冒険者のパーティの意識を全て奪った後、すぐに私は彼に駆け寄った。
「無事!?」
「…シル?たすけてくれたの!?ありがt」
「馬鹿!!!」
「え…?」
「なんで応戦しないの!?彼らはあなたの事殺そうとして来てたんだよ!?分かる!?あなた死にそうだったの!なのになんでされるがままなの!」
「で、でも…ぶれすれっと、たいせつにするって…」
「それはあなた自身の命より大切な物じゃ無い!!!」
あぁ、私最低だ。彼は必死に約束を守ろうとしてくれてただけなのに。
私がもっと早く助けにくればよかっただけなのに。
自分のミスを棚に上げて彼に当たっている。
「確かに大切にしてくれようとしたのは嬉しいよ!でもそれであなたが死んだら何の意味も無い!そうして守ったってブレスレットを付ける人が居なきゃどうするの!?」
「えっと…その…」
「そんなに大切ならもう外して!私が預かっておくから!それ守って死なれたら目覚めが悪い!」
そう言って私は彼の付けているブレスレットに手を伸ばす。
私の手がブレスレットに触れる瞬間─。
「いやだ!」
彼は私の手を振り払った。
「─っ!なんで!」
「やだ!やだやだ!」
「だからなんで嫌なの!別に返してもらうんじゃ無い!預かるだけ!安全な時に渡すから!」
「やだー!」
まるで子供同士の喧嘩のように彼と取っ組み合う。
嫌がる彼とそんな彼と自分自身に怒りが抑えられない私。
それを数分続いたので一旦離れる。
「…分かった。取らないから。代わりに何で嫌なのか教えて」
せめてそんなに固辞する理由を聞き出そうと吐いた言葉。
自分で言ったのにあまりの冷たさに自分で驚いた。
「だって…うれしかったから…」
「それは分かったよ。でも─」
「うれしかったんだ!」
彼は先程の拒絶よりも大きな声でそう言った。
「ぼく、おきたらここにいて…なんにもわかんなくて…。おとうさんもおかあさんもしらなくて…」
「スレ民はぼくにいろいろおしえてくれたけど、それでもぼくはひとりぼっちで」
「さみしくてさみしくて、でもシルがきてくれて」
「シルといっしょにごはんたべて、おはなしして、たのしかったんだ」
「だからおれいによつばのくろーばーさがしたら、シルがぼくにぶれすれっとくれて」
「すごく、すごくうれしくて─」
「…ごめんなさい わがままいって」
「いうこときくから、いいこにするから」
「きらいにならないで…いっしょにいたいよ…」
目から滂沱の涙を流しながら、彼はそう言った。
あぁ、彼は私と
私を子供の頃から襲っていた寒気。何なのか今まで分からなかったがようやくさっきわかった。
私は寂しかったんだ。
両親から恐れられて、友人も居なくて。
ずっと、ずっとひとりぼっちで───。
私は彼を抱きしめる。彼はいきなりの事に驚いたのか体を跳ねさせる。
「シル…?」
泣きながら、鼻声になりながら、困惑した声が聞こえる。
「ごめんなさい、怒ったりして」
「あなたは贈り物を大切にしてくれただけなのに、あんなこと言って」
「嫌いになったりしない、なるはずがない。だって─」
「私もあなたと一緒に居たいから」
「あなたと一緒に居ると寒くなくて、あったかくて…」
声が震える。胸の奥から湧き上がる感情が抑えられない。
瞳から涙が流れる。それが彼と離れたく無いから出た悲しみの涙なのか、彼と同じ想いなのが嬉しくて出た喜びの涙なのか。
泣かなすぎて、もうおぼえていないけど─。
「ごめんなさい」
「ごめん、なさい」
「ごめん…グス…なさい…」
私は座り込んでいる彼の肩に顔を埋めて泣き始める。
なんてみっともないのだろうか。英雄が聞いて呆れる。
「シル…なかないで」
彼が私を抱き返してくる。鉤爪で私を傷付けないようにそっと。
「シルわるくないから…ぼくが、わるいから」
「ううん、私が悪いから。あんなこと言って…」
「だってぼくがシルこまらせて…」
「私だって、散々あなたに助けてもらったのに…」
言葉を交わすその度にお互いから涙が溢れる。
彼の体は黒い甲殻が付いているのに、なぜか暖かかった。
「ごめんなさい…ごめんなさぁぁぁい…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
お互いにずっと謝りながら、いつまでも泣いていた。
私を包んでいた寒さは、優しい黒い温もりにかき消されていた。
◇
散々泣いて、お互いに泣きつかれた後抱き合いながら彼に尋ねる。
「そう言えば…あなた、名前無いんだよね?」
「うん…」
「私が付けても良い?」
「シルが…?」
「うん」
「…いいよ」
私は彼の肩から顔を上げて、彼の目を見てその名を呼ぶ。
「あなたに会ってから寒く無くなって」
「まるで冬が終わって春が来たみたい。だから…」
「ハル。あなたの名前はハルだよ」
彼は少し固まった後
「ハル…ぼくの、なまえ」
「そう。あなたはハル」
「シルとにてる」
「そうだね 私とそっくり」
「うん…ぼくはハル」
「うん。ハル、これからよろしくね」
私はそう言うと再び彼に抱きつく。彼はまた私をそっと抱き返すと─。
「うん…うん!シル、これからよろしくね!」
心底嬉しそうに、笑っていた。
作者はこのシーンを描きたくてこの作品を描き始めたことをお前に教える。
ついでにジャンルコメディにしたけどこれ間違えてるんじゃねぇかなと悩んでいることも、お前に教える。