影の獣in 5歳   作:水道館

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恐怖

「つぎシオリね!」

「よーし!いっぱい取っちゃうよ!」

「わ、私も…」

「お前はその砕け散ったせんべい食い終わってからにしな!。力任せに針投げやがって!」

「うぅ…」

 

「な、懐かしい…!うまい棒なんて何年振りだろう…!」

「やっぱコンポタだよな。無限だよ無限」

「いやめんたい味だろJK」

「折角だから!俺はこのチョコレートを選ぶぜ!」

「邪道だよそれは!」

 

「え、そんなにベビースター入れんの?多くないか?」

「入れれるだけ入れて食いたい」

「これもうもんじゃ焼きじゃなくてベビースター焼きだよ」

 

「特定ニキ〜俺にお金恵んで〜」

「ハァ!?依頼で働いて金稼いでるだろ!?」

「服買ったら無くなった…今まで服1着しか無かったから…」

「…そういや転生したばっかで服もろくに無かったのか。仕方ない。ほら、300エンやるよ」

「残り180エン…もうダメぽ」

「高速でジュース買ってんじゃねーよハゲ!」

「駄菓子屋ならジュース買ってもいいのでは…?」

 

「…随分と賑やかになったな」

「まぁ一気に十数人増えたっすからね」

「あまり騒ぐと近所迷惑になるから抑えて欲しいでおじゃるな」

「その腕に抱えてる溢れんばかりのフガシが無ければ説得力もあったろうに」

「うまし!うまし!麩菓子うまし!」

「辺境伯の威厳はどうしたんすか?」

「自室の机に忘れた」

「取りに行ってこい。今すぐに」

 

ハルと知り合いというマロ辺境伯。最初は少し怪しかったがこんな状況を見せられては信じる他無い。

スレミンと名乗る連中の共通点は人間しかいないと言うくらいだろうか。

あまり詳しい事は教えて貰えなかったが、どのスレミンもハルに好意的だ。中でも緑髪ポニーテールの女はめちゃめちゃハルの世話を焼こうとしている。まるで弟が出来たばかりの姉的な感じ。

【銀狼】…シルが嫉妬してるが。

 

「てかそんなにこの菓子が好きなのか?」

「いや、そんなに大好きと言うわけでも無いけど懐かしさと味の変わらなさがダイレクトで来たと言うか…なんかそんな感じじゃ」

「懐かしい?俺こんな感じの菓子なんて初めて見たんすけど…昔からあるもんなんすか?」

「あー…まぁ、うん。別大陸というかなんというかそう言うところから伝わってきた云々」

「ふーん…そうなのか。まぁ、この値段でこの味ならガキでも買えるし悪く無いもんな」

「遊びながら食べれるって面白いっすよね〜」

「授業もこんな感じで出来れば1番いいんだけどな」

「ん?お主らもしかして教員なのか?」

「ああ、と言ってもなったの最近だし学校に碌な設備も教材も無いからマジでどうすっか悩んでる最中だが」

「予算足りないっすよねー…と言うか教育系の物高くて。多分他国に簡単に教養のレベルあげて欲しく無いとかあるんでしょうけど」

「ふむ…」

 

聖都にはハルを匿うと言う負担がある以上、多少は融通しても構わんか…。

 

「麻呂が何とかしてやろうか。これでも辺境伯だし」

「は?いや助かるが…いいのか?」

「構わん構わん!正直聖都とある程度の縁は持っておきたかったのだが…【聖人】が居る以上、踏み込んだ事は出来ないでな。良い機会と思うことにしよう。そちらの予算で買える値段にしてやろう!」

「後でハサイにも話通すが…問題解決、しちまったな」

「いやー良かったっす!世の中って意外と狭いっすね〜」

 

そんな話をしていると扉が開いた。客が来たみたいだ。

 

「お、おばあちゃん、おかしください」

「うん?ああ、リーネかい。何が欲しいんだ?」

「えっとそーすせんべい、おねがいします」

「…アンタまた孤児院の他のガキに分けるのかい。たまには自分だけの買ったらどうだ?アンタの小遣いだろ?」

「で、でもわたしいちばんとしうえだから」

「まだ7歳だろうに…ほら、持ってきな」

「あ、ありがとうございます」

 

店主がネックレスを付けた少女に菓子を手渡して、金を受け取る。

…何処かで見たような、気のせいか?

 

「兄貴、あの子確か俺らのとこの学校入る予定の子っすよ。書類にあった人相描きとおんなじ」

「ああ、どこかで見たと思ったらそれか。色々あって抜けちまってた」

 

随分と落ち着いた子供だ。敬語使えてるし。

孤児院だから、大人びるしか無かったのだろうか。

 

「お、おじゃましまし─「きみもそーすせんべいかったの?!」え?」

 

少女が帰ろうとした時、ハルが彼女の前に出て来た。出てきて、しまった。

 

「あ、ああ、ぁぁあ…」

「これね!すごくたのしいよね!おせんべいつり、いっしょにやらない?」

「ま、待ってハル!」

 

シルが止めようとするが、遅かった。

いくら敬語ができて、大人びてるとは言え。

 

7歳の少女が、魔物と対面して恐怖を抑えられるはずが無いのだ。

 

 

 

 

 

「こ、こないで…!あっちいって…!」

 

 

 

その言葉は、ハルの動きを完全に止めた。

このままはダメだ。ツブローと共にすぐに駆け寄ってハルを引っ張る。

 

「ハル!取り敢えずこっちに来い!」

「ハルさん!まず奥に!」

「─────」

「ハル!」

 

ハルを店の奥に引っ込ませる。シルも着いてきたので、動けなくなったハルを少女から見えない場所まで連れて行く。

 

「ハル…」

「…一旦俺らは戻る。ハルに付いといてくれ」

「…うん」

 

シルにハルを任せて表に戻る。

既に少女はおらず、暗い雰囲気だけが残った。

 

「辺境伯、さっきの女の子は…」

「栞ネキ…緑髪のポニーテールがおったじゃろ。彼女が送って行った。問題ない」

「そうか…」

 

完全にやらかした。ハルには以前、必要最低限の会話以外はあまり他人に話しかけるなとは言っていた。

…だが俺らやスレミン、教団員などがあまりにも普通に接する際で、ハルの認識が甘くなったのだ。

遊んでいてテンションが上がっていたのもあるだろう。ハルは悪くない。

 

「…はぁ。アンタら少し考え過ぎだよ」

 

沈黙の中、店主である老婆が煙草に火をつけながらぼやく。

 

「ちょっと面食らっただけさね。あの子が一杯一杯なのもあるがね…」

「と言うと?」

「…孤児院で年長だからって、自分がしっかりしなければと思ってんのさ。そのせいで色々我慢しちまってる。余裕が無いんだよ余裕が」

「ハルの見た目も関係はしてるだろうが…だからと言って、さっきの対応を責める気にはなれん。…【銀狼】もそれを分かってたからあの娘に何もしなかったのだからな」

「…なんか、やりきれないっすね」

「まぁちょうど良い時間さね。アンタらもう帰りな。店仕舞いだよ」

「え、まだ15時だぞ」

「いいんだよ。ウチに来る奴なんてさっきのリーネくらいさ。あまり人気無いんだよ、ダガシ。そこでモンジャ食っとる連中!残すのは許さないから全部食ってから帰りなよ!気まずいからって帰るんじゃ無いよ!」

「「「ウ、ウス!」」」

 

そう言って店の奥に引っ込んでった。

 

「…帰るか」

「そうっすね…」

「ああ、教材の話は後日で良いな?今日はそう言う気分では無くなってしもうてな…」

「分かった。教団本部の方なら会えるか?」

「最近はあそこにおるから、問題ないぞ」

「じゃ、また後日に」

「うむ。ではな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハル…」

 

呆然としているハルの背中をさすりながら様子を伺う。

あれから既に1時間経っているが、反応が無い。

それほど、ショックが大きかったのだろうか。

 

「…ごめん、なさい」

 

ポツリと、ハルはそう呟いた。

 

「…大丈夫だよ。さっきの子もきっとビックリしただけだから─」

 

わざと明るい口調で励ます。

が、効果は薄い。

 

「ぼく、たのしくて…あのこも、おせんべいすきなのかなって、そうおもったら、はなしかけちゃって。そしたら、こわがらせちゃって。なかせちゃって」

「ハル…」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…ごめんなさい…」

「え…?」

 

やく、そく?

 

「ハル、さっきの子と会ったことあるの?」

「え?ないよ?」

「でも今約束したって言ったよね。あの子と…もしくはあの子の知り合いと約束したんじゃなくて?」

「…あれ?ぼく、だれとやくそくしたんだろう…?」

「…誰が、ハルを怒るの?私は怒らないよ?」

「あれ?あれ?ぼくだれにいわれたんだろう?」

 

これ、は…なんだ?

一体ハルに何が…。

 

「ちょっと大丈夫かい!?ジャリガキ!」

「お、おばあちゃん…」

「変に気にするんじゃないよガキなんだから!おら!これ持ってもう帰りな!」

 

ドサッとハルの腕に溢れんばかりのダガシを渡す店主。

 

「すいません。勝手に奥の部屋に入って…」

「そんな事はどうでも良いからもう帰って休みな。そのダガシの金も要らないよ。出しても受け取らないからね!」

「…ありがとうございます。ハル、帰ろっか」

「う、うん…おかしありがとう」

「ああ、どういたしまして。また来な!」

 

困惑の影響かハルが持ち直してくれた。取り敢えずは、良しとしよう。

2人で店から外に出る。スレミン達はもう居なかった。多分、帰らせたのだろう。

 

2人で帰路に着く。トボトボと歩くハル。

 

「ハル、少し頭下げてくれない?」

「え…?うん、分かった」

 

素直に頭を下げてくれるハル。

私はそれを─。

 

「えい!」

「わぁ!?」

 

思いっきり抱きしめた。ハルはバタついて抜けようとするがそうはさせない。しっかり腕を固定して、ハルが離れないようにする。

 

「む、むぅぅ!?」

「ふふ!離さないよ?さっき私を横抱きしたからね。私もハルを抱きしめる権利があるよ」

 

数分くらいそのまま抱きしめた後、力を緩める。

腕の中に入ったままのハルが顔を上げたので、額同士をくっつける。

 

「シル…」

「私、落ち込んでるハル見たくないな」

「…うん、わかった。もうだいじょうぶだよ」

「そっか」

 

ハルを解放して、そのまま手を繋ぐ。

 

「じゃあ早く帰ろうか。もう少ししたら夕飯の時間だし」

「うん、おなかすいた!」

 

ハルの約束云々は気になるが、それはまた後で考えよう。

一先ずはハルが元気になってよかった。

 

 

 

 

 

 

 

「…ハル、少し顔赤いけど大丈夫?」

「え!?う、うん!へいき!ほんと!」

 

 




シル…C
栞…E
ミドネ…F
ハサイ…無
ハル…130


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