影の獣in 5歳   作:水道館

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感想は嬉しいんですけどストーリーに関してこうした方が面白いとかああした方がいいとかの指示はやめてクレメンス…


握手

「けんかしちゃだめ!」

 

私が女に詰めているとハルが割り込んできた。

どうやら誤解してるみたいだ。

 

「ハル、別に喧嘩してる訳じゃ無いよ。聞いてるだけ」

「うそ!シルおこってた!しおりこわがってる!」

「怒りたくて怒ってる訳じゃ無いよ。ただこいつがはっきり言わないから─」

「こいつじゃなくてしおり!」

「…シオリが私の聞いたことにちゃんと答えてくれないから、ちょっと強く言っただけだよ」

「じゃあおっきなこえださなくてもいい!」

「今大声出さなくていつ出すの!」

 

胸が痛い。ハルと言い争いなんて吐き気がするほど嫌だ。

だがここでやめればハルにどんな不利益があるか分からない。

ハルが悲しむ可能性を潰せるなら、この胸の痛みなんて安いものだ。

 

「ま、待ってイッチ!私は大丈夫!だから落ち着いて!」

「でも…」

「お願い。シルさんと言い争ったらダメだよ。だって─」

 

 

 

 

「シルさん、すっごく辛そうな顔してるから…」

 

 

 

ハルがその言葉を聞くや否や、私の顔を正面から見てくる。

…表情は変えていない。変に弱みを見せたくなかったから、そこには気を遣っていた。

何故私が辛いと分かった?特殊な能力…心でも読めるのだろうか。

 

考えに耽っていると女─シオリが言葉を続ける。

 

 

「シルさんはイッチの為に、私に怒ってるんだよ」

「ぼくのため…?」

「シルさんからしてみれば、私…スレ民は姿も見えなければどんな相手なのかもわからない。そんな相手が自分の大切な人にちょっかいかけている…何かされたらって思ったら、怒るのも当たり前だよ」

「でも、スレ民いろいろ、ぼくにおしえてくれて…」

「確かに教えたかもしれないけど…それが正しいなんて保証はどこにも無い。それでもしイッチが怪我でもしたら…不安で仕方ないよ」

「…じゃあ、なんでシルはつらそうなの…?」

「そんなの決まってる」

 

シオリは私の方を向いて─

 

 

「大切な人が傷つくのを見たい人なんて、居ないんだよ」

 

そう、言った。

 

 

「あ…」

 

ハルがまるで何かに気付いたかのような声を出した後にフラフラと私の方に近づいてくる。

 

「シル…ごめんね…ぼくのためだったのに…」

 

「シルにくるしいおもいさせて…」

 

そう言ってハルは棒立ちしている私を抱き締めてきた。

 

「…ううん。私も、言いすぎた。怒鳴らなくても、よかった」

 

胸の痛みが引いていく。それと同時に冷静になっていく。

最初は穏便に済ませるつもりだった。

あんな問い詰めなくても、シオリが善良なのは見た瞬間分かった。

普通に話を聞けば、答えた筈だ。なのになんで─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルの胸で深呼吸をした後に顔を上げる。

 

「うん。もう大丈夫」

「ほんと?くるしくない?」

「苦しくないよ。ハルのおかげ」

「そうなの?…あれ?でもぼくのせいでくるしくなって、ぼくのおかげでくるしくなくなって…あれ?」

「気にしなくていいよ。ハルは悪くないから」

 

本当に悪くないから気にしないで欲しい。

ハルから離れてシオリの方を向く。

 

「…冷静じゃなかった。ごめんなさい」

「あ、いやそんな。気にしないでください。怪しいのは間違いないし…」

 

そう言うシオリをよく見ると何か入った紙袋を持っていた。

…尻餅をついた時に思いっきり地面にぶつかっていたが。

 

「その袋…」

「え?…あああああ!!!やば!中身平気!?」

 

慌てて袋の中を確認した後、シオリは側から見ても分かるくらい落ち込んだ。

 

「ああ…ダメだ…潰れちゃってる…」

「ご、ごめんなさい。何か大切な物だった…?」

「え?ああ違います。ただのお菓子です。イッチ…ハルくんに会うからお土産でもと思って買ったやつなんでそんな深刻な訳でも…」

「おみやげ?」

「う、うん。シュークリーム。でも潰れてクリーム出ちゃってる…」

「ちょーだい?」

「え?」

「きたなくないからたべれるよ」

「無理して食べなくても…」

「しおりのおみやげたべたい。だめ?」

「…ううん、わかった。はい」

 

袋から取り出されたシュークリームは確かに潰れてぐちゃぐちゃだった。

ハルは手が汚れるのも気にせず受け取ってそのまま頬張る。

 

 

 

「んむ…んふふ。おいしいよ、おみやげありがと」

「…うん。どういたしまして」

 

…少なくとも、彼女はハルにとっての悪い存在では無い。

2人のやり取りを見て、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か、胸の奥が痛んだ

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

「あー辺境伯辞めて〜」

「その冗談、他所に聞かれない様にしてください」

「いや全然冗談じゃ無いのじゃが」

 

マジで辞めたい。仕事多すぎる。なんで今世でも仕事に追われとるんじゃ麻呂は。

 

「そもそもなんでこんなに仕事が増えておる!?」

「それは辺境伯が治めている地域が民第一な影響で他からどんどん人が流れてきているのが原因です」

「畜生!トロピコで名君プレイし過ぎた弊害が!!!」

「名君なのは良いことでは…?」

「麻呂の体力的には良くは無い!」

 

だって基本的に圧政なんざするより善政の方が楽だし…。

いやまぁそもそも心が耐えられないから圧政なんぞ出来はせんが。

 

「と言うかこの前無断で外出された時の仕事も溜まっているので…大人しく仕事してください」

「あれはほら、突撃をせねばならぬと麻呂のスタンドが…」

「なんですかスタンドって」

「なにってそりゃ…もう1人の僕?」

「アホ言ってないで書類にハンコ押してください」

 

秘書の辛辣な言葉を受けて再びハンコマシーンになろうとした時、通信魔法が入ってきた。

 

「む、通信が入った。仕事は待て」

「承知しました」

 

相手の通信魔法を受け入れる。…って

 

「なんじゃスレ民か。麻呂クソ忙しいから後ではダメかの?」

「ああ、ダメだ。その忙しいのも全部後回しにしろ。イッチの件だ」

「! なんぞあったか!」

「…イッチのスレのログを見ろ。以上だ」

 

そう言うと男のスレ民は通信を切りおった。

ログ?仕事で忙しくて掲示板は覗いておらんかったが…。

 

「どれどれ…?」

 

一体何があったと…い…う…の

 

「………」

「あの、辺境伯?」

 

全てを理解した麻呂は─。

 

「少し頼みがあるのだが」

「はい。何でしょう」

 

 

 

 

 

 

 

「この国って火葬だっけ土葬だっけ。麻呂火葬が良いんだけど」

「何があったんですか辺境伯」

 

何って…生命の危機?

 

 

 

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

 

落ち着いた私たちは取り敢えず近くのベンチに座っていた。

 

「えっと…栞です。元冒険者で週4で近くの酒場で働いてます」

「シル。【銀狼】って呼ばれてる。好きに呼んで」

「ハルだよ。よろしくねしおり!」

「う、うん!よろしくねハルくん、シルさん!」

 

まさかハルくんに会うつもりがシルさんまで来てしまうなんて…。

最初はどうなるかと思ったけど、何とかなって…何とか…なってるのか…?

 

「あ、あのシルさん。私は決してハルくんに何か悪い事をしようと企んでいるとかは─」

「うん。それは大丈夫。これでも相手の善悪くらいは見抜けるから。シオリは問題ない。さっきは脅してごめんなさい」

「いえいえ、怪しいのは事実でしたので…」

 

取り敢えず私自身の保身が出来たので良しとする。

問題は他のスレ民だが…

 

「それでなんですけど…他のスレ民に関しては…」

「…シオリはちゃんと対面してるから問題ないと分かっただけで他に関しては別。」

「別と言うと…」

「もしハルに何かする様な素振りがあったら…保証はできない。でもシオリは殺さないよ。約束する」

「ア、ソウデスカ。アリガトウゴザイマス」

 

ダメだ。私だけしかちゃんと助かってない…。皆殺し云々は免れたけど。

お願い他のスレ民。ちゃんと3日経つまでに来て…お願い…。

 

「…ちゃんと来てくれて、問題なければ何もしないから。そんなに怯えないでもいいよ」

「(それは無理)」

「まぁ…ハルに私とキスさせようとした奴は…許さないかな」

「(ごめんなさい。もう死んでるんです。何だったら本人達死んだ後に成り代わられてたんです。でもどう言えばいいんだ…)」

 

そんな話をしているとシュークリームを食べ終えたハルくんが話しかけてきた。

…ちょっと不安そう?そんな顔で

 

「…シル」

「なに?ハル」

「…シル、ぼくと…その…チューしたの…いや…だった…?」

「全然。全く。これっぽっちも嫌じゃない。なんだったら今する?」

「い、いい!いまはいい!だいじょうぶ!」

「? そう、わかった」

 

…ハルくんもしかして…少しだけではあるけど…シルさんの事意識しちゃってる!?

やばい。これはやばい。何がやばいって5歳だからやばい。いや、でも今シャドービーストだからセーフ?アウト?…セウト!!!

 

「まだツーアウトだから大丈夫ですよね!?」

「何が?」

 

混乱して訳わかんない事を口走ってしまった。

落ち着け私。

 

「あ、そう言えばスレ民全員集まるとして…私その間どうしたらいいですか?」

「別に何か制限したりしないよ。いつも通り生活してていいよ」

「えーっと何というか…私、ハルくんの手助けをしたいというか…」

「手助け?」

 

自分の目的を話すことにした。催眠で嘘がバレない様にするの忘れたし…正直に言った方が後々問題無いだろう。

 

「ハルくん…シャドービーストで、世界の敵じゃないですか。今はシルさんが居るから追われてないけど…そうじゃなかったら討伐軍が組まれてるくらいです」

「…」

「でもハルくんとっても優しい子で…直接面識なくて、文字越しの私ですら分かりました。シルさんはもっと分かってると思いますけど…」

「…うん。私は、ハルに救われたよ」

「私に何ができるか分からないけど、力になってあげたいって、力になれなくてもせめて、ハルくんの話し相手だけでもとか…なんて思ったりして…すいません。なんか勝手にペラペラと」

 

アハハ、と軽く笑う。

実際に言葉に出すと中々に恥ずかしい。

でも言葉にしないと伝わらないから仕方ない。

 

「…なら、ハルと友達になってほしいな」

「友達…ですか?」

「うん。今は2人しかハルの友達は居ないから…少しでも、彼を理解してくれる人が増えたらって、そう思う」

「…そういう事でしたら!」

 

立ち上がって上の空だったハルくんの前に立つ。

 

「ハルくん!」

「? しおり、なあに?」

 

 

「私、ハルくんと友達になりたいな!いいかな?」

 

 

手を差し出す。

 

 

「うん!いいよ!しおりはぼくとともだち!」

 

 

 

 

彼はそれを、優しく握り返してきた。

 




栞ネキは緑髪ポニーテールの巨乳のねーちゃん(19歳)です
ちなみに前世はブラコン
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