ようこそ(勘違い)大和撫子の学校生活へ 作:エカテリーナ
特別試験、本編となります、
ちなみに感想で期待が強かったので、
綾小路君の活躍パートをみちみちに増設しました。
…結果、二部構成(一話増設)になりました。
投稿遅くなり申し訳ございません。
それでは、どうぞ。
Side.龍園 翔
一年最後の特別試験。俺はクラスの連中とは別の教室へと行くように指示を受けた。
俺が最後だったのか目的の場所には担任連中と他のクラス…俺達の相手である一之瀬、それと元お仲間同士の鈴音とその腰巾着の綾小路が居た。
軽口を叩いていると見慣れねえ教師…月城とやらの指示で対戦するクラスで別れて薄暗い教室に入る。会議室染みた配置の机にそれぞれ座ると、後ろに担任以外の教師が監督に着いた。
後は数分後に定刻のチャイムが鳴れば、試験開始となる訳か。どれ、ちょっかいでもかけてやるか。
「おい一之瀬。どうだ?
「…ふーん、どうだろうね?そっちこそ、Dクラスになっちゃって、もう後がないんじゃない?一緒に言い訳考えてあげようか?」
「ククク」
「「………」」
…教師連中から指摘はねえ。発言は自由、と。それにしてもまあ本心なんだろうが、一之瀬の態度も大概だな。裏では繋がっている訳だが、それを指摘されないように気を使ったってえのにこれじゃあ
「………」
「………!」
俺は事前に取り決めていた通りのサインを一之瀬に送る。ヤツもそれを見て髪留めに触れる。…伝わったらしいな。後は最初に送るヤツを見て金田が送金をする運びだ。何の問題もねえ。
時間までの合間で、むかえの教室に行った目下の仮想敵、Cクラスはリーダー格の鈴音の姿を思い浮かべる。…どこか落ち着きのない面だが、意外と責任とやらを感じてやがったのか?どうやらクラスを纏めるのに失敗して綾小路が放出したらしいことぐらいしか聞いちゃいないが。
「時間です。これより両クラス、本命となる5つを選びなさい。選ばれた種目はーーー」
そうこうしていると時間が来た。どうやらこの説明は教室の連中と共通で流れているようだ。
競技が決まると司令塔の俺達が選手を選んで会場へ移動、その他の生徒はトイレに行ったり話したり休憩をするのは自由。ただし通信機器の持ちだしは禁止で机に置いて離席するように、か。当然だな。俺達も自分の端末を机に出す。
俺達も離席は自由だが、司令塔の権利や選択時間が超えた場合はランダムで選出されると警告された。…まあ、かまいやしない。
向かい合った机の中央、デカいモニターでそれぞれのクラスの競技と選出される生徒が表示される。いよいよ試験開始って訳か。程なくしてお互いのクラスが選出した
Aクラス
・愛してるゲーム
・王様ゲーム
・ツイスターゲーム
・カラオケ
・ポッキーゲーム
Dクラス
・水泳
・茶道
・柔道
・空手
・腕相撲
「⋯ええ?」
「ごほっ…ん゛ん゛……」
「………チッ」
「ふふんっ…」
―――なんでこんな空気の中で一之瀬のヤツ、得意げな顔でいやがるんだ。
「勝敗が自由に決まれば好きにしろ」と言った以上は文句はねえが…いくら負け戦だからっても、もう少しなんかあるだろう。
合コンと勘違いしてるんじゃねえか?なんでクラスの連中は文句を言わねえんだ?
「ん~?どうしたのかなっ!?龍園君、ほらほら、早く選んでよ!」
「………ほらよ」
俺は第一種目に選ばれたこちら側の柔道の備考欄に目を通す。そこには当初の予定通りで、一之瀬が裏切った場合も圧勝できるようにセッティングしていた内容が書いてある。…だがもう、役を為さねえんだろうがな。
【柔道:勝ち抜き戦:参加人数5名】
『司令塔権利:1名のみ、司令塔が代わりに競技に参加可能』
身振り手振りで急かして来る一之瀬に応えるように俺は撫子と後は適当な女子連中を選択する。同じように選択を終えた一之瀬がいきなり権利を使って部屋を飛び出るのを見て、俺も席を立つ。
「…どうした、龍園。お前も司令塔の「リタイアだ」…は?」
「え…?」
「聞こえなかったか?俺は体調不良でリタイアする」
ポカンとする茶柱に、今度はしっかり分かるように伝える。ぐだぐだと言ってきたが次期司令塔として撫子には許可を貰っている事、司令塔の権利も責任も譲渡することの覚書を投げてやりゃあどこかに連絡した後にようやく許可を出してきた。
『にゃー!』
『やぁっ!』
唖然としている真嶋や茶柱とは裏腹に、モニターには一之瀬が満面の笑みで撫子に飛び掛かって速攻であしらわれている様子がまざまざと写っていた。
…あれがこれから全敗して退学する奴の顔か?相変わらず、撫子が絡むと…いや、これからはそれも読み切ってやるさ。
俺は荷物を取りに教室に戻ると体調不良で帰ることを伝える。『作戦遂行』の合図だ。クラスも半数以上、試験要員を除いて席を立つ。
結果が決まり切っている以上、実力を見せる人員は最低限で良い。俺は共に席を立ったアルベルトから端末を受け取って、教室を後にする。後は金田や椎名、伊吹に任せるとするさ。
―――だから、俺が試験が終わった後のことを知ったのは、春休みになってからだ。
出遅れは否めねえが、構わねえ。
…後日、試験の様子を聞いたら割と勝負らしい勝負ってやつをやっていたらしい。
済んだ話はどうでも良いが、話を聞いた真鍋たちのツラがどうも気になった。脅して聞き出そうとしたら、他の連中が庇う始末。…今度は何をしやがったんだ、
―――〇―――
Side.一之瀬 帆波
初戦の柔道は5:0でストレート負け、その後の愛しているゲームでは何人か負傷*1退場が出たりツイスターゲームでは教室の方でも見ていられないって、騒ぎ*2まであったみたい。
―――実力の差は理解しているつもりだった。私たちは本気で試験に挑んで…その全てをたった一人の女の子に圧倒されてしまっていた。みんな、ごめんね…。
「にゃー撫子ちゃん、
「あ、あはは…帆波、ほら着きましたよ?ね?」
「
………いやー、撫子は強敵だったにゃー、じゃなくて。
期末の特別試験ももう半ば。私たちとDクラスの競技は現状3:0でこっちの負け。でも一緒に競技に出てた千尋ちゃんから「2000万ポイントが振り込まれた」って合図は貰ったから、
愛してるゲームとツイスターゲームで楽し…じゃなくて、圧倒的実力を誇る撫子ちゃんに負けてる。うーん、手強いなー負けても仕方ないよねっ!うんうん。
「………」
「もう…あ、佐枝先生?え?平気ですよ?あの…」
撫子ちゃんと腕を組んで戻ると、先生たちの何とも言えない視線を受ける。時間の許す限りくっ付いていようとしていたけど、茶柱先生に間に入られちゃった。むう。
中央のモニターには私たちAクラスとDクラスのスコア、そして右下に小さくBクラスとCクラスの戦績も表示されている。
Bクラス:3勝
Cクラス:0勝
第4戦 【チェス:参加人数1名】
『司令塔権利:30分間のみ、司令塔が代わりに競技に参加可能』
Bクラス:坂柳 有栖
Cクラス:【司令塔】堀北 鈴音【27:25/30:00】
ん~?今は堀北さんが代わりに参加してて、綾小路君は坂柳さんに任せている感じなのかな?…チェスはよく分かんないけど、画面に写ってる堀北さんと坂柳さんの顔色から勝敗は推して知るべし…だね!
こっちも勝敗は3:0で…あれ?も、もしかしてこっちの種目が時間かかってたからもうそっちは4種目目なの?じゃあ…ここで堀北さんが負けちゃうとBクラスの勝利が確定…かあ。
「にゃはは…あと一勝でBクラスの勝ちみたいだね、撫子」
「…はい、そう…ですね」
「あれ?あんまり嬉しそうじゃないけど…」
「いえ…そのようなことは、決して」
「………?」
「無駄話はそこまでだ。次の試験を決定する」
「あ、すいませんっ!」
ペコペコしながら席について、自分のモニターを見ながらもチラリと中央のモニターを改めて見る。
現代文テスト:勝者Bクラス
ピアノ:勝者Bクラス
数学テスト:勝者Bクラス
チェス:
ここまでまさかのテストの点数勝負が2回と…ピアノ?あ、Cクラス側の競技でも勝ったんだ。誰が出たんだろ?
でもこのままだとクラスポイントの差がまた広がっちゃうなあ…。う~ん、堀北さん頑張って!!
心の中でエールを送ると、今度はこっちの種目が選出される。次は…茶道!?むむむっ…これは、椎名さん…いや、また撫子ちゃんが出て来るに違いない!…問題は何人目で出て来るのか。
その見極めが出来なければ、撫子ちゃんのお茶を飲むことは出来ないっ!私は今日、何回目かの集中を持って、撫子ちゃんの動向を…読むっ!
「先生っ!私はまた司令塔として代理出場をします!」
「…許可します」
「あ、佐枝先生…私も、よろしいでしょうか?」
「…了解した、行ってきなさい」
道中、当然のように撫子ちゃんに出場のタイミングを聞きながら私は撫子ちゃんのホームグラウンドへと足を運ぶ。その足取りは軽やかで、来年度にも、そしてそれ以降もずっと続くと信じているから。
「ほらっ早く行こう!撫子ちゃんっ!」
「こら、帆波…危ないですよ?もう…っ」
ため息交じりでも、手を解かずにいてくれる。いつも優しい撫子ちゃん。龍園君と話もつけて、これからはもっともーっと近い距離で力を合わせていける筈。…私がきっと、撫子ちゃんを…撫子を
そんな思いを乗せて微笑めば、ちょっとだけ困った様に眉を下ろしても可愛く笑いかけてくれる。
…どこか影を落としている表情がほんの少しだけ、気がかりだった。
―――〇―――
Side.佐倉 愛理
一つの机が減った教室で、私たちは一年最後の特別試験に挑んでいた。そのきっかけとなってしまった試験から変わったことは多くある。でも、そのいくつかは取り返せたと思っていたのに、それは思い上がりだったのかもしれない。
あの試験…クラス内投票から、みんなで集まっていない。まだそこまで時間が経っていないのもそうだし、誰も言ったりしないけど…いつもの輪からひとり、欠けてるのを認めたくは無かったんだと思う。
夜の内にいっぱい連絡した。…でも学校のトラブルとかで連絡先がなくなっちゃった。堀北さんからは波瑠加ちゃんと一緒に「出来たら綾小路君と秘密で連絡を取って欲しい。何か聞かれたら自分の名前を出して良い」…なんて言われてて、昼休みとか放課後に声をかけようとしたんだけど上手くいかなくて。
「…きよぽん、楽しそうだったね」
「うん。…ちょっと前から椎名さんと、仲良かったみたいだから」
「知ってる子?」
「えっと…撫子ちゃんと同じ茶道部で、本が好きみたい」
「あー、なるほど、同好のなんちゃらってヤツ?」
結局そんなことを話しながらお昼を食べる。波瑠加ちゃんはあんまりショックを受けてないようだけど、実は繊細で友達思い。だからたくさん友達を作るタイプじゃなくて、自分の内側に入って来た相手には尽くすように思う。
「まあ、元気そうで良かった。ね、愛里…」
「…そうだね、波瑠加ちゃん」
綾小路君に家の事を相談された時、そして私たちと仲良くなった理由に打算があったと言われた時。確かにちょっと怖かった。…それでも、きっと以前のように…もっとそれ以上に仲良くなれるって思ってた。波瑠加ちゃんがそう零して、啓誠君も、明人君も直ぐに頷いて、私ももちろん味方になってあげたいって。
そう、のんきに笑ってた。
またみんなで、一緒に笑いたいよ。清隆君。
―――でも、そんな気持ちは甘かったのかなって、もう手遅れなんじゃないかって、試験のその日に思い至った。
『………おはよう、みんな』
『平田君…!』
『お、おはよう、平田君っ』
転機があったのは…堀北さんが、平田くんと一緒に登校して来たこと。心配していた王さん達が駆け寄ると、前の試験からずっと怖かったり、落ち込んでる様子からは立ち直っているようだったから、みんな安心してた。
そこから…クラス一丸となって試験に挑もうってなった。…
元気がない人も、不安な人も怒ってる人も少しだけそれを我慢して、みんなで力を合わせようとした。私も、波瑠加ちゃんも団体競技の練習をしたり、テストの対策で啓誠君に勉強を習ったり頑張った。最初は0だったDクラスの私たちは今、Cクラス。上り調子の私たちとは違って相手のBクラスはAから転落した上に撫子ちゃんが居なくなって、きっと万全じゃないって堀北さんや櫛田さんは自信を持っていってたから、そう思ってた。
『チェックメイト』
『………っ』
『そこまで、Bクラスの勝利』
次の試験で見た時の、彼の…私たちの知らない綾小路清隆君。
画面越しに映る彼は、どこか違う…まるで別人みたいだった。
読了、ありがとうございました。
後半は19:00投稿予定、お楽しみに。
2年生編について、アンケートです。やりたい要所の場面だけやって更新を早くするか、ちゃんと順序立ててやるべきか、どっちが良いでしょうか、皆様!
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更新優先、2年生編は要所を書いて投稿。
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ストーリー優先、順番に巻順に進める。
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if番外編とかもみたい?