「頑張れ頑張れ出来る出来る絶対出来る頑張れもっとやれるってやれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだそこで諦めんな絶対に頑張れもっと積極的にポジティブに頑張れ頑張れ北京だって頑張ってるんだから!!」
「兄貴、北京ってなんすか」
「わからん、なんか勝手に口から出てた」
「怖いんですけど」
唐突に出てきた言葉に自分で困惑している間にもハルは必死に影がある場所に走り、魔法を使おうとしていた。
「かげいどー!」
「まだだ!いいかハル!自分は必ず影に入れる!そう自分を信じるんだ!魔法のコツは自分を信じる事!信じていない奴の魔法なんざクソの役にも立たねぇ!」
シャドービーストとしての身体能力のおかげか数十分走り続けているが、疲れは微塵も見せない。それどころか動くのが楽しいと言った感じだ。
「うん!ぼく、ぼくをしんじるよ!」
「そうだ!お前は出来る!影に入ることが出来るんだ!」
「行けますよーハルさん。実際魔法が使われようとされた痕跡自体は残ってます。後ちょっとっすね」
俺もツブローも魔法が使える為、魔法の痕跡…つまり魔精の死骸を見ることが出来た。まぁ見えると言っても薄らだが…。
そしてツブローの言う通り、ハルが影移動のしようとした場所には魔精の死体があった。破裂していない為、魔法は発現していないが間違いなく生命力を受け取りすぎて絶命していた。
つまり、もっと生命力を注ぎ込めさえすればいいのだ
その為にもイメージである。
幸いハルは飲み込みが早い。基本的な事は出来ている。だとすれば…
「よし、ハル。一度俺がお前に転移魔法を使う」
「てんいまほー?」
「ああ、行きたい場所に行ける魔法だ。つっても数メートル離れた場所に飛ばすだけだが…魔法による移動を体験すればコツを掴めるかもしれん」
「こういうのは体に染み付かせた方いいですからね」
「わかった。てんいまほーして?」
「おう、任せろ」
魔精に生命力を注ぎ、魔法を発動する。
ハルが立っていた場所から一瞬で消え、離れたところに現れた。
「わぁ…すごいね!」
「こいつが転移魔法だ。感覚は分かったか?」
「うーん…なんかね。ふわっとしてひゅーんってなった」
「そうか。じゃあそのふわっとしてひゅーんを影移動でやってみるんだ」
「わかった!」
そう言うとハルはもう一度影移動を試みる。
「ふわっとしてひゅーーーーーん!」
ハルがそう叫ぶと、2m以上あるハルの体が影に溶けていった。
「おお!」
「兄貴!成功っすよ!」
ツブローと一緒に喜ぶ。上手く行けたようだ。
「ハル、聞こえるか。どんな感じだ?」
『うんとね、まっくらだけどおそとみえるよ』
「影から普通に外の様子はわかるみたいっすね」
ハルが入った木の影に話しかける。…何も知らない奴が見たら多分正気疑われるな、これ。
「よし、ハル。外が見えるんなら他の場所の影も見えるはずだ。そこに行けるか?」
『うーん…こうかなぁ』
ハルがそう言った瞬間、ハルがいた影から気配が消える。
と思ったら離れた方にあった木の影から声が聞こえた。
『やったぁ!ねぇねぇ!できたよ?』
「おお!よくやった!」
「やりましたねハルさん!」
ハルを褒めると嬉しくなったのか影から出てくる。
出る分には魔法を使わないのか。使い勝手良すぎな。
「えへへ、かげいどーできるようなった!」
「いやぁお前優秀だわ。ちょっと教えて練習すれば出来るんだもんよ」
「やっぱあれなんすかね、素直だから教えればすぐ覚えるんすかね」
「地頭の良さもあるんだろ」
「じあたま?」
「お前は頭がいいなって言ってんだよ」
「ぼくあたまいいの?んふふ…」
「なんだ照れてんのか?全く」
「ハハ!可愛いもんですね!」
「ぼ、ぼくもっとかげいどーしてくるね!」
ハルは照れ臭くなったのか焦るように影移動をし始めた。
「ちゃんと戻ってこいよー」
「あんま遠くに行ったらダメっすよー」
『うん、ちかくでやるね!』
影からの気配が消えた後、一息付く。
「なんとかなったなー。なんか疲れた」
「これでハルさんも立派なシャドービーストっすね」
「おいおい、まるで俺らが人類の敵に手を貸したみたいな言い方じゃねぇか」
「何を今更。側から見ればその通りじゃないっすか」
「それもそうか」
2人して大声で笑い合う。影移動の出来ないシャドービーストに影移動を教える。確かにどう見ても人類への敵対行為だった。
ただまぁ…あいつが他者に危害を加えるかと言うと…。
「ねぇな」
「無いっすね」
「ありゃ見た目はアレだがただのガキだ。ちっせぇガキ。それも心優しいな」
「多分あの様子じゃ殴られても殴り返そうとしませんよ」
「だから逃げる手段が必要だったのさ」
何も知らない奴らに殴られても抵抗しないんならさっさと逃げちまえばいい。一々相手する必要なんざ無い。
「しっかしまさか俺たちが誰かに物教えるとはな」
「そうですね〜。こんな事になるなんて思わなかったっすよ」
「全くだ。盗賊団結成してやってることがガキに魔法教えるなんざな」
「「ハッハッハッハッハッハッハ!」」
2人して愉快に笑う。あまりにもおかしくて。
久しぶりに楽しくて笑っていた。だからだろうか。
「あの、すいません」
俺たちは
「今、貴方たちの話し声が聞こえたんですけど」
自分達の後ろに立っていた────
「もしかして盗賊団の方ですか?」
人の形をした