U.N.オーエン英吉利魔法界異変   作:喚く ドードー

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プロローグ
異変解決候補抜擢


 

「なあフラン、幻想郷の外に出てみる気は無いか?」

 

友人である霧雨魔理沙からの突然の提案は、あまりに現実味を帯びていないものだった。

 

 

 

 

「…どういうこと?幻想郷の外には出れないはずよね。あいつ(お姉様)が言っていたわ、一度幻想郷の外に出ようとしたら八雲紫に注意されたって。」

 

そう。幻想郷は忘れ去られたもの達が集う場所。自分達で移住してきた私達は例外なのかもしれないが、それはあくまでも過程の話。幻想入りした以上は幻想郷のルールに従わなければいけない。つまるところ、幻想郷の外に出ようとしたところで八雲紫に止められるか、霊夢にコテンパンにされるかのどちらかしかないだろう。きっと魔理沙は私がそんなことも知らないと思ってからかっているんだろうな。

 

「違う違う、その八雲紫からの依頼なんだよ。外の世界、えーっとなんだったっけ?そうだ、英吉利!そこにある魔法学校に通えって依頼さ。」

「へえ…イギリス?懐かしい。実は私、ここに来る前はイギリスに住んでたのよ。」

「知ってるぜ、だからお前に依頼しに来たんだ。本当は私が行きたかったんだけどちょっと諸事情があってね。」

「諸事情?…また何かやらかしたの?」

「そんな訳ないだろ!フランは私の悪戯好きを過大評価しているところがあるぜ。」

「へえ?私はちゃんと見たまま評価してるけどね。」

「全くもって心外ってやつだな、495年も引きこもってりゃ観察眼やらなんやらが衰えるのも無理ないけどね。特に人間に関しては。」

「魔理沙みたいなタイプ、周りに居なかったからかしら。紅魔館にはあなたほど手癖の悪い人間はいないから。」

「そりゃそうさ。この館の住人なんてだいぶヤバめの変人メイドに体力不足で偉大な魔女様、ヘタレで小物の悪魔に無能な門番、オマケに当主様は傲岸不遜で我儘放題なロリータ吸血鬼と来た。おっと、それは妹もだったか?」

「あら、アイツと一緒にしないでくれる?私はあいつより理性的よ。」

「その分性根が狂ってる。っと、こんな話をしに来たんじゃなかったな。」

「そうよ、早くイギリスの魔法学校とやらについて教えて?」

「ハイハイ分かりましたよお嬢さん。」

 

そう肩を竦めて笑ってみせる人間は、やはりかなり肝が据わっている。いや、逆に至る所に飛び回ってあるのかもしれない。とにもかくにも、要件があるならさっさと言って欲しい。今日はパチュリーのところで本を読みたいと思っていたのに。…まあ、友人と遊ぶというのも悪くは無いけど、ね。

 

 

 

 

その後語られた魔理沙の話はこうだ。

外の世界で、数年後【名前を呼んではいけないあの人】と呼ばれるほど恐れられている人間が復活するらしい。なんと、それを八雲紫に知らせたのは我が家が誇る(私は誇るほどのものじゃ無いと思うけど)レミリア・スカーレット。運命を操る程度の能力という実に不明瞭な能力で見通したのは、外の世界が混沌に陥る影響で幻想郷の秩序が崩れるかもしれない、なんて運命。当然博麗の巫女である霊夢、博麗大結界の管理者である八雲紫がいるから大丈夫だろうと一蹴されたらしいのだが、何でも今回問題になるのは博麗大結界の方ではない。【名前を呼んではいけないあの人】が行動を起こせば大量に死人が出て、幻と実体の境界を超えて多くの人間やその他の生物達が幻想入りしてくるわけだ。そんなことになれば力を持っている人間達が人里を乗っ取ったり、様々な魂達が地獄の方へ大移動、閻魔は過労でぶっ倒れるし、畜生界ではパーティーが開かれ、埴輪たちも踊り狂うだろう、なんてジョークまで飛ばされた。多分何かの異変の話なんだろうけど、生憎私はあまり興味が無い。ともかくそんな話は置いておくとしよう。結局、幻と実体の境界は八雲紫じゃ弄れない。なら、そもそも幻想入りする者達そのものを幻想郷に入れる状態にしなければいいという結論に至った訳だ。つまるところ、【名前を呼んではいけないあの人】__ああもう、まどろっこしい。そのヴォルデモートとやらの復活を阻止、もしくは大戦の調停、阻止。

八雲紫はこれを正式に異変と認め、異変を解決させる為に博麗の巫女である博麗霊夢を指名する____そんな流れだったはずが、生憎霊夢は魔法が使えない。ならばその相棒の魔理沙はどうだと話が上がるが、魔理沙は入学するには遅すぎる年齢だ(まあ、これは霊夢にも言えることだけれど)。それと彼女達を指名できない理由は他にもあって、万が一重傷を負ったり死亡するような致命傷を負ってしまえば人間である彼女たちはポックリ。お亡くなりになってしまうというわけだ。そのため槍玉に挙がった我が家の咲夜は除外。魔法が使えない・種族が人間などの理由でこれまで異変解決に当たったことのあるメンツ(守矢の東風谷早苗や半人半霊である魂魄妖夢、永遠亭の鈴仙・優曇華院・イナバなど)はほとんど除外され、他にも魔法使いである聖白蓮や矢田寺成美は権力を持つ勢力の頭であること、実力不足により除外されたらしい。じゃあ種族:魔法使いのアリスやパチュリーは?そんな言葉も、アリス・マーガトロイド、パチュリー・ノーレッジ共に元ホグワーツ生ということで入学ができないという問題が発生。そもそも、見た目が入学時の年齢を超えている。

 

「それで外見年齢も丁度よさげで実力が十二分にありそれなりに理知的、そんでもってしっかり魔法少女であるお前に白羽の矢が立ったって訳」

「なるほどね。…お姉様じゃダメなの?って、咲夜やパチュリーが止めるか。」

「まあそりゃな。一応あれでも紅魔館の当主な訳だし。…それで、あとはお前の了承が得られれば完璧なんだけど?」

「…一人で向こうの世界に行くのは、さすがにちょっとイヤね。」

「お?寂しんぼか?私が着いて行って一緒に寝てやってもいいんだぜ。「じゃあそうしてもらおうかしら。」なんてな…って、は?」

「勿論冗談。来てもらうなら咲夜が良いわ。ご飯も美味しいし。」

「そりゃそうだ。私もお前とは無理だな、食の趣味が合わん。ちなみにあれから私の食べたパンの枚数は15に増えたぜ。」

「たったの2枚?こっちは毎食…でもないか。けど幻想郷に来る前よりは多くなったわね。」

「理由を当ててやる。そうだ、食卓に人間が出る数が少なくなった?」

「魔理沙の想像に任せるわ。」

「はぐらかすのが上手いな、姉と違って。いや、姉の方はそもそも話を聞いてないんだった。お前のそういうところは咲夜似か?」

「あなた達が来るまで咲夜とは会ったことがなかったから、それは無いと思うけど。ま、あったとしても咲夜が私に似たのね。」

「お前に似たにしちゃちょっと天然が入りすぎじゃないか?まあそれが咲夜の人間味を唯一引きだしている所でもあるけどな。あ、私や霊夢によく分からん批評してくるところはソックリだから似てるってのは否定出来ないかもな。」

「そんなことしたことあったっけ?…ああ、それと。魔法学校の件行ってあげてもいいけど。」

「お前が寂しくないように誰かついて行くよう言ってやるから安心しとけ。この霧雨魔理沙にお任せを!」

「ちょっと、さっきのは冗談──って、もう行ったのね」

 

私の返答を聞く前にもう狭い廊下を箒で推進している背中を見送って、ため息をつく。私はみんなに言われるように、お姉様と違ってインドア派だ。もしかしたら異変解決の依頼を受けたのは失敗だったかもしれないとそうそうに考え始めている頭を切り替えて、当初の予定通り図書館へ向かうことにした。

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