確かに、愉悦も笑いと言えば笑いですからね。
遂にifルートも完結です。
どのようなラストなのか、本編との違いを楽しんでいただけたらと思います。
――――
――
――READY FIGHT ...
レーザーブーストフォームとなったギーツは挑発するようにグレア2を指差す。
「……そんなに重ねがけして大丈夫なのか? これ以上のデメリットを背負わなきゃいいがな」
ポーンジャマト達が集結しギーツへと襲い掛かる。
ギーツは重力を発生させそれらを蹴散らす。
「アハハ! レーザーレイズライザーには“理想の自分”をデザインする力があるの。それを使って、ちょっとだけ私好みに染めたの――少なくとも、戦ってる最中にお眠にはならないはずよ」
「キミ好みに? ……それはちょっと困るな」
ベロバの言葉にギーツは肩をすくめた。その片手間にポーンジャマトを打ち払っている。
「それは――厄介だな」
続けてジャマトライダーが立ちはだかる。
――BOOST TIME!!
しかしジャマトライダーはもはやギーツの敵ではなかった。
ギーツは冷静にバックルを起動し必殺技の体勢に入る。高速で周回しつつ次々とジャマトライダーに攻撃を浴びせていく。
――HYPER BOOST GRAND VICRORY!!
2体のジャマトライダーは空中へと飛んでいき、そのまま爆散した。
「参ったな……手も足も出ないとはな」
グレア2は地面に落ちたバックルを見てため息をつく。
だが諦めたようにヒュプノレイを展開しギーツと戦う覚悟を決める。
ギーツはヒュプノレイからの光線を躱しつつグレア2へと肉薄しラッシュを仕掛ける。
深紅の炎を纏った拳はグレア2を圧倒していく。
「はっ!」
「ぐぅううっ!?」
重力操作によってグレア2の体が浮かび上がり、その抵抗を奪う。
ギーツはすかさずレイズライザーのクロスオルタネーターを起こす。
――FINISH MODE
青い炎を纏ったギーツの蹴りがグレア2を襲う。
二度、三度と蹴りは加速していき、あまりの速度に足は残像を残して加速していく。
――LASER BOOST VICTORY!!
ライダーキックがグレア2へと命中する。
「――――ッッ!」
グレア2は空中で爆散、ヴィジョンドライバーは地面へと落ちるのだった。
――――
――
「……まだ、まだだ……っ!」
変身を解かれた治崎はデザイアドライバーを取り出す。
スペックの差で勝てないことは理解していたが、それでも引き下がるつもりはなかった。
「往生際が悪いね……」
エースは地面に落ちているヴィジョンドライバーを拾い上げつつため息をつく。
対する治崎は足元に落ちていたマグナムバックルを拾い変身を試みる。
「――残念だがお前はここまでだ」
しかし二人の戦いは実現しなかった。
どこからともなくギロリが姿を現し、治崎の右腕を掴んで変身を止める。
「貴様……っ」
すかさず個性を発動してギロリを排除しようとする治崎だったが、潔癖のため手袋をしていたことが災いし発動することが叶わなかった。
「どうやらお前をエントリーさせたのは間違いだったようだな」
ギロリは治崎のドライバーからIDコアを抜き取る。
「お前に、仮面ライダーの資格はない」
――INSTALL ...
ギロリはグレアに変身すると、IDコアを握りつぶして破壊する。
破壊されたIDコアは空中で煌めきながら消滅した。
「……ックソ!」
――RETIRE...
それにより治崎の敗退が確定し、その体が消滅する。
「……これで厄介者は片付いた。さあ、ドライバーをこちらへ」
グレアはギーツに向けて手を差し出す。
ギーツ――エースは変身を解除すると、ヴィジョンドライバーを手に逡巡する。
「……これがあれば
「ええ、そうよ♡ 運営にとってはまさに目障りなドライバーってワケ♡」
ベロバはエースの意図に気づくと愉快そうに微笑む。
「っまさか! そんなことはさせな――」
「――っ今だエースさん!」
グレアもまた意図に気づくも、乱入してきたタイクーンによってそれを阻まれてしまう。
「ありがと、それじゃ――行ってくる」
エースはビジョンドライバーを装着すると“創世の女神”のいる空間へとワープしていった。
――――
デザイア神殿の一角。
運営側の人間でも限られた者しか立ち入ることを許されない空間。
創世の女神はそこに安置されていた。
「……これが、創世の女神」
翼を携え球体のようなものを抱えた女性の石像――それが創世の女神の正体。
エースは女神を見た瞬間、言いようのない嫌悪感に襲われた。
「――流石は不敗のデザ神だ。ここまでたどり着くとはね」
現れたのはプロデューサーのニラム。彼は呆れたような表情でため息をついている。
「……不思議な感覚がするよ。どう見ても人ではないのに、人の様に感じる」
「それもそうだろうね。女神は元は人間だと聞いている」
エースはぐっ、と拳を握り締める。その瞳はどんどん鋭く細められていく。
「……こうなることを、彼女は望んでいたのかい?」
「当然だ。女神は我々と共にある存在だからね」
「へぇ……」
ニラムはさわやかな笑顔を浮かべているも、対照的にエースは険しい表情をしている。
狐耳は警戒するかのように後ろを向いており、尻尾の毛は逆立っている。
「……そうだとするなら、不思議だね」
エースはヴィジョンドライバーを取り外し、代わりにデザイアドライバーを装着する。
「私には彼女が
――SET
「“助けを求めている”? ありえない。そんなものは
――GAZER : LOG IN
「都合のいい思考回路だね。彼女が君たちに好意的だってのも、それこそ
――SET-UP
「言うじゃないか……」
ニラムはプロビデンスカードを弄びながらエースを一瞥する。
「君は
――INSTALL ...
「私だって、もっと叶えたい願いがあったんだけどな」
――DUAL ON
エースは挑発するかのようにニラムを指差す。
「「変身!」」
――INNOVATION AND CONTROL : GAZER
――HYPER-LINK:LASER BOOST
ゲイザーは肩のユニット――ドミニオンレイを展開。
ギーツはドライバーからレイズライザーを引き抜きライズカートリッジを装填。
――READY ... FIGHT!!
攻撃がぶつかり合った。
――――
――
ジャマーガーデンではタイクーンとグレアの戦いが繰り広げられていた。
「何故だ!? なぜ君はギーツの味方をする!?」
グレアは義憤にも似た怒りを抱いていた。
自分の欲を満たすことしか考えていない自己中心的なライダー、ギーツ。そんなギーツに対抗出来うる才能を秘めていたタイクーン。
彼はタイクーンこそが打倒ギーツを成し遂げうる存在であると信じてやまなかった。
そんなタイクーンが自分に牙を剥き、あまつさえギーツの味方をしたのである。
「あんな――自分の欲を満たすことしか考えていない男をなぜ!?」
「エースさんは――そんな人じゃないッ!」
グレアの決めつけにタイクーンは激怒する。
自分の欲を満たすためだけに戦う――エースがそんなことをするような人物でないことは、彼(?)と交流のある者ならば知っている。
時に他人を化かし、からかうことはあるが――決して自分のためだけに戦うような人間ではない。
誰かのため、自分をなげうっても戦うことのできる人間だ。
「何も知らない癖に――わかったようなこと言うなよッ!」
――SET
タイクーンはブーストバックルを装填、即座に起動する。
――NINJA & BOOST
脚部のマフラーから火を噴きながらも強烈な攻撃をグレアに見舞う。
グレアはゲーム運営者用装備、主な目的は暴走したプレイヤーの鎮圧にある。故にプレイヤー向け装備をはるかにしのぐ性能を持っており、それはたとえブーストバックルを用いたとて覆らない。
しかしタイクーンは気合でその差を埋める。
さらに向こうへ――PLUS ULTRA
雄英の校訓を現すかのように、装備の性能を十二分に引き出していた。
「無駄だ! たとえ君では私には――」
「――一人じゃなければ、ね!」
――TACTICAL THUNDER
雷撃がグレアに襲い掛かる。
黒煙が晴れ現れたのはナーゴ。ビートアックスを構え、グレアと対峙している。
「何ッ!?」
「――ま、あたしが言えた義理じゃないかもだけど」
――TACTICAL BREAK!
続けて乱入してくるのはバッファ。力任せにゾンビブレーカーを振り下ろしてグレアを後退させる。
「人の人生弄ぶゲーム主催してる奴が善人面すんなっての」
まさに四面楚歌、グレアはライダーたちに取り囲まれてしまう。
「お前達……
「……確かにデザグラは素敵な出会いをくれた」
ナーゴはちらり、とタイクーンの方を見る。
「でも――誰かの不幸にするゲームなんて、やっぱり間違ってるよっ!」
――SET FEVER!
ナーゴはドライバーを反転させるとフィーバースロットバックルを装填する。
「……あんたら運営の隠してた“秘密”を知ったら――こうなるに決まってるでしょ」
――SET FEVER!
バッファも同じようにフィーバースロットバックルを装填した。
「……っ何を……私は、世界を守ろうと」
「本気で世界を守りたいなら――」
――GOLDEN FEVER
「――ゲームにする必要ないでしょっ!」
――GOLDEN FEVER
ナーゴ、バッファ両者共に“???”の絵柄を引き当てる。
――JACK POT HIT! GOLDEN FEVER!!
そして抽選されたのは――ブースト。
大幅に強化されたことでグレアは一気に窮地に陥る。
「っやむを得ん。こうなったら――」
――HACKING ON ...
だがいくら強化されようともプレイヤーの枠を超えることはできない。グレアの持つゲームマスター権限――ハッキング機能でナーゴ、バッファを操ろうと試みる。
「っ何!?」
しかし発射されたヒュプノレイは弾丸によって撃ち落されてしまう。
「――これが答え、ってことでしょうが」
現れたのはセセラ。変身した状態でレイスライザーを構えている。
「――俺は、彼女の選択を尊重したい」ボソッ
「――こっちの方が楽しそうだし、乗らせてもらうぜ?」
続けて現れるのはキューン、ケケラのサポーター二人。
「っ何を……! こいつらに協力すれば、貴方たちの好きなデザグラが無くなってしまうんだぞっ!」
「推しの覚悟に準ずるのがサポーターってモンでしょうがっ!」
キレ気味に放たれたセセラの銃弾がグレアに襲い掛かる。
「…………」ボソッ
――KYUUN:SET
「笑いにも“種類”があんだよ」
――KEKERA:SET
キューンとケケラはレイズライザーにカートリッジを装填、それぞれ引き金を引く。
「「変身」」
――KYUUN:LOADING ...
――KEKERA:LOADING ...
「……なんだ、この胸に湧き上がる想いは」
そんな
どうしようもないくらい熱い感情。
それこそが“感動”であることに彼は気づいていなかった。
「アハハ! サポーターに愛想をつかされちゃ、デザグラももうお終いね!」
ベロバはライダーとサポーターが団結している状況を面白がって笑っている。
変身さえできるのならばすぐさま参加しそうなほどだった。
「なぜだ……っ! 私は、ただ――」
「……僕はエースさんを信じてる。だから――」
――BOOST TIME!!
タイクーンは素早くブーストバックルのスロットルを二回吹かす。
「エースさんがデザグラと戦うなら、僕はそれを助けるだけだッ!」
――NINJA BOOST GRAND VICTORY!!
タイクーンのライダーキックがグレアに命中し、その体が浮かび上がる。
「これ以上悲劇は起こさせないっ!」
――GOLDEN FEVER VICTORY!
そこへナーゴとバッファの必殺技が連続して命中する。
「さらばデザグラ――私に喜びをくれて、ありがとう」
――FINISH MODE
「……たとえ世界中が敵に回ろうと、僕は君の味方だ」
――FINISH MODE
「ま、存分に楽しませてもらったぜ」
――FINISH MODE
とどめとばかりにサポーターたちの必殺技が浴びせられた。
グレアは空中でスパークを生じさせながらも、爆発四散した。
――――
――
「――はぁっ!」
ギーツはゲイザーに接近しながら銃弾を浴びせていく。
対するゲイザーはドミニオンレイで防壁を生成しそれを防ぐ。両手は後ろで組み、余裕すら見せていた。
それを上回る速度で攻撃を繰り出すも、自動で防壁が再生成されて攻撃を防がれる。
「流石は無敗のデザ神。だが――」
体勢を整えるべく退いたギーツに向けて光線が照射される。
慌てて回避しようとしてギーツはバランスを崩してしまう。
「この程度が限界か」
ゲイザーは容赦なくギーツに光線を浴びせていく。
「舐め、るなッッ!!」
重力操作で浮かび上がったギーツは光線を回避しつつ着地、再び攻勢へと向かう。
――BOOST TIME!!
素早くドミニオンレイの間合の内へ入ったギーツは遂にゲイザーへ一撃を見舞うことに成功する。
「ふん……」
ゲイザーもようやく腕組を止め初めて防御の構えを取る。
ギーツの右ストレートはいとも簡単に受け止められてしまう。
「ッッ!」
「なっ!?」
しかし彼(?)はひるむことなく拳を振り抜く。右腕のマフラーが火を噴いて推進力を生み、防いだゲイザーの手のひらごと殴り抜く。
「……足元くらい見たらどうだい? じゃなきゃ――」
ギーツは畳みかけるように拳を振りかぶる。
ドミニオンレイはゲイザーの周囲に再び舞い戻っており、防壁を生成して攻撃を防ごうとする。
防壁はギーツの拳を受け止めると見せかけ――わずかに狙いがずれる。
「っ!?」
「掬われるものさ」
攻撃をもろに喰らったゲイザーはわずかによろめく。すぐさまギーツは飛び蹴りを見舞おうと跳躍する。
ゲイザーは再び防壁を生成するも、またもや防壁がずれて攻撃を通されてしまう。
「っ……成程、重力操作か」
防壁がずれるからくりはレーザーブーストフォームが持つ重力操作の能力にあった。
ドミニオンレイの位置を重力操作でずらすことで防壁の位置をずらし、僅かにできた隙間を縫うようにして攻撃を通していたのである。
「ふふっ……少しは身に染みたかい?」
「そうだね――君が一筋縄でいかないということは理解した」
ゲイザーはプロビデンスカードを抜くと素早く二回読み込ませる。
――SHUT DOWN ...
「さあ……ここからが、ハイライトさ」
――FINISH MODE
ギーツは再びレイズライザーをドライバーに装填するとクロスオリジネーターを素早く操作する。
その足に真紅の輝きが集約していく。
対するゲイザーの手元には黄金の輝きが集まる。
「っ!」
ギーツはゲイザーへ向けて飛び掛かると見せて、くるりと方向を転換――創世の女神へ向けて駆けだす。
「何ッ!?」
迎撃しようと必殺技を放とうとしていたゲイザーだったが、虚を突かれて大きな隙を晒してしまう。集約していたエネルギーは霧散し、無防備な姿をさらしている。
「はぁぁぁッ!」
――LASER BOOST VICTORY!!
悲鳴のような叫びが響き渡った。
ギーツのライダーキックは、見事創世の女神に命中する。
デザイアグランプリの根源たる女神は、ギーツの攻撃を受けて無残に破壊されてしまうのだった。
――――
あふれんばかりのエネルギーが放出される。
まばゆい光に包まれギーツ――エースの装着していたデザイアドライバーとバックルは消滅してしまう。
同時に、女神の安置されていた空間もまた霧散しゲイザーもそれに巻き込まれて消滅する。
(これでデザグラも終わり、か……)
光に飲まれながらエースは穏やかな笑みを浮かべる。
思えば初参加から数多くの戦いに身を投じてきた。
負ければ望みは一切叶わないというプレッシャー、絶対に勝たねばならないという焦燥感、デザグラが開催されている間中ずっと神経は張り詰められていたままだった。
(ごめん、おじさん……結局、おじさんは生き返らせてあげられなかったよ……)
それらから解放され、エースは穏やかな心持だった。
もうこれ以上戦う必要はない。
恩人――緑谷には平穏を与えることが出来た。とはいえ、彼は誰かを助けるため必ず戦いに身を投じるだろうが、それを咎めるほどエースは傲慢ではない。
エースはゆっくりと瞳を閉じて力の流れに身を任せる。
――鐘の音が響く。
『ありがとう』
女性の声が頭に響き、エースはゆっくりと目を開く。
その瞳は白い光しか映していない。だがぼんやりと、女性の姿が浮かび上がっているように感じた。
『私を解放してくれて、ありがとう』
「ああ……君が女神サマなんだね。どういたしまして♪」
女神は穏やかに微笑んでいる。
エースと同様、重責から解放されて安堵しているかのようだった。
『もう私に力は殆ど残されていないけれど――』
――鐘の音が大きく響く。
エースは暖かいものに包まれているように感じた。
『私の――“幸せ”を――あなたに――』
――――
――
空は青く澄み渡っている。
時は秋、雄英高校文化祭当日。
多くの関係者が待ち望んでいた晴れ舞台。
「――おいエース! 起きろって!」
「ん……」
エースは揺り起こされて目を覚ます。
一人しかいないはずの家に誰がいるのだろうか? 寝ぼけた頭で思考しつつ目を開く。
「おじ、さん……?」
そこには強面な男――狐火 英寿の姿があった。
エースの意識が一気に覚醒する。
治崎からヴィジョンドライバーを奪い、創世の女神と相対したこと。ドライバーを奪い破棄せんと襲い掛かってきたゲイザーとの戦い。その最中で創世の女神を破壊し――
「っ夢、じゃ……ないよね?」
「なに寝ぼけてんだ。急がねぇと遅刻すんぞ」
エースは視界がにじむのを感じる。頬には二筋の雫が垂れる。
思いもよらない“幸福”に胸が満たされて熱くなる。
「……うん」
だが嬉しさに浸ってられるほど朝の時間は長くない。
エースは身支度を整えると手早く朝食を完食する。
「それじゃ、行ってくるね。今日のステージ、楽しみにしててね♪」
「おう! 気を付けて行けよっ!」
――――
創世の女神は破壊され、デザイアグランプリは永久に開催が不可能となった。
同時に、この世界もまたデザイアグランプリが存在しなかった世界へと書き換えられ、数々の悲劇も
(ありがと、女神サマ)
エースはいつの間にか鞄に入っていた金貨を手に微笑む。
かつてのデザグラの優勝賞品――たった一枚のコインと栄誉。
平穏な世界のために戦った報酬としてはいささか少ないようにも感じたが、彼女にとっては十分だった。
「うわ~お客さんいっぱい入ってるね……」
ステージの袖から客席の様子を覗き見た葉隠の声は緊張を隠せていなかった。
「大丈夫、練習したとおりにやろう」
そんな彼女を励ますのは緑谷。彼もまた緊張しているのか表情が強張っていた。
デザグラが存在しない世界となったことで二人は戦いの記憶を忘れてしまっていた。だがその関係性は無くなっておらず、想い合う関係は続いていた。
(少し、贔屓が過ぎるんじゃないかな?)
エースは女神の差し金に苦笑しつつ、コインを衣装のポケットへとしまう。
「爆豪、あんた変なアドリブ入れないでよ? ヤオモモがテンパっちゃうからさ」
「あ”?」
耳郎の念押しに爆豪は青筋を浮かべている。そつなく何でもこなせる彼は練習でアドリブを入れることが多く、それが原因で八百万の調子を狂わせていたのだ。
楽器のセッティングも完了し、後は幕が上がるのを待つばかりだった。
(私はもう十分幸福を分けてもらった。次は――私が分け与える番だ)
エースの脳裏に浮かぶのは笑顔を奪われた少女――エリの姿。
その個性のせいで虐待され、その身を刻まれ心から笑うことができなくなってしまっていたエリ。
A組はそんな少女のために奮起していた。
来てくれた人全員を笑顔にできるような最高のパフォーマンスをする。
――開幕のブザーが鳴り響く。
幕が上がってもなお暗いままのステージに、観客は何が起きるのかと不安と期待が湧き上がる。
「――さあ」
そんな客席に狐火が浮かび上がる。
薄暗い空間を妖しい光が照らし上げる。
「開幕からハイライトさっ!」
「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!」
耳郎のシャウトと共に演奏が始まり、同時に狐火がクラッカーの様にはじけた。
プロ顔負けの演奏と歌唱、そして皆を楽しませようと考え抜かれた演出、それに合わせたノリのいいダンス。
さらには麗日の個性によって客席をも巻き込み、エースの化かしによってここがホールであることを忘れさせる。
「ふふっ」
パフォーマンスの最中、客席のエリの姿が目に入る。
初めは浮かない顔だった彼女も、気が付けば満面の笑みを浮かべていた。
(ここからさ、エリちゃん)
幸福は誰かの能力によって分け与えられるものではない。
誰かから受け取った幸福を、別の誰かに分け与えられるように全力で努力する。
デザイアグランプリなどなくとも、誰かが誰かのために行動できれば、人は幸福になれるのだ。
(ここからが、君の人生のハイライトさ)
大歓声が巻き起こった。
この日の出来事は“伝説のライブ”として雄英高校の歴史にその名を刻むのだった。
※EN ... Endress(終わらない)
これにて僕のデザイアグランプリ完結となります! 約半年の間でしたが、お付き合いいただきありがとうございました!
二次創作を書き始めて初の赤評価となり、とても嬉しくモチベーションも最後まで保つことができました。また、毎回感想もいただけてとても励みになりました。評価してくださった方々、感想をくださった方々、本当にありがとうございました。
当分一次創作の方に戻るので、ハーメルンではしばらく活動が無くなるかと思いますが、また縁があればその時はどうかよろしくお願いします。(もしかしたら最強フォームが出たら衝動的に短編を作るかもですが)
短い間でしたが、ご愛読ありがとうございました。