U.N.オーエン英吉利魔法界異変   作:喚く ドードー

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書き忘れていたんですが、この話の進行的な問題で大分オリジナル設定を使用したりしています。
フランやレミリアも出来るだけ原作準拠にしているんですが、やはりそのまま話を進めるのは難しいですね。二次創作などで見かける要素もそれなりに入っていますので、苦手な方はご注意ください。










U.N.オーエンと賢者の石
使い魔、外、買い物。


 

あの日から数日後、とうとう本格的に魔法界へ行く準備が始まった。私が外の魔法界に行くにあたって最初に問題になったのが、この見た目。こんな枯れ木のような羽に色とりどりの宝石のようなものが沢山ぶら下がっている(しかも繋がっている訳ではなく、浮いているのだ。)人間なんて居るわけがない。牙は犬歯とでも八重歯とでも言えるが、羽はどうにもならない。……まあ、それくらいの対策は当然用意されている訳だが。

 

「はい、それじゃあこれがその厄介な羽を隠す薬。けど当然隠すだけだから、あまりにも多くの魔力に晒されたり貴方自身の感情の昂りだったりで勝手に効果が解けるから気を付けて。バレたらバレたで仕方ないから、そこは気にしなくていいわよ。」

「ありがとうパチュリー。ところで私、向こうの世界の常識についてなんにも知らないわ。」

「ああ、そこからね。ええっと、まず向こうの世界で魔法を使うには杖が必要なの。」

 

杖、とは。ステッキが必要なのだろうか?しかしそんな大きなものを持ち歩かないといけないのは大変だろうし、コンパクト化されたものなのかもしれない。

 

「人間だから?」

「違うわよ。人間以外の種族でも杖は必要。向こうの世界は幻想郷ほど魔法が進んでないの。」

「ふーん。それじゃあ私が向こうの世界に行ったらレーヴァテインとかは出せなくなるのかしら?」

 

それは非常に厄介だ。私は能力に反して、力で捩じ伏せると言うよりかは技術で捩じ伏せるタイプ。ただ向こうの世界の勝手が分からないからもしかしたら杖では私の培ってきた技術は再現出来ないかもしれない。いざという時は姉に習って私もゴリ押しすればいいのだが、その時レーヴァテインが使えないのなら少し面倒なのだ。まあ、私には破壊力に特化した程度の能力があるから別に言うほど困るというわけではないのだけれど。

 

「別に向こうの人間が使えないだけで貴方は使えるわ。それから、飛ぶのにも箒が必要。乗り方は魔理沙にでも教えて貰いなさい、私は飛行術が嫌いなの。」

「ああ…確かに魔理沙以上の適役はいないかもね。そういえば、魔理沙ってなんで箒に乗ってるの?無かったら飛べないって訳でも無いんでしょ?」

 

パチュリーにとって飛行術が天敵なのは何となく分かる。そもそもパチュリーは動くのが嫌いだし、自分の身一つで飛ぶならまだしも箒なんて不安定なもの操作しづらいに決まってる。その点、魔理沙は箒の操作に特化しすぎている。向こうの世界に箒のスピードを競う競技なんてものがあれば上位常連になっていると思う。なんなら優勝も難しくないだろう。向こうの常識を知らないから、なんとも言えないが。

 

「そうね。…私にとっては1ミクロンも理解できないししようとも思わないけれど、あの子は形から入るタイプだからじゃない?じゃなきゃ今どきあんないかにもな帽子被ってないわ。」

「それもそうね、それ以外に何か知っておいた方がいいことは?」

「……私が居たのも結構前だから実はあんまり覚えてないのよね。詳しいことは同行者が教えてくれるんじゃない?」

 

パチュリーは少し考え込むようにしてそう言うと、()()()なんて言葉を口にした。それに少し眉を顰める。

 

「同行者?……ああ、魔理沙。あの言葉を本気にしたのね……」

「…とにかく最低限必要な物はこっちで用意しておくから、貴方は使い魔でも選んでなさい。」

「使い魔?…それって悪魔でもいいのかしら」

 

バタバタと忙しなく図書館を出入りしている、赤髪の低級悪魔に目を向ける。私の視線に気付くと後ろを向いたり右を向いたりしていたが、辺りには当然私達三人以外誰も居ないので数十秒すると視線の先が自分だということに気付いたようだ。

 

「…えっ、私は駄目ですよ!?私はパチュリー様の使い魔ですからね?!」

「ちょっと、うちのこあを引き抜こうとしないの。使い魔なら梟とか鼠、猫辺りが主流なんだから。どこに悪魔を従えて学校に入学する子供がいる訳?侵略しに行く訳じゃないのよ。」

「世間じゃ私も悪魔の妹なんて呼ばれてるらしいけどね。」

「あら、レミィもアナタもたかが悪魔なんて格じゃないでしょうに。」

「当たり前でしょ?…それはそうと使い魔か…吸血鬼だから蝙蝠ってのは安直よね。けど飛べる生き物の方がいいし……美鈴?」

「アナタは赤い髪の女を使い魔にしたがるシュミでもあるの?第一使い魔にするにはマヌケだし大きすぎるわよ。せいぜいペットサイズじゃない?」

 

実際、ウチの赤髪には愉快な女が多いと思う。……美鈴が間抜けなのも否定しないし、言うなれば小悪魔もそれなりにマヌケだと思うのだが。赤髪はマヌケというジンクスでもあるのだろうか?いや、ウチが特別なだけ?

 

「確かにそうね。それじゃあ何がいいのかしら。」

「それこそレミィとかに聞けばいいじゃない。あの子色んな生き物を飼ってるでしょう?」

「大抵すぐ死んでるじゃない」

「それは貴方の狂気に当てられてるからよ」

「それじゃ、使い魔なんて飼えないんじゃないの?」

「そこは大丈夫。貴方に渡す薬には無自覚に出してる狂気を抑える効果もあるもの。そのままじゃ外の人間にだって怯えられるだけでしょう?」

「ふーん、意外と凄い薬なのね。味が不味くないといいけど」

「平気よ。八意永琳との共同制作だから安心しなさい」

「ああ、あの月の異変の時の?お姉様が散々語ってたやつね」

「その通り。ほら、雑談はここまでにしてレミィの所に行ってらっしゃい。」

「そうさせてもらうわ、色々ありがとうパチュリー」

「どういたしまして。」

 

最低限の準備(向こうで揃えなくてはいけないもの以外)はパチュリー達に任せて、あまり生き物の飼育に関して信用出来ない姉に使い魔の相談をしに行くことにした。

 

 

 

「使い魔?小悪魔でも美鈴でも連れて行けばいいだろう?あ、咲夜はダメだからな。」

「……こういうのを姉妹っていうのかしら?」

「何の話?」

 

自分が冗談で言った言葉を素で放つ姉に、思わず呆れる。こんなにも性格が違う割には発想が同じというか、根本的には似た者同士なのか、なんというか。

 

「何でもない。使い魔って魔法動物らしいんだけど、良い魔法動物って何か居たかしら?」

「そうだな…私が向こうにいた時はケルベロスを飼っていたぞ。今は確か閻魔の方へ引き渡したんだが…。オルトロスなんてどうだ?」

「大きすぎるのはちょっと嫌ね。もっと小さいのは居ないの?」

「我儘な妹だこと。仕方ない、少し待っていろ。咲夜!」

「はい、お嬢様。こちら魔法生物の()()()()でございます。」

「ほらフラン。この中から選ぶと良い、私がなんでも用意してやろう。」

 

咲夜から渡されたアルバムのような冊子を開き、魔法生物のカタログなんてあるのか、と感心しながら何故か妖怪や悪魔が含まれている項目を流し読みしていく。

 

「ちなみに私のオススメは犬だ。犬は扱いやすいしな。咲夜みたいにね」

「私は犬より忠誠心がありますよ、お嬢様。」

「敬っては無いけどな」

「いえいえ、そんな事あるはずございませんわ」

「ふてぶてしいメイドだこと」

「それじゃあこれにするわ。」

 

いつもの2人の冗談合戦を遮ってカタログのとあるページを開く。

 

「blackdog?…たしか、妖精犬でしたよね?」

「ほう…クク、よりにもよってイギリスで不吉の象徴とされている犬を使い魔にしようとするとはな。パンチが効いてて良いんじゃないか?出発までに用意しておいてやる。そうだ、咲夜。」

「妹様、こちら八雲紫より預かっていた物です。ホグワーツ魔法魔術学校より、入学のご案内です。」

 

既に封を切られているのは、お姉様が読んだのだろうか、それともあのポンコツ門番が勝手に開けたのだろうか。咲夜から受け取った手紙を開く。

 

『ホグワーツ魔法魔術学校 校長 アルバス・ダンブルドア

マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会長

 

親愛なるスカーレット殿

 

 このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

 新学期は9月1日に始まります。7月31日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。 

 

敬具

 

副校長 ミネルバ・マクゴナガル』

 

7月31日必着。…はて、今は確か8月25日のはずだけれど。もしやここまで来て計画が頓挫するなんてこと…いや、あの門番が『あっ、笑 渡すの忘れてました〜笑笑サーセン笑』なんて言ってる姿は安易に想像出来る。ああ、なんか想像したら腹が立ってきた。

 

「……咲夜、返事は7月31日必着って書いてあるんだけど。今日は8月25日よね?」

「ああ、その点についてはご安心ください。既に八雲紫にお嬢様が代筆した手紙を郵送するよう伝えておりますので」

「そう、良かった。私も無闇に従者に怪我をさせようとは思わないもの」

 

私の発言の意味が理解出来ていないであろう咲夜を置いて部屋に戻る。時間を持て余すことになってしまうが、一度仮眠でも取ろうか?幻想郷で出来る準備はパチュリーがしてくれるし、使い魔の調達はお姉様に任せたし、後は何もすることがない…と思えば、先程の手紙に2枚目があることに気付いた。

 

 

『ホグワーツ魔法魔術学校

 

制服

一年生は次の物が必要です

 

一、普段着のローブ 三着(黒)

ニ、普段着の三角帽(黒) 一個 昼用

三、安全手袋(ドラゴンの手袋またはそれに類するもの)一組

四、冬用マント 一着(黒。銀ボタン)

 

衣類には全て名前をつけておくこと。

 

教科書

全生徒は次の本を各一冊準備すること。

「基本呪文集(一学年用)」 ミランダ・ゴズボーク著

「魔法史」 バチルダ・バグショット著

「魔法論」 アドルバート・ワフリング著

「変身術入門」 エメリック・スィッチ著

「薬草ときのこ千種」 フィリダ・スポア著

「魔法薬調合法」 アージニウス・ジガー著

「幻の動物とその生息地」 ニュート・スキャマンダー著

「闇の力__護身術入門」 クエンティン・トリンブル著

 

その他学用品

杖(一)

大鍋(錫製、標準2型)(一)

ガラス製またはクリスタル製の薬瓶(一組

望遠鏡(一)

真鍮製秤(一組)

 

梟、または猫、またはヒキガエルを持ってきてもよい。

 

一年生は個人用箒の持参は許されていないことを、保護者はご確認ください。』

 

ふむ、なるほど。杖と箒は自分で選んだ方がいいとか何とか、パチュリーが言っていた気がする。逆にそれ以外は揃えておいてくれると。では杖と箒は何処へ買いに行けばいいのだろうか?幻想郷で買えるわけでもないだろうし、八雲紫に頼んで外の世界に連れて行ってもらう必要がありそうだが。

そんな思考を断ち切るように、背後から轟音が鳴り響く。反射で振り向くと、2人の人影と吹き飛ばされた扉が見えた。

 

「ようフラン、迎えに来たぜ!」

「ちょ、ちょっと魔理沙!いきなり扉を吹き飛ばすなんて、どういう神経してるのよ!?」

「悪い悪い、実は来る途中でパチュリーの本をくすねててな、急がないと追いつかれそうだったもんでね」

「それはアンタが悪いでしょ。」

「それよりアリス、挨拶しろよ。初めましてだろ?」

「ああもう、誰のせいで…はぁ。はじめましてフランドール、私はアリス。アリス・マーガトロイド。よろしくね」

「魔理沙!…と、アリス…?ってああ、人形遣いの。人里で人間に混じって何かしているんでしょう?偶に氷妖精が見に行ったとか言っていたわ。それと、私もフランでいいよ」

「人形劇ね。それじゃあ改めてよろしく、フラン。それで、早速なんだけど…今から貴女には私達と一緒に魔法界に行ってもらうわ。理由は分かってると思うけど、杖と箒を買いに行く為ね。」

「安心しろよ、金はちゃ〜んとお前の姉様に貰ってきたからな。幻想郷随一の箒のスペシャリストであるこの私がついてるんだから、箒に関しちゃ心配しなくていいぜ!」

「私、魔理沙以外に箒に乗ってる人間…いや、妖怪も悪魔も魔女も、見たことないわ。」

「そりゃお前の交友関係が狭いからさ!地下に篭ってるんじゃ、見えるもんも見えないぜ」

「あら、私もそこそこ交友関係が広い方だけれど貴方以外にそんな古い飛び方してる子は居なかったわよ?」

「おっと、折角フランを箒の道に引き込めそうだったのに…余計な事ばっかり言うやつだな、相変わらず」

「向こうの世界ではともかく、こっちでは普通に飛ぶ予定だけど」

「あら、フラれてるじゃない」

「非常に残念だぜ」

 

まだ数分しか会話を交わしていないが、この二人は相当仲がいいんだとわかる。アリス・マーガトロイドは異変解決者候補だった筈だ。確か元ホグワーツ生という事で辞退したんだったか。なら、杖の店や選び方についてよく知っていても不思議じゃない。魔理沙は言わずもがなだし、この二人が私の買い物に付き合う事になるのはまあ当然の流れなんだろう。

 

「でもどうやって外に行くの?八雲紫は見たところいなさそうだし…」

「これを使うの。フランは魔理沙の後ろに乗ってね」

「…箒?」

「その通り!だけどただの箒じゃない。魔法の箒、それも紫の能力が付与された特別製だ!」

「これで博麗神社方面に飛べば博麗大結界を抜けられるらしいの。」

「なんで八雲紫本人じゃないの?」

「いちいち呼ばれるのが面倒なんだろ」

 

それでいいのか、妖怪の大賢者。思わず呆れてしまったが、苦笑するアリスを見るにそう珍しい事ではないらしい。まあ私は必要な物が買えればいいから、別にそこまで興味がある訳ではないけど。

パチュリーに見つかる前に行くぞ、と言う魔理沙の後ろに乗る。乗り心地は悪いし不安定だが、落ちはしないだろう。いざという時は自分で飛べばいいし。

アリスもいつもは普通に飛ぶらしいので、やはり箒は乗り心地が悪いと言っていた。

 

「行くぜ、ちゃんと掴まっておけよ!」

「魔理沙、あんまり雑な運転はしないでね」

「あはは、紅魔館の大切な妹様を預かるってんのにそんな危険な運転はしないぜ」

「あら、あなたにそんなに気遣いが出来たっけ?」

「そりゃあもう、英吉利紳士もビックリだ。あ、英国紳士だっけか?」

「どっちでもいいわよ」

 

そう言う間にも、グングンとスピードが加速されていく。風圧が感じられないのやアリスの声がはっきり聞こえるのは、何か魔法でも使っているからだろう。

紅魔館はもう見えないほど遠くになり、代わりに博麗神社が見えてくる。…実を言うと、フランが外に出るのはまだ数回目だ。更に言うなら、遠くに出ることは2度目。博麗神社と紅魔館はそれなりに近いとはいえ、フランは宴会に参加することもない。紅魔館で宴会を開かれる時も、偶に咲夜や魔理沙、レミリアが地下に降りてくるだけでフラン自身が宴会に向かったことは無いのだ。

「あー、折角だし霊夢に挨拶でもしようと思ったが居ないっぽいな。んじゃ、このまま突っ切るぜ!」

 

更にスピードをあげる魔理沙にアリスが文句を言っていたが、当然スルー。博麗神社を越えると、突然辺りの景色が変化した。魔理沙もスピードを落とす、どころか急停止して地面に降りる。後ろを振り向くと、レンガ造りの壁に穴が空いていた。見る見る縮まるそれを見て、驚くフランに魔理沙がニヤリと笑う。

 

「驚いたか?私も来たばっかりの時は驚いたもんだぜ…今は慣れたけどな!」

「魔理沙が壁の魔法を解明しようとしてハンマーを持ち出した時は流石に焦ったわ…」

「…お疲れ様、アリス」

「どうもありがとう。それと、ダイアゴン横丁へようこそ、フラン」

 

フランは基本引きこもり体質…というより吸血鬼は全体的にそうで、姉が異端なだけなのだが。まぁとにかく495年間地下室から外に出たことは無かった。だが外に興味が無い訳でもないし、初めて見るものにはそれなりに心が踊るものだ。

迷子にならないようにな、なんて楽しげな笑みを浮かべる魔理沙に手を引かれながら、少し観光することにした。

大鍋が積まれている鍋屋、ホーホーと梟の声が聞こえる薄暗いふくろう百貨店、魔法学校の制服が買えるのであろう洋装店。道に並ぶのはきっと普通では無い店ばかりなのだろう。

 

「着いたわ、ここで杖を買うのが一番いいの」

 

狭くてみすぼらしいが、アリスが言うのなら本当なのだろう。仮にもこの世界の案内人だ。剥がれかかった金色の文字で、扉に『オリバンダーの店──紀元前三八二年創業、高級杖メーカー』と書かれている。

埃っぽいショーウィンドウに、色褪せた紫色のクッションと一本の杖が置かれていた。

とても高級店には見えないが。

 

「おーい、誰も居ないのか?」

「いらっしゃいませ」

 

魔理沙の呼び掛けに答えた訳では無いだろうが、店の薄明かりの中に柔らかな声の老人が立っている。

 

「こんにちは、オリバンダーさん。お久しぶりです。今日はこの子に杖を買いに来たんです」

 

アリスがそう言うと、老人はフランの方へ目を向けた。

 

「ふーむ、成程。それではお嬢さん、拝見しましょうか。どちらが杖腕ですかな?」

 

そう言うと、老人は銀色の目盛りが入った長い巻尺をポケットから取りだした。杖腕とはなんだろうか。利き手の話か?

 

「利き手なら左だけど」

「腕を伸ばして。そうそう」

 

老人はフランの肩から指先、手首から肘、肩から床、膝から腋の下、頭の周り、と寸法を採った。はて、頭の周りまで寸法を採る必要があるのだろうか。よもや、杖を頭に巻くなんて風潮がある訳でもあるまいし。

 

「ではお嬢さん、これをお試しください。リンボクに不死鳥の羽根。二十四センチ、振り心地が良い。」

 

フランが杖を持つと、突然杖が暴れ出した。反射的に破壊しそうになったが踏み止まる。フランが杖を手放す前に、老人が杖をひったくった。

 

「これは合わないようじゃな。それでは次の杖。スギの木にユニコーンの毛、28センチ。触り心地良好。」

 

今度は触る前に弾かれる。その後も色々試してみるが、どれもフランには合わないようだ。老人はその度に嬉しそうな顔をし、魔理沙も面白いとでも言うような顔をする。アリスは少し驚いたような顔をしているが、何故だろうか。多分老人がそれなりに腕利きだから、フランに合う杖がなかなか見つけられないことに驚いているのだろう。

 

「なかなか難しいお客じゃな。…お嬢さんには短くて古い杖の方があっているようじゃが…わしの祖父が作った杖がある、これなんてどうじゃ?実は素材が本当に貴重なものなんじゃが、短すぎるせいで杖が気に入る持ち手が見つからなくてな。イチイの木に吸血鬼の髪、十五センチ。とっても良質で握りやすい。」

 

手に持った瞬間、魔力が通うのが分かった。成程、これが杖に気にいられると言うやつか。

老人は驚いた顔をしていたが、魔理沙やアリスはそりゃそうなる、という顔をしていた。実際、私も同じ気持ちだ。吸血鬼に吸血鬼が素材の杖が馴染むのは、それはそうとしか言いようが無いのだから。

 

「実はな、この杖はわしの父が昔森に迷った時に紅い館に拾われたそうでな。そこで小さい少女のような吸血鬼に貰った素材で作ったそうなんじゃ。それがお嬢さんのような少女に馴染むとは、まあなんとも不思議なことじゃな。」

 

アリスの顔が引き攣り、魔理沙が吹き出す。成程、更に納得だ。その髪の所有者は私の姉なのだから。逆にこの杖が他の人間を選ぶ姿が想像出来ない。もしあるとしたら咲夜だとか霊夢だとか、その辺だろう。代金に八ガリオンを支払って、老人に見送られながら店を出た。瞬間、魔理沙がこれは堪らないと言うように大笑いする。

 

「こりゃ傑作だ!ある意味姉妹共闘だな、これから頑張れよフラン!」

「現実は小説より奇なりにも程が有るでしょ…」

「迷い込んだ人間に変な手土産を持たせるなんて、いかにもアイツがやりそうな事だわ。それより箒を見に行きましょう?どこに売ってるの?」

「えーと、高級クィディッチ用具店って所に売ってるわ」

「お、ようやく私の出番だな!」

「喜んでる所申し訳ないけど、貴方の出番は無いわよ。レミリアがフランにプレゼントとして取り置きしてるって言ってたもの」

「はぁ!?」

「貴方は私とフランの橋渡し役よ。それじゃ、行きましょうか」

 

先程まで魔理沙に振り回されていたアリスが、今度は魔理沙を振り回している。随分と苦労人体質なのだと思っていたが、案外彼女も振り回す側なのだろうか。

 

「ここね。えーっと、『レミリア・スカーレット』で取り置きしてるものなんですけど…ああ、どうも。」

 

出された箒は年代物のようで、名前はシルバー・アロー。直訳で銀の矢。吸血鬼の弱点である銀の名を冠する箒を妹に持たせるなとは思うが、貴重なもののようだ。

 

「オークシャフト79と迷ったって言ってたわね。貴方がそっちの方がいいなら取り替えるけど、どうする?」

「別にどれが良い箒なのかなんて分かんないからどっちでもいいわ」

「あら、どっちもすごく貴重なのよ?」

「興味無いもの」

「折角だしどっちも買おうぜ!そんくらいの金は貰ってきたんだろ?」

「はぁ…貴方の浪費癖、何とかならないの?」

「大丈夫だ、もしフランが使わないなら私が使ってやるさ!それとも咲夜にでもプレゼントするか?メイドだろ?」

「こんな曲がった箒、掃除用じゃ使いにくいでしょ」「よく分からないけど、両方買えばいいんじゃない?たかが42ガリオンと50ガリオンでしょ?」

「たかがって、これでも結構高いんだけどね…」

 

けどそれが買えるだけのお金は持たされてるんだから、多分アイツもこうなると分かっていたんだろう。どちらにせよ一年生の間は箒の使用は禁止されているようだし、性能なんて大して気になりもしない。

 

「これどうやって持ち帰るの?」

「安心しろよ、ちゃんと鞄を持ってきた。咲夜が作ったんだぜ、大事にしてやれよな」

「空間が拡張されてるんだって。つくづく思うけど、あの子の能力って便利よね」

「紅魔館も咲夜の能力で拡張されてるんだったか?咲夜の能力って時間を操る程度の能力だよな。なのに空間を拡張って、応用効きすぎだと思うけど」

「私もあの子と会ったのは紅霧異変の後だから、あんまり詳しいことは知らないわ」

 

意外に思われるかもしれないが、咲夜と私が出会ったのは幻想郷に来てからだ。咲夜の事は使い魔越しでしか見たことは無いし、深く交流があったのなんてお姉様だけ。そのお姉様でさえお互いの事を忘れて過ごしていた時期もあった。

 

「…重さは変わらないのね。まあ、そんなに重くないからいいけど」

「あー、そこら辺は弄れないのか。まあ仕方ないよな、そんじゃあ帰ろうぜ!ちょっと観光してくか?」

「準備もあるし、大丈夫。今日はもう帰りましょう」

「そうしましょう。帰りはちょっとスピード落としてよ?魔理沙」

「考えとくぜ」

 

魔理沙は行きと同じように私の手を引いて走り出し、慌ててアリスが追いかけてくる。振り回す側じゃなくてやっぱり苦労人側なんだな、と先程の考えを改めた。

 

 

なお、結局魔理沙は行きよりスピードを出し、アリスは紅魔館に戻る頃には疲れ切っていたと言っておこう。




思ったより長くなってしまいました。
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