何もしてないのにヒロインが壊れた! 作:未練
彼の事は昔から少しだけ知っていた。
実際に話した事はないけどジンお姉ちゃんとよく一緒に剣の訓練をしている所を何度も見かけた。
「「「本当にすみませんでした!!!」」」
彼とその家族がシスターに土下座している。
聞いた所によるとなんと彼は西風教会が大切に管理している七天神像を壊してしまったそうだ。
何をどうしたら七天神像を壊す事になったのか分からないけど彼は罰として西風教会でしばらく働く事になった。
「どうしてミレンさんは七天神像を壊す事になったの?」
純粋な興味で彼に話しかけてみる事にした。
「バーバラか。子どもができたら、男の子だったらハルト。女の子だったらカレンって名前はどうかな?」
質問の答えになってない。
少し頭がおかしい人なのかな?
というかなんで私の名前を知ってるんだろ。
愛想笑いを返そうとした時ジンお姉ちゃんが教会に入ってきた。
「ミレン!また何かやらかしたのか!」
私達の両親が離婚してから、段々と話しをする機会がなくなった。
お母さんはジンお姉ちゃんを選んだ。
私はお父さんを選んだ。
最後に話をしたのはいつだったっけ。
「バーバラ...牧師こいつは悪いやつじゃないんだ何かと面倒を見てくれると助かる」
牧師か。
昔のようには呼んではくれないのね。
仕方のない事なのかもしれない。
心を偽る。
「ジンさんまかせて」
悪い感情が表に出る前に心の瓶に蓋をする。
努力は私にとって1番の魔法なのに努力してもダメだった時はどうすればいいのか。
考えても考えても答えはでない。
手に豆ができるほど剣術の練習をした。
頭が熱くなっても勉強をした。
自分に考えられる努力はいくらでもした。
それでも勝てないなら一体どうすればいいの。
「バーバラはそんなに頑張らなくてもいいの。グンヒルド家の使命はジンが果たしてくれるから」
もし私がお姉ちゃんよりも優秀だったら。
あの時、お母さんが選んだのは私だったのだろうか。
何でもいいから、一度だけでもいいからジンお姉ちゃんに勝ちたい。
「バーバラ、窓の掃除終わったぞ。他に何かする事はあるか?」
ミレンさんは素直に働いてくれている。
最初は苦労するかと思ったがこれならストレスも溜まらなそうだ。
「バーバラ、プロポーズして1ヶ月記念日って何をプレゼントすればいいと思う?あんまり高いものじゃないと嬉しいんだけど」
週に一度、頭がおかしくなる事だけは治して欲しいとは思うけど。
またミレンさんがジンお姉ちゃんに連れて行かれた。
たぶん彼が悪いんだろう。
「バーバラ助けてくれ!ジン!違う!誤解だ!いやだぁ!」
周りの人も慣れたようで無反応だ。
次に会ったら慰めてあげようかな。
目の前の男の人の治療が終わる。
「はい!これで大丈夫だよ!」
「ありがとう。バーバラさんのおかげで元気になったよ」
相手に優しくすれば相手も私に優しくしてくれる。
それが分かってからは、簡単だった。
この方法ならジンお姉ちゃんより人気者になれると思っていた。
これでダメならもうどうしようもない。
「ジンに頼めば何でも解決する」
ジンお姉ちゃんに助けられた人がそう言っていた。
ポジティブになろう。落ち込んでも良い事なんてない。
やっぱりジンお姉ちゃんは凄いね。
「ジンはきっと立派な騎士になるだろう」
うん。そうだね。私には無理だった立派な騎士になるだろうね。
悪い感情が心の瓶から溢れそうになる。
嫌なものには蓋を。
「ジンが1人で遺跡守衛を倒したらしいぞ!彼女がいればモンドも安全だ」
すごいね。私には絶対できないや。
「ジンはグンヒルド家の一族の誇りだ」
グンヒルド.....。そう、ジン・グンヒルド。
私はただのバーバラ。
もしもジンお姉ちゃんがいなかったら。
あぁだめだ。この考えはいけない。
蓋をしなきゃ。
この感情は瓶の中から出しちゃいけない。
「ジンの事をどう思っているか?...そうだな、ジンは人気者だな。俺以外には優しいし......バーバラ?」
私の中で何かが割れた音がした。
あ、壊れちゃった。
周りの声を無視して走った。
気がついたら森の中でうずくまっていた。
「何で追いかけてくるのよ...」
遅かれ早かれいつか起こる事だった。
たまたまミレンさんとの話がきっかけになっただけだ。
別にミレンさんは悪くない。
「目の前から急に逃げられるとトラウマを思いだしちゃうんだよ、どうした?何かあったのか?」
「何でもない.....どっか行って!」
これは私の問題だ。誰も解決する事なんてできない。
「バーバラが怒ってるのなんて初めて見たな。俺にできることなら何でもするぞ?いつも助けてもらってるし。」
「......何でも?」
そもそも何で私はジンお姉ちゃんに勝つなんて無理な事をやろうとしたんだ。
確か最初は私はただ...。
「......やっぱり今のな...」
「バーバラ!大丈夫か!ミレンお前、私の妹に何かしたのか!」
ジンお姉ちゃんが勢いよく私達の前に現れた。
なんで?ここに?え?今なんて言ったの。
い...もう...と?
いもうと。
妹?
「まだ何もしてないって!」
私の事をジンお姉ちゃんが見ている。
私を見てる。
あぁ、そうか。
何で今まで気づけなかったんだろう。
「お前がバーバラを追いかけ回してる所は見たぞ!バーバラ、本当に何もされてないか!」
私は大好きなジンお姉ちゃんに見て貰いたかったんだ。
もう我慢する必要はない。
自分の欲望に素直になろう。
凄い怒ってるジンお姉ちゃん.....かわいい。
「何もされてないよ、大事な用事があって、ミレンさんは私がここに呼んだの」
口が歪に歪みそうになるのを必死に抑える。
.....あは♡良いこと思いついちゃった。
「あなたの事がずっと前から好きでした。ミレンさん私と付き合って下さい」
なんとなくだが、お姉ちゃんがこいつの事が好きな事は薄々感じていた。
どこが良いのか全く分からないけど。
「「はぁ!?」」
驚いてるお姉ちゃんもかわいい!
「バーバラがミレンと...?しかし...いや、恋は自由だ。でも...ミレンは私の...」
呆然としているお姉ちゃんもかわいい。
今のうちにこいつに近づく。
「お、おい。バーバラ冗談にしてもタチが悪いぞ」
「何でもしてくれるって言ったよね?.....もし断ったら、あることないことモンド中に言い振らすから」
モンドで人気者の私がこいつに襲われたとでも言えばこいつのモンドでの人生は終わる。
みんなに優しいバーバラと頭のおかしい人。
どっちの言う事をみんなが信じるかは言うまでもない。
一瞬で顔が青ざめていった。察しはまぁまぁ良いみたいね。
「やったぁあ!喜んで!バーバラと付き合えるなんて夢みたいだぁ!嬉しいな!嬉しいな!」
うんうん。泣きながら喜んでるね。
あなたは私みたいな、かわいい女の子と付き合える。
私は嫉妬するお姉ちゃんを見れる。
何て良い関係なんだろう。
これからよろしくね、ミレンさん。