で結局今こうしている訳だ。
狭い通気ダクトの中を這いまわりながら建物の中を進む。頼りは昔チラッと見た研究所の見取り図の記憶だけ、さしずめネズミだな、と皮肉気に思いながら僕は――正確には僕ら、か――は今こうして侵入に成功した。
映画なんかだとよくある光景だけど実際にやると酷いモンだ。元より清掃なんかされていないダクト内は埃やら蜘蛛の巣やらが凄まじいし、なんだったらあまり考えたくもない物質と思しきモンも堆積してる始末。人間の僕でさえ咽そうなのだ、先頭を行くガロに至ってはさも不快そうに鼻をひくつかせている。
それでも高校生の男子一人がなんとか通れるスペースがあっただけで僥倖というもの。僕は入り組んだ道を微かな記憶を辿りに進んだ。なんでそんな事が分かるのかというと昔“研究所”の図面を頭に叩き込んだ事があるからだ。特に他意はない、強いて言うなら趣味みたいなモンだ。
ここだ、確か。どれほど時間が経っただろうか、とにかく息が詰まりそうなこの空間からさっさと脱出したい思いで咳き込みながら僕はダクト下部のグレーチングを跳ね上げた。一気に入り込んできた清浄な空気に少し肺が洗われるような心地を感じたが、いつまでも堪能してはいられない。携帯を素早くカメラモードも切り替えるとそれを下に繋がってる部屋に下げた。カメラに映る範囲に敵の姿は確認できない事にひとまず安心して僕はなるべく音を立てないようにゆっくりとダクトを出て、部屋に下りた。ガロは音ひとつ上げずにひらりと着地する。
よぅし、ひとまず第一関門はクリア。僕は周囲を見渡した。機器に囲まれた部屋一面、金属質なデスクと応接用のテーブルにソファ以外は酷く殺風景で不愛想な部屋。テーブルの上に無造作に投げ置かれたビタミンゼリーの空容器とソファに置かれた毛布がこの部屋の主が仕事も寝食も殆どをここで済ましていた事が窺える。考えるまでもない……父さんの研究室だ。
前に来たのは随分前の事だった筈だ。確か中学に上がる少し前くらいだったか。何を思ったかテツヤとキョウカ、それにユヅキと一緒に来た事がある。理由は……その日が僕の誕生日だったからだ。良いというのに余計なお節介を働かせた二人がわざわざここに行こうとか言って連れてこられたんだっけ。二人の気遣いはありがたかったのだけれど正直僕には少し気が重かった。研究の邪魔になるような事はしたくない、というのが表向きの理由だったけど…それ以上に父と向き合うのがこの時点で既に怖い事になっていたからだ。
僕の父さん――山城慎吾。この村でその名前を知らない者はいない。それだけ良くも悪くもこの村は父の研究によって回っているのだと言って良い。
この村の住民は大きく二つに分かれる。古くからこの村に土地と生業を持って生きてきた人達。そして“研究所”――プロメアセンターの開設に伴って新規に流入してきた人達だ。後者の人達は常駐の職員と一定期間で入れ替わる臨時職の人とに分かれるから必ずしも一定の顔ぶれはないけれど常に村の人口の半分は“研究所”の関係者という事になる。古くからの住民にとっても“研究所”の存在は切っても切り離せない関係にあるから、畢竟そこの主任である父の影響力というのは子どもの僕が思うよりも計り知れないものらしい。
父の存在は村のどこにいても否応なしについてきた。村の大人達はこぞって自分の子ども達に「山城博士のような立派な人になるんだぞ」と言い聞かせてきたし、僕はどこに行っても「博士の子」だ、事実なのでそれに
僕にとって父は――山城慎吾という男は……確かにもっと幼い頃はもっと素直な憧れや尊敬の気持ちがあったのは絶対に確か。自分もいつか父のようになるんだ、と誰に強制される訳でもなくそう思えた…思っていた。自分で言うのもなんだが人より頭が良い自覚はあり、それはそのために天より与えられたギフトなんだと無邪気に思えるくらいの気持ちはあったのだ。でも次第に父に対する印象は「不可解」という言葉でしか語れなくなっていった。実は村の誰しもが山城慎吾博士という男が何者であったのかが分かっていないように――それと同じくらいには僕も言う程、父の事を知っている訳ではないのだ。
幼い頃から二人きりの家庭だった。物心がついた頃より母の記憶はなく、いっそ成澤家との交流を持っていなければその不在を自覚する事もなかっただろう。ある日「僕の母さんはどこにいるの?」とそう尋ねたら父は振り返りもせずに死んだ、とただ一言……素っ気なくそう告げた。生硬いその声色に幼いながらにこの話題に踏み込んではいけないのだという事は容易に想像出来た。以降何かにつけて母の写真や思い出を探そうと試みたもののどこを探してもその痕跡は終ぞ見つからず、いつしか…ああ、本当に僕にはそんなものはいないんだって…諦めの境地みたいな気持ちが生まれた。結局僕にとって家族とは父だけの閉じた世界なのだと。
そしてその世界は元より酷く寒く、寂しい世界だった。研究所にひたすら泊まり込み続け、たまに帰ってきても書斎に引きこもり続けるあの男に父親らしい事をされた事はない。特に小学校に上がる頃になるとそれはますます顕著になり、月に一度顔を合わせれば良いという状態になった。そんな様子を見兼ねて何かと気遣って面倒を見てくれたのが成澤一家だった。冗談でなく、あの人達がいなかったら僕はここにはいなかったかも知れない。
話がずれた。そんな家庭事情だったから元より僕は父に多くのモノを期待したりなんかしなかった。中学生にもなるとますますその感情は強くなって遮二無二家事を覚えたり、不慣れを承知で幼馴染二人意外の人と関わってみようとしだした。父のようにはならない、そういう反発心からだったのだ。
そんな感じだったからあの日もいつもと変わらない結果になると思ってた。友人のお節介を微かに恨みながら訪れた研究室でその日、父はソファで横になっていた。珍しく疲れた顔をしていて、いきなり訪れた僕達を見て目を白黒させていた。この男でもそんな表情するんだな、と漠然と思った事を覚えてる。
『今何時だ……というか何日だ?』
覚醒するなりの開口一番にそれだ。キョウカが心底呆れたというような顔をして『5月17日です!』と語気強めに怒鳴った。
そう聞いた父は今度は心底仰天したように身を竦ませて何か取り出そうと机の方に向き直りだした。明らかに不審げにごそごそ机を探っている父さんはなんだかひどくらしくなくて、明らかに動揺しているような素振り。見兼ねて『だから!今日はミキトの誕じょ――』そんな後ろ姿にキョウカが更に声を重ねようとしたが、途中で口を噤んだ。なんとか平静を取り戻したように振り返った父の手に何か小さい包み紙が握られているのに気が付いたからだ。
『すまん……渡すタイミングを完全に失くしていたよ…今更、とも思えてしまってな。誕生日おめでとう…それと、いつもユヅキの面倒を見てくれてありがとう…。ん、それだけ言いたかった…』
それだけかなりどもりながらそう言うと父はまた気難しそうな顔をして机に向き直った。後ろの三人も虚を突かれたようにポカンとした顔をしていたが、一番驚いたのは僕自身だとこればかりは胸張って言える(キョウカが『威張って言うな!』とか叫びそうだ)。本当に今更ながらあの人がこんな事言ってくるとは思わなかったし、自分の中にもまだこんな事で胸がじんわりと暖かくなるような……そういう感情が残っているとは思わなかった。
まぁ結論から言うと父との親子らしいやり取りはそれが最後だった。後はどんなにひっくり返しても何も思い至らないが、こればっかりは仕方ない。以降も変わらず身近な家族は6歳年の離れた“妹”とお節介な幼馴染二人に犬一匹、あとその周囲だけだった。けどそれで良かったんだ、距離とか時間とかそんなモノは結局のところ関係なくて、確かに繋がっているものはあるって――あの日確かに思えたのだから。
また話が脱線した。少し前の時系列に飛び掛けた僕の意識を引き戻したのは『ウォン!』というガロの吠え声だった。僕は気を取り直して薄暗い部屋を隅々まで見渡し、無造作に投げ置かれた毛布を拾いあげるとそれをガロの鼻先に突き付けた。
『たぶん父さんのだ。これの匂い辿れるか?』
ガロは了解した、という風に頷くとその匂いを頭に叩き込もうとするかのように毛布を嗅ぎ出した。理解の早い奴で助かるよ、と感心している間にもガロは痕跡を見つけたらしい、床に鼻を這わせて部屋の外に向かっていく。僕も続いて飛び出した。
周囲に人影はない。少なくとも僕やガロが“検知”できる範囲には“敵”はいないと判断して良さそうだ。ガロがこっちだよ、というように走り出した。その先にあるのは確か……ここから先は流石に機密だとかなんだとかでうろ覚えなのだけれどけど…確かこの“研究所”の中枢である《コア》――そう呼ばれてる――とその制御室がある筈だった。何か猛烈に嫌な予感がするな、そんな感触を抱きながら僕はガロの後を追った。
・・・・・・・・・
「…どうでも良いけどお前やたら話が回りくどいな…」
「うるせぇ放っとけ。慣れてねんだよこちとら…」
健輔がボソリ、と呟く。それに対して幹斗は心外だな、という風に口を尖らせた。そんな表情はやたらと年相応で健輔としては少し意外だった。これまではどこか厭世的で醒めたような表情か、世間を騒がす凶悪なテロリストを演じるための狂暴な一面か、とにかくそんな山城幹斗ばかり見てきたが今のコイツは下手すれば24歳という実年齢よりも幼く見えるようだった。そう言えば――と渋い顔をしている幹斗を見て漸く合点が行った事がある。
「……そういえばお前、てっちゃん…哲也とは同郷の幼馴染なんだよな?」
そう言えば前にホテルで目覚めた時にそんな話をした気がするが、あの後すぐに乱闘劇になったせいで結局聞けず終いのまま有耶無耶になっていた。幹斗は自分と哲也が知り合いだった事を随分と驚いているようだったし、自分も自分で哲也と幹斗がよく知っている間柄なのだとしたらたぶんあの事件の関係者ではないのか……と思っていたがまさか図星だったとは…。世界って案外狭いんだな、と呆れがちにそう思った。
「そんなモンさ。小学校に上がる前からずっっと……な…。――まぁ、腐れ縁だよ」
懐かしむように幹斗は目を閉じてそう言った。あぁ、そうか。健輔は得心が行った。コイツがやけに子どもっぽい表情をする時ってのは…哲也や他の親しい人――確かキョウカとかユヅキって名前が出てきてたな――の話をしている時だ。遥か遠くの星を覗き込むような、どこか遠い場所に想いを馳せているような……そういう表情。
「アイツがずっとどうやって生きてきたのか…ずっと気になってたけどまさかこんなに早く出くわすとは思ってなかったよ。全く悪いことってのはするもんじゃないよな……」
酷く深い溜息。それだけで以前哲也と出くわした事が幹斗にとっても想定外の出来事だったのだと分かる。多分哲也もこんな形でかつての親友と再会するとは思っていなかっただろう。
哲也があかつき村出身者なのは会った時から知っていた……というか学校で知らなかった者はいなかった。中途半端な時期に編入してきた事や前にどこの学校にいたのかを頑なに言わない事とか…察するには十分だった。当時はあの事件で日本中が大騒ぎになっていたというのもあってイヤでもその当事者への注目度は高かったから。……主に悪い方向で。
比喩でなくあの事件を経て世界は変わってしまったように思えた。チェルノブイリ原発事故や東海村JCO臨界事故に次ぐ新エネルギー事業が引き起こした大事故。加えて何が発生したのかどうしてそうなったのか、確かな事は何一つ分からないまま、残されたのは不明瞭な疑惑と不可解な“結果”ばかり。国民は総じて疑心暗鬼に陥ったし、生活への打撃も大きかった。特に観光業は訪日外国人が大幅に減った事でかなりの損失を出したというし、特に内外を問わずあかつき村を擁するX県への風評被害は暫く続いた。同調圧力的になんとなく国全体に蔓延した自粛ムードや医療現場の混乱なんかも重なれば否が応でもストレスは溜まり、時にそれは歪な方向に発露されるものだ。
これからはエネルギー事業でも日本は世界を牽引していける――そんな未来もあるかも知れないという漠然とした希望が文字通り丸ごと消し飛んでしまった光景を目の当たりにすれば2000年代に入ってからひたすらの先の見えない不況地獄に文字通り止めをさした格好になってしまい、期待は一瞬にして失望へと変わった。そしてその失望は――日々のストレスと併せて歪んだ方向に発露したのだ。
それは哲也も同じだ、齢16かそこらで世間の掌返しと謂れのない風評に晒されれば人心も腐るというモノで健輔が初めて会った時の彼は酷く荒れて、周囲から孤立していた。決して同じとは言わないけど複雑な家庭事情やら何やらで同じように学校に居場所のなかった当時の俺達――元山や恵麻、一学年下のアニク――に気が付いたらアイツも混ざっていた。きっかけはよく覚えてない、確か元山と乱闘騒ぎ起こして、結果雨降って地固まるに至ったような…。そのくらい俺達にとってはなんて事のない日々の一部だった。
心を開いてくれれば哲也とは存外すぐに仲良くなれたし、何より本来のアイツは明るくてノリの良い奴だった。色々複雑で屈折してて。ねじくれてる俺達とも上手くやれてたのはあの屈託のなさが大きいだろう。俺らと違って本質的に育ちが良いんだろうな、とそう思ったからこそ哲也の中に大きな傷としてあの事故が残っている事に胸が痛んだ。
そんなアイツの心に影を落としたあの事件が……そのきっかけが事故でもなんでもない、人為的に引き起こされたものだったとしたら?
前に幹斗は「あの日村は新しい世界の扉を開いてしまった」そう言っていた。そのきっかけになったのがあの謎の“霧”の正体ではないのか、と自分の体にもおかしな変異が起きた今では思う。しかも現状聞いている限りだとあの爆発が起こる直前に正体不明の武装集団がプロメアセンターを襲撃していたという。だとするならば――!?
「ご明察。アレを引き起こした真犯人がそいつらって訳さ。“神樂”って組織の回し者共だよ…」
カグラ…?聞き慣れない単語に眉を顰める。幹斗は苦笑すると「この国の裏社会の象徴みたいなモン…そう言ったら信じるかい?」と続けた。
「戦後の混乱期に生まれたマネーロンダリング機関……。自らは決して出ては来ず、陰の世界から表の世界を操る“裏の帝国”――それが奴らの正体だよ……」
なんだよソレ…?と一昔前のサスペンス小説みたいな話に健輔が絶句していると気付いているのかいないのか、幹斗は「おっと話の途中だったな」と気を取り直すように口を開いた。
「あの日親父は殺された。そして俺は人間じゃあなくなった…それが全ての始まり…」
・・・・・・・・・
ガロが我先にと疾る。僕は息せききりながらそれを追う。
“研究所”の中は静かだった。静かすぎる、と言っても良いかも知れない。危惧したようなあの謎の武装集団と鉢合わせして、なんて事態には今の所至っていない。携帯を確認すると依然としてアンテナは一本も立っていない、手近な部屋に飛び込んでそこで見つけた電話の使用を試みたが、こちらも通信不能だった。この分では緊急通報ブザーの類も無力化されているだろう。恐ろしく用意周到な犯人だ、この″研究所”のメインシステムどころか外部の人間には知り様がないバックアップシステムまで掌握されてる可能性がある。
この点から推察出来るのは襲撃者達はそれなり以上に手練れたプロの武装集団だという事。もう一つは建物全機能を手中に収める程の大部隊ではなく、必要最低限度の人員で来ている、という事だ。
だがそれでも何のために?という疑問は残る。テロリストが原発を狙って攻撃を仕掛けてくる、なんてシナリオだったら映画とかで腐りきってウジの一匹も湧かないレベルであるけど、ここはあくまで核融合炉の実験施設だ、仮に暴走して核爆発を起こすなんて事はない。
そもそもあの武装集団はテロリストかなんかなのだろうか。勿論僕はミリオタじゃない、装備を見ただけでそれがどこの国のなんて武器なのか言い当てられるほど精通している訳ではない。が、それにしたってヘリ周辺で見かけたあの連中の装備は少なくともしっかりと整備がされているように見えたし、動きも統率されていた。断言は出来ないが無法者の類のような気はしない。
だが細かい所をついていけばキリがなく、正直敵が何者であるのかはこの際後回しにせざるを得ない。重要なのはここが狙われていて、止めないといけないというその一点だ。そうしないと大変な事になる――それが具体的になんなのか、なんて分からないけれど。その思いだけに衝き動かされて僕は必死に脚を走らせた。
ガロは探知した父の匂いを猶も辿っている。この先は《コア》が存在する場所だ、やはり父は中枢部にいるようだ、同時にガロは何か他の気配も探知しているようだ、落ち着きがなさそうに耳を伏せて、慎重に匂いを嗅ぎ取っている。
それで僕は漠然と父はどうやら襲撃者達に連れていかれたらしいと察知した。確証がある訳ではない、ただこの施設の事を誰よりも良く知っているのが父であり、敵が目的はなんであれこの施設を手中に収めたいのならば真っ先に狙うのはあの人だろう。
“研究所”の中枢は《コア》と呼ばれるエネルギー反応を生成する装置がある炉心とそれの観測や制御を行うブレインルームで構成されている――あくまで図面で見ただけ、流石にそこまでは僕も行った事はない――。何かこの研究所に“用”があって父を狙うならブレインルームの方に連れていく筈だ、と予測を立てた僕は直接部屋に殴り込みを掛けるような愚は犯さず、様子を窺うためにも再度(四苦八苦しながら)通気ダクトに潜り込んだ。図面の記憶が確かならここからブレインルームの方に繋がってる筈だ。
『ガロ』
ダクトに体を滑り込ませるとその下で所在なさげに立っている愛犬に向かって僕は小声で言った。『様子を見てくる。何か怪しい動きがあったらすぐに吠えて知らせてくれ。見つかったらすぐに逃げろ、良いな?』
流石にこれ以上はガロは連れてはいけない。最悪武装した連中と一戦を交えなければならない可能性だってあるのだ、いくら何でもこの忠実な愛犬を巻き込む事は出来なかった。ガロが不満そうに小さく吠えた。完全にこっちの事を分かっているらしい、いつもの事ながら思うが不思議な犬だよな、と思う。
少し話を脱線させて欲しい。ガロは僕が物心ついた時から既にいた。以来僕のお守りみたいなものだ。犬は自分より小さな人間の赤ん坊を守ろうとするというがアレは本当だと思う、このガロがそうなんだもの。
僕が16歳になったという事はコイツは既に14歳くらい。人間で換算したらとうに70歳以上のおじいちゃんなのだ。シベリアンハスキーの寿命は長くても15歳くらいだと言われているからいくら元気でも、もう長くない事は分かる。それほどの時を刻んで生きているからか、こうやって時折人の言葉を介せるのでは、と感じる時がある――というか僕は半ばそう信じていた。
飼い主のエゴかも知れないがせめて危険のない所に行って欲しい。けどそんな僕の“
『心配するなよ、生きて帰るさ。じゃな』
なんだかそれ以上はガロの顔を見るのが忍びなくて僕は逃げるように通気口の蓋を閉めると中に潜り込んだ。ガロは不服そうだったが吠えはしなかった。最後の最後までこんなバカな飼い主に忠実な愛犬にそっと心から感謝を告げると僕は相も変わらず噎せ返りそうな通気口の中を進んだ。
ま、ガロのためにも無事に戻んなきゃな、そう決意すると少しだけこんな時なのに少しだけ笑えた。
またエラク中途半端になってしまいましたが、流石にちょっとこのパート長すぎて分割にも限度があるので中途半端は承知でここで切ります。
なるべく早く次話を投稿できるように頑張りますんでヒラにご容赦を…。
それではひとまずまた次回。
次回は少し早くします…多分。そうであって欲しい。お願い…!