Muv-Luv Condition-Red of human 作:ガン=カタ
余裕があれば一人称の視点から三人称の視点にしようかと思っています
久しぶりに戦術機に乗った気がする。
アルゴスの坊や達との親交を深めるのに一生懸命で、“新型”のテストなんて頭の隅だった。
気が付いたら、『あぁ~ そう言えばあったねぇ』程度の感覚。
正直、自分のアホさ加減に何となく馬鹿馬鹿しくなったのはご愛嬌だ。
『まだ機体の完成は先になるので、シミュレーターにデータだけは着床させました。
今回は取り敢えず、"彼女"の機動力と反応速度をテストして貰う事になります。
ココまでは宜しいですか?』
《要するに、落ちなきゃ良い。そう言うことだろ?》
『……要約すると、そうなりますね』
網膜投影される映像は、シミュレーター戦闘で使われる市街地では無く、辺り一面が焦土と化してしまった荒野。
即ち敵は――BETAとなる訳だ。
自然と、操縦桿を握る指に力が入る。
奴等を相手にするとき、何よりも恐ろしいのは圧倒的な母数だ。
それに隠れた光線級の超射程の狙撃で狙われれば、どんな歴戦の勇士だろうが露と消える。
《まっ、”コイツ”との付き合いは俺も結構な年数だぜ。今更回避運動なんて朝飯前。
午前中でハイスコア叩き出して、サッサと休憩入らせて貰おうかなっ!》
Muv-Luv Condition-Red of human
新型と言われる不知火・高機動戦闘型――通称、不知火F 型装備――は不知火の純粋な速度を追及したバリエーション機体だ。
不知火の最大時速は700km/時と言われているが、そこへ届くまでのタイムラグを圧倒的な跳躍ユニットの馬力で補う。それに伴い、武装にも変更点があるらしいが今の所の変更点は機体のフレームのみである。
国内産の丸みを帯びたフレームは、ほぼ全てが鋭利な形へと変更されている。
特出するのは、肘や膝に装備されたカーボンブレードだ。
既にソビエトなどでは密集での近接格闘戦での有用性を示した武装の1つであり、武御雷などではその性能を買われ、アレンジしたものが取り入れられていた。
更にF型が最早人の死すら厭わないモンスターマシンと化した理由は、先にも揚げた圧倒的な推進力があげられる。
――乗れば分かるが、1回目の操縦ではF型の速度で殺されかける。
現に、俺は吐いた。
2回目も多少は覚悟していたが、結局は吐いた。
3回目になると速度に身体が対応し始め、今になると時速700km/時の壁にブチ当たる瞬間にはアドレナリンが爆発する最高の瞬間として受け入れられる。
身体が、生き残る為に変化するのだ。勿論、それに耐えられない者は、死ぬ。
『ルクス、次のインターバル終了まで3、2、1……0、光線来ます。
――回避を確認。続いてマグヌス ルクス、インターバル終了まで6秒切りました』
的確な管制の指示に従って、インターバル内は空中で地上のBETAに対して突撃砲二丁での牽制及びインターバル終了時の足場確保の為の射撃を繰り返す。
兎に角足場だ、足場。
場合によっては小型種を踏み潰して着地するが、最悪の場合は高度を上げて要塞級の背中に着地することだってある。
『敵の増援を確認。距離2500、11時方向』
今の状況は、余裕がない訳ではない。
弾数こそ心許なく感じるが、足場の確保だけはどうにかなっている。
流石は新型。
速度は従来の不知火と比べるのがバカらしいほど早い。反応速度も上々だ。
辺りを見渡し、着地した時には1番の脅威は光線級から要撃級に変わる。
突撃級のウスノロな突進はF型の速度があれば十分に回避出来るが、その回避先で要撃級と顔を合わせましたでは洒落にすらならない。
光線級がインターバルに入れば上空へ飛び、インターバル内に出来るだけ数を減らす。
インターバルが終了次第、確保してある足場へ着地。光線をやり過ごす。
そんな作業を何十分か繰り返し続け、光線級の群れを一通り蹴散らし終えると、
網膜に投影されていたBETAの死体や肉片が全て消え失せ、機械的な装置が目に映った。
『ご苦労様でした、少佐。テストの結果は――最高点ですね』
《当たり前だ。俺は"やる"って言ったら"やる"》
……正直、疲れたけど。
単調な動きを繰り返し続けるっていうのも案外とストレスが溜まる。
いやぁ肩凝った。それに煙草も吸いてぇ。
どれ、着替えて休憩室でも行って吸っちゃおうかなぁ~っと。
シミュレーターからササッと飛び出して、俺は1人上機嫌にロッカールームへと向う。
そんな彼の余裕を打ち砕く、新たな"参加者"の姿がユーコン基地へと赴いていたことなど、今の彼が知る由も無かった。
“ジャッカル”の名を持った部隊は、帝国が誇る最高峰の衛士達で構成された少数精鋭。
殿下直属の部隊と言われるジャッカル隊は、命令1つで過酷な戦場に赴き、幾万のBETAとの死闘を繰り広げてきた帝国の英雄達だ。
しかし、過酷な状況下へ身を置くと言うことは人員の消耗が激しい事にも繋がる。
いつの間にか彼等は、時代の波へと押し潰された過去の遺物となっていた。
そんなジャッカルの名を引き継いだ物好きな男が1人居た。
その男は性格にこそ少々難があったが、衛士としての腕はズバ抜けている。
たとえ、世界を相手にしようと、彼ならば十分に活躍出来ると尊敬される衛士であった。
そして私は――そんな男の過去を、昔から影で見続けて来た物好きな女である。
昔から、"剣崎龍二"は何1つ変わらない。
だから私も、せめて彼に認めて貰える様な――いつか、比肩することが出来る様な衛士になろうと日々努力を惜しまなかった。
それでも、埋まらない壁がそこにあった。
彼女──篁唯依に才能が無かった訳では無い。
寧ろ、彼女は一流の戦術勘と技術を持ち合わせていた。
機体も、技術も、精神的な強さすらも克服した一流の、武家出身のエリート。
それでもその差は埋まらない。
少女の才は、努力から生まれた努力の結晶。
だが、剣崎龍二という男は、天から与えられた才を何の躊躇いもなく、更に研磨した。
天才が、努力を覚え、そして悪魔にすら魂を売ったのだ。
彼女には悪いが、その差が埋まることなど絶対にありはしない。
"人"を辞め、人々が崇める"偶像"へと昇華された男になど、ましてや届くべきでもない。
いつしかその間に出来た壁。
――やっぱり、ダメなのかも知れない。
そう思い始めたのはアラスカへ旅立つ直前。
輸送機に揺られながら、彼女は剣崎と言う男への思いをキチンと整理していた。
このアラスカ行きで、せめて少しでも彼との距離を縮めよう。
そう決心して、アラスカの地を踏む。
軍人であった彼女に生じた、ほんの僅かな人としての理性。
その願いは、偶像であるべき男も抱いた、僅かな期待と奇しくも同じであった。
ACTVにへばり付く俺と、それを後ろから嫌そうに眺めるタリサ。
先程のF型の機動は良好だったのだが、まだまだ改良出来る余地がある筈だ。
と言う事で百聞は一見に如かず。
ACTVの動きを参考にするべく、俺は渋々と付いて来たタリサと共にACTVが整備されている格納庫へと遊びに来ているのだ。
それに一応、階級はこれでも少佐だ。
技術力の向上、部下とのコミュニケーションなどには気を使っていかないといけない。
まぁステラとヴァレリオの2名とは既に良好な関係を築いている。
特にステラ。
酒場でのダンスの件で、彼女と会話することが多くなった。
その度にヴァレリオから浴びせられる小言の数々が煩わしいが、まぁどうとでもなる。
――問題は、コイツだ。
「イモムシみてぇ」
「っるせぇ」
人のことを上官とも思わずに踏ん反り返っているガキ――タリサ・マナンダル。
初日に模擬戦でグーの音も出ない程に叩き潰してやったが、未だ突っ掛かってきやがる。勝手にしろ、なんて言えないのが臨時とは言え部隊を引っ張る俺の困った所だろう。
だが、F型の為に取り入れられるデータは全て欲しい。
装甲の種類、間接部の設計、背部追加スラスターの出力などなど。
それはもう、滝の様な汗が出るまで必死にACTVにしがみ付いて見て回った。
そんな俺を珍獣でも見詰めるかの様に見るタリサの視線は気に入らなかったが、中々に有意義な時間を過ごさせて貰った。
それから場所は移り、PXとなる。
「TYPE94の改修なんて資金の無駄じゃねぇの?」
「悪い言い方になるが、次の主力機の為の礎になってくれるだろ。無駄金じゃねぇよ」
「へぇ、踏み台か」
「俺が何の為に言葉を選んだのか、分かるか?」
「知らない」
昼時を少し過ぎていたので、PXに居る人数はあまり多くは無かった。
コレがピーク時だと人の波が出来る。
それはもう恐ろしい、ヒューマンウェーブが。
それにしても、さっきから……このガキは……
上官が相手だろうが竦みもせずに堂々と喋る辺り、相当の度胸を持っていることだろう。
しかし、度胸があろうが、年上に対してこの態度は最悪だ。
朝日すら拝めなくしてやろうか、などと大人げない思惑が脳裏を掠めた。
が、それをなんとか宥め、僅かに口角を上げながらタリサへと尋ねる。
「まぁ何だ、少尉。軍に入った理由でも教えてくれるか?」
「行き成りかよ、気持ち悪ぃ」
――コイツ、ブッコロシテヤリタイ。
いや、でも確かに行き成り過ぎただろうか。
まず何事からでも自分からって言うのが常識だな。
とは言っても、自分の軍に志願した理由なんて、なんの面白みも無い話だけだ。
誰に語るべきでもない、自分の中だけで決着をつけなければいけない、身内の話。
「――……クソッ」
「何だよ」
「いや、何でもねぇ」
苦々しく呟き、ふと口を覆う。
聞かれてないだけマシだが、"奴"のことを部下の目の前で言える筈もない。
それに、直視すべき物語ではないはずだ。
終わったことには蓋をして、そのときまで決して開くべきではない。
「もしかして、女の名前? へぇ、ステラだけじゃ物足りないってわけか?」
「女じゃねぇ」
「なら男?へぇ、そっちの趣味が――」
「勘弁してくれ。お前との会話は疲れる……」
「なら何だよ。家族?」
「……」
タリサの切り返しに、思わず口を紡ぐ。
それ以上は踏み込んでは欲しくない場所だ。
──その言葉に反応した、タリサの目を抉り抜こうとした右手を、必死の思いで止める。
彼女は知らないだけ、悪くないと自分に言い聞かせ、その思いに蓋をする。
蓋をしなければ、溢れ出る黒い感情は止まらない。
もしも溢れ出てしまえば、感情はきっと行き場を失って暴れまわるだろう。
それだけは避けなければならない。
「へぇ、親御さんが恋しいってわけ? だったら今すぐにでも国に帰れば良いだろ」
タリサの言葉に、ふと胸元へと仕舞っていたロケットのキーホルダーへと指を這わせた。
帰る、なんて考えたこともなかったからだ。
どうせ帰っても、石に刻まれた家族の名前を延々と拝み続けることしか出来ない。
待ち続け、失い続けるのはもう嫌だったから、俺は衛士になった筈だ。
母さんと、妹の笑顔は――俺の記憶に刻み込んである。
だから、今はそれでいい。それだけがあれば、良い筈なんだ。
「死んでるよ、みんな」
「――え?」
タリサの顔が、知らずの内に強張っていく。
そんなことにすら気付かず、懐かしむ様にロケットのキーホルダーを指の中で遊ばせた
それは、妹から渡された俺への誕生日プレゼントだった。
無骨で、無駄に大きくて、首に下げると肩が凝るのでいつもポケットに入れて持ち歩いている。
ロケットの窓には笑顔を浮かべる少女と、彼女に引っ付かれて迷惑そうな俺の顔。
「……家族は良いな」
「あ、あぁ」
「俺にとっちゃ、この基地に居る奴等は……俺の家族と変わらない」
今までも、それにコレからも。
この"生き方"だけは変わることはないし、変える気すら毛頭ありはしない。
背中を守り合う衛士、機体を整備する整備班、作戦を立てるHQ――
それぞれが支えあって漸く、戦場で1つの"戦い"が行えるのだから。
共に手を取り合う人々を使い捨ての駒と割り切れる程、冷徹にはなれない。
だから、しがみ付いてでも守り抜きたい。
最初から、守りきれないことだって分かっているけれど……――
諦めるな。泣くな。俯くな。
そう言って、何人の仲間を鼓舞して来ただろう。
何人の仲間を、置いてきてしまったのだろうか?
「――……わ、悪かったな」
「ん?」
ブルーになっていた俺の自責の念を打ち消したのは、タリサからの言葉だった。
小さな声だったが、タリサは申し訳無さそうに目を背けている。
少しは仲良くなれたかな?
嬉しくなって、自然と声のトーンも上がった。
コイツも、俺と一緒に戦っていく家族の1人だ。
家族が増えるのは、とても嬉しい。
それは、自分が1人じゃないと言うことを認識出来るからこそ、なのかも知れないが。
「そ、そのさ。話したくないこと聞いて……」
「気にするなよ。仲間で、"家族"だろ」
「……お、おう」
少しはにかんで笑うタリサを見て、俺も釣られて笑った。
今日も今日とて、私は必死に自分の仕事をこなす。
F型を最良の機体にするべく、あらゆる技術を吸収し改良し変化させ、そして組み合わせる。
0から1を作り出す訳では無いので、そこまでの苦労は無い。
だが、日本に居た頃と比べて人員が少ないのは問題だった。
仕事は進むが、1人が受け持つ仕事量が格段に多くなってしまう。
それが、アラスカへ来てからの不満な点だ。
「藤代中尉、F型の武装の件ですが……」
「それは後ほど。今は兎に角、本体を完成させることに全力を注ぎましょう」
「了解しました。おい、聞いていたな!?速度を上げるぞ!!」
元気が良い返事が聞こえた後、10人程度の男女がF型へ群がっていく。
このペースで行けば、何とか弐型と共にロールアウトする事が可能かも知れない。
弐型と同じ日ではF型の影が薄くなるかも知れないが、それでも私が手掛けた機体だ。
米軍の技術者程度に劣る程、日本の技術と私の頭は柔じゃない。
負けず嫌いな性格が災いし、この日は少佐とのテストを終えた後は昼食も食べずに整備班と共にF型の傍に付きっ切りだった。
気付いたときの時間帯は夕飯時。
整備班の班長の提案で、PXに向かうことになった。
そこにはアルゴス試験小隊と少佐が既に食事を取っており、そこへお邪魔をさせてもらうことになった。
しかし、少佐は一段と静かだ。
理由は明白だが、アルゴスのメンバーたちはそのようなことなど知りえるはずもない。
「な、なぁ藤代中尉?うちの少佐は……どうかしたのか?」
「昨日の夜は何も無かったわよ?」
「夜……って、ステラ!?まさかお前、少佐を部屋に――」
「何もしていないし、されてもいないわ。ただ、彼の話を聞いていただけよ」
少々気になる単語があったが、それは後ほど言及する事としよう。
しかし、天下に轟く帝国斯衛軍の衛士達ですら恐れる"黒獅子"なんて言われている男が、1人の少女の到着をこれほどまでに恐れているとは滑稽過ぎる。
「篁中尉」
「ぃっ!?」
やはりと言うか、何と言うか……私達がアラスカへ降り立ってから4日程。
時期から察するに、アラスカに篁中尉が到着したのではないだろうか。
私にとっては優秀な助手となりえるが、少佐にとってはとても怖い戦友。
気付いた時点で、何とも彼女は嫌われてしまったものだ。
彼女は奥手過ぎるので、少佐も気付かないと言うことも事を遅延させる原因なのだろう。
何よりも、少佐は"攻める"性質故に、"受け"に関しては素人級だ。
思ったよりも彼等の仲が深まるのは遅くなる事も推測できる。
いつの間にか、1人で納得する形になっていた。
「"タカムラ"中尉? なぁ少佐、その"タカムラ"中尉って知り合いなのか?」
「"タカムラ"中尉、ね。私も気になるわ」
「誰だよ、"タカムラ"中尉って。またアンタみたいな化け物か?」
「……その、何と言いますか……堅物だけど、い、いい子だよ」
私は少佐の相棒として。彼等の成り行きを見守らせて貰うとしよう。
最初から私は手を出すつもりは無いし、手を貸すつもりも無い。
クツクツと喉の奥で笑いながら、私は料理を口へ運んだ。
■【新たなデータを更新しました】
剣崎龍二、男性
階級、少佐
出身国:日本
現年齢:28
身体情報:身長184cm/体重74kg
適正結果:高
所属部隊:XFJ計画補佐及びTYPE-94改修計画開発衛士
・総合戦跡
出撃回数160回
被撃墜回数7回
戦闘による負傷3回
・戦果
光線級約870体
重光線級約250体
要撃級約1800体
突撃級約5400体
戦車級約2100体
要塞級約25体
兵士級不明
闘士級不明
総計敵撃破数約10445体[実際はこの数値を大きく上回ると思われる]
藤代千枝、女性
階級、中尉
出身国:日本
現年齢:22
身体情報:身長163cm/体重――
所属部隊:XFJ計画補佐及びTYPE-94改修計画班副長
別サイトでリハビリに書いていた作品も、もしかすれば此方で掲載するかもしれません
名義自体は別人ですが
ただ、長く続けることが出来なかったものなので、無理しない程度に検討します