何もしてないのにヒロインが壊れた!   作:未練

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何もしてないのにモナが壊れた!

私が彼と出会ったのはモンド城の家の壁だった。

 

「なんなんですかあなたは...なんで壁に張り付いてるんですか?」

 

「俺は壁になる。壁は何も考えず、何の責任も負わない。ただそこに...ある!」

 

占星術の前で嘘は無意味。

彼は本気で壁になろうとしていた。

 

「お前こそなんで壁に張り付いてるんだよ」

 

「私は...きのこ...を取ろうと思いまして...」

 

私は一目見ただけで人の事が大雑把だが見抜く事ができる。

 

「私はアストローギスト・モナ・メギストス。名前が長くて覚えにくので、モナと呼んでください」

 

彼は大雑把どころか何も見る事ができなかった。

私の占星術に対する深い知識欲が彼に興味を持ってしまった。

 

「俺はミレンだ、よろしくなアストローギスト・モナ・メギストス。ん?どうしたアストローギスト・モナ・メギストス」

 

「モナでいいですって!」

 

大きな声を出した後、お腹が鳴ってしまった。

 

「サンドイッチあるけど...食べる?」

 

2日間何も食べていなかった私はその魅力的すぎる提案に逆らえなかった。

 

「ごちそうさまでした。とてもおいしかったです......お礼にあなたを占ってあげましょう」

 

彼の運命には私も興味があったので一石二鳥だ。

 

「占い?モナは占い師なのか?」

 

「そうです!私こそ偉大なる占星術師のモナです!あなたの運命を占って見せましょう」

 

彼の運命を占う為に水占の盤を顕現させる。

む...これは手強い。何かに邪魔をされる。

私の占星術の才能と今まで積み上げてきた努力を惜しみなく投入して無理矢理、彼の運命を占おうとする。

 

もう少しで彼の運命が見える所で水占の盤から剣が飛び出した。

私の首筋に剣が当てられていた。

これ以上知ろうとするなら斬るという強い意志を感じた。

 

「や、やめます。やめますから!」

 

「どうした?」

 

彼には剣が見えてない?

こんな事は初めてだ。

 

「あっ...ごめんな...気付けなくて。長い名前にエロい服、そういう設定だったか......モナと気が合いそうな奴を知ってるんだけど...フィッシュルって言う...」

 

すごい失礼な勘違いをされた。

 

 

 

彼は私を見掛ける度、話しかけてきた。

 

「モナ、料理を作り過ぎて食べきれないんだ。もったいないから変わりに食べてくれないか?」

 

もったいないならしょうがないですね。

 

「モナ!バーバラファンクラブに追われてるんだ!匿ってくれ!」

 

バーバラファンクラブ?なんですかそれ?

 

「モナが書いた星座相談見たぞ、なんかよく分からないけど面白かった」

 

彼と話をするのは悪い気分じゃなかった。

 

だがそれももう終わりかもしれない。

 

 

 

 

 

おかしい。どうしてこうなった。

私の後ろから矢が水の塊が飛んでくる。

後ろから死が追いかけてくる。

森の中を必死に逃げる。

 

不運が重なり、大きな絶望となる。

 

私は占星術の研究の為、高い丘に向かおうとしていた。

森の中で気がついたら30を超えるヒルチャールの群れに囲まれていた。

本来ありえない数だ。

 

急に暗雲が発生し、星座の位置を利用して転移する水術が使えなくなった。

敵に水を操るアビスの魔術師がいた。

 

こんな不運が同時に起きるなんておかしい。

まるで世界が私を殺そうとしているみたいだ。

ま、まさか運命?

 

「ま、まさか...わ...たしのう、うんめい」

 

恐怖で口が上手く回らない。

 

そんな事はないと心の中で否定する。

 

やむを得ない場合を除き、占星術師は自身の運命を占わない。

運命の矛盾を招く危険があるからだ。

 

だがそんな事を言っている場合じゃない、必死に森の中を逃げながら私の運命を占う。

生き残れる運命なら何があっても私は死ぬ事はない。

それが運命だからだ。

 

『ここで死ぬ運命』

 

私の占星術の才能と努力はいつも通り変えられない、逆えない、どうすることもできない運命を写しだした。

 

ここで死ぬ運命?

死ぬ?

死んでしまったらどうなるんだろう。

何も物を考える事ができなくなる。

もう誰かと喋る事もできなくなる。

まだしたい事が沢山あるのに。

 

あぁ、やっと運命を受け入れられない人の気持ちが分かった。

 

これは普通の人間が耐えられるものじゃない。

 

それでも私の体は運命を受け入れてしまった。

占星術は運命を信じる事から始まる。

運命を信じないで占星術が使える訳がない。

 

私に染み込んだ運命に対する考え方が体を動かす事を諦めてしまった。

 

へたりこんでしまった私の目の前にヒルチャールの群れが向かってくる。

 

「これが...逆えない運命」

 

突如、私の目の前が爆発した。

 

砂煙が舞う。

砂煙の中からヒルチャールの叫び声がアビスの魔術師の断末魔が聞こえてくる。

数秒が経つ。

 

彼がミレンが砂煙から飛び出してきた。

 

「走って逃げれるか!」

 

「こ...こし...がぬ、ぬけて」

 

なんで彼がここに、まずい。

私の運命に彼を巻き込んでしまう。

 

「わ、わたしの事はい、いいので、にげて、逃げてください!」

 

「......木の裏に隠れててくれ。俺がなんとかする」

 

「これが私の運命なんです!だから...」

 

「運命ねぇ...諦めるのは俺が死んでからにしてくれ」

 

砂煙が晴れる。

30を超えるヒルチャールの群れに彼は一人で駆けていった。

 

 

 

 

自分の剣の才能に身を任せ、戦場を駆ける。

死の原因に自分から踏み込み、踏み潰す。

俺にできる全てで目の前のヒルチャールを殺す。

 

神の目を持たない俺には敵の攻撃全てが致命傷だ。

棍棒で頭を殴られるだけで死ぬ。

大斧が少しでも生身の身体に当たれば死ぬ。

矢が身体のどこかに刺さるだけで動きを鈍らせ、囲まれて殺される。

 

爆弾を使いきったが奇襲でアビスの魔術師を殺せて本当に良かった。

それでも命懸けの殺し合いに変わりはない。

 

逃げる事はできない。

モナの敵を殺す。

 

数の暴力に抗う為に1対1の状況を作る。

敵の間合いを見極め、同時に攻撃できないように立ち回る。

 

棍棒を弾き飛ばし、敵の首を斬る。

大斧を剣で受けた衝撃すら利用して敵の死角に入り込む。

死なない程度に斬ったヒルチャールを蹴り飛ばし自分の盾に敵にとっての障害物を作る。

 

敵の矢の射線を無理矢理、敵に押し付ける。

 

無茶な動きをするたびに身体が痛む。

俺の剣の技術に身体が耐えられない。

もうやめろと警告する痛みを無視して戦う。

 

情報だ、敵の情報が足りない。

 

目をできるだけ開き、視界を広げる。

耳を澄まし敵の足音を叫び声を把握する。

死の匂いを嗅覚で嗅ぎ取る。

戦況の空気を肌で感じ取る。

 

あまりの情報量に脳が悲鳴を上げている。

俺の剣の才能が情報を整理し、優先して倒すべき敵を教えてくれる。

 

自分の剣の技術で偶然の死を殺す。

斬撃の後の隙すら罠にして敵を誘う。

俺にできる最善手で敵を押し潰す。

 

俺の命でモナの運命を殺す。

 

一手間違えれば簡単に殺されてしまう戦いに剣で抗う。

濃密な殺し合いを繰り返す、繰り返す。

 

ヒルチャールの暴徒が回避する空間を潰すように大盾を構え突進してくる。

回避できない攻撃に剣の才能が斬り殺せと言ってくる。

 

ならば迎撃だ。

 

大楯の衝突の衝撃を左足を犠牲にして正面から受けとめる。

骨が折れて、筋肉がぐちゃぐちゃになる。

 

バーバラの治療でも後遺症が残るレベルの怪我だ。

もうこの戦闘で左足は使い物にならない。

 

だが問題はない、もう左足は必要はない。

大楯を足場に右足で跳躍する。

空中で暴徒の首を斬る。

 

空中で無防備になったと考えた、大盾の裏で隙を伺っていたこの群れの最後の生き残りが大斧を勢い良く薙ぎ払う。

 

空中でとんでもない質量を剣で受ける。

横に吹き飛ぶはずの衝撃を前に、空中で回転して衝撃を無理矢理、自分の剣に乗せる。

 

最後の敵が黒い塵となった。

 

奇襲を敵の増援を警戒する。

 

身体が悲鳴をあげている。

今すぐにでも気絶したい。

 

......敵はこないな。

 

周りに敵がいない事を確認して剣を杖にして左足を引きずりながらモナがいる場所へ向かう。

 

なんて声を掛けようか。

大丈夫か?

怪我はないか?

 

「運命なんて当てにならないな」

 

俺は無数にある選択肢から最適解だと思った言葉を口にした。

 

 

 

 

 

 

私は教会の前で運命の人を待つ。

 

「奇遇だな、こんなところで会うなんて」

 

私を助けてくれた運命の人。

 

「運命ですね、こんなところで会うなんて」

 

「何か私にして欲しいことはありますか?」

 

彼の為になるなら何だってやってあげたい。

 

「いや、特にないけど」

 

「何か欲しい物はないですか?なんでも買ってあげますよ?」

 

占星術に本当に必要な物以外は売った。

今の私にはモラが沢山ある。

 

「いや、別に欲しい物はないな...」

 

「なら何か美味しい物を食べに行きましょう、奢りますよ」

 

以前の私なら考えられない言葉だ。

 

「頭でも打ったのか?モナがそんな事言うなんて」

 

運命の人と鹿狩りに向かう。

 

「サラさん、彼に1番高い料理をお願いします。あ、私は満足サラダでいいです」

 

きっと私と彼は結ばれる運命なのだ。

 

「モ、モナさんが人に料理を奢る!?」

 

これからゆっくり仲を深めていこう。

 

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