ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ   作:エカテリーナ

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お世話になっております。連投2日目。
試験説明パート2となっております。

徐々に原作乖離の結果が周囲に出てきています。
それでは、どうぞ。


②:実際ギャップ萌えの破壊力は異常

 

―――〇―――

Side.綾小路 清隆

 

いつも通り登校する。いつもと違うのは周囲からの視線と、微かに聞こえる噂話。

今までになく注目を集めたものだが、誰も声をかけてこない。…嫌われたものだな。いや、クラス内投票試験の前もこんなだったか?また図書室にでも行くとしよう。ひよりは試験前でも来ているのだろうか?見かけたらまたお勧めの本についても聞いてみるとしよう。

 

結局、Bクラスに着くまで…いや、席についても誰からも声をかけられることはなかった。鞄から本を取り出して時間を潰していると、杖を突く音が俺の席へと近づいて来て良いところでページに影が差す。視線を本から上げると微笑んでいる女子生徒、坂柳だったか?が居る。

 

 

「おはようございます、綾小路君」

 

「…おはよう。坂柳、だったよな?」

 

「っ…。ええ、覚えて頂き光栄です。これからどうぞ、よろしくお願いしますね?」

 

「ああ」

 

 

それだけ言って、取り巻き連中と席に戻っていく。杖を着いて儚げな印象を与えるが、反面あの自信に満ちた態度。このクラスのリーダーとして、新参者に圧をかけにきたのか?それにしてはどこか態度がおかしかったように感じた。

挨拶をされたのを契機に、余計に注目されている。また本を読む気にもなれず、窓の外を見ていると予鈴が鳴る。程なくして担任の真嶋が教室に入り、学年末の試験について説明を始めるのだった。

 

 

・・

 

 

「では試験について軽くディスカッションしましょうか」

 

 

その日の夕方、全ての授業が終わった後の教室では坂柳が教壇に立つ。特別試験の為に、今日は可能な限り全員残るようにとHRで周知を受けて、帰ろうとしていた俺も席に残っている。各々の机にはレジュメが置かれ(どこか薄い印象を受ける女子から貰った)入口には防諜に人を立たせている。スマホも机の上に置かせて、書記として女子生徒がペンを持ってホワイトボードに控える。

 

理想的な優等生然とした様子だ。流石に元とはいえ、Aクラスなだけはあるな。

 

レジュメをパラパラと眺めながら、朝の真嶋の話を脳内で整理する。この特別試験、選抜種目試験について。

ほぼ部外者の俺から見て、Bクラスが他のクラスに勝とうとするなら団体戦より個人戦。人数が必要になるスポーツなどのフィジカルより純粋に学力で優劣がつくテスト系の方が勝率は高いだろうな。

 

個々のスペックがいくら高くとも、チームワークを必要とする集団競技では紛れが起きやすい。俺が軽く胸算用していると、クラスでも特徴的な男子生徒―――葛城が手を上げていた。

 

 

「その前に少し良いか、坂柳」

 

「…ええ、もちろんです。なんですか?葛城君」

 

「話し合う事に異論はない。…だが、情報漏洩を避ける為に人数は絞るべきではないか?」

 

「………」

 

 

気のせいではなく、横目でこちらを射抜くような視線を向けられる。…当然といえば、当然か。俺はこのクラスに来て2日目。古巣のクラスに情報を漏らすんじゃないかと懸念するのは当たり前だ。

 それに応えるように席を立とうとすると、すぐに坂柳から構わない旨の発言が飛んだ。これには葛城は勿論、他の生徒も訝し気だったがリーダーの命令に表立って逆らう奴は居ないようだ。

 

 

「心配性の葛城君の懸念も分かりますが、それについてはご安心を。キチンと考えてありますので」

 

「…ならその考えを教えてくれ。試験の勝敗に関わる大事を軽んじているつもりでないのなら、な」

 

「おい、葛城。どういうつもりだよ」

 

「いやでも、流石に…」

 

 

なんか少しギスギスして来たな。Cクラスの適当な混沌具合とは違って対立模様が見える分、なお雰囲気が悪い。その陰鬱な空気を切り裂くように、坂柳が杖で床を叩く。注目を集めた後に薄く微笑んで、俺と視線が合う。

 

 

「はぁ…。とても簡単な事です。…綾小路君」

 

「…なんだ」

 

「貴方に司令塔をお願いしたいのですが、よろしいですか?」

 

「…俺が?」

 

「ええ、是非」

 

 

どういうつもりだ?真意を見抜こうと視線を向けていると、案の定というか葛城やその周辺の連中が騒いでいる。それを鎮火する大勢と、冷たい目で見ているだけの少数。このクラスは纏まっているようで纏まっていない。

 

…というか、露骨に態度が違うというか…温度差があるように感じる。葛城へは言葉こそ丁寧だが、ため息交じり。反面、新参の俺には一応『お願い』という言い方をしている。

案の定というか、葛城の取り巻きからの敵意とは別にその他からもどこか探るような視線を感じる。

 

そんな中で居心地の悪い中で爆弾を投げられた訳だが、言い訳や拒否をする間もなく担任の真嶋が来て司令塔は着いてくるようにと指示が飛ぶ。

 

 

「では綾小路君、何卒、お願いしますね?」

 

「(何をどうしろと?)…分かった」

 

「綾小路…が、司令塔で良いのか?」

 

「…みたいですね」

 

 

どこか言い淀んだ真嶋に、内心で同情する。まさかの1年最後の特別試験に、部外者の俺が重要なポジションにつくなんて勝負を捨てているのかと不安にもなるだろう。

…連中がゴタゴタ騒いでなければ、指定するクラスや他にも確認が出来たんだろうが、まったく。

 

 

「待たせた。…俺が最後か?」

 

「ええ、そのようですね」

 

 

どこか痛い沈黙に耐えて目的地の教室に辿り着く。既に他の面々は揃っているようで各クラスの担任―――そして司令塔と思われる生徒達の姿が見える。

 

 

「…クク」

 

「にゃはは…」

 

「そんな…」

 

「………」

 

 

龍園翔、一之瀬帆波、堀北鈴音。それぞれが三者三様の反応だが、俺が来るのは予想外だったようだな。

…まあ俺自身、予想外だった訳だが。

 

その後、机の上にあった穴の開いた四角い箱を茶柱が持ってくる。これで対戦クラスを決めるのか?疑問に答える様に、茶柱は俺達を見渡して説明を始める。

 

 

「では、これから対戦相手のクラスを抽選で決める。この中にあるくじで当たりを引いたものが対戦相手を決める権利を得る」

 

「えっと…引く順番とかは?」

 

「好きに決めて良い。話し合いでも、ジャンケンでも構わない」

 

 

言うや否や、真っすぐに龍園が歩を進めて箱に手を伸ばす。咎める間もなく一枚の紙を引き抜いてくしゃりと握りつぶす。

それに一之瀬が驚いて、堀北が噛みつく。

 

 

「あっ…」

 

「ちょっと…!そんないきなり…」

 

「あ?来た順で構わねえだろうが。誰から引いても、確率は同じ*1だしな」

 

「それは…!そうだけれど」

 

「なら文句はねえな?おい、お前は?」

 

「………俺はそれで構わない」

 

「ふん。だとよ、さっさと引いたらどうだ?」

 

 

息を呑んで不満を堪えた堀北が黙ると、次についていたのだろう一之瀬がくじを引く。…えらくじっくりと時間をかけて、手を引き抜こうとする。そしてその手を引こうとした直前、背後から笑い声が聞こえた。

 

 

「ククク…悪いな、俺が当たりだ」

 

「な…」

 

「え?…引く前に言ってよ、もう」

 

「………クク…悪い悪い、お前らの残念がる顔が見たくてな」

 

「………」

 

 

一之瀬はは箱から手を戻すと、龍園の掲げる紙に目を向ける。皺が刻まれたくじには赤く丸が書かれていて、それが当たりということだろう。龍園がそれを放り捨て、ニヤニヤとした表情でこちらをねめまわした。

 

 

「んん、それで龍園…どのクラスと対戦を希望する?」

 

「決まってる。A()()()()だ」

 

「…!」

 

「へぇ~よろしくね、龍園君♪」

 

「…ああ、楽しみにしとけ」

 

「…………」

 

 

つまり俺は堀北率いるCクラスと戦うことになる訳か。視線を向けて来た堀北に無言で応えていると、退室を促される。俺もBクラスに対戦クラスの事を伝えようと戻ると、入口にいた厳つい長髪の男子が強くノックをして扉を開ける。

 教室の全ての目が俺を射抜く。一番初めに声をかけて来たのは教壇に立つ生徒…坂柳だ。

 

 

「お疲れ様です、綾小路君」

 

「「「………」」」

 

「…いや。それで対戦クラスだが、Cクラスになった」

 

「まあ…」

 

 

口に手を当てて上品に声を漏らす坂柳とは違い、クラスには大きなざわめきが生まれる。葛城や一部の生徒は立ち上がって俺を退室させようとでもしているのか、かなり険のある表情だ。だがそれを遮るように含んだ笑い声が教壇から届く。

 

 

「失礼?…なんとも悲劇的なことですが…綾小路君」

 

「なんだ?」

 

()とはいえ、ご学友と戦えますか?」

 

 

まるで…違うな、正に、か。試すような視線を向けられるが、俺の心は静かに凪いでいる。

この試験で堀北が退学になろうと、連中が再びDクラスになろうと、どうでも良い。

 

 

「ああ、()()()()()

 

「―――なら結構です。…お手並み拝見と行きましょうか」

 

「………」

 

 

そう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

俺の返事に満足したのか、坂柳は自分の役割に戻る。俺もクラスの一員として、役割を果たすとしよう。

 

 

―――〇―――

Side.神崎 隆二

 

 

「…それで、対戦相手は()()()()Dクラスになったのか?」

 

「うんっ!龍園君が機転を利かせてくれて良かったよ~」

 

 

そういって一之瀬は「バレるかと思った~」などと、まるで緊張していたように周囲におどけている。…だが、実際は八百長も良い所だ。今回の対戦相手は、元より龍園とは示し合わせていた。必ず退学者が出る試験だからこそ、保険が重要となる。そのことをいの一番に理解していた一之瀬は試験の説明を聞いた今日の昼には場を用意して、龍園と交渉した。

 

結果として、試験における()()を譲る代わりに退学者救済のポイントを龍園からせしめることに成功した。

この場はその慰労会というか、前祝いのような場だ。…いや本当に、クラス全員でカラオケなんて、試験前にやるべきことではないな。各々が歌ったり会話に興じている中、一之瀬が口を開く。

 

 

「でも、ちょっと意外だったなぁ」

 

「なにが?一之瀬さん」

 

「ん~いや、龍園君のことだから、てっきり()()()()()()()()()と思ってたから」

 

「…」

 

「それは…たしかに」

 

 

確かに撫子を司令塔にすれば、一之瀬…というか、俺達が勝負に本気で挑めなくなる可能性は高い。俺を含めて皆の顔が曇る中、リーダーの一之瀬だけは動じていないように見える。

 

大丈夫、大丈夫だ。俺はこれまで通り、一之瀬を支えて行けばいい。俺に出来ない事は、白波も居る。柴田や網倉、それ以外にも沢山のクラスメイトが献身的に一之瀬の力になろうとしている。それを確かめるように周囲を見渡すと、独り離れている女子が目につく。いや、距離的にはそこまでではないが周囲の雰囲気からは浮いているような感じだ。

 

 

「次なに歌う?」

 

「え~なら一緒にこの…」

 

「………」

 

 

―――姫野ユキ。どちらかといえば友人といるより一人でいる方が好きなタイプだと思う。俺は不自然にならない様に彼女に近づく。最初は警戒していた姫野だったが、適当な会話をしてから俺が一之瀬に思う事があるように(実際、撫子に夢中になっている様には思う所があるが…)みせて、告げ口をするつもりはないと言った辺りでジッとこちらを見てからため息を零す。

 

 

「はあ…、まあ言ってもいいんだけどさ…今回の試験、勝ちを譲るまでする必要はあるのかなって」

 

「…その事か」

 

「別に撫子せ…、西園寺さんの事は嫌いじゃないけど、だからって龍園達に負けるまでしなくても…」

 

「………」

 

 

姫野が思っている事は分かった。彼女は一之瀬より、なんなら俺よりもクラスの事を思ってこの状況を憂いている。その心配は杞憂だと、不安を晴らすにはまだ俺と姫野の信頼関は構築されていない。

なら、感情よりも理論的な説得の方が効果が高い筈だ。俺は声を潜めながらも姫野に語り掛ける。

 

 

「姫野、それは少し違う」

 

「…違う?どこがよ」

 

「今回の試験に限らず、この学校の目的は3年生の時、3月の最終期末試験でAクラスでいる事だ」

 

「当たり前のことでしょ、それ。今さらなに?」

 

 

姫野はそんなことは分かっているとばかりに、少し乱暴に飲み物に口をつける。ただし俺と同じように声は潜めていて、周囲から悪目立ちをしないように目を配っている。…こういう奴は、()()だな。一歩引いた目線で自分たちを客観視・俯瞰的に評価できる存在。今までいなかったクラスの掘り出し物に、俺も少し喜色を浮かべて続ける。

 

 

「まあ聞け。つまり、今の時点でAクラスだろうとDクラスだろうと厳密には意味はない。精々が優勢か、不利か。程度だろう」

 

「………まあ、そうね」

 

「当然、クラスの順位は無意味ではない。下位のクラスより上位のクラスになれば雰囲気が良いものになるし、精神的に余裕を持てる」

 

「…たしかに」

 

 

理解力もある。これならクラスでも声を上げても良かったと思うが、まあ本人の気質によるものだろう。必要なら俺が矢面に立っても良い。…これで彼女がスパイなら洒落にならないが、これでも人を見る目はあるつもりだ。まずは彼女の事を、信じてみよう。

 

 

「だからこそ、今の時点ではクラスが上を目指す為の準備期間と考えろ」

 

「準備期間?」

 

「ああ、最後に大きく飛ぶ為には助走が必要だ。まずは―――」

 

 

そうして周囲の盛り上がり…喧噪をよそに、俺は姫野にクラスの今後の方向性や意図した戦略についても共有していく。

どのクラスと戦えば相性が良いのか。

どのクラスとは友好的にすべきなのか。

4クラスにおけるバトルロイヤルにおける定石、現在の情勢についても触れる。

 

 

「―――だから今回、仮にBクラスになってもそれは構わない訳だ」

 

「…Aクラスに再び上がる、坂柳クラスを孤立させるため?」

 

「そうだ。堀北たちのCクラスが勝ってもそれは構わない。恐らく大差はつかないだろうし、俺達と順位が入れ替わることはないからな」

 

「でもこれを機に撫子先生のこと…」

 

「いや、それはまだ早い。実は龍園たちはクラス移動チケットをまだ持っているらしい」

 

「えっ…!じゃあ、なんでクラス移動してるの?」

 

「それは…100%信じた訳ではないが龍園達によると―――」

 

 

カラオケが散会となってからも場所を変えて、夕飯をつつきながら話し込んだ。姫野は打てば響くようにこちらの意図を聞いて、自分の考えを深めていく。今後の試験、先の混合合宿のように男女別で行われることもあるだろう。姫野に高い視座を持たせるのは必ずプラスになる筈。

 

…というか姫野も撫子を先生呼びしているってことは、隠れファンというやつなんだろうな。

 

その後は寮まで送り、共にエレベーターに乗る。先に降りて上の階に上る姫野を見送ろうとすると、扉が閉まる間際に開閉ボタンを押したのかまだ扉は開いたままだった。

何か言い忘れたこともあったのかと思えば、どこか気恥ずかしそうに言い淀む姫野が口を開く。

 

 

「その…今日はありがとう、…ちょっと意外だったけど、神崎のこと誤解してたかも」

 

「誤解?」

 

「もっと冷たいヤツだと思ってた。…でも」

 

「でも、なんだ?」

 

「…何でもない、またねっ」

 

「あ、ああ…また」

 

「ん」

 

 

そういって手をひらひらとして、姫野は去っていく。最後になにを言いかけたは分からない。だが別れる時の姫野は、カラオケの時の鬱屈とした表情ではなくなっていた。

 

なら今日のところは、それでいい。姫野に言ったことに嘘はない。事実、まだ1年の終盤だ。姫野がクラスの為に出来ることも、立ち上がるにも充分時間はある。これからの彼女の頑張りを、しっかり気にかけていこう。

 

―――そう、少し上から目線のような傲慢さを持った罰なのだろうか。偶然(疑わしいが)見ていたというクラスメイトから色恋沙汰として茶化されたり、姫野へも応援するように女子が話しかけるようになりお互いに大きな精神的ダメージを負う事になった。

 

…どうして、どうしてこうなった…!?

 

 

*1
一人目は1/4で25%、最後に引くのも3/4×2/3×1/2=6/24で25%




読了、ありがとうございました。

今回で試験の対戦カードが決まりましたが、
一周回って原作通り、龍園クラスVS一之瀬クラス、
そして堀北クラスVS坂柳クラス(in綾小路)ですね。

どんな結果となるのか、お楽しみにしていて下さい。
明日また連投予定です。

2年生編について、アンケートです。やりたい要所の場面だけやって更新を早くするか、ちゃんと順序立ててやるべきか、どっちが良いでしょうか、皆様!

  • 更新優先、2年生編は要所を書いて投稿。
  • ストーリー優先、順番に巻順に進める。
  • if番外編とかもみたい?
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