黒い翠鳥の世界日記《ワールドダイアリー》   作:黒い翠鳥

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とある元魔法少女の無駄話─ナツメの世界日記─

アタシのアニキが結婚することになった。

 

正確にはまだ婚約の段階で、実際に結婚するのは5・6年後の予定らしいけど、私に新しい義姉が出来る訳だ。

まだアニキが18歳と言うのと、結構な年の差カップルなのが気にかかるところだけど、まぁ、仲睦まじい感じだし、大した問題でもないでしょう。

 

ウチは代々古武術を伝えている家元の家系で、その技術が少々特殊なせいで次期当主の配偶者になるヒトにはいくつか条件があったからこれが問題の元にならなきゃいいけどと思った事もあったけど。

……普通に満たしてたし、ただの杞憂だった。

(しかも理想一歩手前。その理想の達成がほぼ不可能だと言う事を考えると最も理想的と言っても過言じゃない)

 

だけどねぇ、正直アニキがこんな彼女連れてくるなんて思わなかったよ。

 

そりゃぁアニキは人当たりもいいし、顔も性格もなかなか、頭もそれなりに良いし実家を継ぐことを除いてもかなりいい就職先が決まっていると将来的にも優良株。

彼女の一人くらいいてもおかしくは無いと思っていたけど。

(以前幼馴染に告白してフラれた事はあった。その幼馴染は結局別の幼馴染とくっ付いた)

 

とは言え、アニキの嗜好と言うか性癖は一般的とは少々言いづらい。

 

なんせ年上好きの幼児体型趣味の人外マニアのモフモフラーなのだ。

普通の女性には知られたらあんまりいい顔されないんじゃないかなと思って不安に思った事もある。

 

…………けどまさか全ての条件を揃えたお嫁さんつれてくるとは思わなかった。

 

まさかのパーフェクト!

年上(人間換算30代後半、実年齢約4千歳)で幼児体型(身長140センチ弱。しかもネオテニー)、人外(分類的には龍種)でモフモフ(龍種だけど哺乳類なんだそうだ。体毛は白くて肌触りが凄くいい)。

ついでに多少妊娠率は低いらしいけどちゃんと人間の子供も産めると言っていた。

 

爆発しろアニキ!

 

余談だけどアニキにはほぼ条件を満たした自称愛人もいる。

(アニキやアニキのお嫁さんからは末妹みたいに思われてるけど)

一応、二人とも表向きには人間に擬態しているのだけども。

 

 

 

「で、その話を何で俺にしている?」

 

んー、とりあえず何の話題でも良かったんだけどね。

 

現在アタシはオープンカフェでお茶の最中である。

お相手はダン=イルワ帝国出身の青年、アグル・エルフェンス君。

 

アタシの魔法少女時代の敵の幹部である。

 

まぁ、現在進行形で敵なんだけど。

一応、穏健派と言うか融和派寄りなんで別に険悪な関係ではない。

好敵手と書いて「とも」と読む感じの関係だ。

 

昔はバリバリの侵略派だったけど、私を含む魔法少女に侵略目的を潰されたり日本の文化(特にアニメとかゲームとか)に触れたり私のアニキ達にボコボコにされたり何やかんやあってこうなった。

アタシとしても別に嫌いではない。

 

「と言うか、魔法少女達の加勢に行かなくていいのか? うちの幹部と戦闘の真っ最中だろ?」

 

そうなのだ。

現在。後輩の魔法少女達はダン=イルワ帝国の侵略派の幹部との戦闘真っ最中。

しかも前回魔法少女達はその幹部に完敗している。

 

前回はアタシやちひろが駆けつけた事で不利と見て引いてくれたが、現在の魔法少女達だけでは勝算の低い相手だった。

とは言え、アタシは別に心配はしていない。

と言うか、戦闘中だからこそアタシはあんたとお茶してるんだけどね。

 

「……あぁ、俺を参戦させないようにって事か」

 

そう言う事。

 

融和派寄りとは言ってもダン=イルワ帝国の為に侵略派に手を貸すこともある。

ぶっちゃけ侵略派の幹部よりもこいつの方がよっぽど強い。

 

アタシの魔法少女時代はそこまででも無かったんだけど。

アタシ達と、と言うかアタシと戦っている内に抜きつ抜かれつを繰り返してそれほどの強さを手に入れた。

好敵手と書いて「とも」と読む関係なのはその為だ。

 

だからこいつが侵略派の幹部の加勢に行けば、魔法少女達の勝ち目はほぼ無くなる。

今回は侵略派に手を貸すつもりかは分からないけど、万一を考えると警戒しない訳にもいかない。

 

そしてそれはダン=イルワ帝国側にも言える事なのだ。

アタシとこいつの実力はほぼ拮抗している。

自惚れている訳じゃないけれど、アタシが魔法少女達の加勢に行けば侵略派側の勝ち目はほぼ無くなる。

 

そしてアタシにはこいつと違って明確に魔法少女達の加勢に行く理由がある。

 

「まぁ、考えることはどちらも同じか」

 

そうね。

あんたもそのつもりでアタシの前に現れた訳だしね。

 

こいつは魔法少女達が出動した直後にアタシの前に現れた。

タイミング的に見て目的はアタシの足止め。

とは言え態々自分から戦いを挑むつもりもないようだ。

 

正直、侵略派と融和派の仲は良くない。

主張の方向性が違うんだから当然だろう。

 

ダン=イルワ帝国の為に侵略派に手を貸す事はあれど、それも基本的には上から(具体的には皇帝)の指示だ。

融和派としてはあんまり乗り気がしない。

侵略派に協力したと言う事実さえあればそれでいいと言った感じだ。

 

そしてこちら側との融和を目指している以上、出来る限り遺恨を残すことは避けたい。

だからこそアタシのお茶の誘いに応じてくれた。

実情はどうあれ、これで融和派には侵略派に協力したという事実ができる。

敵側の実力者を抑えていたと言う事実が。

 

アタシとしても、ここでこいつと本気で戦う事になると加勢どころではなくなる。

例え勝ったとしてもそんな余力は残っていないだろう。

なら、お互いに本気で戦う理由は無い。

戦闘が終わるまでここでお茶しておけばいい。

それだけでお互いに牽制し合って加勢に行かせなかったと言う大義名分ができる。

 

先も言ったが、アタシが魔法少女の事を心配していないからこその行動だ。

ヤバそうなら加勢は無理でも別の手を打つ。

 

何でアタシがそんなことを知っているのかと言うと、前に似たような感じでお茶した時にこいつが教えてくれた。

どうやら融和派はアタシを侵略失敗の際の和平の仲介者にしたいらしい。

もちろんアタシだけじゃないけれども。

 

そして融和派にとって侵略派の侵略失敗は決定事項のようだ。

それはアタシも同意見。

まぁ、戦力差がね。

 

「ちなみに、今回の『魔法少女』とうちの侵略派幹部との戦闘の行方をお前はどう見る?」

 

前回は負けたけど、今回は勝つと思うよ。

 

「ほう、前回はこちらの完勝だったと聞いたが?」

 

まあね。

だけど、それは相手側がこちらの事を良く知っていたのに対してこちら側は相手が初見の相手だったと言う情報量の差もあるんだよね。

まぁ、初見の相手だったから負けたと言うのは事実ではあっても言い訳でしか無い訳だけども。

 

「それはあるな。だが、見た所それを差し引いてもこちら側の優位は揺ぎ無いと見るが?」

 

そうだね。

私は実際に拳を交えていないから記録映像からの判断になるけど、前回の時点での戦力差はどう見ても相手側に分があった。

それは早々覆せない差だ。

 

しかし魔法少女達は諦めずに特訓したりして何とか追いつこうと努力した。

その結果、戦闘技術そのものは付け焼刃程度にしか上がらなかったけど……

 

なんか二段変身の新フォームを身に着けちゃったんだよね。

 

「……あぁ……そっか、そりゃ今回は勝てないな」

 

実際に模擬戦をしてみた結果、その新フォームのスペックなら八割方ゴリ押しで勝てると言う予測が出ちゃった。

5人揃ってそいつだけを相手にすればと言う前提はあるけれども。

 

それ以前になんかこう、お約束的な説得力があるんだよね。

新フォーム習得直後の戦闘って。

実際の実力差とかスペックとか横に置いといて、とりあえず勝っちゃいそうな。

 

あと、保険に一人同行するって言ってたし、万一があっても大丈夫でしょ。

 

「そっちは人材豊富で羨ましい事だ。こっちはお前と逆蝕者(カウンターイーター)を抑えておくだけで融和派の幹部総出になるってのに」

 

あぁ、そっちにも足止め行ってたんだ。

……たたか(バト)って?

 

「そんな訳無いだろ。あいつらと本気で戦ったら、あっと言う間にこっちが全滅して終わりだ」

 

あんたも一緒だったら勝負にはなるかもよ。

 

「冗談。そんなことしたらお前を抑えるやつがいなく成る」

 

アタシ一人抑えててもあんまり意味ない気もするけどね。

他の人が行くだけだし、実際そうしたし。

 

ちなみに逆蝕者(カウンターイーター)ってのはアニキと自称愛人のコンビの通名だ。

アタシにも何かついてたりするのだろうか。

 

そういえば足止めに来たのはアタシとアニキ達の所だけ?

 

「いや、ちひろの所にも侵略派の連中が行ってた筈だ。もっとも、大して足止め出来ないだろうけど」

 

何でもアリなら私より恐ろしいからね。我が親友は。

強いんじゃなくて恐ろしい。

戦闘なら私が勝つけど、戦争なら勝てる気がしない。

 

あ、噂をすればメールだ。

 

『私の所にダン=イルワ帝国から刺客が来たのでのしておいたのですが、そっちには来てませんか?』だって。

 

「……まぁ、予想通りだな」

 

だね。

返信『こっちはアグル君だったから平気。今二人でお茶してる』っと。

 

「そう言えば保険でついていったというのは誰だ? 小さな悪夢(リトルナイトメア)あたりか?」

 

ううん、違うよ。

行ったのは白尾比女(しらびひめ)

通称しらびさん。

 

ちなみに小さな悪夢(リトルナイトメア)はアニキをフッた幼馴染。

高威力・広範囲の飽和攻撃が得意。

 

「……シラビ……覚えが無いな。どんな奴だ?」

 

さっき言ってたアニキのお嫁さん。

人外の見た目幼女でいつも日傘持ってるヒト。

 

「幼女で日傘……まさかあいつか? 魔法少女と侵略派が戦ってる時に偶に遠くから眺めてる着物を着た……」

 

あ、そのヒトだよ。

 

「……そうか。で、そいつはどのくらい強いんだ? ただ者じゃ無いってのは見れば分かるんだが」

 

アタシが一分持たなかった。

能力がかなり制限される人に擬態した状態で。

 

「…………本当(マジ)か?」

 

本当(マジ)

 

「対神武術を修めているお前がそう易々と倒されるとは俄かには信じがたいが……」

 

普通ならいい勝負できる肉体スペックだったんだけどね。

相手も同じ──正確には源流らしいけど──武術を極めてたら流石に。

模擬戦だったから色々と制限があったのはあるけど、それは相手も同じだ。

 

アニキが一瞬片膝つかせるのがやっとだった。

自称愛人とのコンビで挑んだ時はいい勝負してたかな……あくまで人に擬態した状態ならだけど。

 

「それほどか。それだけの能力(ちから)があるなら神と崇められてもおかしくはないはずだが、逆蝕者(カウンターイーター)の力は効かなかったのか?」

 

一応、神だそうだから効きはするらしいよ。

流石に模擬戦では封印してた。

もっとも、あのヒトはリンネさんの同類だから、本気になったら概念系の能力(テキスト)すら貫通してくるけど。

 

「……万一敵対する事になったら全力で逃げることにしようか」

 

逃げれるといいね。

 

あ、ちなみにこの間からアニキと同棲してるから見に来る頻度は上がると思うよ。

鎮守してた地域(トコ)を後輩に譲って寿退職したって言ってたし。

結婚まで人間界の花嫁修業するんだって。

まぁ、人間と龍じゃ文化も生態も違うしね。その辺はアニキに合わせるとか言ってたけど。

 

「……元から勝ち目無いと思っていたが、完全に不可能になった気がするぞ。まぁ、想定内ではあるが」

 

いつもいる訳じゃないけどね。

花嫁修業に加えてリンネさんの所で『力づくで世界を救うバイト』するらしいし。

空いた時間でできるから花嫁修業の妨げにならないし、その割にはお給料もいいって言ってたから。

 

「そんな内職感覚で世界って救えるもんなのか……」

 

巨大隕石とか消し飛ばすらしいよ。

 

ところでさ、ダン=イルワ帝国ってこっちの戦力どれくらいで見積もってるの?

しらびさんは別にしても、こっちの防衛力を超えられそうな戦力で攻めてきた覚え無いんだけど。

 

「ダン=イルワ帝国のって言うか、皇帝の見解だがな。どうやら魔法少女さえ倒せればどうにでもなるって思っているみたいだぞ」

 

え? 魔法少女より強い人たちいっぱいいるのに?

 

「魔法少女を倒せれば『魔法鍵(マジカルキー)』を手に入れる事が出来る。それを使って魔神ネディウルを復活させれば何者であろうと敵ではないと考えているようだぞ」

 

魔神ネディウルかぁ。

アタシが現役魔法少女だった時に一度だけ復活しかけたやつだよね。

 

「あぁ、不完全な状態で復活紛いな事になったせいで理性ぶっとんで大暴れした挙句にお前に倒されて魔法少女達が再封印したあいつだ」

 

あの時は魔法の国で復活しそうになったせいでまずい状態だったけどさ、今回そうなったらこっちで復活する訳じゃない?

 

「前回とは封印場所も封印魔法も別物だからな。おそらくそうなるだろう」

 

……そうなったら逆蝕者(アニキたち)無効化され(喰われ)て終わりじゃない?

 

「俺もそう思う。『神』からのあらゆる干渉を問答無用で無効にするとか反則だろう…………」

 

皇帝はそれ知ってるの?

 

「一応、進言はしてる。まともに信じてはいないようだけどな。まぁ、うちの常識的に考えると有り得ないと言ってもいい能力だから分からないでもないけど」

 

……ダン=イルワ帝国、詰んでない?

 

「『侵略』と言う意味ではな。だから融和派(俺たち)が頑張ってんだ。敗戦した時のダメージをなるべく軽く、かつ未来に希望を繋げられるようにってな」

 

頑張ってね。アタシとしても折角の好敵手(とも)が居なくなるのは勘弁してほしいしさ。

魔法少女達にもその辺の事情は説明してるからさ、侵略派と……皇帝もかな? が折れれば割とスムーズに行けるんじゃない?

 

一般人的には侵略が起きてるなんて知らない訳だし。

 

「そうなるように頑張るさ」

 

応援してるよ……っと、あっちも決着ついたみたい。

魔法少女達が勝ったってさ。

侵略派は撤退したみたいだね。

 

「こっちにも来たな。退却命令だ。事後処理もしないといけないから先に帰らせてもらうぞ」

 

了解。

またお茶しようね。

 

「ああ、今度はプライベートでな」

 

待ってるよ。




こんな感じの話が延々と続くだけの予定だった。
突拍子もなく設定が増えるので読む側として理解しながら読めるのかという問題があったのでお蔵入りに。

ちなみに二話の主人公の双子の姉という設定。

《とある元魔法少女の無駄話》の評価を教えてください。

  • 続きが読みたい。
  • 連載されれば読む。
  • 特に興味を惹かれない。
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