Muv-Luv Condition-Red of human   作:ガン=カタ

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詳しいことはあとがきにて


♯3 邂逅

《アルゴス02、準備完了!力の差ってヤツを教えてやるよ!!》

 

《アルゴス04、準備完了》

 

《アルゴス03、準備完了だ。いつでも行けるぜ、少佐♪》

 

《――……クソったれ》

 

歓迎会だと思っていた。

初めてアラスカに来た俺達が、一刻も早く現場慣れ出来る様に歓迎会をしてくれるとか、そんな雰囲気だと思っていた。

幾ら戦闘狂(バトルジャンキー)だからって、こんなバカらしい歓迎の方法があるか?

いや、ある訳がねえっ!

 

『少佐、準備は宜しいですか?』

 

そうだった。

藤代、テメェが原因だ。

あの色黒のチビに喧嘩ふっかけやがって、何が『侍魂です』だよ。

都合良く『実力を見せるチャンスです』なんて言いやがったが、憂さ晴らしだろ。

訳分かんねえ。

 

《声も出ないってことか、"少佐"。負けを認めるなら今だけどさ、どうする?》

 

《……あ?》

 

……いや、今は良い。

この有り得ねえ歓迎会も、藤代に対する言及も、今は良い。

今はただ――

 

《泣いて謝っても許さねぇぞ、クソガキ》

 

目の前の気に入らねぇ奴等を、オリジナルハイブまでブッ飛ばす!!

 

 

 

Muv-Luv Condition-Red of human

 

 

 

気に入らない。

最初に日本から来た2人に対して、ワタシはそう思った。

良い所育ちのボンボンが、私達の部隊の臨時指揮官を務めることも。

中尉のポジションを奪い取ったことも。

権力だけでのし上って来たヤツが――気に入らない。

最初は、そう思っていた。

 

《――沈めや》

 

《ッ!?》

 

ACTVの急激な加速と速度に劣る所か、その速度――いや、移動先に先回りしての執拗な攻撃が、日本人から繰り広げられる。

私の得意な近距離戦に移行しようにも、相手はどんな事よりも距離を優先して来る。

完全に、戦場でのペースを持って行かれた……ッ!

 

《アルゴス03、アルゴス02は俺1人で十分だ。アルゴス04を頼む》

 

《了解。追いかけっこは得意だぜ、少佐》

 

相手の使う機体はTYPE-94。

如何考えても、機動性はコッチが圧倒的に上の筈なのに!

 

右からの突撃砲に対して横への回避、先読みしているかの様に左から支援砲が狙い撃つ。

前方へACTVの機動力を生かしての接近戦を挑もうにも、ビル郡の間を上手い具合に潜り抜け、ヒョイヒョイと距離を離される。

 

《ッ!逃げ回るな、チキン野朗!!》

 

《だったら捕まえてみせろよ、ウスノロ》

 

頭に来る!!

さっきからずっとコレだ。苛々しない方が狂ってやがる――ッ!!!

幾ら相手がどんなマジックを使おうが、機体の性能では此方が上だ。

それに、相手の攻撃は十分回避出来る範囲内だ、攻め込めば勝機はコッチにある!

 

《終わりにしてやるよ、"少佐殿"!!》

 

ACTVが――爆ぜる!!

加速により、従来の15Eとは比べ物にならない速度でTYPE-94の目前へと躍り出る。

対するTYPE-94はACTVを見ようとも動じることは無い。

寧ろ、誘っているかの様に装備していた突撃砲と支援砲を地面へと投げ捨てたのだ。

 

サムライらしく、斬り合いってわけか!

 

私自身、嬉々としてそれを望んでいた。

接近戦は私の得意分野だ、こんなヤツに負けるつもりは無い。

 

《――終わりだ!!》

 

ACTVの凄まじい三次元機動が披露されようと、TYPE-94は反応すら示さない。

背中に背負っていた刀を装備し、ユラリと構えた程度だ。

既に1つの弾丸と化したACTVと、その先に居る的――少佐の駆る、TYPE-94。

 

速度で攻めるタリサと、待ち構えるだけの龍二。

 

故に、勝負は僅か一瞬。

 

《ウスノロ過ぎて、欠伸が出るぜ》

 

軽やかにナイフの機動からずれ、先程まで自分の居た場を突き抜けるACTVの腹ごと、

 

《うわぁっ!?》

 

一刀の元に斬り捨てる。

上半身と下半身が生き別れ、後ろで爆散するACTV。

そして、その破片を堂々と身体で受け止める――TYPE-94。

 

シミュレーターだからこそ撃墜で済むが、現実ならば確実に死んでいる攻撃だ。

――CPからの勝ち誇った様な少佐の勝利宣告が、今は途轍もなく悔しく感じた。

 

 

 

 

少し、自分が大人気なく感じた。

幾ら何でも真っ昼間、上官の目の前で軽々と斬り捨てられればショックもデカイだろう。

失敗した。力を見せ付けて、仲良くなろうかと思ったけどコレじゃ逆効果だな。

 

「お疲れ様でした、少佐」

 

「お前の尻拭いをするのは今回限りだ。二度とくだらねぇ真似するなよ」

 

強化装備を着替え終え、アルゴス小隊と会合した部屋で一服していた。

そんな俺の隣で、椅子に座りながら嬉しそうに喚く藤代中尉。

こちらでの初戦闘で外国産機のデータが取れたことが嬉しいのか、それとも別の理由か。

何がお疲れ様だ。お前が巻き込んでくれたお蔭だよ、バッキャロー。

 

――それにしても、あの3人、凄まじい技量持ちだった。

 

1人1人がどう考えてもエース級の実力者ばかりで、こりゃウカウカしていたら一気に追い抜かれる。俺自身も、このアラスカで良い技術経験が積めそうだ。

 

本日2本目の煙草を取り出し、火を付け様とした時と同タイミングでドアが開かれる。

慌てて煙草を仕舞い、行儀悪く机の上に座っていた態度を改める。

一応、上官な訳だが……印象を重んじるからな、人間って。

 

「お疲れ様です、少佐」

 

入って来たのはイブラヒム・ドゥール中尉。

俺よりも明らかに年上なので、何とも対応に困るタイプだ。

相手の方が年上なのに、此方の方の階級が上と言うことで如何対処して良いか分からない。

取り敢えず、軽く「どうも」と言って相手の言葉を待つことにした。

ベラベラと喋って、印象を悪くしても仕様が無い。

 

「タリサ……アルゴス02ですが、悔しがっていましたよ」

 

「え?あ、あぁ

……いや、俺としては彼女の三次元機動の方に驚きましたよ。凄いですね、ACTVって」

 

「アレは彼女の成せる技です。機体の性能を生かせている証拠ですよ」

 

そうか……アクティヴって付いただけで、実際のイーグルと大差無いとも思っていたけどやっぱり戦術機は奥が深い。パーツの1つ、設計図の一部を変えただけで機体1つ1つの動きが嘘の様に変わるのか。

 

――こりゃ、新型のテストをやり直すって意見に大賛成だな。

 

日本だけじゃなくて、世界の技術を取り入れた国際機を作るのも良いかも知れない。

まぁ……気に入らないなんて怒鳴るバカが、日本には絶対に居るだろうが。

 

「――彼等1人1人、何かを失って此処に来ています。どうか、あまり奴等を責めないでやってくれませんか?」

 

「い、いや、彼等は立派です。上官に対しての礼儀は……まぁ、多めに見ます」

 

「面目ありません」

 

この人からは巖谷さんと同じ感覚がする。

何だろう、こう……おっさん、と言うか……兄貴肌と言うか……

まさかアラスカに飛んで、巖谷さんと同じ気質を持った人に会うとは思えなかった。

世界って広い。

 

申し訳無さそうに頭を下げるイブラヒム中尉の重たい雰囲気を取り除く為に、適当な話題

を振りながら世間話を続けることにした。

彼の話を聞く限り、彼自身も昔はテストパイロットだったとか。

凄いな!

此処まで巖谷さんにソックリだと生き別れの兄弟か何かかと勘違いしそうだ。

 

 

 

 

私に言えることは1つ。

目の前で笑うこの男――剣崎龍二は、間違い無く世界でも5本の指に入るエースだ。

機体の性能差を戦闘経験と天性の直感のみで埋め合わせるなど到底私には真似出来ない。

推測だが、相当な数の戦場で鍛えこまれたのだと思う。

 

まだ若い筈なのに、戦術機乗りとしての技能は最古参のエースと同等かそれ以上。

尚且つ、どんな状況下も至って冷静に対応する精神力。

 

此処アラスカ……いや、米軍やソ連軍を探し回ってもコレ程の逸材は存在しないだろう。

 

間違い無く、この男は天才だった。

 

 

 

 

「私はまだ、認めた訳じゃねぇからな!」

 

「ヴァレリオ、女だろうが容赦はするなよ? 戦場だろうが、ベッドだろうが」

 

「ハッハァッ!流石は少佐、ベッドの上での対人戦もお得意ってことか!?

その辺りのテクニック、是非ともご教授願いたいぜ!」

 

「ガキに見せられるほど優しくねぇよ。俺の技は激しいぜ」

 

「ヒュゥ~♪」

 

「ガキって言うな!」

 

ユーコン基地の近くにある小さな町、リルフォート。

そんなリルフォートにある酒場で、俺はアルゴス試験小隊のメンバーと酒を飲んでいた。

最初に誘って来たのはヴァレリオだ。

 

――コレからも宜しく頼みますよ、”ケンザキ少佐”。

 

アレ程のことをやってしまったのに、どうやら認めてもらえたようだ。

いや、正直言うと驚いた。

まさか本当に認められるとは露ほども思っていなくて……

ま、まぁ、認めてもらえたのなら結果としては上々だな!

 

因みに、藤代は昼間の罰として留守番を任せてある。

まぁ新型の整備もあるから、アイツにとっては好都合かも知れないが。

 

「良いか、坊や? 腰は動かすんじゃねぇ、ねじ込むのさ」

 

「こうか?」

 

「違う、こうだ」

 

因みに、今のところ俺はヴァレリオと最も仲が深まっている気がする。

一度とは言え二機連携を組んだことも大きいが、この男――俺と途轍もなく気が合う。

同じ波長と言うか、紳士と言うか。

 

「Let`s patty yeah!!」

 

「「「「ヒィハァッ!!」」」」

 

着ていた堅苦しい軍服を脱ぎ、上半身裸になって突然酒をラッパ飲みするヴァレリオ。

それに釣られ、盛り上がっていく酒場の中。

俺は、何と無く辺りを見渡していた。

 

色黒チビは盛り上がるバカ共の中に見える。

ヴァレリオに至ってはその中心地点だ。まるで御山の大将だ……

はて?もう1人ばかり、俺のセンサーがビンビン反応する美女が居た筈だが――?

 

やっぱり、居た。

酒場の隅の席に、1人で静かにグラスを傾ける美女。

混沌とした空間の中で見つけた僅かな光だ、まるで天使。否、女神!

我が世の春が来た、と言う訳だな!!

 

 

 

 

「男って……ホント、バカばっかり」

 

酒場の端、女神様はテーブルの上でとても口に出したくない様な動きを見せるバカを見て思わず愚痴る。やっぱり男なんてろくな生物じゃない、と。

 

「日本人は嫌いか?」

 

そんな彼女が顔を見上げると、ビールジョッキを片手に持った剣崎少佐が、1人で酒を飲んでいたステラの所まで駆け寄っていた。

周りの喧騒で気が付かなかったが、結構な距離まで近付かれていたのは驚きだ。

 

「人種で男は選びませんから」

 

「なら顔?」

 

「……顔、だけじゃダメ。中身も見ないと」

 

「君みたいな女性はガードが固いな。俺みたいな軽い男には振り向いてもくれない」

 

「――女はね、本当に自分を見てくれる男にしか寄り添わないのよ」

 

「俺が君だけを愛すると誓ったら?」

 

「フフッ。神にでも?」

 

「神なんて役にすら立たねぇ偶像さ。そうだな……きみと出会った月夜に愛を誓おう」

 

そう言って、ニヤリと笑う。

 

意外と、ロマンチストなのね。

最初に見た時のイメージではもっと粗暴な扱い方をする男だと思ったけど、案外と女のツボを的確に付いて来る。

何よりも、目を見詰められて"愛"なんて言われたら動揺しない女は居ないでしょうに。

 

「何がお望み?」

 

「君の望みを叶えることこそ俺の望みさ」

 

「なら、踊って下さらない?」

 

「踊る? ココで?」

 

「えぇ。まさか、断らないでしょう?」

 

「――勿論、いいとも」

 

椅子から立ち上がった私の手を取って、バーの中央までエスコートする少佐殿。

今は上官だとか、部下なんて関係は要らない。彼の表情がそう強く語っていた。

 

「リードは其方がなさって下さるの?」

 

「焦るなよ。まずは、君の全てを知ることから始めるよ」

 

ホント……バカな男。

 

静かなクラシックだ。

この曲……初めて此処へ飛ばされた時も、1人で聞き惚れていた曲ね。

 

いつの間にか、周りの喧騒は沈黙へと変わっていた。

バーの中央で、2人の男女が周りの視線を釘付けにする。

 

 

熱い、そして長い――アラスカの夜は深まっていく。




おひさしぶりです

この作品を覚えている方がどれだけいるか分かりませんが、
まずは長い間音信不通となったことをお詫びいたします

私自身様々な事情から、正直こういった創作物を書けるような状況ではありませんでした

正直、安定するかは分かりません
またダメになる可能性を否定も出来ません
それでも、駄文を書き連ねることをお許し下さい

それでは最期に
──お久しぶり、決死の最前線
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