影の獣in 5歳   作:水道館

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幽霊

「早速荷物を解いていきましょう!お願いします!」

「ナチュラルに他人にやらせようとしないでください」

「…………え?」

「何ですかその「じゃあお前らいる意味無いじゃん」みたいな顔は」

「厚かましさは英雄の中でトップっぽいなこれは…」

「はは…は…ま、まぁまぁ…」

 

4人で邸宅の中に入っていく。ハサイさんが言ってた通り、放置されてきただけあって埃っぽい。でもこの程度なら少し掃除すれば大丈夫だろう。

 

「荷物を解く前に掃除しないと…物に埃ついちゃいますよ?」

「あ、そっか。じゃあお願いしまァァァァァァァ!!!??」

「ハサイよ。キレる気持ちはよく分かるがそれ以上いけない。腕捻り過ぎて雑巾みたいになっておるから」

「掃除するから丁度いいですね」

「よくない!よくないです!」

 

なんだかんだで全員で箒を持って掃除を始める。

…ただ一つ、気になる点が。

 

「あの…ハサイさん。幽霊ってどこに出るんですか?」

「つーかいつ頃から出始めたのか麻呂達聞いてないでおじゃる。情報くれ」

「ああ、すいません。幽霊が出始めたのは大体2週間前くらいですかね。決まった場所に出るわけじゃなくて家全体で見つかってるとか」

「ハサイさん以外は見えるんですか?」

「教団員にも見えませんでした。見たのは近所の人達ですね」

「なんぞ悪さでもしたのか」

「だとしたら周りの事考えずこの家ごと破壊してます。現状人畜無害なので放置してたんです」

「ふーむ…」

 

麻呂さんが顎に手を当て考え込む。

何かあったのだろうか。

 

「あ、いやなに。2週間前となると、ハルが転生してきた時期と重なると思っての」

「…そう言えばそうですね。まだ2週間くらいしか経ってないのかぁ…」

「色々あり過ぎて時間の流れが分からなくなるのぉ…この調子で続くと流石に麻呂禿げるぞ」

「烏帽子被ってるからバレないですよ」

「バレなきゃ問題ないわけじゃ無いよ?流石に45でまだハゲたくないよ?」

「でもツルパゲさんはハゲてますけど30代ですよ?」

「あれスキンヘッドだから!髪型だから!いや髪は無いけど」

 

麻呂さんと話しながら箒で床を掃除する。どんどん溜まっていく埃。

数分もしたら埃の山が出来た。ちょうど良く差し出されたちりとりに掃いていく。

 

「あ、ありがとうございます」

「こうやって掃除してると学生の頃を思い出すのぉ」

「you died」

「…私よく掃除押し付けられてました…」

「…善人も考えものじゃな…」

「にしても麻呂さんって手が綺麗なんですね。意外」

「ん?ペンだこがある麻呂の手が綺麗な訳なかろう」

「え?」

「ん?」

「「…じゃあこのちりとりは?」

 

麻呂さんと顔を見合わせた後、ゆっくりとちりとりを構えてる手の方を向く。そこには─。

 

「ok」

 

掃ききれなかったゴミを箒片手に集めている貞子っぽいのが居た。

くっそガン見してきながら。

 

………。

 

 

「「ぎゃああああああああああ!!!」」

 

「? 2人ともどうかしましたか?」

「出た!出た!出ちゃった!ナチュラルエンカウント!」

「来る!きっと来るじゃなくてもう来てるんです!」

「いやだから何が?」

 

そ、そうだった。ハサイさんは知覚できないんだった!

 

「居るんですよ!件の幽霊がそこに!」

「え、いるんですか?そこに?」

「ちりとり持って掃除手伝ってきとる!でも死ねって言ってきておる!」

「ちょっとまって!?幽霊ってどう言う事でぇぇぇぇぇぇ!!!???」

 

どうやらミドネさんには見えるようだ。余計に理屈がわからない。

もしかしてそういう能力?

 

「と、とととにかく退散!麻呂さん悪霊退散しないと!」

「んな事言われても麻呂別に陰陽師じゃねーし!無理じゃよ!?」

「たすけて!たすけて!やさしくして!ダメならやさしくころして!キリングミーソフトリー!!!」

「私には皆さんがいきなりパントマイムやり始めたようにしか見えないんですって」

「そ、そうだ!塩!塩です!き!よ!め!の!しお!ちょうど持ってますからこれで除霊を!」

「麻呂達震えのせいでうまく出来ん!ハサイ!撒いてくれ!」

「はぁ。塩を撒けばいいんですね。わかりました」

 

ハサイさんに塩の瓶を手渡す。蓋を開けて中身を手に取ってハサイさんは振りかぶって思いっきり撒いた。

 

「どっこいしょ!」

 

 

 

そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()撒いて、しまった。

 

 

 

ズガガガガガァァァン!!!!!

 

 

轟音が鳴り響く。部屋が吹き飛ぶ。私たちも吹き飛ぶ。

当然だ。だってちょっとソニックブーム出てたもん。

 

衝撃が収まった頃には邸宅は半分くらい無くなっていた。

近隣の住宅に被害が一切無いのはもはや奇跡じゃ無いだろうか。

 

「お主馬鹿かぁぁぁぁぁ!!!塩を撒けと言われて破壊を撒き散らす奴があるかぁぁぁぁ!!!」

「え!?撒いて吹き飛ばして消滅させる訳じゃ無いんですか!?」

「んな訳ねーだろアンポンタン!除霊!霊を!除く!家除いてどうすんんだ!」

「あああああああ私のおうちがァァァァァァァ!!!」

「ミドネさんのでは無いと思いますけど…」

 

阿鼻叫喚(主に2人)の中、先ほどの幽霊がいない。

もしかして除霊に成功した?

案外物理攻撃に弱かったのかもしれない

 

「no problem」

 

瓦礫吹っ飛ばして這い出てきた。

もう終わりやね。

 

「…貴方は…?」

「え、今見えるんですか?!」

「あ、はい。…ですがあれは幽霊では無くて…」

 

ハサイさんがそう言ったと思ったら、貞子もどきは驚いたような雰囲気を出して私、麻呂さん、ミドネさんを担ぎ上げた。

 

「「「え、何で!?」」」

「あ、ちょっと…」

 

そのまま連れていかれる私たち。凄く早い。まるでハサイさんから逃げているような様子だった。

 

数十分前に起きた出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

「と言う事があったんです」

「ちょっと意味わからないかな…」

 

担がれたままのシオリから伝えられた話は実に意味がわからない。

結局この推定アンデッドが何なのかすら分からない。

 

「…でもハサイがすぐに殺そうとしなかったって事は…」

「うむ。悪霊では無いのだろう。何故麻呂達を担いだのかは知らんが」

 

廊下に突っ立った状態で鎮座する女アンデッド。

どうしたものかと考えてると─。

 

「シル…?シオリたちきてるの?」

「!!!」

 

部屋の奥から様子を伺いに来たハルに対して強い反応を示した。

瞬時に思考が冷える。本気では無いとはいえ、ハサイの攻撃を耐えた存在だ。やるならば徹底的に潰さなければならないだろう。

そう思った。思ったのだが─。

 

 

ポタ…ポタ…

 

 

髪の隙間から唯一見える瞳から涙を溢れさせている。

ハルを見つめて、とめどなく。

 

「? どうしてないてるの?」

「sorry… sorry…」

「な、何だこやつ。ホントに何故泣いておる?」

「一体何が…」

「(気絶しているミドネ)」

 

油断はせずに、ハルを庇うように前に立つ。

…でも、ハルに危害は加えないだろう。何故なら─。

 

 

 

その涙は懺悔の涙に見えたから─。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

1人で壊してしまった家を片付ける。周りの家に何も問題が無くてよかった。元々取り壊す予定だったし、別にいいだろう。

【支配者】の家は…また後で考えよう。

 

今は何よりも、あの幽霊だ。

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 

この世界において、魂と言うものは例えアンデッドであろうと存在する。元の生物のものでは無く、アンデッドそのものとしての魂が。

 

そして魂は不変な存在だ。複数に分かれる事は無い。

魂が無ければ意志を持つ者は存在が出来ない。そう言うものなのだ。

だからこそ、私は首を飛ばされても増える事はない。私の魂は一つしか無いからだ。

 

…そう、魂が別れることはない。

 

つまり英雄の魂では無い。英雄の誰かの魂があの幽霊になった訳ではない。

じゃあ何故私はあの幽霊の魂が見えなかった…?

強さ的には大した事ないアンデッドだった。やろうと思えば瞬殺出来る。

なのに見えない。もしかして私の魂を見る力は、自分と同格の力を持つ者に作用しない。では無くて─

 

 

「…同じ存在の魂は見えない…と言う事ですか?」

 

疑問には思っていた。英雄の力について。

あまりにも強すぎるし人族に有利すぎる。

魔物側に英雄並みの力を持った存在が生まれた事はない。

必ず人族の中から出てくる。

じゃあその力の源は?

世界を破壊する事ができる程の力。どれだけ魔物側が強くてもそれを押し退ける力。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな力を持った私より弱いのに同格…。英雄でも、無い。

あれは…あの幽霊は一体…

 

 

 

 

 

 

「何なのですか…?」

 

私の問いに答えは返ってくる事は無く、瓦礫に吸われていった。




幽霊の見た目は貞子にするかメリーさんにするか迷いました
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