――――
――
――時を遡ること14年前。
当時、あらゆる個性を見抜くと言われた老人がいた。
彼はその個性であらゆる者の真実を見抜くことが出来た。その力を用いて様々な人の潜在能力を見抜き、多くの人の成功を導いて来ていた。
特に多かったのは“個性の鑑定”。自分の子がどのような個性を持っているのか? 個性が中々発現しないが個性は持っているのか? そういったことを調べに多くの者が彼の下を訪れた。
『――医者からは“個性の出ないタイプだ”と診断されました。ですが……私にはどうにも信じられないのです』
やってきたのは“浮世”と名乗る夫妻。娘の
『ふむ、どれどれ……』
老人は
それが“見通す”個性の発動条件だった。
『むぅっ!?』
見えたものは老人に衝撃を与える。
『先生、どうですか……?』
老人は苦悩する。
とても一個人には――それも齢5の少女には扱いきれぬ強大な力。
悪人に知れればその欲望のままに使われ、
故に、老人は――
『……残念じゃが、この子には個性が宿っていないようじゃ』
嘘をついた。
鑑定の仕事をしていて最初で最後の嘘であった。
幸いにも
少女が“無個性”であることで起きる“不幸”を思えば、残酷な仕打ちであると言えるだろう。
事実、浮世夫人は泣き崩れ、診断された
だが老人の英断によって世界の命運はよい方向へ進むことだろう。
“創世”の力は秘匿され、決して日の目を見ることもない。
老人は秘密を守るため、
――こうして老人の英断によって世界は守られる……はずだった。
――――
「――ミツメ以外の、創世の力?」
『その通りだ』
新ゲームマスターのジットは投影されている映像を鋭い眼光で睨み付ける。
『彼女の力はミツメよりも強い――ミツメよりも簡単に世界を作り変えることができる』
デザグラの創始者であるスエルは以前にも“創世の力”を持つ女性をスカウト――否、“創世の女神”へと作り変えた過去がある。
ミツメと呼ばれていた女性は、幸せを分配する能力を持っていた。
世界の誰もが持つ幸せを願う力――“ギラギラ”と称されるそれを抜き取り、他の誰かへと与える。与えられたギラギラは“理想の世界”という形で反映され、与えられた者の理想の世界を叶える。
だが
「強い願いを実現する……成程。これなら“ギラギラ”など気にせずに世界を作り変えることができるな」
願いを叶え、それを世界に反映させる。
“
『彼女には是非とも次代の“女神”となってもらいたい――ジット、お前にその役目を任せよう』
スエルはヴィジョンドライバーによく似た白金のドライバー――ジリオンドライバーを差し出す。
創始者に認められた者のみが使用できる最上位のドライバー。それを受け取ったジットは眼光鋭いままに口角を上げる。
「ああ。任せておけ」
彼の視線は一つの映像――バッファがダパーンを蹂躙している最中の物へ向けられている。
最強の力を得ながらも、その信念は揺らいでいるバッファ。
「さて……とっておきの“バッドエンド”を作り出すとしようか」
――――
――
「――待たねぇよ。悪さする化け狐は、始末しなきゃな」
黒いギーツ――Xギーツは刀をエースへと向ける。
しかしエースは戦う意思などなく、向けられる切っ先を呆然と見つめている。
「嫌だ……おじさんと戦いたく」
エースは咄嗟に上体を反らし振るわれた刃を躱す。
切っ先が額を掠め、前髪がわずかに斬られてしまう。相手が本気であると悟ったエースは大慌てで距離を取る。
「チッ……しくじったか」
初太刀で仕留めきれずXギーツは悔しそうにため息をつく。
「……ッ!」
――SET
なぜXギーツ――狐火が戦いを挑んでくるのかわからなかった。
記憶の中の彼は豪快でガサツだが優しさを秘めており、理由もなく暴力を振るうことは決してなかった。
こうして攻撃してくる以上、エースに何らかの非があると見ていいが、彼女(?)はその理由が見当もつかなかった。
「……変身っ!」
――BOOST:Mark.3
次々と振るわれる二刀を躱しつつバックルを起動、変身し振るわれる刀を前腕で受け止める。
「……どうして、こんなこと、するの……?」
「あん?」
鍔迫り合いを嫌ったXギーツはヤクザキックでギーツを突き飛ばす。
そして右手の刀を肩に、左手の刀をギーツにつきつけ大きくため息をつく。
「決まってんだろ。お前は世界を破壊する“化け狐”、世のため人のため始末するのが道理じゃねぇかよ」
「違うッ! 私は化け狐なんかじゃ」
「だったら
ギーツの背後でうごめく破壊の尾。
全てを破壊せんとうごめき、意志とは無関係に揺らめく灯篭を破壊していく。
「ッ……これ、は」
「気に入らねぇモン全部ぶっ壊して、守りてぇモンだけ守る? 随分と都合のいい理屈じゃねぇかよ」
Xギーツは右手の刀についたソケットのボタンを押し、左手の刀についたレバーを引く。
「そんな奴を誰もヒーローなんて呼ばねぇさ。せいぜい都合のいい化け狐だろうがっ!」
「ッ!」
――『大丈夫?』
必殺技を受け、何もない空間を転がっていくギーツの脳裏にかつての――封印から目覚めた日の出来事がよぎる。
衰弱し身動きも取れなかった名無しの狐に手を差し伸べた少年。
彼はきっと、相手が誰であろうと手を差し伸べたに違いない。
名無しの狐の正体が、ただ
分け隔てなく、救いの手を差し出しただろう。
「……っ違う」
ギーツは体を起こし膝立ちになりながら、ブーストマーク3バックルへと手を伸ばす。
“救うため”だったはずの力を、一時の怒りに身を任せて解釈を歪め“敵討ち”のための力としてしまった。
「私は――」
ギーツは――エースはこれまで“特定少数”を救うためだけに戦いを続けてきた。
恩人たちのため、彼らが平穏に生きることができるようにするため、それは結果的に世界を救う結果につながっていたかもしれないが、あくまでそれは“理想の世界を叶えるついで”に過ぎなかった。
故に、後ろめたさを感じていた。
多くの人々を救うため、世界の平和を守るため、純粋にヒーローを目指し努力してきたクラスメイト達に申し訳が立たなかった。
――『
次のデザグラで勝利すればエースが雄英生である世界は終わり、新たな世界が始まる。だからクラスメイト達には世界の平和を守れるヒーローになって欲しかった。
同時に、自分はヒーローにはなれないと、心のどこかで認めてしまっていた。
――『――お前は俺の目標なのよ』
そんな目標とされる資格はないと、心のどこかで自覚していた。
「私は――
――BOOST STRIKE!
ギーツはバックルを起動し拳を構える。
「はっ……化け狐が」
――X-GEATS STRIKE
対するXギーツもバックルを起動し拳を構える。
両者の拳がクロスするようにぶつかり合い、互いの頬を殴り飛ばす。
「……そうさ、私は他人をたぶらかす“化け狐”さ。でも――」
ギーツは再びバックルを起動しもう一度拳を握り締める。
「世界を破壊する化け狐じゃ、ないッッ!」
――BOOST STRIKE!
体勢を崩していたXギーツに追い打ちをかけた。
「う……ぐっ……!」
ギーツの拳がみぞおちに突き刺さり、Xギーツの変身が解除される。
同時にブーストマーク3バックルが割れて半身が地面へと落ちた。破壊の尾は霧散し、ギーツの変身も解ける。
「……へへっ……そうさ、それでいいんだ」
狐火は大の字で倒れながら微笑んでいた。
「復讐なんざ人生の無駄遣いだ。んな暇があるなら、悲しい事忘れて、今を精一杯生きた方がいい……!」
「ふふっ……そうだね、おじさん」
エースは心がすっきりと晴れ渡っているのを感じていた。
心を蝕んでいた憎しみはすっかり祓われ、普段の余裕を取り戻していた。
「ごめん、おじさん。私は友達を――今苦しんでいる友達を助けたい。だから、おじさんを助けるのは最後でもいいよね?」
「はっ! 元より助けて欲しいって頼んでねぇよ」
灯篭の火が消えていく。空間が闇に包まれ、同時に狐火の姿も闇に消えていく。
「ふふっ……それでも助けるさ! だって――」
残されたエースは瞳から落ちる涙をぬぐい、もう一度不敵に微笑んで見せる。
「余計だと言われても、助けるのがヒーローだからね♪」
――――
「――気が付いたみたいだね」
意識が鮮明になる。
エースは目を開くと、自分を見下ろす影があることに気づく。
「……どちらさま、かな?」
辺りを見回せば公園――ベロバと戦っていた公園で寝ていたことが分かる。同時に、自分を中心にクレーターができており、何かが起きていたことも察せられた。
「俺は“ジーン”、君のファンさ」
見下ろしていた人物――ジーンは起き上がろうとするエースへ手を差し伸べる。
「ジーン……ああ、ベロバって子が言ってた」
「ベロバと会ったのか。変なことはされてないかい? あのババア、デザグラをめちゃくちゃにするのを生きがいにしている性悪だからね。もしかしたら君に何かしたかもしれない」
エースはその手を借りて立ち上がると、服についた汚れを掃う。
「ふふっ。確かにされたことはあるけど……」
腰のドライバーにはバックルが装填されたままだった。
気絶したのをいいことにバックルを盗むほどベロバは腐ってはいないようだった。
「ま、気に留めるほどでもないかな♪」
「……そう。ならよかったけど」
ジーンは一皮むけた“推し”の姿を不思議そうに見つめている。
「正直、デザグラを楽しむような悪趣味な連中がいるなら、一発ぶん殴ってやろうと思ってたけど」
「っ!」
拳を構えたエースを見てジーンは咄嗟に身がまえる。
「……もうどうでもいいかな。そんな細かいことに構うほど私は暇じゃないからね♪」
だが拳が振り抜かれることは無く、
「……そうか。君は――タイクーンを助けに行くんだね」
ジーンの問いかけに、エースは手を狐の影絵のようにして応える。
「そうだと言ったら、君は私の言葉を信じるかい?」
「……ジャマトに変えられた人間を救えるとしたら、それは理想の世界を生み出す“創世の力”しかないよ。それでも君は――タイクーンを助けにいくのか?」
エースは不敵に微笑んでいる。
たとえそれが不可能なことだとして、自分ならば成し遂げられると信じてやまない微笑だった。
「ああ、もちろんだとも」
自信過剰。世界は自分の思い通りにできると信じてやまない思春期特有の全能感。
だがジーンは、エースが本当にそれが可能であると、可能にしてくれる感じていた。
「……最高だよギーツ! 君はきっと、俺の想像を超える“感動”をくれるんだろうね」
「ふふっ! 期待しててよ。君の期待を裏切るようなことは絶対しにしないさ!」
エースは不敵に微笑む。
それは、自分自身を鼓舞するようなものではない。
「見逃したらダメだよ? この私の――“ヒーロー”ギーツのハイライトを」
世界を意のままに救ってやるという、決意の表れだった。
――――
――
緑谷(?)は街をさまよっていた。
良くも悪くも自分を操っていたダパーン――伴野がいなくなり、行動の指針が無くなったことで彼は自由となっていた。
「…………」
だがしかし、自由になったとて自分から動く意志はなかった。
面白半分の実験で息を吹き返したが、緑谷 出久という個が蘇ったわけではないのだ。
「――ふふっ。見つけたよ♪」
緑谷(?)の前に狐が姿を現す。
男とも女ともとれる中性的な容姿、人の耳の代わりに狐の耳が頭頂部に生えており、腰からは狐の尾が覗いている――まさに狐人間と言ったところだ。
「……」
――SET AVENGE ...
狐人間――エースの姿を認めた緑谷(?)はブジンソードバックルを装填する。
意志はなくとも立ち向かう敵と戦う本能は残っているのだ。
「
――BLACK GENERAL
その姿はさながら亡霊。
命を落としても、生前の未練を果たすため戦う落ち武者。
――BUJIN-SWORD
タイクーンの仮面が――仮面に装着されたバイザーが一際赤く輝く。
まるで目の前の狐人間――エースに絶対勝つと、そういわんばかりの執念を発していた。
「“男子、三日会わざれば刮目して見よ”、とはよく言ったものだね。それが、ダパーンに与えられた力かい?」
「……」
タイクーンは答えない。
エースは悲しそうにため息をつくと、ポケットから一枚のカードを取り出す。
古びたオールマイトカード。煌めく加工がされていたそれはもはや見る影もなく、角は丸まり端の方はホイルがはがれかかっている。
「……オール、マイト」
「これは、私を助けてくれた恩人が落としていった物だ。いつか、
そのカードに狐火が灯る。
「でも、もういいんだ。どうせ私は勇気が無くて確かめられないんだ。こんなもの、持ってたって仕方ないさ」
古びたカードは一瞬で燃え尽き、灰は風に乗って飛んでいく。
「ふふっ……あの日の“僕”が誰だって構わないけど、それでも私は君がそうだったらいいな、って思ってるよ」
エースは燃やし尽くしたカードの代わりにブーストマーク3バックルを取り出す。
「私は君を助ける。でもそれは、君が私の恩人かもしれないことが理由じゃない」
――Mark.Ⅸ
バックルは二つに割れ、真の姿を現す。
エースはそれを、ドライバーの左右に装填する。
――SET IGNITION!!
「私がヒーロー、“仮面ライダー”ギーツだからだッ!」
――REVOLVE ON
ドライバーが反転すると、純白の狐が姿を現す。
「変身ッ!」
そしてバックルのレバーが引かれる。
純白の狐から高出力のエネルギーが放たれた。
――DYNAMITE BOOST!!
放たれたエネルギーは9つの尾の様に展開され、エースの体にまとわりつきその姿を変化させる。
純白の狐――ギーツⅨの姿へと。
――GEATS-Ⅸ
純白の装甲に九尾の狐を思わせるマント。
――GEATS BUSTER QB9
そしてその手には、彼が振るうにふさわしい最強の武器――ギーツバスターQB9が召喚される。
――READY――FIGHT!!!!
ギーツの瞳が開かれる。
鐘の音が彼を祝福するかのように鳴り響いた。
――――
「……私は叶えてみせる」
ギーツが一歩踏みしめるごとに力が迸る。
タイクーンは目の前の敵の強大さを察知すると、すかさず武刃を抜き放ち正眼で構えた。
「私だけの、理想のヒーローをッ!」
一陣の風が吹く。
ギーツは瞬く間に加速しタイクーンへと肉薄する。
タイクーンは反射的に武刃を振るい迫りくる弾丸を迎撃する。ギーツは回り込むようにしてタイクーンへ弾丸を放つ。
四方八方から放たれる弾丸を最小限の動きで躱すタイクーン。避けきれない物のみ武刃で捌きつつ反撃の機をうかがう。
「…………!」
一閃。
カウンターで振るわれた武刃をギーツは宙がえりの様にして回避する。背中のマントが展開され九尾の狐のごとく広がる。
鐘の音が鳴り響き、ギーツは空中で足場を作り着地する。
「――はっ!」
すぐさまそこから飛び上がりギーツは足場を撃ち抜く。砕けた足場の破片は次々とタイクーンへと襲い掛かる。
――BLADE
足場に紛れてギーツはタイクーンへと飛び掛かる。ギーツバスターはブレードモードへと切り替わっており、タイクーンへと一太刀お見舞いする。
「!」
「ウッ」
だが負けじとタイクーンも刺突を繰り出して反撃する。切っ先をマントで隠し、攻撃の軌道を読ませないという徹底ぶりだった。
突き出し、隠し、再び突き出す。
ギーツは吹き飛ばされ近くのビルに叩きつけられる。
「――ふっ!」
しかしビルの壁面はゴムであるかのようにたわみ、ギーツを弾き飛ばし攻撃への推進力へと変える。たわんだ壁面は砕けるも、鐘の音とともに修復される。
突進のような攻撃を受け、今度はタイクーンが吹き飛ばされる。
ギーツはすかさず追撃しタイクーンを追い詰めていく。
「!」
――BUJIN-SWORD STRIKE ...
追い詰められたタイクーンはバックルを納刀し抜刀、必殺技で形成逆転を試みる。
「最後に勝つのは――」
――BOOST CHARGE!
ギーツはギーツバスターのトリガーを引くと一閃された武刃を受け止める。鍔迫り合いとなり、黒い靄と青いエネルギーがぶつかりせめぎ合う。
「私だッ!」
――BOOST TACTICAL VICTORY!!
武刃がへし折れ刀身が宙へと飛んでいく。
ギーツはすぐさまバックルのレバーを引き、必殺技を放つ。
――BOOST-Ⅸ STRIKE
タイクーンの体にギーツがキックが叩き込まれる。
地を滑る様に飛んでいったタイクーンは小さなブラックホールへと吸い込まれ――消滅。
「……っ」
「さあ――戻ってくるんだ、ミドリヤッ!」
崩れ落ちるように出てきた緑谷の体をギーツの尾が包み込む。
鐘の音が大きく鳴り響き、光が解ける。
「うっ……」
緑谷は呻きながら目を覚ます。ドライバーに装填されていたIDコアはすっかり元通りになっていた。
「ここ、は……?」
「ふふっ。お目覚めかな」
ギーツ――エースは変身を解除しながら緑谷へと歩み寄っていく。
呆けたような緑谷にむけ、エースは手を差し伸べた。
「お帰り、ミドリヤ」
かつてエースがしてもらったように、救いの手を差し伸べたのであった。
――――
――
かくして、ギーツは最強の力を手に入れた。
『ほう……ギーツも“創世の力”を』
タイクーンとの戦闘を見ていたスエルはその力の本質を見極めていた。
『……ククク……そうか。その力は……』
ギーツはその創世の力を以てして世界に平和をもたらしたのだった。
めでたしめでたし――
『
――とはならないのだ。
まだまだギーツが解決せねばならない問題が山積みであった。
――――
「――ははっw」
伴野の姿をコピーした古代魚ジャマトはその欲望を暴走させていた。
「うんうん。元気なのはいいことだ」
「あー最高w これさえあれば――誰も俺に逆らえないよなwww」
古代魚ジャマトは農園にいたジャマトを喰らいつくした。
「なあ……お前も食っていいよなw」
「もちろんだとも! たんとお食べ!」
そして育ての親――アルキメデルさえも食欲の対象とし、そのすべてを喰らった。
「ふぅ……へぇw これがジャマトの育て方……ははっw 俺ならもっと面白いジャマトが作れるってwww」
ジャマーガーデンの全てを喰らいつくした古代魚ジャマトは、脳裏に浮かぶ
――――
「あいつ……!」
ギーツとタイクーンの決戦を見ているのはスエルだけではなかった。
タイクーン――緑谷を探していた牛込もまた、戦いの一部始終を目撃していた。
最強同士のぶつかり合い、次元の違う戦いを目の当たりにし、自分の無力さを痛感させられていた。
「……ギーツ……あいつ、やったのね……」
相手が誰だあろうと最後には勝ってしまう。
どんな逆境であろうとも、勝ち抜き最後にはその望みを叶える。
「っ……だったら、あたしは、何のために……!」
人の想いをあざ笑うかのように、勝ちを攫って行く。
他人の理想など知ったことではない――そういわんばかりに勝ってしまう。
勝って、自分だけの理想を叶えてしまう。
「――嫉妬するよなぁ。最強のデザ神を見ちゃ、自分が無力な人間だとわからされる」
「ッ! 誰!?」
突如として現れた人物に牛込はバックルを手に身構える。
「俺は“ジット”、デザグラのゲームマスターだ」
「……っゲームマスターが、何の用よ?」
ジットは鋭い視線を崩さぬまま懐からデザイアカードを取り出す。
「取引をしよう――成功すればお前の理想の世界を叶えてやる」
「ッ!」
何も書かれていないデザイアカード。
それは何でも好きな世界を叶えられるという証だった。
「……っあたし、は」
――『お前の中にあるその
脳裏に蛙の怪人――ケケラの言葉がよぎる。
助けたい人だけ助けたい。気に入らない人間は救いたくない――そんな
救う人間を選ぶという傲慢が、許されてもいいのか?
「……確か、お前は退場したライダーを生き返らせたかったんだったな」
悩む牛込がじれったくなったのか、ジットはポケットから特殊警棒を取り出して伸長させる。
「何を迷う必要がある? ギーツは、あいつのやり方で世界を救った。だったら――お前もお前のやり方で世界を救えばいいんじゃないか?」
ジットは警棒で威嚇するように自分の手のひらを叩いている。
「――ッ!」
失われた命を取り戻したい。
でもすべての命を取り戻してしまえば、きっと大きな悲劇を生む未来が待っているだろう。
善人も悪人もまとめて蘇らせてしまえば、よみがえった悪人が善人を虐げることになるかもしれない。
「あたしの、やり方……っ!」
牛込は何かに取りつかれたかのような目つきで、ジットへと手を伸ばす。
そう、これは世界を救うための戦い。
決して自分の
善人だけを生き返らせて、より良い世界を取り戻す。
「……決まりだな」
狂気に染まる牛込へ、ジットはデザイアカードを差し出した。
――――
ギーツは世界を意のままに作り変える創世の力を手にした。
だがどんな力にも、必ず代償が存在するものだ。
「……よし」
相澤は仮免試験の申込書を書き終わり抜け漏れがないかを点検していた。
一枚一枚、生徒の成長を思い返しながらめくっていき――
「うん? 狐火、エース……?」
記憶を探り、名簿を探っても――
「……誰だ、こいつは……?」
だが確かに聞いたことのある名前に、相澤は頭を悩ませる。
頭は冴えているのに、肝心なことだけ思い出せない。まるでド忘れしてしまったかのような気味の悪さ。
「……いや、いない人間の事を考えるのも合理的じゃないな」
思い出すのを諦めた相澤は、エースの申込書をシュレッダーにかけるのだった。
ギーツ本編も残すところ後2話ですね! 本当に終わるのかハラハラする感じはファイズをほうふつとさせますね……