Muv-Luv Condition-Red of human   作:ガン=カタ

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Muv-Luv Condition-Red of human のリマスター版です
長い話になりますが、お付き合い下さると幸いです


♯1 英雄

『──テストLv1をクリア。続いて、Lv2へと移行します』

 

市街地の映像から、無機質なモニターへと変わった時、俺は漸く肩から力を抜く事が出来た。

長年衛士をやって、力の入れ所と抜き所は心得ていたつもりだったのだが、どうやらそれは俺の勝手な思い違いだったようだ。

 

戦術機──人間がBETAと呼ばれる生命体と戦う為に生み出された、兵器だ。

結局それは莫大な金を掛けて作り上げた、人類の為の棺桶にしかならなかったのは非常に残念でならない事だろう。

局地的な戦果を挙げてはいるが、それは機体では無く、中身の腕によるところが大きい。

何十年、下手をすれば何百年戦おうが光は見えない。

何千人、何万人死のうとも人類に勝利などありはしない。

 

人類とBETAの戦い

 

誰かは平行線だと言い張るが、これは一方的に衰退だけしていく人類の負け戦であることは誰の目を見ても明らかだった。

 

《Lv2への移行了解、いつでもはじめてくれ》

 

『状況開始。敵不知火3機との仮想訓練です、気を抜かないで』

 

《いつでも真剣だよ、俺は》

 

人は何れ死ぬ。

そう達観してしまえば、この負け戦にだって望めると言うものだ。

『死』なんて滑稽ではあるが、イメージを掴み易いワードでもある。

後にも先にも道はない。

今の日本を……いや、世界を表す言葉はまさにこれだろう。

世界的に蔓延する死。

BETAから齎されるその死は、人間にとって避ける事の出来ない強大で凶悪な壁として立ち塞がり続けていた。

 

だが、絶望に立ち向かう輝きも世界には残っている。

 

人類に託された最後の刃。

それが、『英雄』と呼ばれる者たちの存在だった。

絶望的な状況であろうと、それに決して屈せずに立ち向かう。

誰よりも率先して先陣を切り、敵の首級をあげる。

それが彼ら──そして彼、『剣崎龍二』たちの生き様であると言えよう。

 

レーダーに浮かび上がる3機の不知火は、部隊を2つに分けて進軍する。

1機を突撃させて、その隙を2機で叩くオーソドックスな戦法だ。

だが、捻くれた軍人に対しては中々に刺激が足りない。

 

『サッサと終わらせて、煙草でも吸うか……』

 

直線で此方へと向かってくる不知火に、適当に突撃砲で弾を撒く。

適当な弾幕と言えど、当たれば撃墜。

ビルの陰へと、射線軸から逃げる様に不知火は身を隠した。

この短時間の間に、残った2機を潰す──ッ!

左右から長刀を抜き、襲い掛かる2機の不知火の斬撃を跳躍ユニットを使ったバックジャンプで回避し、両腕にマウントした突撃砲で回避行動の硬直を取られない為に弾幕を張る。

1機、管制ユニットに弾丸が直撃した瞬間を目視した。

だが、もう1機は健在だ。腕に弾丸が当たって大破したとは言え、執拗な執念で此方に追い縋って来るではないか。

ビルの陰で様子を伺っていた不知火の姿も、確認できた。

 

『残り2機です』

 

分かってるっつぅの──ッ!!

心の中だけで悪態を吐いて、跳躍ユニットに火を入れる。

わざわざ、向こうのチャンバラに付き合うつもりは毛頭ない。

突撃砲で直進する腕なしを集中的に攻撃し、撃破する。

手負いだろうと武器は持てる。何より、2対1の状況は此方に不利でしか無い。ならば、落としやすい方には退場願うだけであろう。

愚直な、CPUの様な動きでは回避出来るまでも無く全弾ヒット。

火の手を上げる2番機の煙を突っ切って、最後の1機が躍り出る。

 

『ちっ、少しは狼狽えやがれ……!』

 

CPUならではの躊躇いのない攻撃に舌打ちを漏らし、それでも尚此方もそれに応戦する為に手に短刀を装備する。

1本目のナイフを即座に不知火へと目がけて投合するも、それは致命的な損傷を与える事も無く弾かれる。

が、間髪を入れずに2本目のナイフで頭部を狙う。吸い込まれる様に向かっていくナイフは、不知火の頭部へと深々と突き刺さり、少なからずともの隙を此方に与えてくれた。

振りかぶられたまま制止した長刀を腕ごと引き千切り、思い切り最後の1機の管制ユニットへ突き刺す。

頭部にナイフ、胸に長刀を突き刺すオブジェが完成したと同時に、ウィンドウには女性の顔が投影されていた。

 

『お疲れ様でした、少佐』

 

《労いも良いが、休憩にしようぜ。少し疲れた……》

 

『流石の少佐も8時間の連続稼働には音を上げましたか……

 まぁ、私も疲れましたけれど』

 

大和撫子と呼ぶに相応しい美しい黒髪、顔のパーツは1つ1つが凛としており、その流し目には相当の破壊力が秘められている。

そんな彼女──藤代千枝はと言えば、俺の副官なのであった。

 

《飯だ飯。巌谷さんにも結果報告するしかねぇし、休憩だ》

 

『了解です。お疲れ様でした、少佐』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Muv-Luv Condition-Red of human

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移り、帝国内のPX。

昼時に直撃しまった為にガヤガヤと騒がしい様子だったが、何とか端の方に席を見つけて座って、取り敢えず大きく息を吐くことは出来た。

周りに人が居過ぎると言うのは落ち着かないが、仕方のない事である。

 

「今回のテスト、巖谷中佐は歓喜でしょうね」

 

「あの程度なら喜びゃしない。次はもっと無理難題を吹っ掛けられそうだ」

 

「少佐なら大丈夫です」

 

「その根拠は?」

 

「女の勘です。でも侮るなかれ、女の勘は良く当たりますから」

 

千枝は笑顔で語る。

勘で当てたことを武勇伝の様に語るその姿、非常に可愛らしく愛らしいのだが何せ食事中だ。

話し方にも段々と熱が篭り、口に物を含んで居ても喋る、怒鳴る、語る。

 

「食べ物を食べながら喋らない。常識だぜ、藤代中尉」

 

「はぶぅっ!?」

 

――おう、救いの神よ。

貴方は私を愛してくれているのですね。

そんな彼女の前に現れたのは、我らが技術開発局副長の巖谷中佐。

テストパイロットを勤める俺の上司である。

咽返る千枝を捨て置き、巖谷さんは俺の向かい側の席に座った。

心なしか、上機嫌に見える。

 

「機嫌、良さそうですね」

 

「テスト終了と同時にアレのデータを上に叩き付けてやった!

 いやぁ~上も目ぇ丸くして驚いてな。そんな面を見せられた日には気分も 良くなるってもんだ! お前にも見せたかったよ!」

 

「そりゃ良かった。でも、無理難題を吹っ掛けないで下さいね?」

 

「安心しろ、俺も開発衛士をやった身だ。限界は心得ているつもりだぜ?」

 

流石は巖谷中佐。

その893の様な顔の傷以外には惚れそうである。

中佐の筈なのに、権力を振り翳そうとしない姿勢。

過去に戦術機に携わった経験。

書類上でしか人の生死を判別しようとしない、クソッたれの政治屋共とは大違いだ。

俺も巖谷さんのこういった態度は見習ったなぁ……

 

お互い、お茶を啜りながら雑談に時間を割く。

 

巖谷さんとの雑談と言えば、大抵は"彼女"のことでの相談が大多数だ。

“彼女”に対する対応をどうすれば良いのか、色々と悩んでいるのだろう。

中佐なんて地位に上り詰めた人にも苦悩なんてあるのか、と俺自身もこう言ったところで巖谷さんが帝国軍の一部では無く、人であることを理解する。

周囲から見れば他愛の無い話だとしても、俺にとっては巖谷さんと言う1人の人間を認識する為の大事な会話だった。

 

「誕生日に何を渡してやれば良いか、迷っていると」

 

「そりゃお前、年頃の女の子だぞ?

 しかもこのご時勢、何をやれば喜ぶのか……見当もつかん」

 

「花束なんてどうでしょう? 貰うと嬉しいですよ、女の子って」

 

「巖谷さん、プレゼントなんて気持ちですよ。

 迷う必要なんて最初からありません。

 『おめでとう』の一言で全てを解決出来ると俺は昔から──」

 

「相変わらずくっせぇ台詞」

 

「渋いですね。若いのに」

 

「お、お黙り!!」

 

「で?やっぱり花束なのかなぁ?」

 

「それが妥当ですよ。あ、でも、ネックレスも捨て難いですね」

 

「ネックレスゥ?

 恋人じゃあるまいし、巖谷さんがあの子にネックレスって……

 周囲に誤解されるだろ、確実に。『溺愛し過ぎだろ、気持ち悪~!』」

 

「案外と有り得ますよ。じゃあ妥協して、ドックタグ?」

 

「軍から配備されているのに、か?

 それじゃ意味ねぇだろ……何かねぇのか、剣崎。考えてくれよ」

 

「真面目に、ですか?」

 

「真面目に。あ! テメェ、やっぱり遊んでやがったな!?」

 

巌谷さんの文句は華麗にスルーして、少々考える。

ネックレスはやめた方が良いと思う。

このご時勢、少々重く感じるかも知れない。

やはり花が良いのでは?

花を育てると言うことは心の余裕。

常に優雅に、余裕を持って生を謳歌する事に繋がっていく事になる。

ギスギスとする軍人生活の良いはけ口になってくれそうだ。

 

「良いじゃないですか、花束。

 薔薇やカーネーションも良いですけど、あまりにも安直過ぎますね。

 折角ですし、誕生花をプレゼントするって言うのも素敵だと思いますよ?

 3月13日だと……確か、イカリソウだと思います。

 花言葉は『貴方をとらえる』。

 1人の父として、娘を案じ続けるって意味合いだと中々深くて味も出るで しょう?」

 

「……」

 

「……」

 

「な、何ですか?」

 

「「流石は日本が誇る変態紳士」」

 

「もう死ねよ畜生」

 

俺の提案を聞いて、巖谷さんは満足そうに帰って行った。

いやぁ、あの人って顔に似合わず意外と繊細だから最初は戸惑った。

初めて巖谷さんの部下として働いていた時は、あの人の冗談も緊張して真っ向から受け止めてしまって、良く苦笑されたな。

 

 

――そっか。それじゃあ、”あの子”との付き合いも随分と長くなるのか……

 

 

「少佐?」

 

「え?あ、あぁ……いや……午後もゆっくりしたいな~って」

 

「午後は”新型”のデータを纏め上げるので、手伝って貰いますよ?」

 

「嘘ぉっ!?」

 

千枝の何気ない一言に、心底驚く俺であった。

 

 

追記:巖谷さんは彼女にキチンとプレゼントを渡せたらしい。

 

 




戦闘修正
会話内容若干修正

修正も含みますので長くなりますが、気長にお待ちください
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