【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

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Ex2-3 異変O/バッドエンド

――――

――

 

 ――ジャマーガーデン

 

「ぐぬぬぬぬ……私の自慢の息子たちを勝手に……!」

 

 とっておきのジャマトを根こそぎ伴野に持っていかれてアルキメデルは怒りに身を震わせていた。

 

「ポッと出の奴に全てを託すだなんて……正気の沙汰じゃないっ!」

 

 手塩にかけて育て、そして過去の地層から発掘し復元していた虎の子まで連れていかれてしまいアルキメデルの怒りは頂点に達しようとしていた。

 

「いいじゃない。ジャマトなんていくらでも育てられるんだし」

「いい訳あるかっ! 私のかけがえのない息子たちを……っ!」

 

 相手がスポンサーであるのにも関わらずアルキメデルはベロバに食って掛かった。

 今にも年齢のことを引き合いにして罵らんばかりの勢いだった。

 

「ふん……バッカみたい」

 

 ジャマトに入れ込むアルキメデルを冷ややかに見つめながらベロバはビニールハウスを後にする。

 

「私も、とっておきの不幸を拝ませてもらおうかしら♡」

 

 彼女は惨劇の舞台へと足を運ぶ。

 その手には、黒く禍々しいカードが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――BEAT

 

ナーゴへ変身した葉隠を見た轟は、驚愕で目を見開いている。

 

「なんだ……その姿は」 

「っごめん、それは秘密!」

 

 ――READY FIGHT!!

 

 ナーゴはビートアックスを構えると、ジャマトライダーへと立ち向かっていく。

 大振りの攻撃はジャマトライダーを大きくのけぞらせる。

 

「ジャッ!」

 

 1対1(タイマン)ならば彼女に分があったかもしれないが、ジャマトライダーはもう一体居る。

 レイズアローから放たれた矢がナーゴへと襲い掛かる。

 

「ッ」

 

 矢を躱しつつナーゴはビートアックスのエレメンタドラムを素早く叩く。

 

 ――FUNK BLIZZARD

 

 選択するのは冷気属性、氷漬けにして各個撃破しようという目論見である。

 しかしジャマトライダーたちはそれを察知し、大きく二手に分かれる。1度の攻撃で拘束しようとすれば轟をも巻き込んでしまうことだろう。

 

「っ……!」

 

 どちらを優先して撃破するか迷うナーゴ。

 

 ――Jya Jya Jya STRIKE!

 

 迷う彼女のことなど待ってくれるはずもなく、ジャマトライダーによる必殺技が放たれてしまう。

 

「――葉隠ッ!」

 

 攻撃が命中する刹那、轟の個性が間に合い氷壁が生成される。

 

「正直こいつらの事はよくわかんねぇが、助けにはなれる」

「ダメっ……そんなことしたら轟くんが」

 

 飛んできた光の矢を轟は炎で迎撃する。

 冷気と炎、相反する二つの力が彼の体を包み込む。

 

「敵う相手かどうかくらい弁えてる。斃せねぇかもしれねぇが、お前の助けになりたい!」

「……っわかった!」

 

 ――FUNK BLIZZARD

 

 ナーゴは再びエレメンタドラムを叩き技を放つ体勢に入る。

 

「ボウガン持ってる方を凍らせてっ! 私はもう一体を!」

「ああっ!」

 

 ――TACTICAL BLIZZARD

 

 ナーゴの必殺技と轟の個性が同時に放たれ、2体のジャマトライダーは下半身を拘束されてしまう。

 

「伏せてっ!」

 

 ――METAL THUNDER

 

 続けてエレメンタドラムを2回連続で叩きモードを切り替え、ビートアックスが電撃を纏い始める。

 

「ジッ――!」

 

 ――TACTICAL THUNDER

 

 電撃が迸り2体のジャマトライダー打ち倒す。

 ドライバーとアローバックルが地面へと落ちる。

 

「ふぅ……」

 

 ナーゴ――葉隠は戦闘が終わって変身を解除する。

 張り詰めていた意識は完全に弛緩してしまっていた。

 

「――クルクテウ!」

「ッ!?」

 

 だがアローバックルを使用していなかった方のジャマトはしぶとく生き残っており、手にしていた刀を振り上げ報復せんと葉隠へと飛び掛かる。

 

「させるかっ!」

 

 刀が葉隠へと吸い込まれる刹那、迸る炎がジャマトを炙る。

 炎を纏った轟の左拳がジャマトの顔面へと突き刺さり、爆ぜるようにジャマトを吹き飛ばす。

 

「ジャッ――!」

 

 近くの木をなぎ倒しながらジャマトは吹き飛んでいき、大爆発を引き起こした。

 

「あ、ありがとう……」

「……ああ」

 

 轟は炎の力でジャマトを斃したことに思う所があるのか、じっと左手を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――NINJA

 

「変身……? なんだよ、それ」

 

 変身したギーツの姿を見た上鳴は驚愕で固まっている。

 まるで夢でも見ているかのような、だが思わず握り締めた拳の痛みでそうでないことを悟る。

 

「……ギーツ、その言葉を……君は信じるかい?」

 

 ――READY FIGHT!!

 

 ギーツはニンジャデュアラーを取り出し、中央で2分割する。

 それを順手で持つと二刀流の構えを取る。

 

「ケケス! ケケス!」

 

 ジャマトはギーツを指差して何かを叫んでいた。

 だが彼(?)は耳を貸そうともせず斬りかかる。

 ライダーの力をもってすればポーンジャマトなど取るに足らない相手である。一太刀を受けあっけなく爆散する。

 

「――あらカッコいい♡」

 

 真の脅威は新たに現れたこの女――ベロバの方だろう。

 

「誰だい、君は?」

「アハハ! デザグラの“プレミアム会員”……かしら?」

 

 ――LASER RAISE RISER ...

 

 ベロバは腰にライズカートリッジをあてがいレイズライザーを出現させる。

 

「会員、だって……?」

 

 ギーツは彼女の言葉に眉を顰める。

 薄々感づいていたデザグラの根本的な仕組み。それが物間とベロバの言葉でわずかながら輪郭を帯び始める。

 

「あんたの不幸、とくと拝ませてもらうわ♡」

 

 ベロバはライズカートリッジに装填されていたカードを黒く禍々しいデザインの物へと変更、レイズライザーを取り出しカートリッジを装填した。

 

 ――BEROBA:SET

 

 そしてゆっくりと銃口をギーツへと向ける。

 

 ――LASER ON!

 

 放たれた弾丸はベロバの姿を作り変えていく。それはライダーともジャマトともいえない歪な存在――牛を思わせる怪物の姿へと変える。

 

 ――PREMIUM BEROBA

 

「何だい……その姿は?」

「アハハ! プレミアム会員の証ってところかしら」

 

 ――SINGLE BLADE

 

 ギーツは見たこともない姿のベロバを警戒し、ニンジャデュアラーを合体させる。

 

 ――READY FIGHT

 

 一陣の風が吹き、先に仕掛けるのはベロバ。果敢に格闘戦を仕掛けに行く。

 相手の得意なフィールドで戦うほどギーツは愚かではない。即座にシュリケンラウンダーを回転させ牽制の技を放つ。

 

 ――TACTICAL SLASH

 

「ふん!」

 

 だが牽制の一撃は容易く打ち砕かれる。ベロバが腕を軽く振るとそこから斬撃が放たれた。

 懐へ入り込んだベロバは矢継ぎ早に足技を繰り出しギーツを追い詰めていく。

 

「ッ」

 

 いくらギーツが歴戦のデザ神であったとしても、ゲームの枠を超えた存在を相手取るには力不足だった。

 ましてや使い慣れていないバックルでは勝てる相手にも勝てないだろう。

 

「あぅっ!」

 

 強烈な一撃を受け地面を転がっていくギーツ。

 ベロバはレイズライザーの銃口を向けつつ近づいていく。

 

「アハハ! 連戦連勝のデザ神が聞いてあきれるわね。もう少し頑張ったら?」

 

 勝ちを確信し油断しきっているベロバ。

 ギーツはその緩みに漬け込み、ベルトのロックを解除し即座に反転させた。

 

 ――REVOLVE ON

 

「っ!?」

「はっ!」

 

 体の反転する動きを利用しベロバのレイズライザーを弾き飛ばす。そのままギーツは側転のような動きで起き上がりつつ弾き飛ばしたレイズライザーを拾うとベロバに向けて構える。

 

「ふふっ。プレミアム会員てのも大したことないね。この程度で化かされちゃうなんて♪」

「……言ってくれるじゃない」

 

 レイズライザーを奪われたことで変身の解けたベロバは悔しそうにギーツを睨み付けている。

 

「さて、と……このまま君を先生たちに引き渡せば一件落着。なんだけど――聞いてみたいことが出来ちゃってね。いくつか質問に答えてもらおうかな♪」

 

 ギーツは油断なく銃口を向けつつベロバへ歩み寄っていく。

 ただならぬ雰囲気を感じ取った上鳴はわけもわからず右往左往していた。

 

 ――♪

 

 その瞬間、ギーツのスパイダーフォンに通知が入る。

 銃口を向けたまま空いた手で通知を確認するギーツ。だがその内容を見た瞬間、彼(?)は固まった。

 

「嘘……でしょ?」

「――隙あり♡」

 

 ギーツの隙をベロバは見逃さなかった。

 達人のような歩調でレイズライザーを奪い返し、そのまま後ろに回り込みつつドライバーからニンジャバックルを強奪。

 流れるように膝裏を蹴って体勢を崩し、変身の解けたギーツ――エースの首筋に腕を回しヘッドロックをかける。

 

「あっ……ッ!」

「どうしたのかしら? そんな蒼い顔しちゃって」

 

 エースはベロバを振りほどこうともがくも、見た目にそぐわぬ怪力を発揮され抜け出すことができない。

 ベロバはスパイダーフォンの画面を覗き見てすべてを悟り、狂気的な笑みを浮かべる。

 

「アハハ! いいじゃないいいじゃない! 私はこういう不幸を見たかったのよッ!」

 

 それは飛び切りの不幸を運ぶ知らせ。

 ライダーが脱落――退場してしまったことを知らせる最悪の通知だった。

 

「ほらぁ……大人しくして? 私と一緒にもっと不幸を味わいましょ♡」

 

 ベロバはエースの首を締め上げつつ、現在進行形で起きている不幸を笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 ――ARMED DRILL

 

 ケイロウは召喚されたレイズドリルを即座に放り捨て拳を構える。

 

「むぅっ……」

 

 しかしその仮面の下で顔を顰める。

 腰はもう限界だと弱音を吐き、引き裂かれた背中は早く手当てを知ろと必死に訴えかける。

 額には脂汗が浮かび、刻まれた皺は痛みで深くなっている。

 それでも彼は、引き下がれなかった――いや、引き下がらなかった。

 

「じいちゃんが、変身した……?」

 

 突然姿の変わった祖父の姿を見た洸汰は呆然とその背中を見つめていた。

 全ては孫を守るため、たとえ命を落としたとしても戦い抜くしかないのである。

 

 ――READY FIGHT!!

 

「ジャァ……」

 

 相対するは三葉虫を思わせる姿のマーレラジャマト。手負いのライダーなど相手にもならないとばかりに笑っている。

 

「シィッ!」

 

 拳が空を裂く。

 だがその動きは精彩を欠いている。普段のケイロウからしてみれば止まっているに等しい速度。

 当然の様にそれは躱されてしまう。

 

「むぅう……ッ!」

 

 攻撃は空振り、さりとて衝撃が無くなることもない。ゲームや空想と違い、攻撃が不発とてそれ相応の反動を甘んじて受けねばならないのである。

 

「ジャッ」

 

 マーレラジャマトは躱した動きそのままに地面へ潜り込む。

 ケイロウは姿が見えなくなった敵の気配を追おうとするも、感覚を研ぎ澄ませるほどに体中の痛みを感じてしまう。

 

「ッ……痛みなど、捨ておけっ……!」

 

 だがそれを根性で耐えた。時代遅れの精神論で目の前の敵に全神経を注いで見せた。

 

 ――後頭部の産毛が逆立つ感覚。

 

 殺気、明確な殺意を持った気配。

 ケイロウはマーレラジャマトが飛び出すと同時にカウンターの拳を突き出す。

 

「――ッ!」

「ィッ!」

 

 かぎ爪と拳が交差する。

 ケイロウのマスクに罅が入り、マーレラジャマトの触角が欠ける。

 

「……なんでだよ」

 

 目の前で繰り広げられる命のやり取りを見て、洸汰少年は思わずこぼす。

 こんなことなどバカげている。

 命を懸けてまでなんで力をひけらかしているのか。

 それが理解できず――

 

「未来を守るために決まっておるじゃろ」

 

 ケイロウは割れた仮面の向こうからわずかに視線を送る。

 どこまでも穏やかで、優しい視線。

 

「こんな怪物がいたんじゃ、皆怖くて夜も眠れん。誰かを傷つけるために力を使う奴がおるなら、不安で外にも出られん」

 

 力をひけらかしたいのではない。

 世界を守る、皆の安全を守る。

 そのためには力を蓄えなくてはならない。

 蔓延る悪を速やかに倒し、一刻も早く皆に安心してもらうために。

 

「洸汰、お前の父ちゃんも母ちゃんも、そうやって戦ったんじゃ……洸汰、お前だけじゃない、世界の――みんなの平和を守るためにな」

 

 マーレラジャマトが立ち上がる。

 手負いのケイロウに手ひどくやられ、体中から体液を垂れ流している。

 

「何なんだよ……平和とかわかんねぇよっ! このままじゃじいちゃんが死んじゃ」

「……人間、いつかは終わりが来る」

 

 ケイロウはゆっくりと、腰のバックルへ手をやる。

 

「辛かろう、悲しかろう。もう世界が終わってしまったように思えるじゃろう――」

 

 ――DRILL STRIKE

 

 拳を構えたケイロウ。

 本来レイズドリルを介した必殺技。だが彼はそのことなどお構いなしに拳に力を貯める。

 

「だが失った物ばかり数えるな! 人生まだまだ始まったばかり! 世界はこれから広がっていくんじゃ!」

 

 ――一陣の風。

 

 気が付けばケイロウは拳を突き出している。

 音もなく、拳は既に放たれていた。

 

「…………」

 

 ジャマトは気づく。

 もう己の命が終わっていることに。

 そして音もなく崩れ落ち、爆発四散する。断末魔を上げることすらできなかった。

 

「じいちゃん!」

 

 ケイロウの変身が解ける。洸汰は倒れる聖拳へと駆け寄っていく。そのドライバーに装填されたIDコアは無残にもひび割れてしまっている。

 

「……洸汰、人生は悲しいことばかりじゃない……楽しいことがいっぱいある。人生生き抜いて、じいちゃんの言葉が嘘だと思ったなら――」

 

 聖拳はゆっくりと洸汰の頭に手を乗せ、微笑む。

 

「天国までじいちゃんを殴りに来なさい」

「そんな……っやだよッ!」

 

 洸汰は聖拳の体が消えつつあることを受け入れられず、ぽろぽろと涙を流している。

 だがそれはもうどうにもできず、消えゆく体に縋りつくしかなかった。

 

「じいちゃんとの約束だ……いいな?」

「……んっ!」

 

 ――MISSION FAILED...

 

 聖拳は穏やかに微笑んでいた。

 その体が消滅し、残されたのはドリルバックルのみだった。

 少年の嗚咽が、月明かりの下響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「――ぐあぁぁっ!」

「っ鉄哲!」

 

 ラフレシアを思わせるようなジャマト――ラフレシアジャマトは口から毒霧のようなものを吐き出している。

 それを受けた鋼鉄の個性を持つ生徒――鉄哲は腐食した腕を押さえて苦しんでいる。

 

「……ブフゥウゥ」

 

 ラフレシアジャマトの口から絶えず毒霧が放出されている。

 それはじわじわと森を侵食し、その木々を枯らせていっている。

 

「――伏せろっ!」

 

 ――MONSTER STRIKE!

 

 星を纏った拳が飛来しラフレシアジャマトを押し返す。

 どこからともなく現れたパンクジャックは油断なくファイティングポーズを維持する。

 

「あれ? また会ったね」

 

 そして襲われていた人物がかつてのゲーム――ケイドロゲームで見知った顔であることに気づく。

 

「お前……あの時の」

 

 拳藤は見覚えのあるオレンジのクマに鋭い視線を送る。

 

「ッねえ、私たちまた巻き込まれたの? アンタたちの“ゲーム”に」

「……さあね……本当に僕らがやっていたのは、ゲームだったのかどうか」

 

 パンクジャック自身、この状況の答えを持っていなかった。

 何が起こっているのか理解はできない。

 新たなゲームマスターはこの状況に対処する気持ちすらなく。

 世界など守る気がないと見物を決め込んでいる。

 

「――ジャ」

「ッ!?」

 

 紫色の光弾が放たれる。

 すっかり斃したと思っていたラフレシアジャマトの口が開き、攻撃を仕掛けてきたのだ。

 攻撃を受けたパンクジャックのキラボシチェスターが腐食し表面が融解する。

 

「はっ?」

 

 ラフレシアジャマトは“強すぎる”という理由で実践投入が見送られたジャマトだった。

 格闘性能が突出していい訳ではないが――口から吐き出す毒霧はライダーの装備を蝕む。ひとたび攻撃を受ければアーマーが崩壊し、ボロボロになる。

 出てくれば逃げの一択、ライダー側に勝ち目がなく面白くないと一蹴された過去がある。

 その代わりに破壊不能な“城”として生み出されたのがラフレシアフォートレスジャマトである。

 

「っ全く……強すぎる敵ってのは困るね!」

 

 ――REVOLVE ON

 

 パンクジャックは事情を知る由もなかったが、このままでは到底勝てる相手ではないと判断する。

 ベルトを反転させるとフィーバースロットバックルを装填する。

 

 ――SET FEVER!

 

「これはゲームか、それとも悪趣味な連中の娯楽か、僕にはわからないけど――」

 

 誰に語るでもなくつぶやきながら、彼はバックルのレバーを倒す。

 抽選が開始され、スロットが回る。

 

「少なくとも、僕は君達を助けたいと思っている」

 

 ――MONSTER

 

 止まった絵柄はモンスター。

 奇しくも下半身に装備しているバックルと同等の装備だった。

 

 ――HIT! FEVER MONSTER!!

 

 肩からなびくマント――固有装備のパンクジャックマントが黄金に変化する。

 両手両足の装備から放たれるのはまさしくモンスター級の一撃。

 しかしながら、装着されたモンスターバックルはラフレシアジャマトの攻撃を受けて腐敗し始めていた。

 

「無茶だッ! あいつの攻撃はお前のサポートアイテムだって」

「だからって逃げるヒーローはいないでしょ」

 

 拳藤の指摘の通り、ラフレシアジャマトへ攻撃するほどに装備は腐食していく。

 そもそも勝てるようにデザインされていない相手に立ち向かうなど無謀にもほどがある。

 

「まあ長期戦は無理だろうね。でも――バックルがダメになる前の、短期決戦なら!」

 

 パンクジャックは大きく跳躍しラフレシアジャマトへと飛び掛かる。

 殴れば殴るほど、叩けば叩くほど毒霧を吐き出す、そんな相手に長期戦は不可能である。戦いが長引けば装備は失われ、変身が解ければたちまち命を落とすだろう。

 だからこそ――一撃で。

 短期決戦、少ない手数で圧倒し斃しきる。

 幸いにもモンスターフォームは変身直後――バックルのモンスターを叩き起こした瞬間が一番強く、それは当然フィーバーモンスターフォームも同じである。

 

「――ッ!」

 

 息を突かせぬラッシュ。

 打てば打つほどパンクジャックの装甲は腐敗し、黄金のマントはぼろ布の様に乱れていく。

 

「――ッッ!」

 

 それでも一歩も引かない。

 引いてしまえば、もう二度と接近することなど叶わない。

 ラフレシアジャマトは流星群を思わせるラッシュに耐え兼ね、体勢が崩れていく。

 

「大したことないね! 能力が通用しなけりゃその程度かッ!?」

 

 ――HYPER MONSTER VICTORY!!

 

 殴る、蹴る、殴り続ける、蹴り続ける。

 怪物の様に容赦なく、一分の反撃すら許さない。

 

「――ジャァッ!」

 

 ラフレシアジャマトの体が爆発四散する。

 その衝撃でパンクジャックのドライバーに装填されていたバックルが――フィーバースロットバックルとモンスターバックルが腐敗し崩れ落ちる。

 

「……ははっ……どうだ、見たか――これが、主役の――」

 

 しかし体力の限界か、変身の解けた物間はそのまま地面へと倒れ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「――っ迷った……」

 

 バッファはゾンビブレーカーでポーンジャマトをねじ伏せつつため息をつく。

 聖拳を取り戻そうと飛び出したはいいものの、森の中では方向感覚などつかめず見事に迷子となってしまっていた。

 

「……ん」

 

 戦闘の音が聞こえてくる。

 恐らく出現したジャマトと誰かが戦っているのだろう。

 

「……あたしだけで探すよりはいいわよね」

 

 彼女は助太刀し、その後聖拳探しを手伝ってもらおうと音の発生源へと駆けていく。

 

「――ッッ!?」

 

 駆け付けた彼女の眼前には、到底信じがたい光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 ――MAGNUM

 

 緑谷はタイクーンへと変身し、マグナムシューターを構える。

 

 ――READY FIGHT!

 

「なっ……」

 

 幼馴染の“変身”に爆豪は大きく目を見開く。

 夢でも見ているかのような――いや、夢であるかもしれない。悪夢に出ている怪物が目の前にいるのだから、これは夢であるに違いない、と。

 だが否定しようとすればするほど、昼間の訓練で酷使してきた手のひらが鈍い痛みを放ち、これが現実であると訴えかけてくる。

 

「かっちゃん、下がってて……」

「……なめんじゃねぇぞ、コラ」

 

 怖気づく気持ちに発破をかけ、逆境にも思える状況を乗り越えようと必死に口角を上げる。

 

「ははっ……変身、ねぇ……そんなアイテム持ってりゃ、他人なんざモブに見えるわな」

「っ……!」

 

 タイクーンは何か言い返そうとしたが、古代魚ジャマトが襲い掛かってきたため応対できない。

 

「おまけに怪物だぁ? わけわかんなすぎて笑えるわ」

 

 爆豪の手のひらが爆ぜる。

 刀を振りかぶってきていたポーンジャマトは顔面を爆撃されゆっくりと崩れ落ちる。

 

「……“それ”がテメェと俺の違いだってなら――」

 

 彼は果敢に飛び掛かる。

 ポーンジャマト――悪夢でうなされる怪物だろうが構わない。

 要は勝てばいいのだ。

 悪夢に打ち勝ち、己の凄さを証明すればいいだけの話。

 

「ジャッ」

「……そいつをぶっ潰して、勝ちゃぁいいだけの話だ」

「……僕だって、負けないよ」

 

 マグナムシューターで古代魚ジャマトの眉間を撃ち抜きつつ、タイクーンは仮面の下で不敵に微笑む。

 弱気になってしおれている幼馴染など見たくない。

 常に前を、勝利を見据えて戦う――そんな一面に、彼は憧れたのだ。

 

「はぁ!? だからそのテメェをぶっ潰して勝つってんだよ!!」

「っだから僕もそれに負けないように――っ!」

 

 食って掛かろうとしたタイクーンに古代魚ジャマトが襲い掛かる。

 自分を忘れるな――そう主張しているようにも見えた。

 

「かっちゃん! そっちの雑魚ジャマトをお願いっ!」

「俺に命令すンじゃねぇッ!」

 

 相性は最悪。

 顔を合わせれば互いに顰め合う。普段は冷静でも互いのことになると途端にそれを失ってしまう――まさに犬猿の仲。

 だが組めれば最強。

 お互いの事を熟知しているが故に、連携は容易にできる。互いの強みを、弱みを知っているからこそ安心して背中を預けられる。

 互いの足りないところを埋め合うように、強みを生かせるように、自然と体は動き出す。

 

 ――榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)

 

 爆豪の体が回転しポーンジャマトを薙ぎ払う。

 着弾した瞬間の大爆発により、辺り一帯の木々が吹き飛ばされてしまう。

 だがそれだけの威力を喰らえば、ポーンジャマトはひとたまりもない。

 爆心地に佇むのは不敵な笑みを浮かべ肩で息をしている爆豪だった。

 

「……ハァ、ハァ……あとはテメーだけだ魚野郎……!」

 

 そして古代魚ジャマトを指差すと、親指で首を切る仕草をしてみせる。

 

「……やっぱ、君はすごいや」

 

 タイクーンは改めて幼馴染の強さを目の当たりにし、負けまいと奮起する。

 

「僕も――出し惜しみはナシだ!」

 

 ――SET

 

 そしてブーストバックルを取り出し装填する。

 このまま畳みかけ、古代魚ジャマトを斃す。マグナム単体で戦うのは心もとない――ブースト込みの最大火力で確実に勝つ。

 ブーストバックルのグリップを握り締めた瞬間、彼の視界に見覚えのある白い頭が映る。

 その白い頭は、緑色のボウガンを構え――照準をこちらに向けて定めていた。

 一時の勝利に油断し、弛緩している爆豪の方へと。

 

「っ危ない!」

 

 タイクーンはフォームチェンジを取りやめ咄嗟に爆豪を突き飛ばす。背中に矢を喰らってしまうもそれは大したダメージにはならなかった。

 

「ジャ――」

「ッ!」

 

 地面を水面の様に変化させ、古代魚ジャマトは剣を取り出していた。

 それはタイクーンの背中を斬り裂き、致命傷を与えた。

 

「っ……しま、った」

 

 タイクーンはよろめきつつもマグナムバックルを引き抜き、それをマグナムシューターへと装填。

 

 ――MAGNUM TACTICAL BLAST

 

「喰らえっ!」

「――!!」

 

 その一撃は古代魚ジャマトを斃すに至らなかったが、森の奥へと吹き飛ばすことに成功した。

 

「……っ」

 

 だがそこで限界を迎えたタイクーン――緑谷の体が崩れ落ちる。

 

「デクッ!」

 

 突き飛ばされて難を逃れていた爆豪は、大慌てで緑谷へと駆け寄っていく。

 彼の腰のドライバー、その中央に装填されているタイクーンのIDコアには、無残にも罅が入ってしまっている。

 

「……ごめん、勝てなかった」

「んなことどうだっていいッ! クソッ! どうなってんだよ……!」

 

 消えそうになっている緑谷の体を引き起こし、意識の薄れている彼の体をしきりにゆすって叫ぶ。

 ポーンジャマトは斃した。古代魚ジャマトも斃せそうだった。

 だがつまらない横やりが入ったせいで、すべてが台無しになった。

 

「……かっちゃん、これ……エースさんに、渡して」

 

 緑谷はブーストバックルを引き抜くと爆豪へ差し出す。

 

「っざけんな! テメーで渡せやッ! ……クソッ! なんで体が消えそうになってんだよッ!」

 

 だがそんな“最後の頼み”を聞き入れるほど彼はお行儀が良くない。

 消えゆく幼馴染の運命を変えてやろうとあがいていた。

 

「……たのむよ……ぼくは、もうムリだからさ」

「おい……待てよッ! 勝手に終わらすんじゃねぇよクソがッ! 俺に勝つんじゃなかったのかよッ!?」

「そう……だね……」

 

 緑谷の腕が――ブーストバックルを握っていた手がだらりと垂れる。

 瞳はうつろで、もう光を宿してはいなかった。

 

「……かつさ、いつか……きっと……」

 

 ――MISSION FAILED...

 

 静かに、二つのバックルが地面へと落ちていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



















※O ... Out of controll(制御不能)

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