結局私たちはハサイの提案を飲むことにした。
実際、他に当てがない以上このまま旅をし続けるのは良いことでは無いと思ったからだ。
1人の時は別に根無草でも構わなかったが、ハルがいる以上それは無理だ。
…何よりもハルをずっと野宿させ続けるのは、私が嫌だった。
盗賊団のアジトに行った3人を待っている間、私はハルと一緒に夕食の支度をすることにした。何だかんだもうすぐ夕暮れだ。焚き火はあるが、明るいうちにやった方がいいだろう。
だがその前に─。
「ハル、荷物の中から茶色の紙袋取ってくれる?」
「ちゃいろ…これ?」
「うん、ありがとう」
ハルから受け取った紙袋を開ける。中には私が買ったカステラが入っていた。ハルと一緒に食べる分の2つ。
「他のみんなには内緒だよ?」
「ないしょ?」
「そう、私とハルだけの秘密」
「うん!シルとのひみつ!」
ハルにカステラを一つ手渡して一緒に食べる。
「美味しい?」
「うん!あまくておいしい!シルは?」
「うん、美味しいよ」
2人で食べる際、ハルは口が大きい分食べるのが少し早い。
だからなのか、ハルはいつもゆっくり食べてわざわざ私と同じペースで食べてくれる。
前に気にしなくて良いと言ったがハル本人がどうしてもと言ってきてからずっとこんな感じだ。
彼の優しさが心に染みる。とても暖かい。
「…明日から聖都に向かうけど…大丈夫?」
「せーとってどんなところ?」
「私も数回しか行ったこと無いけど…綺麗な所ではあるよ。この大陸で2番目に栄えてる場所だし」
「なにかたのしいのあるかな?」
「あまりそういうのは聞いたこと無いかな…」
「そっかぁ…でもシルとならたのしいよね!」
「…そうだね」
2人で過ごす私が好きな時間。これからも続けば良いなと、そう思った。
◇
600:名無しの転生者
イッチ何も書き込まないな
601:名無しの転生者
まぁそれだけ何も無いんだろ
602:名無しの転生者
リラネシア行くんだっけ?水精の樹海からは距離あるからなぁ
603:名無しの転生者
【銀狼】って転移魔法使えないんだっけ
604:名無しの転生者
単純にリラネシアに行ったこと無いんでしょ
605:名無しの転生者
イッチ影移動も出来ないから、【銀狼】が走ったら着いていけないしな
606:名無しの転生者
まぁちゃんと夜に定期報告してくれるし大丈夫でしょ
607:名無しの転生者
なんかあったら書き込んでくれるやろ!
608:名無しの転生者
それもそうやな
609:名無しの転生者
たしかに
610:名無しの転生者
…でも5歳だぞ
611:名無しの転生者
…
612:名無しの転生者
う、うーん…
613:名無しの転生者
…ちゃんとイッチになんかあったら書き込んでくれって言ったっけ
614:名無しの転生者
言ってはいる いるけど…
615:名無しの転生者
色々あったら覚えてられないのでは…?
616:名無しの転生者
そうかな…そうかも…
617:名無しの転生者
でもそろそろ定期報告の時間やぞ
618:名無しの転生者
イッチが来たら改めて言えばいいでしょ
619:名無しの転生者
まさか今日に限って問題とか…無いやろ
620:名無しの転生者
フラグじゃん
621:名無しの転生者
やめなされやめなされ…フラグ立てはやめなされ…!
622:ハル
ごはんたべた
623:名無しの転生者
来たわね
624:名無しの転生者
夕食後の報告いいゾ
625:名無しの転生者
ご飯食べれて偉い!
626:名無しの転生者
雑に褒めるじゃん
627:名無しの転生者
子供に慣れてないやつ雑に褒めがち
628:名無しの転生者
そこそこありそうなあるあるやめてくれ
629:ハル
きょうはね、シルがね、かいだしにいったの
630:名無しの転生者
町の近くまで行ったのか
631:名無しの転生者
まぁ【銀狼】もイッチに助けられてから街とか行ってなかったしな
632:名無しの転生者
行く余裕無かったからな
633:名無しの転生者
いい加減日用品とか買わないとしんどいもんな
634:ハル
それでね、ぼくおるすばんしてたの
635:名無しの転生者
まぁ…入れないからな
636:名無しの転生者
仕方ないね
637:名無しの転生者
お留守番出来て偉いなぁ
638:名無しの転生者
ほんとほんと
639:名無しの転生者
俺なんて留守番も出来ないからな 気付いたら酒飲んで外で寝てるもん
640:名無しの転生者
5歳より知能下じゃん
641:名無しの転生者
人として恥ずかしく無いんか?
642:名無しの転生者
善人でも酒クズになるんやなぁ
643:名無しの転生者
酒クズ超えとるだろこれ 外で寝てるんだぞ
644:名無しの転生者
酒クズに失礼
645:ハル
それでね、ツルパゲとツブローとあったよ
646:名無しの転生者
…
647:名無しの転生者
…
648:名無しの転生者
…誰?
649:名無しの転生者
知らない…
650:名無しの転生者
新キャラ居るじゃん
651:名無しの転生者
人間?を新キャラ言うなし
652:名無しの転生者
まぁ人っぽい名前ではある
653:名無しの転生者
…名前知ってるってことはもしかして仲良くなったんか!?
654:名無しの転生者
マジで!?
655:名無しの転生者
どうなんだイッチ
656:ハル
うん なかよくなったよ
657:名無しの転生者
ナントイウコトダァ(コンバット越前)
658:名無しの転生者
すごいじゃん!
659:名無しの転生者
人を見た目で差別をしない人間の鑑
660:名無しの転生者
人では無いけどな!
661:名無しの転生者
何にせよイッチを受け入れるやつが居るんだなぁ
662:名無しの転生者
捨てたもんじゃ無いな世の中
663:ハル
それでね、ふたりにかげいどーおしえてもらったの
664:名無しの転生者
…はい?
665:名無しの転生者
影移動を…教えてもらった…?
666:名無しの転生者
イッチ …その2人ってシャドービースト?
667:ハル
ちがう にんげんっていってた
668:名無しの転生者
なんで人間がシャドービーストに影移動教えてるんだよ!
669:名無しの転生者
何で教えれるんだよ!
670:名無しの転生者
がくしゅうそうちでも使ったんか!?
671:名無しの転生者
しあわせタマゴ使ったんか!?
672:名無しの転生者
ふしぎなアメ使ったんか!?
673:名無しの転生者
ポケモンじゃないんだから
674:名無しの転生者
そもそもなんで影移動教えることになってるんだ…
675:名無しの転生者
わからない…文化が違う…
676:名無しの転生者
もしかして教導チートをお持ちでいらっしゃる?
677:名無しの転生者
てことは影移動できるようなったのか…
678:名無しの転生者
やったじゃん!
679:名無しの転生者
生存確率がダンチだぜ…!
680:名無しの転生者
やるじゃん!
681:名無しの転生者
やるじゃん
682:名無しの転生者
教えてやるじゃん
683:名無しの転生者
絡繰演劇、見せてやるじゃん
684:名無しの転生者
カンクロウ帰れ
685:名無しの転生者
ナルトス民多くない?
686:名無しの転生者
今更
687:ハル
それでね ハサイにもあったよ
688:名無しの転生者
…
689:名無しの転生者
…ん?
690:名無しの転生者
ハサイ…?
691:名無しの転生者
それって【聖人】と同じ名前な気がするんだけど気のせいだよね
692:名無しの転生者
一応聞くけどさ そのハサイって人、髪が青で腰くらいまで長くて、耳がとんがってない?
693:ハル
うん
694:名無しの転生者
あ、そっかぁ…
695:名無しの転生者
頭がおかしい英雄筆頭に会ったんだ…
696:名無しの転生者
…これは…
697:名無しの転生者
作戦ターーーーーイム!
698:名無しの転生者
認める!
699:名無しの転生者
作戦タイムを認めてくれるス・ノーマンパー好き⛷
700:名無しの転生者
その絵文字はどう見てもスキーだろ
701:名無しの転生者
スキーが好きってかwww
702:名無しの転生者
おもんな
703:名無しの転生者
アホはほっといて…どうするよ
704:名無しの転生者
どうするも何も今ハサイは何してんのよ
705:名無しの転生者
確かに 友好的かもしれない
706:名無しの転生者
擬態型か〜?
707:名無しの転生者
でも確かハサイって善人には手を出さない筈だが…
708:名無しの転生者
イッチは人じゃない定期
709:名無しの転生者
そうじゃん!
710:名無しの転生者
イッチ、ハサイは今何してる?
711:名無しの転生者
今ちょうどLIVEが改修入ってて使えないんだよなぁ…
712:名無しの転生者
何でこんな肝心な時に!
713:名無しの転生者
だって何日か平和だったし!
714:名無しの転生者
俺らもいいって言っちゃったし!
715:名無しの転生者
あたしいじけちゃうし!
716:ハル
えっとね いっしょにごはんたべたよ
717:名無しの転生者
同じ釜の飯ヨシ!
718:名無しの転生者
それなら大丈夫そう…?
719:ハル
あとね、せーとにいくよ
720:名無しの転生者
せーと?
721:名無しの転生者
聖都か
722:名無しの転生者
なんで!?
723:ハル
ハサイがいいよって
724:名無しの転生者
仲良くなりすぎじゃね?
725:名無しの転生者
【銀狼】が仲よかったんか?
726:名無しの転生者
わからん(わからん)
727:名無しの転生者
…イッチ、すまんがこれからもっと掲示板に来てくれるか?
728:ハル
ここに?
729:名無しの転生者
ああ、どうやらだいぶ俺らが把握してない事起きてるし…【銀狼】居るからって安心したらダメだしな
730:ハル
ここにいっぱいはなせばいいの?
731:名無しの転生者
せやな
732:名無しの転生者
まぁLIVEがあればまだマシなんだが…
733:名無しの転生者
それなんだがLIVE中にイッチが掲示板見てなくても音声で聞こえるようになるらしいで
734:名無しの転生者
マジかよ有能じゃん
735:名無しの転生者
助かるぅ〜
736:名無しの転生者
まぁその代わり1日に数時間しかLIVE出来なくなるらしいけどな
737:名無しの転生者
なんでだよ!
738:名無しの転生者
そこ減らしたらダメだろ!
739:名無しの転生者
つーかなんで減るんだよ!
740:名無しの転生者
管理者ちゃん曰く容量がやべぇだそうで
741:名無しの転生者
やっぱ個人のサーバーだろここ
742:名無しの転生者
クソ雑魚スペックPCじゃないんだからさぁ…
743:名無しの転生者
文句は後にして、取り敢えずイッチは聖都に行くんやな?
744:ハル
うん
745:名無しの転生者
そうか…ならワイと会えるな
746:名無しの転生者
え
747:名無しの転生者
マジで
748:名無しの転生者
おう、ワイは聖都住みや
749:名無しの転生者
これは時代が来たんじゃないんすかぁ!?
750:名無しの転生者
やっと…!やっとスレ民が合流出来る…!
751:名無しの転生者
長かったなぁ悲願叶うの
752:名無しの転生者
やっと…直接手助けできるんやなって
753:名無しの転生者
しかも無理に移動しなくていい!
754:名無しの転生者
あれ?てか今転生者はペア組んで行動してるだろ 聖都ニキ誰と組んでんの
755:名無しの転生者
ワイは1人や!
756:名無しの転生者
何故!?
757:名無しの転生者
なんでや!
758:名無しの転生者
奇数だったのとワイがそこそこ戦えるからや!
759:名無しの転生者
草
760:名無しの転生者
ワロタ
761:名無しの転生者
二人組…作れなかったんだね…
762:名無しの転生者
カワイソウ
763:聖都ニキ
効かないねぇ ぼっちだから
764:名無しの転生者
孤独なルフィじゃん
765:名無しの転生者
嫌すぎる
766:ハル
スレミンとあえるの?
767:名無しの転生者
そうだよ
768:名無しの転生者
スレ民代表としてコキ使ってくれや
769:聖都ニキ
言い方!
770:ハル
スレミンとあえるのたのしみ!
771:名無しの転生者
そかそか
772:名無しの転生者
よかったじゃん 楽しみだってよ
773:聖都ニキ
ワイ会えるってなって喜ばれるの初めてだわ
774:名無しの転生者
悲しすぎる
775:名無しの転生者
ツラいさんなのだ
776:名無しの転生者
少し、泣く
777:聖都ニキ
じゃあイッチ、聖都に着いたら教えてくれ 会いに行くわ
778:ハル
うん!
◇
「せーとでスレ民とあえるって!」
「誰ですかスレミンって」
食後の後、突然ハルがそう言い始めた。
「スレミンって…確かハルに色々教えてくれたって言ってた…」
「うん!せーとにいるんだって!」
「聖都にいるんですか?私聞いた事ないんですけど」
「色々教えてたって…通信魔法でも使ってたのか」
「ううん、けーじばん」
「なんですケージバンって?」
「…ごめん、私もいまいち分かってない」
てっきり精霊かと思ってたけど…違ったのか。
しかし聖都となると…
「ハサイ、聖都に魔物は…」
「流石に住んでないですよ。と言うかちゃんと出入りを管理しているのでそんな変な人居ないと思うんですけど…」
「…てことは普通に聖都に出入り出来る人間なんじゃねぇのか?」
「そんな人がなんでハルさんと意思疎通できるんすか?」
「いしそつー?」
「お話しできるって事」
「えっとね。ぼくがかきこむとスレ民もかきこんでくれるの。けーじばんに」
書き込む…文字を書き込む?本か何かなのだろうか…
考えても分からない。だがどのみちそのスレミンとやらと会えるならばそちらから聞けばいいだろう。
「まぁ何にせよ、明日は聖都に向かいますから今日は早めに休んでください。転移魔法で近くまで飛んでそこから徒歩で向かいますから」
「聖都自体には転移阻害貼ってあるから、直接行けないのは面倒だな」
「私もちょいと面倒だなとは思いますけど、勝手に出入りされるよりはずっとマシなので」
「まぁ外から変な奴来ても困りますもんね。じゃあ早めに休みましょうか」
「あ、私は寝る必要ないし見張りしときます。ゆっくり休んでくださいね〜」
「うん、じゃあよろしく」
「おやすみなさい」
「はーいおやすみなさい。いい夢を」
そう言ってハルと一緒にテントに入る。
ハルに合ったサイズの寝袋が無いので毛布を敷く。
「はい。いいよハル」
「うん」
ごろんと寝っ転がるハル。しっかり毛布をかけてあげる。
風邪でも引いたら大変だ。
「シルもねよ?」
「うん、寝よっか」
ハルにくっつく形で私も寝そべる。
ハルの方が体格が大きいので、まるで私があやされてるみたいだ。
「おやすみ。ハル」
「おやすみなさい。シル」
彼と抱き合って目を瞑る。2人で旅をし始めてからはいつもこの寝方だった。
お互いの温もりを感じながら、私たちは眠りに落ちていった。
「いや抱き合って寝るって…どんだけですか…バカップルじゃないんだから…」
逃避行編 終わり