【完結】僕のデザイアグランプリ   作:鮫田鎮元斎

64 / 66
Ex2-11 混沌Ⅷ/私だけの不幸

――――

――

 

「ジャ」「ジャァ」「ジャ」

「やあっ!」

 

 ナーゴは寄生ジャマトを斃しつつ発生源の特定を急ぐ。

 

(どこ……? どこにいるの……?)

 

 だが探せども探せども気配すら辿れない。

 羽虫のような寄生ジャマトはたくさん飛び回っているというのに、数が大きすぎるせいでどこから飛んでくるのか見当もつかない。

 

「はぁ……ッはあっ……見つけ、なきゃ……!」

 

 ナーゴはサーベルのような剣を生成すると、それらを操って飛び回る寄生ジャマト達を薙ぎ払う。

 小さな爆発が連鎖的に起き、ジャマト達が一掃される。

 

「はぁ……はぁ……っ!?」

 

 爆炎が晴れたのもつかの間、再びジャマトが発生する。

 キリがなかった。

 斃しても斃しても次々と湧き出るジャマト。姿も見せない寄生ジャマトの大元。

 

「もう……無理……」

 

 ナーゴはがくり、と膝をつく。

 限界だった。終わりの見えない戦いは彼女の精神をすり減らし、心を折るのには十分だった。

 

「ジャァ……」

 

 そんなナーゴを取り込もうと寄生ジャマトが群がっていく。

 

「ジャァ……ジッ!?」

 

 ――TACTICAL BREAK!

 

 チェーンソーの刃が鳴動する。

 襲い掛かろうとしたジャマト達はバッファの一撃で屠られ、取りつかれていた人たちは解放される。

 

「――諦めてる場合じゃないでしょっ! この人たち、助けるんじゃなかったの!?」

「っ……牛込、さん?」

 

 バッファの姿は、運営の手先となり暴れまわっていた時とは異なり普段通りの姿――肥大化した角、ゴッズホーンと黄金のマント――ゴッズウォールは消え去っていた。

 

「ごめん、遅くなった!」

 

 ――BUJIN-SWORD STRIKE... !

 

 続けざまにタイクーンの斬撃が浴びせられる。

 取りつかれていた人たちから飛び出た寄生ジャマトの素体は細切れにされ散っていく。

 

「緑谷くん……!」

「もう大丈夫! 僕たちで――ジャマトを斃そう!」

 

 タイクーンの背中はたくましく、いつも以上に大きく見えた。

 ナーゴは気合を入れるように頬を叩くと再び立ち上がる。

 

「うんっ!」

 

 足元には方陣が展開され背後にはサーベルのような剣が舞う。

 頼もしい味方の登場にナーゴの心は完全に復活した。

 バッファ、タイクーンと共に寄生ジャマトの被害者たちを救い、素体となる小さなジャマトを次々と撃破していく。

 一人では戦うことだけで精一杯でジャマトの出所を特定できなかったが、協力して戦うことで視野が広がる。

 

「!」

 

 ナーゴは遂に小さなジャマトが出てくる方角を察知する。

 

「見つけた――ッ!」

 

 投擲されたサーベルは寄生ジャマトの発生源――5つの目を持つジャマト、オパビニアジャマトへと命中する。

 オパビニアジャマトは攻撃を受けると小さなジャマトの放出を止め、ナーゴたちへと向き直る。

 

「私が――終わらせるッ!」

 

 ――SET

 

 ナーゴはブーストバックルを装填、起動させる。

 

 ――FANTASY & BOOSRT

 

 下半身にブーストのアーマーが装着される。ナーゴは猫を思わせる低姿勢で構え足元に方陣を展開する。

 

「ジャ――!」

「「「ッ!?」」」

 

 オパビニアジャマトもただではやらせはしないとばかりに小型ジャマトを一斉に放出する。

 まるで黒い雲を思わせる大群にナーゴ、タイクーン、バッファは咄嗟に反撃できずに飲み込まれてしまう。

 

「ッこの――!」

 

 もがくようにバッファはゾンビブレーカーを振り回すも、大群となった小型ジャマトに有効打を与えられずにいる。

 

「数が、多すぎる……っ!」

 

 ナーゴもまたサーベルのような武器を展開しジャマトを薙ぎ払うも多勢に無勢と言った様相だった。

 

「ッ……!」

 

 タイクーンは小型ジャマトに押し出されるようにして地面を転がっていく。

 

「! あれは」

 

 幸運なことに、彼が転がっていった先にはパンクジャックの遺したドライバとそれに装填されているビートバックルが落ちていた。

 

「っ使わせてもらうよ!」

 

 ――REVOLVE ON 

 

 タイクーンはビートバックルを手にドライバーを反転、ブジンソードバックルの半身を取り外すと代わりにビートバックルを装填、起動させる。

 

 ――GREAT:BEAT

 

 ビートの装甲が展開されタイクーンへ装着され、その手にはビートアックスが召喚される。

 

「葉隠さん! 牛込さん!」

 

 ――ROCK FIRE

 

 タイクーンはすかさずビートアックスのエレメンタドラムを叩いて炎を纏う。

 そしてそれはバッファのゾンビブレーカー、ナーゴのサーベルへと付与する。更に武刃を呼び出しそれにも炎を付与し、ビートアックスと武刃の変則的な二刀流となる。

 

「んっ!」

「ありがとう!」

 

 炎を纏った攻撃は小型ジャマトを焼き払う。

 

「これならっ!」

 

 邪魔をするものがいなくなり、ナーゴは姿を消しつつ加速。姿が消えたことでオパビニアジャマトは困惑し辺りを見回している。

 

「こっちだよっ!」

「ジャッ!?」

 

 発光したナーゴはその身に蓄えた光をオパビニアジャマトへと降り注がせる。

 

「クルクテウ!」

 

 負けじとオパビニアジャマトは5つの目から光線を放つ。

 だがそれらは透過したナーゴの体へと収束。ゆがめられた光は攻撃した主へと跳ね返されてしまった。

 

「ジャァ」

 

 カウンターを喰らったオパビニアジャマトは呻きながら後退する。

 

「はっ!」

 

 ――BOOST TIME!!

 

 ナーゴの背後にサーベルのような武器が次々と展開され、その数は指数的に増えていく。

 足元の方陣が一際輝き、彼女の足元へ集約される。

 

 ――FANTASY BOOST GRAND VICTORY

 

 オパビニアジャマトへサーベルが次々と命中していく。

 ナーゴは一足で距離を詰め空中で身をかがめ、右足を突き出す。背中から幻想のエネルギーが放出され彼女の体を押し出す。

 ライダーキックはジャマトへと命中、オパビニアジャマトはうめき声を上げながら爆散した。

 

「はぁっはぁ……勝った……!」

 

 ナーゴのドライバーからは、ブーストバックルが勢いよく吹き飛んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

「……ムカつくわ」

 

 どこかのビルの屋上。

 そこからはジットの変身したライダー、リガドとギーツの戦いを一望できた。

 ベロバは遠目にその戦いを見物しつつ、ゼリービーンズを口へ運ぶ。

 

「自分なんてどうでもいい、みたいな戦いして……バッカみたい」

 

 ギーツは自身に宿った“創世の力”を遺憾なく発揮しリガド相手に優位に立ち回っている。

 対するリガドは暴力的な猛攻でギーツの有利(ターン)を維持させない。加速し、背後を常に取り続け、隙あらば武装解除させようとクレバーに立ち回る。

 

「――いいじゃないか。感動的でさ」

「……何よ、あんたはあのギーツが好きなワケ?」

 

 ベロバは隣に現れたジーンを睨み付ける。

 二人は犬猿の仲、共に会話できているだけでも奇跡というものだ。

 

「どうかな。オレは今のギーツも悪くないと思う。自分の全てを懸けて、見返りもなくこの世界を守ろうと必死に戦っている。どうしようもなく心がアツくなる……これこそオレの求めていた感動だよ」

 

 ギーツの“創世の力”は文字通り身を削って発揮している力だ。

 自分自身の“理想を願う心”をコストに世界を作り変える――その身に宿した“ギラギラ”と呼ばれるエネルギーを消費して戦っているのである。

 今まで多くの理想の世界を叶えてきた彼だからこそできる戦い方。

 普通の人間ならば一回力を使えば無気力な廃人と化してしまう可能性を秘めた危険な力である。

 

「それこそ今のギーツこそ君の求めている“不幸”なんじゃないのか? 世界を守ろうとして築きあげてきたものをすべて失う――正に不幸そのものだ」

「……チッ……だからあんたは嫌いなのよ」

 

 

 ベロバは忌々しそうに舌打ちする。

 ジーンの言っていることは確かに彼女の求める不幸論に当たらずとも遠からずだったが、わかったような口を利くジーンの事が気に入らないのだ。

 

「あいつは、ギーツは……エースは今まで積み上げたもの全てを()()()()投げ捨てて戦ってるわ……確かに不幸だけど、そうじゃないの……こんなじゃ……私はゾクゾクできない」

 

 確かに今のエースは不幸だろう。

 だが自ら望んで不幸になりにいっているエースはベロバにとっては“何かが違う”のだ。

 

「だったらどうするんだい? 君が何をしたってギーツはきっと止まらないさ」

「……ふん! べー、だ」

 

 ジーンの問いかけにベロバは舌を出して反抗する。

 だがその表情は晴れやかで、自分の行く先を決めているかのようだった。

 

「まさか……この世界に入れ込むつもりか? スエルに逆らったらオレ達は元の世界へ帰れなくなる」

「アハハ! そんなことにビビってちゃ不幸は味わえないわ!」

 

 ベロバはとても幸せそうに笑いながら屋上を後にする。

 無邪気な子供のような、純粋無垢な笑いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 ――ACCELERATE ... !

 

 リガドの体が加速する。

 目にもとまらぬ速度でギーツを翻弄し、重々しい打撃を次々と食らわせる。

 ギーツも加速能力を有しているが、リガドのそれは自分の時間を加速させることで実現している。そのため能力の本質が異なり対応することが難しくなっていた。

 

「っ!」

 

 ――RAIL-GUN

 

 ギーツはその動きを銃撃によって対処しようと試みるも、あまりの速さに弾は当たる気配がなかった。

 

「どうした? 歴戦のデザ神もその程度か……俺を失望させるな……ッ!」

 

 ――READY ... !

 

 リガドはニンジャバックルを腰のグレートアセンブルに装填、バックルを起動させ能力を発動させる。

 

 ――NINJA:INFINITY ... !

 

 ニンジャデュアラーが召喚され、リガドはそれを二刀状態に分割し構える。

 

「……この程度で終わりはしないさ」

 

 ――BLADE

 

 ギーツはそれに応じるかのようにギーツバスターを変形させる。

 刹那、リガドが加速する。瞬間移動にも等しいその加速を見切ったギーツはカウンター気味でギーツバスターを振るう。

 

「グッ……!」

 

 加速を止められたリガドだったが、負けじとニンジャデュアラーでの猛攻を仕掛ける。

 左右のラッシュは重々しい打撃音を響かせ、あまりの猛攻にギーツは防戦一方となる。

 

「フンッ!」

 

 リガドは回転しつつニンジャデュアラーを結合させ一刀状態へ変更、ブーメランのように投擲しつつ足払いをかけギーツの体勢を崩す。

 すかさず起き上がろうとするギーツだったがそれを許すまいと低姿勢での追撃を続ける。

 

「くっ……んっ!?」

 

 どうにか間合いを取ってギーツバスターを構えるも、先ほど投擲されていたニンジャデュアラーが戻ってきて弾き落とされてしまう。

 

 ――DESTROY ... !

 

 リガドはこれ幸いにとシリウスカードを二回連続で読み込ませ拳を構える。

 

「終わりだッッ!」

 

 右ストレートを放とうとリガドが踏み込んだ瞬間、鐘の音が響き渡る。

 

「グッ!?」

 

 突如として足元の地面が陥没し体勢を崩す。狙いがそれたことで右ストレートは空ぶってギーツに当たらなかった。

 

 ――BOOST-Ⅸ STRIKE

 

 ギーツはすかさずバックルのレバーを引きサマーソルトキックを繰り出しリガドを迎撃する。

 

 ――BOOST CHARGE!

 ――ROUND 1・2・3 FEVER!!

 

 着地しつつ落としたギーツバスター、そしてリガドが回収せず放置していたニンジャデュアラーを拾い上げるとそれぞれ操作する。

 

 ――BOOST TACTICAL VICTORY!!

 ――TACTICAL FINISH

 

 二刀のラッシュがリガドへと襲い掛かる。

 やられた分のお返しと言わんばかりの猛攻であった。

 

「ぐ……っ!」

 

 爆発が起き、リガドは吹き飛ばされ変身を解除されてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「……すごい」

 

 目の前で繰り広げられた戦いを見て浮世 作世(さよ)は思わずつぶやく。

 普段目にするヒーローの戦いも大概現実離れしているものではあるが、ギーツとリガドの戦いはそれをはるかに上回っていた。それはさながら特撮作品を見ているかのようだった。

 

「怪我はない?」

 

 ギーツ――エースは変身解除しつつ作世(さよ)へ歩み寄る。心なしかその狐耳と狐の尾は毛艶がわるくなっているように見える。

 

「あっ……ありがとうございます……あの、もしかして……()()()?」

 

 作世(さよ)の言葉にエースは思わず目を見開く。

 彼が雄英高校の生徒であった世界は当の昔に無くなってしまっている。創世の力を行使したことによってギラギラが消費され、叶えていた理想の世界が無かったことにされてしまったからだ。

 そして今は“スターになっている世界”もなくなり、今ここにいるのはただの一般人、狐火 エースである。

 だが変化した世界の事を、作世(さよ)は覚えていた。

 その記憶を失わず保持し続けていたのだ。

 

「あれ、でも……確かスターだったような……もしかして、双子の兄弟とかいらっしゃいます?」

「ふふっ……私に兄弟はいないよ。そうか、君も私と同じ――」

 

 エースは突如として頭が真っ白になる感覚に襲われる。

 意識ははっきりとしているはずなのに思考が全くと言っていいほど働かない。

 瞳は世界を捉えているはずなのに何も見ることができず、耳は世界の音を拾っているはずなのに何も聞こえない。

 否、世界を感じ取っているはずなのに()()()()()()()()()()()()()

 

『――それが“創世の力”代償だ。ギーツ』

 

 見知らぬ声に思考が再開する。

 振り返ると気を失っているジットの隣に仮面とローブを纏った()()が漂っていた。

 一見すると人間の様に見えるも、足元はなく上半身が浮遊し、手袋をした手は腕が存在せず腕組をするように浮遊している。

 

「嘘……何、あれ?」

 

 明らかに異質な存在に作世(さよ)驚き手で口元を押さえている。

 

『始めましてギーツ、そして“女神の後継者”よ。私は“スエル”――デザイアグランプリの創始者だ』

 

 仮面の存在――スエルは両手を広げるようにして自己紹介する。

 ローブの内側は空白であり、恐らく実態は存在していないのだろう。

 

「デザグラの……じゃあ、君がすべての黒幕、ってことかい?」

 

 止まりかける思考を懸命に働かせつつエースは問いかける。

 遂に現れた諸悪の根源。恐らくスエルを始末すればデザグラは終わり、運営の持っている“理想の世界を叶える力”を奪い取ることすら可能だろう。

 そうすればデザグラによって失われてしまったすべてを取り戻すことも可能なはずだ。

 世界を救うカギが今、目の前に現れたのだ。

 

『君たちの世界をこんな形にした、という意味では黒幕と言えるだろう』

「…………」

 

 以前のエースならば答えを聞くや否や戦いを仕掛けていただろう。

 だが“ギラギラ”を消耗している今の彼は戦う決断へ至ることができなかった。

 

『さて、ジットを斃したことは褒めておこう。まさか勝てるとは思ってもいなかった』

 

 スエルがジットへ手をかざすとその体が消滅し、スエルの体へと吸収される。腰に装着されていたジリオンドライバーは彼の右手へと回収されている。

 

『ジットは私がデザインした右腕のようなものだ。お気に入りだったんだが……まあいいだろう』

 

 それを懐にしまうと代わりにヴィジョンドライバーを取り出す。

 

『よく戦った者には褒美を与えてやろう――』

 

 ――VISION DRIVER ...

 

 スエルはヴィジョンドライバーのバイオメトリクサーに手袋をしたままの手をかざす。本来指紋を読み取るはずのそれは、創始者という最上位の権限において省略され形だけのものとなっている。

 

 ――GAZER:LOG IN

 

『変身』

 

 ――INNOVATION AND CONTROL : GAZER

 

 プロビデンスカードを読み込ませスエルはゲイザーへと変身する。

 スエルが変身した影響か、仮面には血走った目のような赤い文様が出現する。

 

「…………」

 

 エースはブーストマーク3バックルを構え、分割しようとするも体が動かない。

 思考は何度も停止し、どうして今自分はこんなことをしているのかわからず疑問を感じ続けている。

 

『どうした? お前は我々の力を欲していたのだろう? それを得られる機会を与えてやろうというのに――興ざめだな』

「っ」

 

 ドミニオンレイが射出されエースへと狙いが定められる。

 

「私は……」

 

 ――Mark.Ⅸ

 

 どうにかバックルを分割するも、ベルトへ装填する手が止まる。

 このまま躊躇っていたら自分はおろか背後の作世(さよ)にまで危険が及ぶことになる。せめて変身して戦わなければならないはずだ。

 それなのに――

 

「私は……なぜ、戦う必要が、あるんだろう……?」

 

 戦うための動機(モチベーション)が失われてしまっていた。“理想の世界を願う心”を消費してきた結果、生きるという行為そのものへの動機が失われつつあるのだ。

 

『さらばだ“歴代最強”のデザ神よ。君の活躍は――しばらくは忘れない』

 

 ――DELETE

 

 ドミニオンレイが強く発光しエースへ狙いを定める。

 光線がエースを焼き払わんと襲い掛かる。

 

 ――PREMIUM BEROBA

 

「――んッ!」

 

 だがその攻撃はエースへ届く前に阻まれる。

 プレミアムベロバが割って入り、身を挺して守っているのだ。

 

 ――FINISH MODE!

 

 返す刀で放たれた弾丸がゲイザーへと襲い掛かる。

 

『……私に逆らおうというのか。1オーディエンスの分際で』

「ふん……私の“推し”に手を出すのが悪いのよ」

 

 ベロバは挑発するようにレイズライザーの銃口を向ける。

 彼女たち未来人はスエルの管理する“四次元ゲート”を通じてこの世界へとやってきている。ゲートを通るためにはスエルの許可が必要となり、彼の反感を買うということは、すなわち未来へ帰れなくなることを意味していた。

 

『……つまり、命も惜しくない、と』

 

 ゲイザー――スエルは変身を解除するとヴィジョンドライバーからジリオンドライバーへと装着しなおす。

 古代人相手のお遊びではなく、本気で有害分子を排除する姿勢を見せた。

 

「アハハ! 今更惜しむ命なんてありゃしないわよッ!」

『そうか』

 

 ――REGAD-Ω ACCESS

 

 ドライバーのグレートアセンブルを操作し変身シークエンスを起動させる。

 スエルの仮面からは表情はうかがえなかったが、どこか呆れにも似た雰囲気を漂わせていた。

 

『ならば――その覚悟のまま死ぬがいい』

 

 ――CREATION AND MASTER OF ALL:REGAD- Ω

 

 スエルの下にオーディエンスの目――オーディエンスアイが集約しその姿をリガドΩへと変身させる。ジットが変身した際は閉じていた仮面は開き、一つ目の様に輝く。

 

「お生憎様! 私は死なないわっ! 死ぬのは――あんたよっ!」

 

 ベロバはリガドΩへと飛び掛かる。

 両腕に光を纏い、一撃必殺を狙う構えだった。

 

 ――REVERSE ... !

 

 だがリガドΩは冷静にグレートアセンブルを操作。時間を操る力を発動させた。

 

「――ッ!?」

 

 ベロバの時間が巻き戻り、プレミアム会員としての姿を失い生身の状態へ戻されてしまう。

 本来データとして存在している彼女は時間操作の影響を受けない。だがこの世界へやってくるにあたって生身の体を得ていた。

 その結果、時間操作を受け付け力を失ってしまったのだ。

 

『プレミアム会員も考え物だな。こうして反抗されてしまうと面倒だ』

「っ!」

 

 ベロバはもう一つの姿――仮面ライダーベロバへと変身しようとするも、レイズライザーが存在していないことに気づく。ライダーとして変身する力そのものを奪われてしまったのだ。

 

 ――MAGNUM:INFINITY ... !

 

 リガドΩが空中で手を動かすとグレートアセンブルにマグナムバックルが出現する。バックルを起動するとその背後に無数のマグナムシューターが出現し、銃身を展開する。

 

 ――銃声が響き渡る。

 

 無数の弾丸がベロバの体を貫きハチの巣にする。

 

「っベロバ……!」

 

 血まみれになりながら倒れるベロバへ駆け寄るエース。気力が戻ったわけではなかったが、人の死に無感動でいられるほどの消耗はしていなかった。

 リガドΩはエースの命も奪おうとマグナムシューターの照準を操作し――

 

 ――『待て!』

 

 突如リガドΩの体から声が響き渡る。それは一体化したオーディエンスの声だ。

 オーディエンスの一人はエースとベロバのやり取りを堪能したいがためにリガドΩを制止したのだ。

 

「……あはは……いい不幸(かお)……らしくないこと、した甲斐が、あったわ」

「なんで……こんなことを?」

 

 ベロバの体を支えるエース。その両手から徐々に命の温もりが失われようとしていた。

 

「……あんたを、無気力なお人形のまま、死なせない……もっと、もっと……不幸になってもらわなくっちゃ」

 

 彼女の瞳は焦点が合っていない。何も映さず、虚空を見つめている。

 

「……エース、あんたのふこうは、わたしだけの……ほかの、だれにも……わたさないわ……」

 

 その体が消滅する。未来人にとってその肉体は虚構そのもの。命が失われれば肉体は消滅するのである。

 エースは消えてしまった温もりを両手に感じ、涙が頬を伝うのを感じた。

 命が失われた。あまり好きではない、正直に言えば嫌いな部類の人間が死んだ。

 それは気力を失いかけていたエースの心へ火をともす。

 

 ――『いいっ! 最高にエモいっ!』

 ――『人の死にざまは最高に感動的だッ!』

 ――『やっぱり悲劇あってこそのリアリティよねぇ!』

 

 リガドΩの体から次々と称賛の声が響き渡る。

 エースとベロバのやり取りを見ていた観客(オーディエンス)たちは、目の前の死をエンターテイメントであると褒めたたえた。

 

「ッッ!」

 

 ――SET IGNITION!!

 

 そして人の死を楽しむ観客(オーディエンス)にエースの怒りが湧き上がり戦う気力を蘇らせた。

 

「変身ッッ!」

 

 ――DYNAMITE BOOST!! GEATS-Ⅸ

 

『ほう。人の死で気力を取り戻したか……よほど思い入れがあったようだな』

「別に、私はあの子のことは嫌いさ。でも――」

 

 ギーツはギーツバスターを構えつつ拳を握り締める。

 

「人の死を笑うような君らを許せない、だから私は戦うんだっ!」

 

 ギーツ――エースにとってベロバは一方的に好意を向けられていた関係に過ぎない。デザグラによって大切な人を奪われた彼の不幸をもっと味わいたいとデザグラにエントリーさせた張本人。

 だがどんな悪人でも、死んで笑われていいハズはないのだ。

 

『そうか。ならばかかってくるがいい――せいぜいオーディエンスを楽しませてみろ』

「ああ……とっておきのハイライトを見せてやるッッ!」

 

 ――READY――FIGHT!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 












いよいよifルートその2も完結が近づいてきました! 恐らく後1,2話で完結するかと思います。最後までお付き合いいただけたら幸いです。

ギーツロスは相変わらず継続中です。ガッチャ……頑張ってくれ……せめてヒャッハーしてた強盗さんに説得力を……うぐぐ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。