盲目なきりたんのお話【完結】   作:ずんたんぽ。

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3話

「…あ!」

 

マスターが帰ってくるのが分かる。階段を登ってくる音が聞こえる。マスターは足が悪いのか、歩く時の足音が少しズレる。だからマスターだとすぐに分かった。

 

「ただいま〜…」

「おかえりなさいマスター!」

「あぁ…返事が帰ってくるのはこうも嬉しいものなんだね。ありがとうきりたん。ただいま。遅くなってしまってごめんよ。すこし、調べ物に手間取ってしまって」

「全然大丈夫です。私にとって、待っている時間は長くても短くても、そんなに大した違いはありませんから」

「そうか…。そうだきりたん。今日は君にちょっとしたプレゼントがあるんだ」

「プレゼント…?何ですか?」

「それはお楽しみだよ。直ぐに渡してしまっても面白くないだろう?」

「お楽しみはとっておくってやつですね…?」

「そう!楽しみにしていてくれ」

「ありがとうございます。マスター」

 

嬉しい。マスターが私のために何かを買ってきてくれた。何を買ってきてくれたのか全く予想つかないけど…その行動だけで、何にも代えがたい嬉しさがある。

 

「…あの、マスター。ひとつ聞きたいことがあるんですけど…」

「どうしたの?」

「…えっと…今って、何年ですか…?」

「今?今は2035年だけど…」

 

あぁ、やっぱり…。さっき聞いたラジオでの音声、あれは聞き間違いじゃなかった。

 

「急に年なんて聞いてきて…どうかしたの?」

「…あの、マスター…」

「ん?」

「……いえ、何でもないです…」

「そうか」

 

質問するのが怖い。もしも私のくだらない過去についての質問がマスターにとって良くない質問だったら…私はここに居られなくなってしまうかもしれない。もしそんな事があったら…私はまた独りになってしまう。

それだけは…絶対に嫌だった。

 

「僕はお風呂の準備をしてくるよ。もし寒かったりしたら暖房とか付けていいからね。リモコンはいつもの場所にあるから」

「はい、ありがとうございます」

 

何か手伝いをしたい。マスターの為になることを1つでもやりたい。何もしていないのは…どうしても悪い気がしてしまう。

 

「マスター、私がやりますよ」

「え…?ありがたいけど…大丈夫?」

「はい、昨日部屋を案内してくれた時に、ある程度場所は覚えていますから。お風呂くらい、私が入れますよ」

「そうか…ありがとう」

「はい。マスターは部屋でゆっくり休んでいてください。お仕事で疲れてますよね?」

「そうだね…じゃあお言葉に甘えてゆっくりしておくとするよ」

 

任せてくれた…!断られたらどうしようかと思ったけど…私に任せてくれた。任されたからには、しっかりとやらなければ。そうすれば、私が色々出来る子だって、分かってくれるはず…!

 

「…これでいいでしょうか…。お風呂の温度も…大丈夫ですね」

 

よし、このお家のお風呂の給湯器が喋るタイプで助かった。お湯の温度を確かめる術が、直接お湯に触るだけだと思ってたから、音声で教えてくれるのはとてもありがたい。

 

「…マスター、お風呂の準備出来ました。あとはお湯が溜まるのを待つだけですよ。……マスター?」

 

おかしい。返事が聞こえない。マスターだったら返事は絶対に返してくれるはず…。どこかに行ってしまったのか…?

…いや違う。休んだ時に、そのまま寝てしまったんだ。寝息が聞こえる。目が見えない分、耳が良くて助かった。

寝てるところを用もないのに起こすのは流石に気が引ける。そのまま寝かせておいてあげよう…。

 

 

「マスター、お風呂の準備が出来ましたよ。起きてください」

「…んあ、きりたん。ごめん、寝てたのか…。ありがとう。入るよ」

「はい。じゃあ私待ってるので」

「…いや、一応同じタイミングで入ってもらいたかったんだけど…」

「そうですか。わかりました。……一緒にって言いました!?」

「あぁ…うん。きりたん目が見えないから…1人じゃ入りずらいだろうかと思ったけど…。確かに急すぎたね。ごめんよ」

 

…マスターは私のこと思って言ってくれた。それを断るのも…申し訳ない。

実際1人ではいるのは少し不安だし、付き添ってくれるのはかなりありがたい。だったら…

 

「でも…1人ではいるのも少し怖いので…入ります…。一緒に」

「嫌々入る必要はないからね…?」

「いえ…嫌々って訳じゃないので、大丈夫です。…きっと」

 

…目は見えないけど、恥ずかしいことに変わりは無い…。




次のお話は少しR16ちっくかも知れません。
…あんまりそういうのは書くつもりないですけどね!?!
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