミツメも、多くの不幸の上に成り立っているデザグラに嫌気がさすようになる。
自分の能力を使わなければゲームそのものが成り立たなくなる――彼女はゲームをボイコットすることなる。
存続の危機に陥りかけたデザグラを解決するべく当時のゲームマスターは一つの決断をする。
『こちらとしても不本意だが……君の力はもはやデザイアグランプリとは切って離せない関係だ』
ゲームマスター――スエルはヴィジョンドライバーの機能をミツメに対して行使した。
下した決断はミツメの拘束だった。
ヴィジョンドライバーを介して強制的に力を引き出し“理想の世界”を作らせる。
『いやっ……やめて――』
ミツメの体が輝きその姿を変えていく。
翼を携え球体のようなものを抱えた女性の石像――彼女は物言わぬ像に姿を変えられてしまった。
――これこそが“創世の女神”の
デザイアグランプリは一人の女性の犠牲のもとに成り立っているのだ。
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文化祭の本番は刻一刻と迫っていた。
A組のパフォーマンスも本番を意識したものとなっており、練習もいよいよ大詰めとなっていた。
「――ね、ミドリヤ。ちょっといいかい?」
練習の中、エースは緑谷を呼び出す。
その瞬間、教室中の耳が彼らの方を向く。各々の練習に勤しみつつも二人の会話を聞き漏らすまいと手元がおろそかになる。
「え、うん……」
なぜこの二人の動向をクラス中が気にするのか?
その答えはただ一つ――“芦戸が流した三角関係説”である。
曰く――葉隠とエースが緑谷を好きで、緑谷は葉隠が好き、そんな少女漫画的三角関係が起きている、と。
「ふぅ……コン♪」
注目されていることを悟ったエースは指を鳴らして個性を発動する。エースと緑谷の会話が行われている、とクラス中に錯覚させ教室を抜け出すためである。
「さ、行こうか」
二人は教室を抜け出し森へ向かっていく。
そんな二人の後をつけるのは透明少女葉隠。偶然にもトイレに行っていたことでエースの個性の影響を受けず抜け出したことに気づけたのだ。
彼女は最近露にしていた素顔を消して透明になりその後を追っていく。
「――ここなら誰も居ないかな」
森の中は誰もおらず、内緒の話をするのに適した場所だった。
「どうしたの? 改まって」
「……いい加減、この気持ちにケリをつけたくてね」
エースがジャージのポケットから古びたオールマイトカードを取り出す。
「っ……それって」
「……私の恩人の忘れ物さ」
本来ならば光を受けて輝くであろうホイルは傷だらけで見る影もなく、挙句の果てにはがれかかっている。カードも角が擦り切れており、状態としては最悪だった。
「私はね、この時代の人間じゃないんだ」
エースが語るのは己の出自。
遥か昔、この国が戦乱の世にあった時代、狐人間のような容姿で生まれたこと。そのせいで村の人間から迫害され生きていくことすら苦労するほどだったこと。そしてついには村の片隅に封印されてしまったこと。
「――そしてある時封印が解けた。でも私は衰弱しきっていて、長くはもたなかったかもしれない。そんな時、一人の少年が私に手を差し伸べてくれた」
「……もしかして」
緑谷は疑念が確信に変わっていくのを感じる。
点と点がつながっていき、頭にかかった靄が解けていく。
「君なんだろう? これを落としていった、私の恩人は」
「多分、そうだと思う」
オールマイトカードを受け取った緑谷は何かを懐かしむような表情になる。
「このカードを失くした時、狐の個性の子を助けようとしたんだ……いらないって断られちゃったけど」
「十分救ってもらえたさ。私はずっと、こんな世界なんて滅びてしまえばいいって思ってた」
人の悪意を一身に背負った狐は世界を呪った。
人の幸せを奪いのうのうと生き延びている汚い人間など滅びてしまえばいいと願っていた。封印を解かれた向けられたのが善意ではなく悪意だったならば、世界に復讐する化け狐となり果てていただろう。
「でも、君に助けてもらえたから――私はこうして今ここにいる」
エースは緑谷からカードを返してもらうと静かに微笑む。
「ありがとう。君は私にとってのヒーローだ」
「こちらこそ……僕だってあの時、エースさんに助けてもらえなければ今ここにはいない」
かつての世界、緑谷はデザグラに巻き込まれエースに救われていた。
そして前回の世界の序盤、あわやジャマトに殺されるところをエースに救われていた。
「それじゃ、私たちはお互いにとってのヒーローってことだね♪」
エースは朗らかに笑う。
ようやく自分の目標を達成し、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「……ミドリヤ」
「――きゃあっ!」
意を決したエースが口を開いた瞬間、爆発音と共に葉隠が乱入してくる。
緑谷はもちろん、普段は全く動じないエースでさえ驚き目を見開いている。
「っ葉隠さん!? なんでここに!?」
「ご、ごめんね……ちょっと気になっちゃって」
葉隠は申し訳なさそうな顔をしていた。彼女の足元にはロボットアームを思わせるサポートアイテムが転がっており、乱入の原因はこれであることは明らかだった。
「……これは……サポートアイテム?」
エースは恥ずかしそうに頬を赤らめながらも落ちているアイテムを拾い上げる。
「――おや! あなた方はいつぞやの……誰でしたっけ?」
森の奥から姿を現したのはサポート科の女子、発目 明。
まるで数日間風呂に入っていないかのような――実際入っていないのだが――オイルと垢まみれの姿だった。
「サポート科の発目さん! どうしてここに?」
「文化祭でお披露目するベイビーちゃんのテストをしておりまして! 文化祭はアピールできるいいチャンスですので!」
彼女はエースからパーツを受け取りつつも他にも落ちている残骸がないかを文字通り血眼になりながら探す。
数日間眠っていないのだろうか、その目の下にはクマができていた。
残骸を回収し終えた発目は再び森の奥へと消えていった。
「……相変わらずエネルギッシュな人だね」
「うん……」
話の腰をすっかり折られた上に葉隠というやじ馬の存在が判明した状況。
エースはしばし思案し、指を弾く。
「……ミドリヤ。改めて君に尋ねたいことがある」
「っ何、かな?」
深刻な面持ちのエースを見た緑谷はなぜだかかしこまってしまう。
個性を使って葉隠に話を聞こえないようにしたのだろう。彼女はきょとんとしたままの表情だった。
「……君は、ハガクレの事が好きかい?」
「えっ……っと、どうして突然そんな」
改まった問いかけからは想像のできない内容に緑谷は真っ赤になりながらテンパっている。
「……まだ気持ちの整理がついてるワケじゃないけど……葉隠さんの事を考えると胸が締め付けられたみたいになって、どうしようもない気持ちになる。多分、客観的に見ればこれは“恋愛感情”なんだと思う。でもそれをストレートに伝えて、今の関係性を壊したくないって気持ちもある……断られたらどうしようって」
「……ふふっ。だってさ、ハガクレ」
エースが葉隠の肩を叩いた瞬間、彼女の姿がぼやけて
何も気づいていなかった表情は崩れただ茫然としており、その顔は湯気が出そうなほどに真っ赤に染まっている。
つまり葉隠に話が聞こえないようにしていたのではなく、緑谷が葉隠に気づかれていないように錯覚させられていたのである。
「……っひどいよエースさん……こんな、こんな……っ」
葉隠は間接的な告白に喜んでいるような戸惑っているかのようななんとも言えない表情となっていた。
「こうでもしなきゃ、ミドリヤは動かなかったでしょ? それに――これで私も心おきなく身を引けるってものさ」
エースは悲しそうに微笑む。
「私が願うのは恩人の幸せ――ミドリヤ、つまり君の幸せさ。もしかしたら私は君に好意を抱いていたかもしれないが、この気持ちは忘れるさ」
「っそんな……忘れるだなんて」
緑谷は何か言いたげに口を開くも、エースの表情に固まる。
泣き笑いのような、あふれる感情を押し殺しているような表情だった。
「私を助けてくれた少年にもう一度会えた。それだけでもう十分さ」
「エースさん……」
「で? ハガクレの答えは?」
「ッ!」
エースに促された葉隠は恥ずかしさで一層頬を赤く染める。
恥ずかしさからか、次第にその顔が透明になり見えなくなっていく。だが緑谷には彼女の表情がありありとわかった。
「……私も、同じ気持ち、だよ。初めて会ったとき緑谷くんは私の事を“視て”くれた。私だって見たことのない私の顔を見てくれていた。とっても嬉しかった」
再び葉隠の表情が浮かび上がってくる。幸せをかみしめているような、満面の微笑だった。
「でもこの気持ちって、デザグラが終わったら消えちゃうかもしれないから、今伝えるね――私は緑谷くんのことが好き。もちろん、男女の仲として、好きだよ」
葉隠はすっと緑谷へと歩み寄り顔を近づける。エースは咄嗟に背を向けて一部始終を見ないように努めた。
「――私の気持ち、伝わった?」
「……う、うん……十分!」
緑谷は唇に残る感触に戸惑いつつも、ゆっくりと頷いた。
「ふふっ。お邪魔虫は退散することにするよ。少しくらい二人の時間を楽しみたいだろう?」
「「ッ!」」
エースのからかうような視線に緑谷と葉隠は思わず赤面する。
「安心して。君達のその気持ちは絶対に忘れさせないから」
彼(?)は覚悟を決めるように胸の前で拳を握り締めた。
全てがなかったことになったとしても、この二人の幸せは決して奪わせない。
そのためならば――きっと彼(?)は化け狐にだってなるだろう。
――――
――
――オーディエンスルーム。
「――嬉しいよ。君の方から会いたいって言ってくれるなんてね」
ジーンはソファに腰を掛けながら嬉しそうに笑っている。
「勘違いしないで欲しいな。私は君のことは嫌いだ。でも君の提案は私にとって都合がいいから乗るんだ」
「だとしても嬉しいよ。“推し”のライダーと一緒に戦えるんだからね」
ジーンはミステリアスな微笑を絶やさず、懐からタブレット端末を取り出す。背面にはギーツのアイコンをかたどったシールが貼られており、ファンであることをアピールしているかのようだった。
「3本目のヴィジョンドライバーは仮面ライダークロウ――治崎 廻が持っている。奴はジャマーガーデン――ジャマトの本拠地を襲撃しその力を蓄えている」
「……ジャマトの本拠地も把握してたのか」
「そこはいいじゃないか。重要なのは奴がデザグラを凌ぐ戦力を蓄えている、というところだ」
ジャマトの本拠地を襲ったということはジャマト達をその手中に収めているということを意味する。
デザグラではただの討伐対象、ゲームの敵キャラでしかないがその戦闘能力は並みのヒーローを凌ぐ。
仮に軍隊の様に統率された状態で攻め込めば一つの国すら落としうるだろう。
「3本目のドライバーさえなければ即座にクロウをリタイアさせれば解決だ。でも奴は既に運営の支配下を抜け出ている。だから直接的に奴を叩くしかない」
「成程ね。勝算はあるのかい?」
エースはタブレットの情報を眺めながらジーンに問いかける。
「勝算は――君さ」
「……はぁ」
無敗のデザ神。
デザイアグランプリ史上初の連勝記録を樹立しているデザ神であるエース。それこそがジーンの勝算であった。
どんな相手であろうとも必ず勝利してきたエースが味方に付けば、確かに勝てると錯覚してしまうのも無理はない。
「簡単に言ってくれるね」
エースは自分の強さありきの作戦に思わずため息をついてしまう。
「まさか……出来ないワケじゃないだろう?」
「…………」
ジーンの期待のこもったまなざしを受け、エースはノーと言い切ることはできないのだった。
――――
――ジャマーガーデン。
治崎は手中に収めたジャマト達を用いた計画を練っていた。
エリの希望をすべて奪い、再び手中に収めるための計画だ。
“自分は普通の女の子のようには生きられない、生きてはいけない”
そう錯覚させ、自ら治崎の庇護下に戻らざるを得ないようにさせる算段だった。
「……やはり、運営には筒抜けだったようだな」
治崎は不都合な乱入者たちを見て深いため息をついた。
「お前のせいでオレの大好きなデザグラがめちゃくちゃだ。そのドライバーを返してもらうよ」
――LASER RAISE RISER ...
「私は巻き込まれた側だけど――君を野放しにしていたらエリちゃんの教育に悪いからね」
――DESIRE DRIVER
ジーンはレーザーレイズライザーを、エースはデザイアドライバーをそれぞれ装着する。
「……そうか。まだお前はエリを救えると思っているのか」
――VISION DRIVER ...
治崎は呆れたように頬を掻きながらヴィジョンドライバーを装着する。
「救えるとも! エリちゃんにだって幸せになる資格があるんだもの」
――SET
エースはブーストマーク2バックルを装填する。リスクはあるが、以前にヴィジョンドライバーで変身したグレア2を斃したという実績があった。
「……エリの個性を
――GLARE2:LOG IN
治崎は手袋を取り外し指紋を――ベロバから奪った指紋を認証させる。
「へえ……君達の間にも因縁があったんだね」
――ZIIN:SET
すっかり蚊帳の外なジーンだったが、ライダー同士の信念がぶつかり合う様を見てはしゃいでいた。
「「「変身!」」」
――BOOST:Mark2
――I HAVE FULL CONTROL OVER:GLARE2
――ZIIN:LOADING ...
三人の変身に合わせてジャマト達が集結する。
中にはボス級のジャマトやジャマトライダーも含まれていた。
――READY ... FIGHT!!
先陣を切ったのはギーツだった。
あふれんばかりのパワーをフルに生かしてグレア2に格闘戦を挑む。新たな主を庇うかのように飛び出てきたポーンジャマトを薙ぎ払いグレア2に右ストレートを叩きこむ。
「ッかはっ……さすがに、堪えるな」
身をもって威力を知ったグレア2は距離を置くとマグナムバックルとモンスターバックルを取り出す。
「パワーで敵わないのなら――こっちは数だ」
――SET-UPGRADE ...
グレア2は2体のジャマトライダーを呼び寄せ戦力を強化する。
――REMOTE CONTROL:MAGNUM
――REMOTE CONTROL:MONSTER
強化されたジャマトライダーは波状攻撃でギーツへと襲い掛かる。
「数を増やしたって私は――」
ジャマトライダーたちを迎え撃つギーツだったが、強烈な眠気に襲われて戦闘が困難となる。
戦闘を継続することすら困難な眠気にギーツの動きがぎこちなくなる。
「っ……」
ジャマトライダーたちの猛攻を受けギーツは変身を解除され、エースは地面を転がされてしまう。
「……ギーツの生きざまも、ここまでか」
ジーンはジャマト達を軽くあしらいながらも窮地のエースをただ眺めている。
推しのライダーの最期を目の前にして感極まってさえいた。
「……薄情な味方だな。同情するよ」
――DELETE ...
グレア2は必殺技を放つ体勢となる。ジャマトライダーたちはエースが決して逃げ出さないようにと言わんばかりに彼(?)を羽交い絞めにしている。
「……っ!」
もはや目を開けている事すら困難なほどにエースは眠気に抗えず、徐々に意識を手放していってしまう。
「ありがとう、ギーツ……君の生きざまは、確かにオレを感動させてくれた」
ジーンはエースの最期に黙とうをささげている。
「――アハハ! 無様ねぇっ!」
軽薄な笑い声が響く。
乱入者はジーンのレイズライザーを奪い取るとグレア2に弾丸を放ち必殺技の向きを反らさせる。
「ベロバ!? なぜおまえがここに?」
ジーンはレイズライザーを奪われたことで変身が解除されてしまい、戸惑いの表情を乱入者――ベロバに向けている。
「何でって――
ベロバはジーンから奪ったレイズライザーでジャマトライダーを攻撃、エースを解放する。
「……成程。右腕の借りを返しに来た、というわけか?」
グレア2はこれ見よがしに自分の右腕をひらひらさせる。
ベロバは奪われた自分の右腕のありかを忌々しそうに睨み付けた。
「ふん! そうなるのかしらねぇ……」
彼女はうずくまっているエースの下へ歩み寄るとその腕を掴んで体を引き起こさせる。
「……情けない姿。これが“無敗のデザ神”とは……アハハ! 笑っちゃうわね」
「…………っ」
エースは何か言いたげに視線を送るも、口が開かれることは無い。眠気が強すぎて意識を保っているだけで精いっぱいなのだ。
「ギーツ、あんたをこんなところでは死なせないわ」
――REVOLVE ON
ベロバはギーツのドライバーを反転させる。
「んッ」
そして右手がないため口を使ってジーンのライズカートリッジをレイズライザーから取り外し、それをエースのドライバーへ装填した。
――SET-UP ...
エースの意識が覚醒する。
レーザーレイズライザーに搭載された“理想の自分をデザインする”力によって彼(?)の体がわずかに書き換えられたのだ。
「こんな幸せの絶頂で死なせない。死ぬんなら――不幸のどん底で、惨めに泣きながら死になさい」
「……ふふっ。それは難しいかな」
エースは静かにベロバを下がらせつつ、右手を突き出して狐の影絵を作る。
「不幸のどん底はもう経験済みさ。あれ以上の不幸なんて――もう経験しようがないからね」
「……ふん! べー、だ!」
ベロバは舌を突き出してエースを小馬鹿にしつつも、どこか嬉しそうな様子だった。
「――変身!」
――DUAL ON
指を鳴らし、エースはバックルを起動する。ブーストマーク2バックルから放出されるエネルギーがレイズライザーによって制御され出力が安定、赤い炎は収束し蒼く変化する。
――HYPER-LINK:LASER BOOST
真っ赤なキツネは白いアーマーを纏い真の姿を現す。
「――さあ……ここからが、ハイライトさ」
ギーツは挑発するようにグレア2を指差す。
――READY FIGHT!!
――――
――
――オーディエンスルーム。
下校途中だった緑谷はツムリから呼び出され神殿の一角――
「えっ!?」
部屋に足を踏み入れた瞬間、彼は思わずぎょっとしてしまう。
至る所に配置されたタイクーングッズの数々。どこで撮影されたのかもわからないゲーム中、日常問わない写真の数々。相当なファンであることが端々から見て取れた。
「……あ、お、お初にお目にかかりますぅ……」
部屋の主、セセラは恥ずかしそうに緑谷を迎え入れる。
三つ指をついて深々と頭を下げ、歓迎の意を全身で示している。
「あ、どうも初めまして。雄英高校ヒーロー科……“仮面ライダー”タイクーンの緑谷 出久です」
「は、はい……存じ上げております……」
お互いにかしこまった結果、なんとも言えない空気が場を支配する。
「……あの、差し出がましいことは承知のうえでお伝えします」
セセラはすっ、とタブレットを差し出す。そこにはジャマーガーデンのライブ映像が流れている。
「……恐らくギーツはあなたに何も告げずに戦いへ向かった。まあ私としてはそれで全然かまわないのですが……きっとあなたはそうではないのでしょう」
「エースさん……っ!」
エース――ギーツは一人で戦っていた。
「もしあなたが戦うというのならば――」
セセラから差し出されたボックスを開くと、中にはブーストバックルが収められている。
「私は、全力でサポートさせていただきます」
「……っ!」
緑谷はブーストバックルを手に逡巡する。
エースが一人で戦いに赴いたのは、きっと自分をまきこまないため。
手に入れた幸せを失わせないようにその身をかけて戦いに向かったのだ。
(だめだ……その方法じゃ――エースさんの幸せは)
しかしそれでは緑谷は幸せになれたとしてもエースは幸せになれないかもしれない。
その身と引き換えに戦い、命を賭してでも目的を果たそうとしただろう。
自分の恩人を見つけるためにデザグラを戦い抜いたエースならば、やりかねないはずだ。
「ありがとうございます、セセラさん。僕は――エースさんを助けに行きます!」
緑谷はブーストバックルを懐にしまうとジャマーガーデンへと向かう。
「……はぅ……推しが推しの言葉をしゃべってる……」
一人残されたセセラは恍惚とした表情を浮かべるも、大慌てで首を振って正気に戻る。
「こうしてはいられないわセセラ! 推しが戦うと決めたなら――それを助けるのがサポーターってもんでしょ!」
彼女も緑谷の後を追いかけてジャマーガーデンへと向かうのだった。
いよいよ次回でほのぼのifルートも最終回です。いうほどほのぼの感はありませんでしたが、ようやく完結できそうです。
もう少しだけお付き合いください!