空と海のマアナ   作:3racro

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■登場人物

▼マアナ
 南の島に暮らす、金色の瞳をした土着民族の“とっても明るい元気な少女”
 両親を幼い頃に亡くし、今は婆ちゃんと二人暮らし
 海と共に生き、空にあこがれる
 嵐の夜に鉄の翼に乗って島に落ちてきた青い瞳の女との出会いが彼女の人生を変える

 
▼クーちゃん
 マアナの友達のクイナ(飛べない鳥)の子供
 鳥のくせに夜目がきく
 実は精霊で他の村人には見えないが、なぜかマアナには幼い時から彼?が見える
 婆ちゃんにも見えないが、「マアナがそう言うならそうなのだろうよ」と二人を優しく見守ってくれる


▼婆ちゃん
 マアナのお婆ちゃん
 土着民族のシャーマンで、まじないや薬を調合して暮らしている
 若い頃はウィッチとして空を自由に飛んだと言うが、マアナは信じていない(ほんとかな~?)


▼ドウド
 マアナの叔父さん(独り身)
 他の村人同様、漁で生計を立てている 
 若い頃、海の外の世界に出て行くことを夢見ていたが叶わなかった


▼ソラ ※本人曰く(本名は不明)
 嵐の夜に鉄の翼に乗って島に落ちてきた青い瞳の女
 マアナを空に導く




『空と海のマアナ』

 

 

 

(プロローグ)

 

 

 

(、、、ザァーーーーーーーッ、、、ザァーーーーーーーッ、、、、)

波の上を穏やかに風が渡る。

 

 

『今日は波の気持が心地よい。』

マアナは思った。

 

仰ぎ見る青空の下、波穏やかな海の水面に古い民族衣装を着た藍色の髪の少女が浮かんでいる。

その金色の瞳に、空の青が鮮やかに映る。

 

 

目の前に広がる、海と同じ青色の空は、何処までも何処までも続いているように彼女には思えた。

水面に漂う右手を空に向けて突き上げると太陽の光を受け、まるで輝いているように見える。

生きているを実感できる。マアナはそう思う。

 

『でも、どこまで行けば私にはそれが掴めるのだろう?』

 

「あの空の彼方には、天駆ける女神さま達がいるんだって、婆ちゃんが言ってた。」

 

マアナには空があまりにも自分にはかけ離れた世界に感じられた。

 

 

 

海鳥が風を捕まえ、一気に上昇していく。

(マアナと海とをカメラ上空に引いていって広い海の画とタイトル)

 

 

「、、、私にも翼が有ったらな~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ー『空と海のマアナ』-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(海の子)

 

 

マアナは今年で13歳になる。

 

小さな島の小さな村の中で祖母と二人暮らしている。

両親は彼女が物心付く前に病気と海の事故で他界してしまったが、マアナには大好きな友達がいるので寂しくはない。

 

「ねえ、クーちゃん、今朝、北の港に船が着いたんだって。」

「」

「うん!行ってみようよ!」

「」

 

村人の目には、マアナが独り言を言っているように映るだろう。

でもマアナの瞳には確かに、オスのクイナ(飛べない鳥)が映っている。

 

 

「ああ、それは精霊だね。マアナが見えると言うならそうなのだろうよ。」

婆ちゃんは言う。

「私にもむか~しには見えたもんさ。」

「もしかしたら、いつかマアナを導いてくれるかもしれないねぇ。」

 

「ふ~ん。」

難しいことはよく解らない。でも、マアナには小さな頃からクーちゃんが見えているのだからそれでいい。

 

 

飛べない癖にクーちゃんは脚が速い。

マアナも負けじと海沿いの草むらを駆け抜ける。

髪をなびかせる潮風が心地いい。

小さな岩を飛び越える。

 

マアナは海が大好きだ!!

 

 

 

 

港に着くと、大勢の人たちに交じって、叔父のドウドが船から魚を降ろしていた。

 

「おお、マアナ、これから婆さんの所に魚を持っていこうと思っていたところだ。」

「一緒に行くか?」

 

木箱の中の魚に大好きなボラボラを見つけたマアナは二つ返事で答える。

 

「うん、行く!!」

 

 

 

ドウドと一緒に、婆ちゃんに魚を届けるため島の西にある家に向かう道すがら、

マアナはドウドに聞いてみた。

 

「ドウドは、海が好き?」

 

「まあ、、好きだよ。漁で暮らしているんだしな。」

 

「じゃあ、空は?」

「ドウドは海の向こうのさらに向こうの広いお空に行ってみたいと思ったことある?」

 

 

「、、、なんだか難しい質問だな?、、、そうだな~昔はそう思っていたかな。」

「でも兄さん達が死んじゃって、お前と婆ちゃんが残されて、、、

 いや、でも結局は本気じゃ、意気地が無かっただけなのかもな。

 

 おれは兄さんと違って特別な人間じゃないしな、、、」

 

そう笑って答えるドウドは、いつもより何か申し訳なさそうに、どこか寂しそうにマアナの目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

(嵐の気配)

 

 

 

(、、、ガタタ、、ガタタタッ!)

お昼にはあんなに綺麗だった青空が夕方には灰色に変わり、今はもう板戸に叩きつける風の音が大きく響いている。

 

「どうも嫌な風だねえ。まだ、嵐が来るって時期じゃないのに、、、」

婆ちゃんが眉をしかめる。

 

「ドウド達、大丈夫だったかな?」

魚を届けたドウドは、急な天候の悪化に、皆と船を陸に上げるために港に戻ってしまい、マアナ達は今しがた二人の夕飯を終えたところだった。

 

「何も無ければ良いけど、、、」 

 

 

(ッカ!!!)

突然空が昼間のような明るさになった瞬間、雷鳴が轟く。

同時に、

 

(バリィバリバリィバリィバリバリ)

轟音と共に何かが森の木々を薙ぎ倒す!!

 

「!!?うわぁ、ナニナニナニ?婆ちゃん?」

椅子から落ちて尻もちをついて慌てるマアナを横目に、いつも見せないような素早さで婆ちゃんが外に飛び出した。

 

目に入ってきたいつもの森の木々は、滅茶苦茶に薙ぎ倒され新たな一本の道を作り出していた。そして、

その終わりに、見たこともない大きな鉄の塊が居た、、、

 

「わっ、何?何アレ?婆ちゃん?、、、エエッ???」

驚くマアナの言葉が終るのを待たず、

 

「ハァーーーーッ!!」突然のため息と共に、鉄の塊の隣から立ち上がる人影!?

彼女の青い瞳とマアナの黄金色の目が合った瞬間、

 

 

「鉄の翼を駆り大空を征く魔女たち、、、」

その婆ちゃんの言葉を遮り青い瞳が言う。

 

「いや、、、ウィッチって言うのさ。」

 

 

突然立て続けに起こったそれらの出来ごとに驚きながらも、マアナが口にしたその言葉は、

 

「すっご~い!!」

 

『何か自分が想像もしない出来事がこれから、始まるのかもしれない。』そんな未来を感じ取ったマアナだった。

 

 

 

 

 

 

 

(ウィッチ)

 

 

昨晩の嵐がウソのように、今日は日差しが心地よい。

そう伸びをするマアナの隣には今、珍しい客人が座っている。

 

 

女は自分のことを「ソラ」と名乗った。

魔法力が尽きて空から落ちてきたという。

 

「ウィッチって魔法使いなの~??」

マアナは興味津々だ。

 

「ああ」とソラは傍らに立て掛けられていた古いステッキを手に取った。

 

「ウィッチに掛かればステッキだろうが何だろうが、空飛ぶ魔法のほうきとなる。」

 

婆ちゃんのステッキを掴んだソラの体が微かに光ったその瞬間、彼女の体が浮かび上がった。

 

「スッゴーイ!」初めて魔法を目の当たりにしたマアナが目を輝かせる。

 

「だが、所詮このレベルだ。今の私ではもう自由に飛ぶことは叶わん、、、」

ソラは怒るように言い捨てた。

 

 

 

 

真上にあった太陽が西に傾き始める頃になってもマアナの興味は止まらない。

 

「ソラはやっぱりお空が好きなの?」

 

「ああ、大空は私をワクワクさせてくれる。」

「マアナは外の世界に出たくはないのか?」

 

マアナは考える。

「私はここで生まれて、ここで育って、だからよく解んないんだ、、、」

 

ソラは無言のままマアナと、その隣のクゥに目をやり何かを考えていた。

まるで“それ”が見えているかのように、、、

 

 

二人が話すのを脇目で見ながら、

そんなソラのことを何故か好ましく思えないドウドだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの日の記憶)

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・」

音はしない。でも確かに嵐の夜だった。

 

海岸のはるか沖のその人は、ドウドに何かを叫んでいた。

とても穏やかな顔をして、、、

 

次の瞬間、彼らの乗る小舟は大波にさらわれ、漆黒の海に消えていった。

、、、、、、

 

 

 

『ハッ!?、、、』見慣れた天井が目に映った。

 

「、、、、ああ、、またこの夢か」

いつもドウドはそこで目を覚ます。それ以降のことは記憶がない。

 

実際、彼は朝になって海岸でそのまま座り込んでいる所を身回りに出た村人に保護されている。

 

今の彼と同じように下を向いてうなだれた状態のまま。

 

 

 

 

兄とドウドは9つ歳の離れた兄弟だった。

自然、村の中でも人望の厚かった兄はドウドにとって自慢の兄であり、憧れの対象だった。

兄のように特別な人間に自分もなりたいと本気で思ってた。

 

兄が結婚してマアナが生れたとき、ドウドは自分のことのように喜んだものだ。

これまでの毎日がこれからもずっと変わらずに続くものと信じて疑わなかった。

 

 

しかしそれは、叶わなかった。

 

いつもの年よりも遅い嵐の夜、沖に取り残された人々を救助に行った彼らは、

ドウドの眼の前で波に消えた。

 

あの日兄が最後にドウドに叫んでいた言葉を、もうドウドは覚えていない。

 

 

 

 

 

 

 

(嵐の夜)

 

 

二日後、また嵐が近付いてきた。

今度のは、前回よりかなり大きいらしい。

 

 

夜になるとそれは一層顕著となってきた。

マアナ達の家の壁は時折大きな音を立てて軋み、雨漏りの滴が幾つも床を濡らした。

 

「大丈夫かな~、ドウド達も見廻りに出ちゃったけど、、、」

いつも陽気なマアナも、さすがに今回の嵐は気が気でないようだ。

 

「大丈夫、とは言い切れんの~」

 

「ああ、確かに、、、」

ソラも心配そうに声を重ねる。

 

 

 

(ッカ!!!)

とても大きな稲光が立ち上ると同時に、

 

「!クーーーーーーー」

ビクンッと何かを感じ取ったクゥが体をのけ反らせた、、、そして走り出す!!

 

「わぁ!クーちゃん、どこ行くっ!!?」

マアナの脚の間をすり抜け、外に飛び出すクゥ。

戸惑いながらも、マアナ達はそれを追いかける。

 

 

 

 

林を抜けて5分ほど走っただろうか、マアナ達は海岸に出た。

いつもの海は荒れ狂う波の音響く漆黒のスクリーンみたいで、

つい先日、青空の下漂ったあの穏やかな海と同じ海とは到底思えなかった。

 

「マアナ!おまえ、、、どうしてここに?」海岸にはドウド達数名の大人も居るようだ。

「ドウド、どうなって!、、、」

 

マアナがドウドに近づいたその時、

 

「ぅうぅぷ!?、た、たすけ、てーー!!」

 

海側から子供のものらしい声が、微かではあるが確かに聞こえた。

でも真っ黒な大きな布のような今の海にそれは見えない。

 

 

 

「あ!そうだクゥちゃんなら?」

マアナがクゥを抱え上げ海に意識を集中する。

もちろんドウド達大人にはクゥは見えないため、マアナが何を始めたのかは解らない。

 

しかし、マアナは小さい頃から暗い夜を家路に就くとき、そうしてきた。

クゥに触れているとマアナは暗闇でもハッキリとものが、、

 

「見えたー!!、あそこ!?」マアナが指さす。

かなり小さな木の葉ぐらいの大きさの、板戸のような物に乗って浮かぶ小さな黒い影!

子供だ。

 

「あんな沖に!?」ドウドが呻く。

 

荒れ狂う黒い波に翻弄されるその小さな命は、今にも海の藻屑と消えそうに見えた。

 

 

「あの子を助けなきゃ!」

 

「だが、どうやって、、、」

マアナの叫びに、ドウドが応える。

 

 

 

「一つだけ方法がある、、、マアナなら、それが出来る。」

二人の後ろから、ソラが呟いた。

 

「、、、でもどうすれば?私ソラみたいに飛べないよ?」

 

「いや、こうすれば、、、出来る!!」

ソラはマアナの抱えるクゥをガシッとその手に掴みとった。

「えっ!?」自分しか見えないはずのクウに対してソラが取った行為に、マアナは驚く。

そしてソラは、マアナの背中めがけ、“それ”を投げつけた!!

 

(ブゥン!)「ええっ!?」

 

 

「、、、イッタ~~~イ!!」

クゥのくちばしが青白く光り、それが触れたマアナのお尻から全身に伝搬していく。

そして、眩い光に包まれたマアナの頭とお尻から、「ポンッ!」とクイナの翼と尾羽が生えた。

 

「え~~~っ!?私、クーちゃんと一緒になっちゃた?????」

 

 

 

「これでお前もウィッチだ。飛べ、マアナ!!」得意顔のソラがマアナにステッキを投げて寄こす。

 

「よ~し、、、」マアナがそれに応じる。

全身の力を発光し始めたステッキに集中し、今にも浮かびあがろうとしていた。

「い~~けぇ~~~~~~!!」

 

翔んだ!、、、

 

 

 

「え~~~~~っ!?」

しかし、マアナは真上に急上昇し、回転しながら明後日の方向に飛んでいく。

 

「くっっ!」宙に右足を踏ん張り態勢を立て直すが、その飛行はおぼつかない。

今度は高度が取れず、海面すれすれを飛んでいる。

荒れ狂う波が、マアナを呑み込もうとする。

 

『危ない!!、!?????、、、、、』

ドウドは激しい鼓動とはうらはらに、自分が深い意識の底に沈んでゆくのを感じた。

 

 

 

 

 

兄が死んだ日の記憶が甦る。

眼の前で嵐の海に呑み込まれていく彼らを見ていながら、何も出来なかった自分。

今でも時々夢に見る忘れたい記憶、、、

 

 

最後の波にさらわれるその前に、兄が叫んだ。

「ドウド、、、今まで本当に、ありがとうな」

「でも、お前はお前の世界を進め!どんな海も空も越えて、おまえだけの空に!!」

「自分を信じて進み続けろ!!、約束だ!」

 

 

『、、、!!兄さん?』

 

「ああ、、、思い出した。あのとき兄さんが言ったこと。」

 

 

 

 

あの頃の俺は本当に外の世界に出たがっていた。

自分も兄のような特別な存在になりたい。そう思ってた。

 

マアナが不憫だと思ったから諦めたのか?

いや、マアナが居たからこそ、俺はこの島に残ったんだ。

二人が遺したこの子が成長していく姿が見たかった。

そしていつの日か、この子が外の世界に飛び立っていくことを願ったんだ。

 

 

私が自分で選んだんだ!!

これが私の選んだ空なんだ!!!!

 

 

「、、、、、飛べ」

「飛べ!!マアナ! お前にこの海はもう狭い!!」

 

 

(、グゥンッ!)

態勢を立て直したマアナが応える。

「うん、わかったぁ!!」

「行~っけ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」

 

 

 

 

『今日が、その日だ、、、』ドウドは、沖に向かって小さくなってゆくマアナを見つめる。

 

あの日、兄がドウドを見つめたであろう同じ笑顔で。

 

 

 

 

 

 

 

(太陽の子)

 

 

「気ぃ~持ちイィ~~~~~」

マアナのステッキが荒れ狂う波の上を滑るように奔る。

 

「クーちゃん、すっごーーい」

海とは違った初めての空の感覚に、心の底から元気と勇気が湧いてくる。

 

 

 

いくつもの高波の隙間をブゥ~~~~ンと旋回し、

あと2000m

 

 

 

打ち付ける雨も、うねる波も、ビューンと撥ね退けて、

あと500m

 

 

 

嵐に怯える子供の下へ、

あと、、、10m

 

 

 

 

 

「大丈夫だよ!」

 

 

 

 

 

子供をキャッチし、ココで急上昇!!

「うぉほーーーーーーーーーーーーーーーーぃ!!!!!」

 

 

雨を蹴散らし飛沫の軌跡を描いて、

雲を目指して、

天を目指して、

 

 

マアナは昇って行った。

 

まだ見ぬ大空を目指して、

その満面の笑顔と共に、、、、、、、

 

 

 

 

 

 

 

(エピローグ)

 

 

 

「もう、つっかれた~~~」

 

マアナが空から降りてきたのは、それから暫く経ってからのことだった。

もう既に嵐は過ぎ去り、東の空が明るさを取り戻し始めている。

 

 

初めての飛行に疲れたのか、満足したのか、それともその両方か?

マアナはその場に突っ伏した。

 

助け出された子供も極度の緊張から解放され、今はスヤスヤと眠っている。

 

 

 

 

 

夜が明けていく。

だんだん昇ってゆく朝日が、さっきまでの暗闇がウソのように、全てを黄金(こがね)色に変えてゆく。

 

『また今日という日が始まる。』

マアナはそれが嬉しかった。

 

 

 

「どうだ?初めての空は、楽しかったろう?」

近づいてきたソラが言う。

 

「私と共に世界の、空の果てまで行ってみないか?」

「きっと素晴しい明日がそこに待っている。」

 

 

地面に突っ伏していたマアナがピョンッと起き上がる。

さっきまでの彼女は何だったのかと言うぐらい晴れやかな顔をして、、、

 

 

「うん、わかった! わたし行ってくる!!」

 

朝日を受け、明日にワクワクしかない幼子のような笑顔のマアナの前には今、

何処までも金色に輝く大空が広がっている。

 

 

 

 

 ーおわりー

 

 

 

 

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