関所
「おはようございます。今日も張り切って頑張りましょう!」
「おはよう。朝から元気だね…」
「寝てませんからね!私!」
朝、朝食の準備をする為にテントから出てきた私は焚き火を弄ってたハサイと挨拶を交わす。…再生力が強いからって言っても寝た方がいいような気もするが、まぁ個人の自由だろう。
「にしてもシルさん何作るんですか?手伝いますよ」
「今日は…サンドイッチにでもしようかな」
「いいですね、シンプルで。なら私はスープでも作りましょうか」
ハサイはそう言うと自分の荷物から食材を取り出した。
…野菜とか剥き出しで持って来てるんだけど
「いつもそうやって持ってるの?」
「まさか。盗賊団討伐したのを村に報告したらくれたんですよ。折角だから早いうちに食べてしまおうと思いまして」
そう言ったハサイは手際よく野菜を切り始める。
1人で他国に出向いたり危険な魔物を討伐する関係上、ハサイも料理は出来る…らしい。
「流石に20になって料理も出来ないとか生活不能者と大して変わりませんよ…。だからシルさん、その疑いの目をやめてください」
「そうは言ってもあなた前に「さっき再生したばかりなんで食事は不要です!」とか言ってなかった?てっきり空腹は自傷して再生して誤魔化してるんだと思ってたけど」
「いやあれは単に再生した時に腹に血が溜まってただけなんで…」
無駄話をしながら食パンを切る。耳の部分はハルが好きなので残す。
切った後、焚き火で沸かしていた鍋で卵を茹でる。
茹で上がるのを待っているとハルが起きて来た。
「おはようハル」
「うん…おはよぉシル…」
あくび混じりに返事をしながら私の隣に座るハル。
朝が弱いハルは起きてしばらくはこんな感じだ
「おはようございますハルさん。まだ寝てても大丈夫ですよ?」
「ううん…シルがおきてるから、おきる」
「なるほど、じゃあシルさんの隣でゆっくりしててください」
そう言いながら大きめの鍋に切った野菜を入れて茹でるハサイ。
確かに手慣れている。結構な量あった野菜が既に切り終わっている。
「5人居ますからね〜。これくらいなら足りるでしょう。炊き出しもよくやるんで材料を切るのは早くないとやってらんないんですよ」
「そっか。孤児院も運営してたっけ」
「ですです。まぁこの前運営任せてた連中が横領したんで皆殺しにしましたけど。…次誰に任せましょうかね」
そうこう言っていると卵が茹で上がる時間だ。引き上げて殻を剥く。
一人旅の際、楽に食べれるからと茹で卵を食べる時が多かったから手慣れたモノだ。
殻を巻いた後に器に入れ、塩と胡椒を入れた後準備してあったビンを開ける。
「それなんです?」
「マヨネーズだって。卵と酢と油…だったかな。それらを混ぜたもの。買い出しに行った時に売ってたから買ってみた」
「最近そう言うよく分かんない調味料増えてますよね。味自体は良いんですけど…。ショーユとかいう黒い液体出された時はビビりましたよ」
「そんなのあるんだ…流石に初見なら私も驚くかな」
ビンに入ったマヨネーズを器に入れて、卵を潰しながら混ぜる。
ある程度卵がバラけたら切っておいたパンに乗せるように塗る。
「…なんか今まで2人旅だったから起きたら誰か居るのは新鮮だな」
「そうっすね」
ツルパゲとツブローの2人も起きてきた。手には携帯食料と思われる袋がある。
「お二人の分もありますよ?無理して携帯食料食べなくてもいいのに」
「昨日の晩に既にあやかったからな。何度も世話になる訳にはいかんだろ」
「それに消費期限そろそろやばいんでそれ込みっす。お気になさらず」
「そうですか。でもスープの方はもう作っちゃってるんで飲んでください。余っても困ります」
「…そう言うことなら、貰うとするわ」
「わざわざどうもっす」
3人分のサンドイッチを作り、皿に乗せて渡す。
ハサイの方もスープが出来たみたいだ。
「お椀借ります。…はいどうぞハルさん」
「ありがとぉ」
「ハル、今日はサンドイッチだよ」
「うん、シルのさんどいっちすき」
それぞれに料理と食器を渡し終えて食べ始める。
「…うめぇな。なんつーか前に聖都付近で仕事した時に飲んだのと似てる気がするな」
「あー地域によって味付け違いますからねこういうの。聖都は基本的に塩味薄めなんですけどその分具材多く入れますからね。それじゃないです?」
「野菜が美味いからか、塩味が薄くても美味いっす」
「ハル、タマゴのサンドイッチ…どう?」
「うん!すごくおいしいよ。シルもたべよ?」
「そうだね。いただきます」
朝というのもあって口数自体はみんな少ない。
でも気まずさは無かった。
◇
「それじゃ早速聖都に向かいましょうか」
朝食後、片付けと軽い休憩も終わる頃にハサイが立ち上がりそう言った。
「忘れ物は無いですか?一番近い関所まで飛びますよ?」
「それはいいけど…ハルがそのままでいいの?」
「私が言えば問題ないです」
「だが関所っつーことは聖都に住んでる人間以外も使うだろ。流石に騒ぎになるんじゃねぇのか?」
「あまり目立つようなことはしたくないっすよね」
「ならハルさんには誰かの影に入ってもらいましょう。それなら問題ないですよね」
「ハル…それでいい?」
「うん。わかった」
「それで…誰の影に入るんだ?」
「だれの?」
ツルパゲがそう言った後、ハルは私達を順に見回す。
「私は構いませんよ。どうぞお好きに」
「えっと…」
……。
「俺でもいいぞ。この中じゃ体デカイから影もデカイぞ。まぁ影の大きさ関係あるのかわからねぇが」
「うんと…」
………。
「俺細身っすから…ハルさんが窮屈じゃなきいいんすけど」
「ん、んーと…」
……………。
「ぼ、ぼく…シルのかげにはいりたい…だめ?」
「ううん。全然構わないよ。おいで?」
「うん」
ハルは私の影に入ることになった。別に他の人でも問題自体は無かったが…ハルが言うなら私の影ぐらい、いくらでも貸そう。
「ハルさんがシルさん以外を見てる時とんでもないほど尻尾垂れ下がってましたよね。そのまま落ちるんじゃないかと思いました」
「自分が選ばれた瞬間に死ぬほど振り回したがな」
「何だったら現在進行形で振ってますよね。尻尾取れるんじゃないかってくらい」
…うるさい。
◇
「あー暇だな。マジで」
「そうだな。今日やたら人居ないしな」
俺たちは聖都ハルドラドに一番近い関所で働いてる。
日によって人の出入りの多い少ないはあるが、今日はその中でも特に少ない日だった。
夜勤から引き継いで3時間、未だ人は来ない。
「時間がアレなのもあるが…それでも朝ならある程度来るんだがな」
「商人とかの出入りも無いからな。珍しいもんだ」
「ま、その分楽できるからいいんだが…やることが無いってのもしんどいぜ」
3時間も2人して突っ立っているのは中々に堪えるものがある。
仕事だから仕方ないけど。
「少しくらいサボっていいんじゃね?」
「やめとけ。背後の聖都には【聖人】様が居るんだぞ?サボった罪で殺されたら洒落にならん」
「ハハッ!そりゃ確かにそうだ!あの人ならやりかねない!」
「だろ?この前もやらかした連中が皆殺しらしいからな。おー怖い怖い」
「「ダーハッハッハッハ!」」
「いや流石に暇で仕方ない時の休憩くらいで殺しませんけど…心外ですね」
「「」」
…透き通るような青い髪。装飾の無いシスター服。エルフ耳。
何と言うことだ。冗談を言っていたら本人が来てしまった。遺書書くの忘れてた。
「あぁ、安心してください。軽い冗談を罪にはカウントしません。他者を笑わせるというのは善行ですから。まぁ限度がありますが」
「…多分聞こえてないと思うけど、その2人」
「しゃーねぇよ。俺だってあっちの立場ならそうなる」
「仕事してただけなのに…気の毒っす…」
ギリギリ残った理性が大声で叫ぶ。
「早く仕事しろ死にたく無いなら」と。
「これは【聖人】ハサイ様!お勤めご苦労様です!」
「いやお勤めしてるの貴方達だと思うんですけど」
「ご安心を!ネズミ1匹聖都には侵入させてませんしさせません!」
「いや私達通りたいんですけど。侵入させて欲しいんですけど」
「「ここは我々に任せてお先にどうぞ!!!」」
「いやその…何でもいいや。じゃあ通りますね」
「…関所の仕事ってコントしないといけないの?」
「いや、あれはただ空回ってるだけだ」
『あのひとたち、すごいあせかいてる。あついの?』
「暑いんじゃなくて冷や汗だと思うっす」
よーし、まじめにしごとするぞー!!!